Wed 141001 ミルクティーじーちゃん 大阪のオーサカどん(速攻シンガポール6)
10月8日、シンガポール滞在の2日目は、今井君としては珍しく勤勉に、午前9時半にはもうお部屋を出ていた。欧米での今井スタンダードは午前11時、下手をすれば午後1時近くまでお部屋でウダウダすることもあるから、「午前10時前にもう街歩き」ということになれば、これは画期的な出来事である。
何しろシンガポールでの滞在は正味たったの3日間。さすがにいつもの2週間滞在みたいに、異様にノンビリしているわけにはいかないのだ。どんなに狭いシンガポールでも、3日の中に何でもかんでも詰込もうとすれば、午前10時前に街に出ていたとしても何のフシギもないのである。
我がインターコンチネンタルホテルは、シンガポール散策にはマコトに便利にできている。北へ徒歩5分でアラブ人街。西に徒歩5分で屋台がズラリと並ぶ地域で、さらにそこから徒歩10分でリトル・インディア。中華街も、やはり徒歩10分の距離である。
![テタリ](https://stat.ameba.jp/user_images/20141025/09/imai-hiroshi/2b/b4/j/o0300040013108451976.jpg?caw=800)
確かに、現在の発展のカナメであるウォーターフロントからは少し離れている。しかしウォーターフロントの急成長ぶりには、早くもバブルの気配が感じられる。むしろいかにも東南アジアらしい地道な繁栄を謳歌するブギスのほうに、地に深く根を張った勢いを感じるのである。
1週間ほど前のブログでウォーターフロントを論じ、「銀座4丁目を4つに折り畳んで一つの巨大モールの中に詰め込んだみたいだ」と書いたはずだが、この折り畳み方式のバブルからは、すでに客足が遠のきはじめている。
ズラリと並んだ高級ブランドショップでは、もう閑古鳥どんたちが活躍しはじめ、1日に10組もお客がくるかどうか、心許ないぐらい。高級レストランでも状況は同様であって、200人も入りそうな広大な店内は、ディナーの時間帯でもカラッポのテーブルが目立つ。
地平線の果てまで高級ショップを並べて、繁盛しているのは結局「フードコートとコンビニだけ」という状況。鳴り物入りの「マリーナ・ベイ・サンズ」だって、遠くから見ると何だかちょっと危なっかしい。バブル崩壊の不気味な足音が聞こえるような気がする。
![アラブストリート](https://stat.ameba.jp/user_images/20141025/09/imai-hiroshi/db/34/j/o0400030013108452185.jpg?caw=800)
(アラブ・ストリート)
それに比較して、ブギス周辺の熱い繁栄はどうだ。アラブ系とインド系、中国系とマレー系の人や店が、たくましい4本の紐みたいに健康によじれあって、こんなにたくましく縄を編んだんじゃ、誰が悪だくみしたって崩壊なんかありそうもない。
この日の今井君の予定は、このたくましくよじれあったアラブ系やインド系の街を闊歩すること。やたら清潔なピカピカ新しいフードコートより、正直な欲望や愛憎の分厚く染み込んだ、熱く生きるヒトビトの街を歩き回る方が楽しいに決まっている。
最初に訪ねたのが、アラブ・ストリートである。午前10時、すでに気温は30℃を超え、噴き出す汗でポロシャツが上半身にまとわりつく。それでも小学生は遠足の真っ最中であって、規模の小さなモスクとその周囲の商店街は、すっかり小学生の群れに占領されているのだった。
モスクにも同じように小学生の渦が巻き、今井君なんかの入り込む余地はない。こちらとしても、つい2年前にイスタンブールで巨大な「ブルーモスク」や「スレイマン・ジャーミー」に感激してきたばかり。シンガポールの小さなモスク内部を、コドモたちをかき分けてまで意地でも見なくちゃいけないわけではない。
![モスク1](https://stat.ameba.jp/user_images/20141025/09/imai-hiroshi/7e/67/j/o0400030013108452313.jpg?caw=800)
(シンガポールのモスク)
そこでいったんモスクはあきらめ、クマどんはダラダラと汗に濡れ、流れる汗を拭うことも潔く諦めながら、「テ・タリ・ショップ」を探した。生活臭の染み込んだ狭い街路には、トルコ料理・レバノン料理・モロッコ料理の店が並び、「ジーチャンが1日中ミルクティーを淹れている」という有名な屋台はなかなか見つからない。
ようやく発見したオヒゲのジーチャンは、予想以上の貫禄でミルクティーを淹れ続けている。まさに看板に偽りなし。ミルクティーは熱さに融けたキャラメルみたいに長く糸を引き、ジーチャンの思うがままに操られている。
