Tue 140826 金出る大工 テルダムとルダム ロッテルダムへ(おらんだ先生訪問記36)
4月25日、いよいよ世界文化遺産「キンデルダイクの風車群」を見に行こうと張り切っていたら、「早速」というか「予想通り」というか、我が友mac君がマコトにバカな変換を始めて、クマどんの出ばなをくじくのである。
Mac君曰く、キンデルダイクとはまず、①「金出る大工」であり、さもなければ、②「近出る大工」だというのである。
①の「金出る大工」が「打ち出の小槌」でクギを打てば、ひと打ち打つごとに金銀財宝が湧き出てきそうなもんじゃないか。一寸法師だって、「大きくなあれ」「大きくなあれ」というお姫さまの掛け声とともにグングン膨張、とうとう姫と結ばれた。金出る大工、実によく儲かりそうな、おめでたい大工さんである。
②の「近出る大工」は完全に意味不明。今井君が怒りに身を任せてエイヤ&エイヤと変換を続けると、③「菌出る大工」などという言語道断なものまで登場する。何の菌が出てくるんだか知らないが、そんな不気味な大工さんにはあんまりお仕事は頼みたくない。
![タリス](https://stat.ameba.jp/user_images/20140920/02/imai-hiroshi/b7/a9/j/o0400030013072091282.jpg?caw=800)
さてマジメな話に戻るが、キンデルダイクにはロッテルダム経由で行く。アムステルダム中央駅から急行電車で1時間ほど、ロッテルダムの駅に着くと、諸君、日本人ならおそらく誰でもビックリすると思うのだが、ここは日本に勝るとも劣らない、マコトに21世紀的な大都会である。
ロッテルダムには、思い入れがある。21世紀最初の10年の今井君は、六本木から西麻布のあたりをほっつき回って過ごしたのであるが、2008年夏、ある中年の男女と西麻布の寿司屋で運命的な出会いをした。
もちろん「運命的」と形容する時、その表現にはタップリ皮肉が含まれているので、文字通りに受け取ってもらっては困る。出会ったのは、六本木から西麻布への下り坂の途中。豚肉料理の店「とんとことん」のお隣の「大寿司」というお寿司屋さんであった。
世の中の動きは、「ゆく川の流れ」以上に速いので、鴨長明どん自身さえ、流れに浮かぶウタカタの行方をたどりきれないほどである。「大寿司」は今も残っているけれども、「とんとことん」はとっくの昔に閉店になっている。栄枯盛衰、盛者必衰。「時代の流れに喘ぐ」というのは、いろんな業界に共通の話なのである。
![ロッテルダム](https://stat.ameba.jp/user_images/20140920/02/imai-hiroshi/96/62/j/o0400030013072091514.jpg?caw=800)
(ロッテルダム風景。驚くほど現代的な街だった)
で、「大寿司」での出会いであるが、2人は50歳代半ばの中年の男女。いかにも世慣れた感じで、「海外勤務も飽きるほど経験した」「欧米なんか慣れっこだ」「え? ヨーロッパの旅なんかで緊張するヒトがいるんですか?」という雰囲気の、マコトにムカつく2人であった。
2人ともオランダ勤務が長いらしく、会話はアムステルダムとロッテルダムの比較論に終始した。仮に、中年男子をアムス君、中年女子をロッテさんと呼ぶことにしよう。
男子・アムス君はアムステルダム派。女子・ロッテさんはロッテルダム派。互いにアムステルダムのことを「アムス」、ロッテルダムを「ロッテ」と短縮形で呼び、「アムスとロッテのどっちが好きか」、それをアムス君とロッテさんの豊富な経験をモトに、ネバネバ&ネチネチ語る一夜にしたようであった。
アムス:ボクはアムスが好きだけどなあ。
ロッテ:えええーっ? どうしてえ?
アムス:だって、アムスのほうが楽じゃん。
ロッテ:ロッテだっていいわよぉ。アムスより楽かも。
アムス:ロッテのどこが楽なの?
ロッテ:アムスより気取ってないし。
アムス:ロッテのほうが気取ってるんじゃん?
