Tue 141104 元ハーバービューホテル 10年留学していた男 イカ徳利 夜汽車の風景 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 141104 元ハーバービューホテル 10年留学していた男 イカ徳利 夜汽車の風景

 11月22日は、函館駅前の「ロワジールホテル」に宿泊した。今はロワジールのチェーンに入っているが、ここはもともと沖縄の那覇にあるのと同じ「ハーバービューホテル」。ということは、元は全日空ホテルの系列であって、ホンの10年前までは函館で一番のホテルだったように記憶する。

 このところ足が遠のいていたのは、「ロワジール」に名称変更した4~5年前のこと、「部屋でネットは使えますか」という問いに対して「モデムの貸し出しとなっております」という返答にビックリ仰天したからである。

 だって諸君、4~5年前と言えば、多くのホテルで「有線ですがネットは無料」が一般化し、「WiFi使えます」もジワジワ浸透してきていた頃である。「モデム貸し出し」で、しかも壁を1つか2つ殴りつけずにはいられないほど、ウルトラスローなネット環境であった。

 大っきな四角いモデムをフロントの人がニッコリしながら運んできて、部屋の端から端までコードで結んでくれた時、確かに感謝はしたけれども、「これでしばらくここに宿泊することはないな」「もう少しネット環境のいいホテルを函館に見つけなきゃな」と心ヒソカに考えていたものである。
ハーバービュー
(元・函館ハーバービューホテルから見た、ハーバーのビュー。手前は函館駅ホーム)

 函館には毎年1度は足を運ぶ。そのたびに街がグッと寂れて見えるのが、今井君は寂しくてならない。この街はもともと北海道の中心。札幌より遥かに歴史のある街だが、今や何となく「足許にも及ばない」と市民も諦めてしまっているみたいである。

 いったん国策の軸から外れると、どんなに伝統と歴史のある街でもこういう衰退を免れない。2016年には北海道新幹線が開通して、函館は東京から一気に4時間ちょっとで来られるようになるが、その新駅は函館中心部から遥かに離れ、その名も「函館北斗」。うーん、この街に再び繁栄を取り戻せるか、マコトに心許ない。

 しかも諸君、2026年には再び「札幌でオリンピックをやろうじゃないか」とい機運が盛り上がってきた。東京オリンピックの6年後であるが、何しろ人口200万の大都市、1972年の大成功の実績もある。余程のライバル都市が現れない限り、「第2回サッポロ」の可能性は非常に高い。

 すると諸君、函館はまたまたはるか後方に置いていかれる。新幹線札幌延伸が「オリンピックの2026年に前倒し」ということになろうものなら、函館北斗はただの通過駅に落ちてしまいかねない。しかも「はやぶさタイプは停車しません」なんてことをされてしまったら、もう立ち上がりようがないじゃないか。
摩周丸
(ハーバービューその2、朝の摩周丸。青函連絡船として大活躍した)

 そういう思いをかかえつつ、今井君はスタッフと前夜祭に向かった。明日の仕事は13時半から、仕事が終わるとすぐに電車で札幌に向かわなければならないから、「祝勝会」はムリなのである。たった3人の寂しい前夜祭になってしまったが、「やむを得ないものはやむを得ない」である。

 明日の大盛況を演出してくださった函館の塾長は、今井君の高校の先輩である。前回2年前の大盛況の時は、カニにイカにウニにイクラに、とにかく函館のありとあらゆる海産物をふんだんに御馳走してくださった。秋田県立秋田高校の先輩&後輩として、懐かしい秋田弁で遠慮なく語り合い、大いに楽しかった。

 ところが今回は、「神戸で用事がありまして」ということで、ご丁寧なお手紙をいただいた。だから今夜は、塾長が絶大な信頼を寄せていらっしゃる部下の先生が前夜祭を準備してくださった。

 彼とは、2年前の祝勝会でも語り合ったことがある。16歳の時からアメリカに10年留学していらっしゃったという猛者であって、もちろん英語力も一流。留学なしで英語をマスターするのも素晴らしいし、半年か1年の短期留学もまたマコトに頼もしいが、諸君、「16歳から10年間」というこの猛者ぶりには、クマどんも大いに敬服する。
夜景
(ハーバービューその3、函館駅の夜景。やがて寝台特急「北斗星」がやってくる)

