Sat 140823 匂いと記憶 ココアの香り ADMと安藤勝(おらんだサトン事件帖34) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 140823 匂いと記憶 ココアの香り ADMと安藤勝(おらんだサトン事件帖34)

 フランス19世紀の作家モーパッサンは、代表作「死の如く強し」の中で嗅覚と想像力の密接な関連について語り、匂いと記憶の結びつきがどれほど強烈かを力説している。通りすがりの女性から漂ってきた香水の香りのせいで、白髪の増えた中年画家にむかしむかしの熱い愛情が蘇ったりする。
 今井クマ蔵は特に匂いに敏感なケモノの一種であるから、モーパッサン先生の意見に大賛成である。マルセイユからヒコーキでパリに向かったのはホンの4日前のことであるが、いやはや、余りに強烈な香水のニオイに、鼻の奥が焼けるような思いをした。
 モデル並みの長身に強烈なメイク。航空会社の制服をカッコよく着込んだ女性であったが、隣に座ったクマどんの嗅覚が痺れて崩壊しそうになるほどに、香水をジャブジャブ浴びてこられたんじゃ困るのである。
 エールフランス労組が15日から大ストライキに入り、フランス中の空港が大混乱になっている。いやはや、危なかった。明日から「秋冬シリーズ」が開始なのに、ホンの3~4日スケジュールがズレていたら、日本に帰って来られなくなるところだった。
 あの香水ジャブジャブお姉さまも、ストライキに参加していらっしゃるのかね。これからのクマどんは、香水のカホリを感じればストライキを思い出し、ストライキと聞けば鼻の奥が焼けそうになるに違いない。そのぐらい、匂いと記憶の関係は強烈なものである。
ADM
(風車の勇姿と、ADMのココア工場)

 今井君が生まれ育った秋田市土崎港は、もともと石油と鉄道の町だから、地面にも建物にも化石燃料の匂いが沁みこんでいた。昔の鉄道は蒸気機関車なので、空気中には石炭の煤がいつも漂っていたのである。
 そこへ、大きな製紙工場が進出してきた。小学校5年の時である。すると諸君、いきなり町の匂いが変化した。石炭の煤の匂いもディーゼルエンジンの匂いも消えて、製紙工場の煙突から吐き出されるケムリの悪臭に支配されるようになった。
 マコトに不思議なもので、あのニオイの変化を境に、①化石燃料時代と、②製紙工場時代の2つに、子供時代の記憶が2分されてしまったのである。もちろん住民から多くの苦情が出て、工場側も遅ればせながら悪臭対策をとったのであるが、今井君の記憶があのニオイに支配されてしまったことについては、さすがにどうしようもない。
風車
(ザーン川遊覧船から風車群を望む)

 おでんのダシのニオイがコンビニ店内を支配するようになったのは、いつごろからだろうか。どうして年がら年中おでんなのか、そんなにおでんばっかり優遇して何の得になるのか、今井君はフシギでならない。
 このままコンビニが増えつづければ、日本全体がおでん臭くなっちゃうんじゃないか、それが心配だ。温かいダシの匂いは大好きなものの1つだが、空気に染みつくほどになっては困る。
 4月24日のザーンセスカンスは、町中にココアの匂いが充満していた。風車の町、ザーン川の豊かな水、子育てに夢中の水鳥たち、こんなのどかな田舎町に、「何でココアなんだ?」とフシギになるが、この町の主な収入源は観光ではなく、ココアなのであった。
 こんなにココアの匂いが充満していたんじゃ、ここに住むヒトビトはたいへんだ。朝もココア、昼もココア、夜もココアじゃ、夢にもココアが出てきて、そのうち歯が痛くなったりしかねない。どんなココア好きだってウンザリなんじゃないか。
 今井君のアタマの中で、風車とココアが強烈に結びつき、風車と聞けばココアを思い出し、ココアを飲めば風車がクルクル回りだす、そういう事態になりかねない。春ののどかなザーン河を遊覧船でさかのぼってみたが、おお、どこまで行ってもココアのニオイが追いかけてくる。
ステーキ
(今日もまたVACAの巨大ステーキに挑戦)