ロッテ:そんなことないわよ。ロッテはざっくばらんよ。
アムス:アムスだってざっくばらんじゃん。
ロッテ:ええっ、ロッテなんか、ずっとスゴいわよぉ。
アムス:アムスだってスゴくスゴいじゃんー。
ロッテ:うそ… 大したことないじゃん…
ま、以上のような会話である。いやはや、もう6年以上昔のことだ。今井君の記憶にも相当な虫クイがあるかもしれないが、あの日の感想は6年前のこのブログにも詳しい。
![改札](https://stat.ameba.jp/user_images/20140920/02/imai-hiroshi/83/df/j/o0400030013072091744.jpg?caw=800)
「大寿司」のカウンターは、寿司職人2名に対してお客が15人ほど。注文したお寿司も滅多なことでは来なかったから、ヒマに任せてクマどんはアムス君vsロッテさんの会話に耳を傾けた。
しかし、どうしてこんなに短縮形が多いんだろう。何でもかんでも短縮してしまう世の中が、今井君はどうも好きになれない。テラスハウスが「テラハ」、ノーヒットノーランが「ノーノー」。現代人は、よほど忙しいに違いない。クレヨンしんちゃんも「クレしん」。クレヨンしんちゃんの「ヨン」と「ちゃん」を省略して、それでどれほどの得があるのかサッパリ分からない。
「アムス」に「ロッテ」とは、要するに語尾を省略しているだけのこと。アムステルダムからは「テルダム」が、ロッテルダムからは「ルダム」が、どちらも無慈悲に省略されて、たくさんの「テルダム君」「ルダムちゃん」が、哀れな姿で「大寿司」の澱んだ空中に浮かんだ。
![地下鉄](https://stat.ameba.jp/user_images/20140920/02/imai-hiroshi/82/47/j/o0400030013072091824.jpg?caw=800)
(ロッテルダム地下鉄。清潔さでも、東京メトロ以上である)
暢気なクマどんは、こういうのがイヤ。「ヨン」「ちゃん」「テルダム」「ルダム」、そういう語尾だって懸命に仕事をしているのであって、無慈悲に切り捨てられていいはずはない。しかし、世の中のヒトはそんなことに頓着しないようである。
「この間の河合塾の模擬試験ですが、日本史の成績が思ったほどよくなくて…」と相談に行くと、予備校のフェローとかアドバイザーとかチューターとか、要するにアルバイトの諸君に、「ああ、カワイのモシのニチシね…」と言い直されたりする。
同様のことは、今井君がしょっちゅう宿泊している「ANAクラウンプラザホテル」にも当てはまる。空港からタクシーに乗り込んだクマどんが、丁寧な口調で「ANAクラウンプラザホテル、お願いします」と告げた瞬間、タクシーの運転手さんに「ああ、『ANAクラウン』ね」と短く訂正されるのである。
![路線図](https://stat.ameba.jp/user_images/20140920/02/imai-hiroshi/88/5e/j/o0400030013072091884.jpg?caw=800)
(ロッテルダム地下鉄路線図。簡素で、分かりやすい)
諸君、今井君は別に「ANAクラウン」で構わないんだ。メンドーな正式名称を「全部チャンと言わなきゃいけない」などと、ウルサイことを言っているのではない。でも、「ヨン」「ちゃん」や「テルダム」「ルダム」を無慈悲に切り捨て、「アナ雪」「花アン」「ANAクラウン」にしちゃうと、何だかホントに大切なものが、スパッと切り捨てられちゃう気がする。
だからこそ、あの夜の麻布「大寿司」で、今井君は中年のアムス君とロッテさんに言われのない大きな反感を居抱いた。省略され、酸っぱい寿司屋の空気の中に浮かんでいるたくさんの「テルダム君」「ルダムちゃん」のために、いつか目いっぱい働いてこなくちゃと、固く決心したのである。
あれから6年。すでにアムステルダム滞在は10日になり、テルダム君はもう十分に拾い上げた。今日は「金出る大工」に向かうためにロッテルダムを経由し、瀕死のルダムちゃんたちを思い切りたくさん救ってあげようと、朝から目いっぱい張り切っていたのである。
1E(Cd) Wand & Berliner:BRUCKNER/SYMPHONY No.8 2/2
2E(Cd) Wand & Berliner:BRUCKNER/SYMPHONY No.9
