Thu 141106 函館駅前で3時間 ほろ酔いセットA&B 歴戦の老雄「白鳥」は引退間近だ | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 141106 函館駅前で3時間 ほろ酔いセットA&B 歴戦の老雄「白鳥」は引退間近だ

 11月23日、世間は「勤労感謝の日」であって、楽しい3連休の谷間。今井君は3連戦のさなかであって、夕暮れから電車に乗り込んで3時間、函館から札幌に移動しなければならない。

 函館での仕事が終わったのが、15時ちょっと過ぎ。函館駅まで送っていただいたのはいいが、会社からもらった電車のチケットは18時すぎの特急「北斗」であって、諸君、この寂しい駅前で3時間近い待ち合わせ時間に茫然とせざるを得ない。

 おそらくチケットを準備してくれたヒトは「旅の大ベテラン♡今井先生のことだ、きっと単独でも祝勝会を開催して、3時間ぐらいあっという間に何とかするに違いない」と考えたのだろうが、いくらベテランでもうまく時間の潰せる場所と潰せない場所がある。

 21世紀の函館駅前こそ「うまく潰せない場所」の典型であって、見渡す限りの駐車場、見渡す限りのビジネスホテル群、まさに「花も紅葉もなかりけり」であり、時間つぶしの場所もやっぱり「なかりけり」なのであった。
駅弁1
(函館駅で駅弁「いかわっぱ」を購入)

 むかしなら、例え一人でこういう場所に放り出されても、「純喫茶」ないし「パチンコ屋」と言ふ古式ゆかしい店が迎えてくれて、十分に有意義な時間が過ごせたのである。

 昭和の時代には、純喫茶で1杯300円のコーヒーを注文すれば「あとは粘り放題」。文庫本1冊をしっかり読み終え、それがジャズ喫茶ならジャズ、名曲喫茶ならクラシックのレコードを4~5枚分満喫して、大満足の3時間を過ごすことができた。

 「パチンコ屋」というのも悪くなかった。タバコのケムリが朦々と視界をさえぎる中、息を止めながら「チーン、ジャラジャラジャラ」で3時間。最後にはたくさんの景品まで抱え、「うぉ、儲かったぜ」という苦笑とともに、タバコ臭い午後に終止符を打つこともできた。

 しかし諸君、21世紀の駅前には「純喫茶」も「ジャズ喫茶」も「名曲喫茶」も存在しないのである。あったとして、スタバにタリーズ、あとはマックか擬似マック。いやはや、中年のオジサマが3時間落ち着いて読書できるような空間とは思えない。

 読書でなければ、もちろんカバンからPCを持ち出して、カタカタ&シャコシャコ、ポチ&ビシ&パシッと叩き放題に叩くことになるが、今井君はああいう場所でネットを見ながらニタニタするタイプではないし、この長大なブログを書きまくるには、もう少しだけ集中できる空間がほしいのである。
駅弁2
(函館駅弁「いかわっぱ」の中身)

 諸君から見て意外な気もするだろうが、こういう場合むかしのクマどんは「パチンコ」が好きだった。気軽に入って100円だけ玉を買い、テキトーに台を選んでジャラジャラ始める瞬間は、それなりにワクワクしたものだった。

 しかし、今のパチンコ屋はイカン。何であんなにアニメキャラだらけなんだ? 中でも一番キライなのは、口を半開きにした水着女子のキャラ。思わず「口をキチンと閉じたまえ!!」とお説教を始めそうになる。ああいうキャラが溢れるようになってから、クマ君はパチンコ屋を避けて通るようになった。

 というわけで、「祝勝会ナシ」の函館の3時間をどう過ごしたらいいか、今井君は見当もつかない。「函館朝市」は14時半でほとんど店を閉めてしまっている。開いている店があったとしても、おそらく「御相席で!!」と命じられ、大急ぎでドンブリ飯をかきこむのが関の山。それでは15分程度しか時間は消えてくれないのだ。
白鳥1
(新青森からの特急「白鳥」が到着)

 切羽詰まった気分で、まずは18時16分の電車から17時16分の特急にチケットを買い替えた。連休のさなかではあったが、幸いなことにグリーン席が空いていて、これで待ち時間を一気に1時間減らすことに成功した。

