Sat 141011 対ドリアン決戦 グリーディ今井の五十歩百歩(速攻シンガポール13 最終回) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 141011 対ドリアン決戦 グリーディ今井の五十歩百歩(速攻シンガポール13 最終回)

 夢のような日々はすぐに終わる。長くても短くても同じことである。10年前はヨーロッパ40日、今回はたった4日の速攻アジア。どちらにしても夢の終わりはすぐに訪れるし、その寂しさや悲しさも変わらない。

 10月10日、「おや、もう終わりですか」と呟きつつ、3泊を0円で通した豪華なお部屋でムックリ目覚めたクマどんは、あっという間に荷造りを終えた。すでに書いた通り、いつもの国内出張と同じカバン1個。カバンの中身もほとんど変わらない。「荷造り」というコトバをつかうことさえ憚られるぐらいである。
ドリアンパフ
(こんなドリアンにチャレンジする)

 諸君には黙っていたが、実は昨日この部屋で「ドリアンに挑戦」という愚挙を試みた。ホテルの下にあるショッピングモールで「ドリアンのパフ包み」を購入したのだ。
「じかにチャレンジするのは無理でも、シュークリームの皮に包んでゴマかしたヤツなら、何とかなるんじゃないか」
イヤシイ秋のクマは、そういう愚かなことを考えた。

 こんなにゴツく成長した後では信じがたいだろうが、むかしむかしの今井君はマコトに身体が弱いコドモだった。やれゼンソクだ、やれ急性アレルギー症状だで、苦い粉薬をしょっちゅう無理やり飲まされた。

 そういう時に活躍したのがオブラート。ゼンソク対策で異様なほどマズい漢方薬を飲んだが、粉状でありさえすればオブラートで何とかゴマかすことができた。

 ならばドリアンも、シュークリームの皮のオブラートで行けるんじゃじゃないか。お店で一見したところ、「何だ、ケッコ旨そうじゃないか」であって、可愛らしい一口シュークリーム以外の何者でもない。

 どうだい、1枚目の写真を見る限り、この判断に間違いはなさそうじゃないか。サクッと噛みしめれば、絶品のカスタードクリームが皮の間からトロリと溢れ出てきそう。そういう甘い予感に、思わずヨダレがターラタラくるはずだ。
ラウンジ1
(チャンギ空港、豪華ラウンジで 1)

 ところが諸君、そうは問屋が卸さないから「実社会は甘くない」「人生は厳しいよ」なのであって、トロリと甘いカスタードとは似ても似つかない凶悪きわまりないゴロリとしたシロモノが、皮を破っていきなり本性を発揮するのである。

 うひょー、こりゃ激しいでござるよ。この悪臭、まさに別世界。ヒトの評判では「ニオイはきついけど、味はサイコー。果物の王様だ♡」であるが、どれほど多くのヒトが実際を知らず、経験してもいないことを伝聞でまことしやかに吹聴しまくるか、このとき思い知らされたのである。

 それでも、何しろ今井君は辛抱強いから、この凶悪なシロモノを何とか飲み込んだ。「煮え湯を飲まされる」という表現はあるが、煮え湯とドリアン君とどっちがより凶悪か、判断に苦しむほどである。

 飲み込んでから一夜明けても、息を吐くたびに胃の奥の方から同じ悪臭がこみ上げてくる。間違って「ゲップ」などということをしようものなら、飲み込んだ時とほぼ同じ悪夢のような悪臭を追体験することになるし、しかも悪いことに、しょっちゅうゲップが湧き上がってくる。

 昨夜のディナーに中華風おでんを選んだが、その選択もいけなかったのかもしれない。胃の中のドリアン君がおでんの熱のせいで暴れはじめ、鬼のお腹の中の一寸法師よろしく、秋のクマどんを絶え間なく苦しめ続けた。
ラウンジ2
(チャンギ空港、豪華ラウンジで 2)

 しかし諸君、鬼は苦しさのあまり一寸法師を吐き出したが、「ドリアン君を吐き出す」なんてのは、絶対に考えてはならない行動。吐き出した一寸法師には何の害もないが、万が一ドリアン君を吐き出せば、そのムンムン大活躍の悪臭は、ホテル全体に迷惑を与えかねない。