3E(Cd) Ricci:TCHAIKOVSKY/VIONLIN CONCERTO・PAGANINI/CAPRICES
4E(Cd) Maazel & Wiener:TCHAIKOVSKY/SUITE No.3 R.STRAUSS/TOD UND VERKLÄRUNG
5E(Cd) Dorati & Washington D.C.:TCHAIKOVSKY/SYMPHONY No.4
total m138 y1433 d14363
Mac君曰く、キンデルダイクとはまず、①「金出る大工」であり、さもなければ、②「近出る大工」だというのである。
①の「金出る大工」が「打ち出の小槌」でクギを打てば、ひと打ち打つごとに金銀財宝が湧き出てきそうなもんじゃないか。一寸法師だって、「大きくなあれ」「大きくなあれ」というお姫さまの掛け声とともにグングン膨張、とうとう姫と結ばれた。金出る大工、実によく儲かりそうな、おめでたい大工さんである。
②の「近出る大工」は完全に意味不明。今井君が怒りに身を任せてエイヤ&エイヤと変換を続けると、③「菌出る大工」などという言語道断なものまで登場する。何の菌が出てくるんだか知らないが、そんな不気味な大工さんにはあんまりお仕事は頼みたくない。
![タリス](https://stat.ameba.jp/user_images/20140920/02/imai-hiroshi/b7/a9/j/o0400030013072091282.jpg?caw=800)
(アムステルダム中央駅に到着したパリ行きの特急「タリス」。ロッテルダムまでこれを利用してもいい)
さてマジメな話に戻るが、キンデルダイクにはロッテルダム経由で行く。アムステルダム中央駅から急行電車で1時間ほど、ロッテルダムの駅に着くと、諸君、日本人ならおそらく誰でもビックリすると思うのだが、ここは日本に勝るとも劣らない、マコトに21世紀的な大都会である。
ロッテルダムには、思い入れがある。21世紀最初の10年の今井君は、六本木から西麻布のあたりをほっつき回って過ごしたのであるが、2008年夏、ある中年の男女と西麻布の寿司屋で運命的な出会いをした。
もちろん「運命的」と形容する時、その表現にはタップリ皮肉が含まれているので、文字通りに受け取ってもらっては困る。出会ったのは、六本木から西麻布への下り坂の途中。豚肉料理の店「とんとことん」のお隣の「大寿司」というお寿司屋さんであった。
世の中の動きは、「ゆく川の流れ」以上に速いので、鴨長明どん自身さえ、流れに浮かぶウタカタの行方をたどりきれないほどである。「大寿司」は今も残っているけれども、「とんとことん」はとっくの昔に閉店になっている。栄枯盛衰、盛者必衰。「時代の流れに喘ぐ」というのは、いろんな業界に共通の話なのである。
![ロッテルダム](https://stat.ameba.jp/user_images/20140920/02/imai-hiroshi/96/62/j/o0400030013072091514.jpg?caw=800)
(ロッテルダム風景。驚くほど現代的な街だった)
で、「大寿司」での出会いであるが、2人は50歳代半ばの中年の男女。いかにも世慣れた感じで、「海外勤務も飽きるほど経験した」「欧米なんか慣れっこだ」「え? ヨーロッパの旅なんかで緊張するヒトがいるんですか?」という雰囲気の、マコトにムカつく2人であった。
2人ともオランダ勤務が長いらしく、会話はアムステルダムとロッテルダムの比較論に終始した。仮に、中年男子をアムス君、中年女子をロッテさんと呼ぶことにしよう。
男子・アムス君はアムステルダム派。女子・ロッテさんはロッテルダム派。互いにアムステルダムのことを「アムス」、ロッテルダムを「ロッテ」と短縮形で呼び、「アムスとロッテのどっちが好きか」、それをアムス君とロッテさんの豊富な経験をモトに、ネバネバ&ネチネチ語る一夜にしたようであった。
アムス:ボクはアムスが好きだけどなあ。
ロッテ:えええーっ? どうしてえ?
アムス:だって、アムスのほうが楽じゃん。
ロッテ:ロッテだっていいわよぉ。アムスより楽かも。
アムス:ロッテのどこが楽なの?
ロッテ:アムスより気取ってないし。
アムス:ロッテのほうが気取ってるんじゃん?