その場でビールケースみたいな椅子に腰掛けて飲むヒトビトもいれば、テイクアウトの人もいる。テイクアウトの場合、細ヒモのついたビニール袋にいれてもらう。むかし縁日で金魚を買うと、金魚屋のオジチャンに金魚を入れてもらった、あの懐かしいビニール袋である。
「懐かしい」という形容詞にはウソがあって、実際には「悔しい」と言った方が正確だ。何しろそそっかしい性格だから、「金魚すくい」が大の苦手。他のコドモたちは10円だか30円だかの金魚すくいで3匹も5匹も獲得して帰るのに、今井君はあのソフトクリームの殻みたいなヤツをすぐに破ってしまう。
金魚すくいで金魚をすくえずに、やむを得ずオカネを出して買って帰る小学生ほど、ミジメな男子が考えられるだろうか。すくえば1匹10円。買えば1匹100円もした。しかし今井君が縁日で購入した金魚さんたちは3年も長生きして、チャンと子孫を残してこの世を後にした。
![モスク2](https://stat.ameba.jp/user_images/20141025/09/imai-hiroshi/28/5d/j/o0400030013108452476.jpg?caw=800)
(祈りの場には、ここで身体を洗い清めてから入る)
そういう悔しい記憶が残るビニール袋にストローがついて、シンガポールの地元民たちは次々にミルクティを買っていく。確かにこんなに汗ビッショリになるんじゃ、贅沢に「ビール!!」とか言っていられない。
「とにかく水分」であり、「とにかくお茶」であって、夏の甲子園球場のカチワリ氷みたいに、ヒトビトはひたすら冷たさを求める。しかも諸君、このジーチャンの入れてくれる融けたキャラメルみたいなミルクティーは、「甘露も及ばず」と断言できる旨さ。何とも言えないコクがある。
オーサカどんとの出会いは、そのミルクティーをグラスに入れてもらった直後のことだった。座ってミルクティーをかき混ぜていた御仁が、いきなり日本語で「どこか面白いとこ、ありましたか?」と声をかけてきたのである。
大阪のオカタだったから、このブログでは仮に「オーサカどん」と呼ぶことにする。書いていいかどうかを尋ねてみなかったので、(仮)のほうがいいだろう。「韓国なら3度でも4度でも行ったことがあるんですけれども」と自慢気に話すオーサカどんは、あまりに大阪人っぽい大阪人であった。
今井君は、大阪の人が大好きである。自分と似たところばかりの人より、自分とあまり共通点の多くない人の方が、つきあっていて面白い。歯に衣を着せずに、言いたいことを恐れずにズケズケ言いまくる大阪の人は、ウジウジ引っ込み思案なクマどんからみると、これ以上ないぐらいに面白い。
![モスク3](https://stat.ameba.jp/user_images/20141025/09/imai-hiroshi/15/6f/j/o0400030013108452686.jpg?caw=800)
(モスクの内部)
オーサカどんは、遠いシンガポールで出会った今井君に、まずいきなり東京の悪口から喋りはじめた。「あんた、東京から来たんやろ」と言うのである。
「東京のヒトは不思議やな。高い店でも平気でオカネを払って食事する」
「見栄っ張りやな。『ええかっこしい』や♨」
「大阪ならすぐツブレそうなマズい店でも、東京ではお客がたくさん入ってる。東京は、マズい店ばっかりや。ホント、不思議やで」
と、なぜか猛烈な勢いである。
「ガイドブックも、東京のヒトはオカネを出して買うんやろ?」「ワタシは違いますよ。図書館で借りてきました」と、目の前でヒラヒラさせるのである。「○○区立図書館」と、紫色のスタンプが前小口に押してある。
「シンガポールにも、格安航空券でホーチミン経由で来ました。昨夜は早朝3時まで歩き回ってました。バックパッカーズ向けの安ホテルに泊まってます。ベッドに虫が這ってましたけれども、別に構いません。これからナイトサファリに行って、夜のヒコーキで帰国します。帰りはハノイ経由です」とおっしゃる。余りのたくましさに、内気な今井君は驚くばかりであった。
そのオーサカどん(仮)が、いきなり「一緒に、ついていってもいいですか?」と気弱な一面を見せた。慣れない土地で、ひとりぼっち。何だか心細いのだと言う。
もちろん、それなら構わない。ホーカーズの並ぶ屋台町やインド人街をこれから歩くのだ。しこたま元気な大阪人の道連れぐらい、いたほうが楽しそうである。「ナイトサファリが午後4時からだ」とおっしゃるから、それまで3~4時間の道連れ。そういうのも、悪くない。
1E(Cd) George Benson:LIVIN’ INSIDE YOUR LOVE
2E(Cd) George Benson:LOVE REMEMBERS
3E(Cd) George Benson:STANDING TOGETHER