 続いて今井君が頼ったのは、駅2階にたった1軒生き残った飲食店。昨年までは2軒残っていたが、そのうち1軒は今年3月で営業をヤメてしまった。しかし生き残った1軒のほうはまだまだ元気。少なくとも挨拶代わりに「御相席!!」と叱られたりはしない。

 しかも1人客にとってマコトにありがたい「カウンター席」がズラリと並んでいる。疲れた身体をノソノソやりながらカウンター席によじ上ったクマどんは、ためらわず「ほろ酔いセットB」を注文。生ビール(中)、お刺身3品、切り干し大根とわさび漬けの小皿つき。これで1000円なら、時間つぶしにちょうどいい。

 ところが諸君、やっぱり今井君は豪傑であって、「ほろ酔いセットB」は約15分で目の前から消えた。続けざまに「男山・純米吟醸」の冷酒1合も頼んでみたが、これまた15分持たずにクマの胃袋に消えた。
白鳥2
(特急「白鳥」はすぐに折り返し新青森ゆきになる)

 非常識とは思ったが、ちょうどその時そばを通りかかったオバサマ従業員に「ほろ酔いセットA」を注文。こちらはセットBと違って、日本酒2合とソーセージ2本のセット、それにさっきと同じ切り干し大根とわさび漬けの小鉢が添えられる。

 1回の来店で「ほろ酔いセット」AとBの両方を注文するお客はなかなか存在しないらしい。オバサマ従業員は思わずニンマリして、クマどんの非常識な行状を笑ってくれたが、諸君、その笑顔はマコトに愛すべきものであって、昨日から今井君が函館朝市のオバサマたちに求めていたのは、まさにこの「呆れた」という優しい笑顔なのであった。

 こうして、函館駅前での2時間を何とかこなしたクマどんは、札幌ゆき特急「スーパー北斗13号」に乗り込んだ。ちょうど新青森からの特急「白鳥」が到着したところ。まもなく新幹線開通とともに使命を終える特急である。

 「白鳥」はかつて青森-大阪間の日本海岸を快走し続けた大ベテラン。20世紀後半、秋田県立秋田高校2年の修学旅行は、朝9時にこの「白鳥」に乗り込んで、夕暮れ迫る京都に降り立つのがお決まりだった。

 1962年の北陸トンネル開通時に、記念切手にデザインされたのも、やっぱり特急「白鳥」であった。ついに引退間近となった歴戦の老雄であるが、いま夕暮れの函館駅に入線してきた列車の姿を目の当たりにして、やっぱり今井君の胸にも、こみあげる寂しさがあった。
切手
(北陸トンネル開通記念切手に登場。「白鳥」は20世紀の英雄であった)

 さて、確かに「ほろ酔いセット」をA・Bともに平らげた後であるが、3時間も電車に乗るのに駅弁は欠かせない。購入したのは「いかわっぱ」。北海道新幹線開通を待ちわびるデザインの缶ビールと、北海道の銘酒「北の誉」も追加してみた。

 函館発18時16分。停車駅は、五稜郭 ☞ 大沼公園 ☞ イカめしの「森」 ☞ 八雲 ☞ 長万部 ☞ 洞爺 ☞ 伊達紋別 ☞ 東室蘭 ☞ 登別 ☞ 苫小牧。ここまでは長い長い海岸線を走る。昭和40年代前半までは、力強い蒸気機関車が長い列車を引っ張って走り抜けたルートである。

 伊達紋別の駅で、札幌から来た上野ゆきの上り「北斗星」とすれ違う。いやはや、マコトに旅情たっぷりの出張であるが、このころにはお弁当もカラッポ、ビールもお酒もカラッポ。「ほろ酔いセット」が「ボロ酔いセット」にならないうちに、千歳か札幌までヒト眠り、じっくり眠っておくことにした。

1E(Cd) Kenny Wheeler:GNU HIGH
2E(Cd) Jan Garbarek:IN PRAISE OF DREAMS
3E(Cd) Bill Evans & Jim Hall:INTERMODULATION
4E(Cd) John Dankworth:MOVIES ’N’ ME
5E(Cd) Duke Ellington: THE ELLINGTON SUITES
total m30 y2000 d14930