ロッテ:そんなことないわよ。ロッテはざっくばらんよ。
アムス:アムスだってざっくばらんじゃん。
ロッテ:ええっ、ロッテなんか、ずっとスゴいわよぉ。
アムス:アムスだってスゴくスゴいじゃんー。
ロッテ:うそ… 大したことないじゃん…
ま、以上のような会話である。いやはや、もう6年以上昔のことだ。今井君の記憶にも相当な虫クイがあるかもしれないが、あの日の感想は6年前のこのブログにも詳しい。
![改札](https://stat.ameba.jp/user_images/20140920/02/imai-hiroshi/83/df/j/o0400030013072091744.jpg?caw=800)
(ロッテルダム地下鉄の改札風景。ICカードでタッチすればOK、日本の地下鉄に何の遜色もない)
「大寿司」のカウンターは、寿司職人2名に対してお客が15人ほど。注文したお寿司も滅多なことでは来なかったから、ヒマに任せてクマどんはアムス君vsロッテさんの会話に耳を傾けた。
しかし、どうしてこんなに短縮形が多いんだろう。何でもかんでも短縮してしまう世の中が、今井君はどうも好きになれない。テラスハウスが「テラハ」、ノーヒットノーランが「ノーノー」。現代人は、よほど忙しいに違いない。クレヨンしんちゃんも「クレしん」。クレヨンしんちゃんの「ヨン」と「ちゃん」を省略して、それでどれほどの得があるのかサッパリ分からない。
「アムス」に「ロッテ」とは、要するに語尾を省略しているだけのこと。アムステルダムからは「テルダム」が、ロッテルダムからは「ルダム」が、どちらも無慈悲に省略されて、たくさんの「テルダム君」「ルダムちゃん」が、哀れな姿で「大寿司」の澱んだ空中に浮かんだ。
![地下鉄](https://stat.ameba.jp/user_images/20140920/02/imai-hiroshi/82/47/j/o0400030013072091824.jpg?caw=800)
(ロッテルダム地下鉄。清潔さでも、東京メトロ以上である)
暢気なクマどんは、こういうのがイヤ。「ヨン」「ちゃん」「テルダム」「ルダム」、そういう語尾だって懸命に仕事をしているのであって、無慈悲に切り捨てられていいはずはない。しかし、世の中のヒトはそんなことに頓着しないようである。
「この間の河合塾の模擬試験ですが、日本史の成績が思ったほどよくなくて…」と相談に行くと、予備校のフェローとかアドバイザーとかチューターとか、要するにアルバイトの諸君に、「ああ、カワイのモシのニチシね…」と言い直されたりする。
同様のことは、今井君がしょっちゅう宿泊している「ANAクラウンプラザホテル」にも当てはまる。空港からタクシーに乗り込んだクマどんが、丁寧な口調で「ANAクラウンプラザホテル、お願いします」と告げた瞬間、タクシーの運転手さんに「ああ、『ANAクラウン』ね」と短く訂正されるのである。
![路線図](https://stat.ameba.jp/user_images/20140920/02/imai-hiroshi/88/5e/j/o0400030013072091884.jpg?caw=800)
(ロッテルダム地下鉄路線図。簡素で、分かりやすい)
諸君、今井君は別に「ANAクラウン」で構わないんだ。メンドーな正式名称を「全部チャンと言わなきゃいけない」などと、ウルサイことを言っているのではない。でも、「ヨン」「ちゃん」や「テルダム」「ルダム」を無慈悲に切り捨て、「アナ雪」「花アン」「ANAクラウン」にしちゃうと、何だかホントに大切なものが、スパッと切り捨てられちゃう気がする。
だからこそ、あの夜の麻布「大寿司」で、今井君は中年のアムス君とロッテさんに言われのない大きな反感を居抱いた。省略され、酸っぱい寿司屋の空気の中に浮かんでいるたくさんの「テルダム君」「ルダムちゃん」のために、いつか目いっぱい働いてこなくちゃと、固く決心したのである。
あれから6年。すでにアムステルダム滞在は10日になり、テルダム君はもう十分に拾い上げた。今日は「金出る大工」に向かうためにロッテルダムを経由し、瀕死のルダムちゃんたちを思い切りたくさん救ってあげようと、朝から目いっぱい張り切っていたのである。
1E(Cd) Wand & Berliner:BRUCKNER/SYMPHONY No.8 2/2
2E(Cd) Wand & Berliner:BRUCKNER/SYMPHONY No.9
3E(Cd) Ricci:TCHAIKOVSKY/VIONLIN CONCERTO・PAGANINI/CAPRICES
4E(Cd) Maazel & Wiener:TCHAIKOVSKY/SUITE No.3 R.STRAUSS/TOD UND VERKLÄRUNG
5E(Cd) Dorati & Washington D.C.:TCHAIKOVSKY/SYMPHONY No.4
total m138 y1433 d14363