 何しろ明日のお仕事がメインだから、前夜祭のほうは午後8時、ビール2杯と赤ワイン1本でカンタンに切り上げることになった。こういうところで盛り上がりすぎて、明日の仕事が万が一疎かになれば、何のために函館まで来たんだか分からないじゃないか。

 しかし、塾長先生からは「4合瓶2本」というオミヤゲをいただいた。旭川の銘酒「男山」の吟醸酒である。これをガマンできるようなクマ蔵ではない。赤ワイン1本カラッポにしてサッサとホテルに戻ったのはいいが、やっぱりロワジールの部屋はクマには小さすぎたらしい。

 こういう時、贅沢なオジサマなら「外に飲みに出かける」んだろうし、今井君も時にはそういう贅沢なオジサマをやってみる。しかしもともと贅沢の得意なクマではないから、店の選択がマコトにお粗末になる。「魚民」「和民」「笑笑」の類いに単独で闖入しては、ヒトビトの驚きを誘うばかりである。

 「オシャレな店でオシャレに時を過ごす」というオシャレな行動ができない以上、クマどんの目はオミヤゲにいただいた「男山」4合×2のほうに向けられる。コイツを1本カラッポにするほうが、11月の函館の寂しい夜を徘徊するより、ずっと楽しくはないだろうか。
函館駅
(夜の函館駅)

 そこでクマどんはロワジールのお部屋から這い出して、駅の近くのオミヤゲ屋さんに闖入。目指すはツマミ2~3品と、イカで作った「イカ徳利」である。イカ1パイをそのまま徳利の形に加工したシロモノであるが、これで熱燗をチビチビやれば、スルメと日本酒の味を同時に楽しめるというシカケになっている。

 諸君、こうして今井君は1つ500円のイカ徳利を入手。さっそくお部屋に戻って、舌なめずりしながらイカ徳利に「男山」をトク♨トク♨トク。「では、どうやって熱燗にしますか?」であるが、もちろんまずポットにお湯を沸かし、これをコーヒーカップに移し、その中にポチャンと徳利をつけるのである(下の写真参照)。

 ただしもちろんこんなアリサマではなかなか熱燗にならないから、カップのお湯を何度も取り替える。お部屋の空気はたちまちスルメ臭くかわっていくが、とりあえず隣の部屋に迷惑を及ぼすほどではなさそうだ。10分後、イカ徳利の中身はえも言われぬ温かな美酒になっていた。

 これを小さなコップにあけて、チビチビやりながら窓からの夜景を満喫する。ロワジールから離れていた4~5年の間、今井君はこの味わい深い夜景を楽しむことができなかった。
徳利
(イカ徳利、コーヒーカップで熱燗の図)

 ロワジールでなければ、この夜景を眺めることはできない。さすが元ハーバービューであって、まさにハーバーのビューが眼下に広がっているのである。

 このところは「男爵倶楽部」というずいぶん思い切った名前のホテルにしていたし、他に「ラ・ビスタ」という新鋭ホテルもあるけれども、やっぱりハーバーのビューを満喫するとしたら、ここしかない。

 そして諸君、ここからのビューは決してハーバーだけではないのである。函館の駅に入線しては出て行く夜汽車の灯りも、また深々とした旅情を誘う。何と言っても、上野ゆき夜行特急「北斗星」の勇姿が見られるのは、あと1年しかないのだ。

 札幌を17時12分に発車した「北斗星」は、函館到着21時38分。ここでディーゼル機関車から電気機関車に付け替え、進行方向も逆になって青函トンネルを目指す。今井君は今年3月の大雪の夜にこれに乗車。鉄道ファンの憧れであるらしい食堂車も満喫した。

 個室寝台がとれたので、函館までで日本酒6合が空っぽになった。気がつくと列車は、青函トンネルどころか、盛岡も仙台も福島もとっくに通過して、ポカポカ暖かな早春の関東平野をひた走っていた。

 その同じ列車を、今夜はホテル12階のお部屋からのんびり眺めた。部屋の空気はすっかりスルメ味だけれども、そんなことはちっとも構わない。この素晴らしい夜汽車の光景が2015年には消えてしまうというのもマコトに残念であるが、うーん、それが時代の流れなら、致し方のないことである。

1E(Cd) Harbie Hancock:MAIDEN VOYAGE
2E(Cd) Miles Davis:KIND OF BLUE
3E(Cd) Weather Report:HEAVY WEATHER
4E(Cd) Sonny Clark:COOL STRUTTIN’
5E(Cd) Kenny Dorham:QUIET KENNY
total m20 y1990 d14920