13A(γ) A TREASURY OF WORLD LITERATURE 24:MAUPASSANT:中央公論社
total m13 y1822 d14752
何しろシンガポールでの滞在は正味たったの3日間。さすがにいつもの2週間滞在みたいに、異様にノンビリしているわけにはいかないのだ。どんなに狭いシンガポールでも、3日の中に何でもかんでも詰込もうとすれば、午前10時前に街に出ていたとしても何のフシギもないのである。
我がインターコンチネンタルホテルは、シンガポール散策にはマコトに便利にできている。北へ徒歩5分でアラブ人街。西に徒歩5分で屋台がズラリと並ぶ地域で、さらにそこから徒歩10分でリトル・インディア。中華街も、やはり徒歩10分の距離である。
![テタリ](https://stat.ameba.jp/user_images/20141025/09/imai-hiroshi/2b/b4/j/o0300040013108451976.jpg?caw=800)
(アラブ・ストリートのミルクティーじーちゃん。糸を引くようなこのミルクティーについては、後で詳しく述べる)
確かに、現在の発展のカナメであるウォーターフロントからは少し離れている。しかしウォーターフロントの急成長ぶりには、早くもバブルの気配が感じられる。むしろいかにも東南アジアらしい地道な繁栄を謳歌するブギスのほうに、地に深く根を張った勢いを感じるのである。
1週間ほど前のブログでウォーターフロントを論じ、「銀座4丁目を4つに折り畳んで一つの巨大モールの中に詰め込んだみたいだ」と書いたはずだが、この折り畳み方式のバブルからは、すでに客足が遠のきはじめている。
ズラリと並んだ高級ブランドショップでは、もう閑古鳥どんたちが活躍しはじめ、1日に10組もお客がくるかどうか、心許ないぐらい。高級レストランでも状況は同様であって、200人も入りそうな広大な店内は、ディナーの時間帯でもカラッポのテーブルが目立つ。
地平線の果てまで高級ショップを並べて、繁盛しているのは結局「フードコートとコンビニだけ」という状況。鳴り物入りの「マリーナ・ベイ・サンズ」だって、遠くから見ると何だかちょっと危なっかしい。バブル崩壊の不気味な足音が聞こえるような気がする。
![アラブストリート](https://stat.ameba.jp/user_images/20141025/09/imai-hiroshi/db/34/j/o0400030013108452185.jpg?caw=800)
(アラブ・ストリート)
それに比較して、ブギス周辺の熱い繁栄はどうだ。アラブ系とインド系、中国系とマレー系の人や店が、たくましい4本の紐みたいに健康によじれあって、こんなにたくましく縄を編んだんじゃ、誰が悪だくみしたって崩壊なんかありそうもない。
この日の今井君の予定は、このたくましくよじれあったアラブ系やインド系の街を闊歩すること。やたら清潔なピカピカ新しいフードコートより、正直な欲望や愛憎の分厚く染み込んだ、熱く生きるヒトビトの街を歩き回る方が楽しいに決まっている。
最初に訪ねたのが、アラブ・ストリートである。午前10時、すでに気温は30℃を超え、噴き出す汗でポロシャツが上半身にまとわりつく。それでも小学生は遠足の真っ最中であって、規模の小さなモスクとその周囲の商店街は、すっかり小学生の群れに占領されているのだった。
モスクにも同じように小学生の渦が巻き、今井君なんかの入り込む余地はない。こちらとしても、つい2年前にイスタンブールで巨大な「ブルーモスク」や「スレイマン・ジャーミー」に感激してきたばかり。シンガポールの小さなモスク内部を、コドモたちをかき分けてまで意地でも見なくちゃいけないわけではない。
![モスク1](https://stat.ameba.jp/user_images/20141025/09/imai-hiroshi/7e/67/j/o0400030013108452313.jpg?caw=800)
(シンガポールのモスク)
そこでいったんモスクはあきらめ、クマどんはダラダラと汗に濡れ、流れる汗を拭うことも潔く諦めながら、「テ・タリ・ショップ」を探した。生活臭の染み込んだ狭い街路には、トルコ料理・レバノン料理・モロッコ料理の店が並び、「ジーチャンが1日中ミルクティーを淹れている」という有名な屋台はなかなか見つからない。
ようやく発見したオヒゲのジーチャンは、予想以上の貫禄でミルクティーを淹れ続けている。まさに看板に偽りなし。ミルクティーは熱さに融けたキャラメルみたいに長く糸を引き、ジーチャンの思うがままに操られている。
その場でビールケースみたいな椅子に腰掛けて飲むヒトビトもいれば、テイクアウトの人もいる。テイクアウトの場合、細ヒモのついたビニール袋にいれてもらう。むかし縁日で金魚を買うと、金魚屋のオジチャンに金魚を入れてもらった、あの懐かしいビニール袋である。