 ドリアン・パッケージの注意書きを熟読するに、
「必ずすぐに平らげること」
「決して放置しないこと」
「30℃以上になる場所に持ち出さないこと」
など、コイツがどれほど凶悪なシロモノかを暗示する文言がズラリと並んでいる。

 昨夜の今井君は、8個のうち1個を飲み込んでともかくも退治。「残り7個をどう処理するか」、ディナーに出かける前に思案に暮れたのである。結局どんな退治を決断したかは、ここでは秘密にせざるを得ないが、とにかく放置だけは許されざる暴挙と思われた。

 もし「放置」と決断した場合、
① 旅の最後の一夜を台無しにする
② ホテルの部屋は今後4~5日使用できなくなる
③ お部屋を掃除にくるハウスキーパーのカタが悪臭に卒倒しかねない
など、ドリアン君の後遺症は枚挙にいとまがないのである。

 以上、チェックアウトの朝は「おそるおそる呼吸する」というアリサマになってしまった。部屋の空気の中に、1000分の1でも悪臭の名残が含まれていたら、すぐに窓を開けて空気の入れ替えをしなきゃいけない。幸いなことに、昨夕の応急処置が100%功を奏して、クーラーの効きすぎた爽やかな風の中に、悪夢のカホリは一切残っていないようであった。
優先搭乗
(シンガポールでも、ダイアモンド君はウルトラ優先搭乗に導かれる)

 こうしてシンガポールのてんやわんやは終わりを告げた。チェックアウトを済ませ、今朝もまた清潔で静かな地下鉄に乗り、チャンギ空港まで30分あまり。ダイアモンドメンバーの特権をフルに発揮した今井君は、ダイアモンドメンバーだけに入室が許される超豪華ラウンジを2時間近く満喫したのだった。

 これほど多種多様にホットフードが取り揃えられたラウンジは、世界中探してもチャンギと羽田ぐらいのものである。紅茶もTWGブランドがズラリと並んで、高級なオジサマたちは目の色を変えて美味しい紅茶をエンジョイしていらっしゃった。

 ただし、その「エンジョイ」がマコトにグリーディー。グリーディーとは、要するに貪欲&貪婪、もっと直截に言えば「ガメツイ」であり「みっともない」であって、TWGのティーパックをごっそりポケットに詰め込んでいく。

 いかにも高級そうな立派なオジサマたちなんだから、そんな行動は、控えた方がいい。同じ日本人として恥ずかしくなる。見たまえ、今井君は聖人君子だから、ポケットに入れたティーパックはたった2つである。いやはや五十歩百歩の見本のような行動をとって、それをシンガポールの思い出とした。
トンカツ
(羽田空港のヒレカツ定食でホッとする)

 あとは羽田まで7時間のフライトである。途中、石垣島付近でトグロを巻いていた大きな台風を回避して、そのせいで何故か予定より30分も早く羽田に到着したのだった。

 羽田到着、午後8時。グリーディ今井は、グリーディであり五十歩百歩である証拠に、ポケットに2個のティーパックがまだ入っている。2個ともカモミール。カモミールティーを水出しにして、焼酎のお茶割りにしようと思うと、今からそれが楽しみである。

 ついでだから、羽田空港4階のトンカツ屋でヒレカツ定食を貪っていくことにする。冷たい日本酒をクイッとやって、特大ヒレカツをサクサクやれば、今朝までドリアン君の悪臭ゲップに悩まされていたこともウソのようだ。やっぱり日本は、天国のような夢の国なのであった。

1E(Cd) Akiko Suwanai, Dutoit & NHK響:武満徹 ”FAR CALLS” ”REQUIEM FOR STRINGS”etc
2E(Cd) Amalia Rodrigues:SUPERNOW
3E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 1/18
4E(Cd) Sinopoli & New York:RESPIGHI/FONTANE・PINI・FESTE DI ROMA
5E(Cd) Sinopoli & New York:RESPIGHI/FONTANE・PINI・FESTE DI ROMA
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