Wed 140903 お相撲がたいへんなことになっている ミソギドリの記憶 昭和の残像 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 140903 お相撲がたいへんなことになっている ミソギドリの記憶 昭和の残像

 2014年9月、お相撲の世界でたいへんなことが起こっている。わざわざここに書かなくても、テレビでもスポーツ紙でもお祭り騒ぎになっているから、読者諸君もとっくにご存知だろうと思うが、秋場所新入幕のモンゴルの若者が、昨日まで12勝1敗。優勝に向かって驀進中なのだ。
 逸ノ城、21歳。体重およそ200kgの巨体は、大関も横綱も遥かに凌ぐ迫力。容貌は「ヒールになるために生まれてきた」と言わんばかりのウルトラ悪役ぶりである。
 昨日のNHKの実況アナウンサーは「四天王の彫像のようだ」と表したが、うーん、どんなものだろう。確かに美術全集を広げてみると、激しい怒りの形相でつくられた広目天・多聞天・持国天・増長天の彫像に、彼の表情を思わせるものは少なくない。
 しかし諸君、彼の相撲の中身を見るに、その引き技の極悪ぶりは、この世界のヒール役にピッタリ。四天王に例えられるには、何としても次の場所以降、相撲内容を正々堂々としたものに変えていかなければならない。
 あんまり強いので、事務方も慌てている様子。まだマゲも結えない新入幕なのに、11日目には大関♨稀勢の里にぶつけた。これを軽く撃破することは織り込み済みだったのか、12日目には大関♨豪栄道との対戦も組まれた。
ノボリ
(両国国技館前、15時。お相撲がたいへんな人気である)

 こういう快進撃を見ていると、どうしても昔の「禊鳳」を思い出す。ずいぶん詠みにくいシコ名であるが禊鳳と書いて「みそぎどり」と読ませた。1960年代後半の力士である。
 当時は大横綱♡大鵬と柏戸の全盛期。幼稚園児も保育園児もみんな大鵬が大好きで、コドモの好きなものは「巨人&大鵬&玉子焼き」である時代。彗星のように現れた「禊鳳」は、今回の逸ノ城と同じように、新入幕にも関わらず一気に勝ち進んだ。
 成績は、12勝3敗。男の子の夢が「野球選手かお相撲さん」だった頃である。「サッカー選手になりたい」などと言えば、パパにはおそらく叱られたし、親戚のオジサンも「そんなヘンなこと言ってないで、相撲取りでも目指すんだな」とせせら笑っただろう。
 だから、禊鳳の時代と21世紀の相撲界とはおそらく全くレベルが違う。日本中の男子がこぞってお相撲さんを目指した時代に、「新入幕でいきなり12勝3敗」の衝撃はあまりに大きかった。
両雄
(9月25日、秋場所12日目の大詰め。白鵬と逸ノ城、今場所の両雄が土俵下に並んでいた)

 次の場所、禊鳳は一気に前頭2枚目に躍進。新聞もテレビも「ミソギドリ旋風」と囃し立て、初日からミソギドリvs横綱、ミソギドリvs大関の取り組みが組まれた。
 それでも彗星・ミソギドリは全くひるまない。初日、横綱♡栃の海を撃破。2日目、大関♨豊山を撃破。3日目、柏鵬時代の一翼を担う横綱♡柏戸も撃破。「いやはや、たいへんなことになった」と、オヤジも青年もコドモたちも、禊鳳の活躍に目を丸くした。
 しかし諸君、このミソギドリ大旋風は、ここまで。その後は奇跡のようにピタリと止んでしまった。「横綱でも大関でもこの新人にはとても敵わない」という恐怖の潮は、ウソのように引いていったのである。
 結局、4勝11敗。その後も星が上がらずに、番付はジリジリと後退する。怒濤の大活躍からわずか1年半、後の大関♨清国との取組で脚を負傷すると、幕内から十両、十両から幕下へと一気に転落。相撲人生は、まさにあっという間に幕を閉じた。
握り寿司
(国技館内「雷電」にて。握り寿司セットで腹ごしらえをする)