「懐かしい」という形容詞にはウソがあって、実際には「悔しい」と言った方が正確だ。何しろそそっかしい性格だから、「金魚すくい」が大の苦手。他のコドモたちは10円だか30円だかの金魚すくいで3匹も5匹も獲得して帰るのに、今井君はあのソフトクリームの殻みたいなヤツをすぐに破ってしまう。
金魚すくいで金魚をすくえずに、やむを得ずオカネを出して買って帰る小学生ほど、ミジメな男子が考えられるだろうか。すくえば1匹10円。買えば1匹100円もした。しかし今井君が縁日で購入した金魚さんたちは3年も長生きして、チャンと子孫を残してこの世を後にした。
![モスク2](https://stat.ameba.jp/user_images/20141025/09/imai-hiroshi/28/5d/j/o0400030013108452476.jpg?caw=800)
(祈りの場には、ここで身体を洗い清めてから入る)
そういう悔しい記憶が残るビニール袋にストローがついて、シンガポールの地元民たちは次々にミルクティを買っていく。確かにこんなに汗ビッショリになるんじゃ、贅沢に「ビール!!」とか言っていられない。
「とにかく水分」であり、「とにかくお茶」であって、夏の甲子園球場のカチワリ氷みたいに、ヒトビトはひたすら冷たさを求める。しかも諸君、このジーチャンの入れてくれる融けたキャラメルみたいなミルクティーは、「甘露も及ばず」と断言できる旨さ。何とも言えないコクがある。
オーサカどんとの出会いは、そのミルクティーをグラスに入れてもらった直後のことだった。座ってミルクティーをかき混ぜていた御仁が、いきなり日本語で「どこか面白いとこ、ありましたか?」と声をかけてきたのである。
大阪のオカタだったから、このブログでは仮に「オーサカどん」と呼ぶことにする。書いていいかどうかを尋ねてみなかったので、(仮)のほうがいいだろう。「韓国なら3度でも4度でも行ったことがあるんですけれども」と自慢気に話すオーサカどんは、あまりに大阪人っぽい大阪人であった。
今井君は、大阪の人が大好きである。自分と似たところばかりの人より、自分とあまり共通点の多くない人の方が、つきあっていて面白い。歯に衣を着せずに、言いたいことを恐れずにズケズケ言いまくる大阪の人は、ウジウジ引っ込み思案なクマどんからみると、これ以上ないぐらいに面白い。
![モスク3](https://stat.ameba.jp/user_images/20141025/09/imai-hiroshi/15/6f/j/o0400030013108452686.jpg?caw=800)
(モスクの内部)
オーサカどんは、遠いシンガポールで出会った今井君に、まずいきなり東京の悪口から喋りはじめた。「あんた、東京から来たんやろ」と言うのである。
「東京のヒトは不思議やな。高い店でも平気でオカネを払って食事する」
「見栄っ張りやな。『ええかっこしい』や♨」
「大阪ならすぐツブレそうなマズい店でも、東京ではお客がたくさん入ってる。東京は、マズい店ばっかりや。ホント、不思議やで」
と、なぜか猛烈な勢いである。
「ガイドブックも、東京のヒトはオカネを出して買うんやろ?」「ワタシは違いますよ。図書館で借りてきました」と、目の前でヒラヒラさせるのである。「○○区立図書館」と、紫色のスタンプが前小口に押してある。
「シンガポールにも、格安航空券でホーチミン経由で来ました。昨夜は早朝3時まで歩き回ってました。バックパッカーズ向けの安ホテルに泊まってます。ベッドに虫が這ってましたけれども、別に構いません。これからナイトサファリに行って、夜のヒコーキで帰国します。帰りはハノイ経由です」とおっしゃる。余りのたくましさに、内気な今井君は驚くばかりであった。
そのオーサカどん(仮)が、いきなり「一緒に、ついていってもいいですか?」と気弱な一面を見せた。慣れない土地で、ひとりぼっち。何だか心細いのだと言う。
もちろん、それなら構わない。ホーカーズの並ぶ屋台町やインド人街をこれから歩くのだ。しこたま元気な大阪人の道連れぐらい、いたほうが楽しそうである。「ナイトサファリが午後4時からだ」とおっしゃるから、それまで3~4時間の道連れ。そういうのも、悪くない。
1E(Cd) George Benson:LIVIN’ INSIDE YOUR LOVE
2E(Cd) George Benson:LOVE REMEMBERS
3E(Cd) George Benson:STANDING TOGETHER
13A(γ) A TREASURY OF WORLD LITERATURE 24:MAUPASSANT:中央公論社
total m13 y1822 d14752