 あまりに活躍が短かったので、今のオヤジ世代でもミソギドリ旋風を記憶している人は少ないかもしれない。メディアが大騒ぎしたのは、わずか3ヶ月程度。ソッポをむかれた後は、「盛者必衰」の陳腐な例えにされる程度で、人々の記憶にさえ残らなかった。
 しかし今回の「逸ノ城」は、大関や横綱に対しても平気で強引な引き技を見せる。その徹底したヒールぶりから考えて、禊鳳みたいな短期間の嵐では終わりそうにない。
 引き技で横綱を土俵に這わせた直後、テレビのインタビューで「最初から狙ってました」とニヤリと笑う。その素晴らしく図太い根性はどうだ。今井君はこういうのが大好きである。
 しかし、何しろ日本の相撲ファンはコムズカシイ。朝青龍みたいな大横綱でも、メディアはこぞって「品格ナシ」の大合唱 ☞ まるでイジメのように引退させてしまった。今回どうなるのか、そういう意味でもマコトに楽しみな新人である。
両国予備校
(昭和の残像①:「両国予備校」の看板が残っていた)

 逸ノ城の躍進がまだまだ終わりそうにないので、9月25日の今井君はさっそく両国の国技館に向かった。ほとんど「広島から帰ったその足で」という感じであるが、台風16号くずれの雨雲が東京を覆い尽くした蒸し暑い1日、お相撲観戦で過ごすなんて、なかなか優雅でいいじゃないか。
 両国の駅に降りると、まだ「両国予備校」の看板が残っている。まさに「昭和の残骸」だ。かつて毎年春になると全国紙に「殺到する受験生」「寮の増設も焼け石に水」と全面広告を出していたのが、ウソのようにキレイサッパリ姿を消してしまった。何でこの看板だけ残っちゃったんだろう。
 国技館にお相撲を見に来るのは、おそらく10年ぶりぐらいである。前回ここに来たときの今井君は、おそらくまだ代ゼミ講師だった。おお、そこいら中に昭和の残像がチラホラするね。目の前には、すっかり痩せてしまった貴乃花親方が、ニコニコ激しい笑顔でファンの皆さんと写真に収まっていた。
 席につく前に、まず腹ごしらえをしなければならない。国技館の館内に「雷電」というレストランがあって、いそいそ入り込んだクマどんは①寿司盛り合わせ「雷電」と、②日本酒「月桂冠」を注文。おお、写真を見るに、これも「昭和の残像」そのものである。
月桂冠
(昭和の残像②:「月桂冠」一合瓶。むかし、オヤジの定番と言えばこれだった)

 結局、この日の逸ノ城は、大関♨豪栄道も撃破した。というか、片腕でカンタンに転がしてしまった。翌日は横綱♡鶴竜を1秒で土俵に這わせた。この記事を書いているのは9月27日の午後4時であるが、2時間後には相撲史上おそらく最強の横綱・白鵬との対決が待っている。
 いや、今井君自身だって、まさかこんなにお相撲のことなんか書くことになるとは思わなかった。しかしさすがに書かずにはいられない事態である。暢気に握り寿司なんかモグモグやっている場合ではない。
 この日もまた「満員御礼」の超満員&札止め状態。「ボクは(ワタシは)お相撲なんか興味がありません」などと言ってないで、テレビでいいから観戦してみたまえ。NHK-BSなら、「英語生中継」なんてのも視聴できる。「英語で相撲」というシュールな世界も、また悪くないものでござるよ。

1E(Cd) Perlea & Bamberg:RIMSKY-KORSAKOV/SCHEHERAZADE
2E(Cd) Chailly & RSO Berlin:ORFF/CARMINA BURANA
3E(Cd) Pickett & New London Consort:CARMINA BURANA vol.2
4E(Cd) Menuhin & Bath Festival:HÄNDEL/WASSERMUSIK
5E(Cd) Diaz & Soriano:RODRIGO/CONCIERTO DE ARANJUEZ
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