 ココアを作っているのは、ADMの工場である。諸君、ADMって知ってるかね? 今井君はあまり物知りではないから、「何なんだ、ADMって。安達紋太郎の略称か?」と思ったものである。もちろん「安達紋太郎」という名前の具体的人物を知っているわけじゃないが、ADMと言ったら、ADachi Montaroぐらいしか思いつかないじゃないか。
 いや、「安藤勝」でもいいね。さすがに安達紋太郎は多くないかもしれないが、安藤勝(AnDou Masaru)なら、諸君のクラスなり会社なりにも1人か2人は見つかるADMに違いない。
 今井君が中2のころ、同級生に安藤勝が1人存在した。出席簿順に、①安藤勝、②今井宏、③宇佐美晃、④小野寺晃彦、そこまでは記憶している。中学校には各学年12クラスあったが、まとまりの悪さで先生方の評判の悪かった2年4組である。
 中でも2年4組を嫌っていたのが、社会科のM淵先生。教員労働組合色が強いオカタで、「なぜ2年4組がダメなのか」☞「リーダーがダメから」と、授業中に平気で言い放った。その「ダメなリーダー」というのが、要するに今井君を名指ししているのであって、先生と今井君の対立は余りにも鮮明であった。
 しかも諸君、今井君は社会とか英語とか国語は意地でも満点をとりつづける。その「常に満点」がM淵先生のイヤミをさらに増幅させ、「リーダーのクセに満点ばかりとって、今井は自分さえよければいいのか?」の類いのことをおっしゃった。
断面
(今日もVACAでオカワリ。切り口が美しい)

 そのM淵先生を激怒させたのがADM=安藤勝である。社会の授業中、遠慮一切ナシの大アクビをしてみせたのだ。よほど授業がつまらなかったか、よほどM淵先生が嫌いだったか、とにかくアゴが外れるほどの大アクビだったらしい。
 先生はもちろん激怒。黒板の前にADMを呼んで、「アクビなんか出来ないようにしてやる!!」と叫ぶなり、黒板拭きで2回、激しく顔面を殴打。今ならマスコミが大騒ぎするはずの許しがたいウルトラ体罰であるが、ま、今から700年前の中世の出来事だ。こういうのも大目に見られていたのかもしれない。
 その事件を境に、今井君とADMは一時ものすごく仲良くなって、学校からの帰り道も一緒、中2特有の様々な悩みも熱く語り合った。その中に諸君、「ガールフレンドはいくらでもできるが、オレにはラバーがいないんだ♡」というADM発言があった。いやはや、激しいお言葉でござるよ。
 今思えば、ADMはジャニーズなみのイケメン。剣道部のホープで、中2ですでに県大会で優秀な成績を収めている。勉強もまあまあというか「クラスで3番」みたいな感じ。「ガールフレンドならすぐにできる」ぐらいの発言は当然のように思えた。
 問題は、「ラバーがいないんだ♡」である。ラバーとはおそらくLoverであって、Loveの対象のことを言っているらしいのだが、中2段階の今井君は、この類いの話題にマジメに付き合うフトコロの深さがまだない。ラバーと聞いただけで悲鳴を上げそうになり、懸命に走って逃げて帰った。
赤ワイン
(アルゼンチンステーキには、アルゼンチンワインがピッタリだ)

 あれ以来、「安藤」という名字を耳にしただけで「Loverがいないんだ♡」を思い出し、「そう言えばあの時も製紙工場の悪臭が漂っていたな」と、あの雨の日のどんより湿ったニオイを思い出す。中2のLove ☞ 製紙工場の悪臭、そういう連想ないし図式ができてしまったわけである。秋の中間テストの答案が返された日で、またまた社会は満点。M淵先生はますますご機嫌ナナメであった。
 いやはや、ザーンセスカンスの風車群を眺めながら、今井君のアタマの中を支配していたのは、風車をめぐる詩でも物語でもない。以上のような思いだったである。諸君、「くだらん」「愚劣だ」「マコトにくだらん」と吐き捨ててくれてかまわない。
 なおADMとは、世界5大穀物メジャーの1つ、Archer Daniels Midlandの略称。「5大穀物メジャー」とは他にCargill・Bunge・Louis Dreyfus・Glencore Xstrataのことを言う。どうだい、今井だってタマには、役に立つ情報もチャンと書くじゃないか。

1E(Cd) Rattle & Bournmouth:MAHLER/SYMPHONY No.10
2E(Cd) Goldberg & Lupu:SCHUBERT/MUSIC FOR VIOLIN & PIANO 1/2
3E(Cd) Goldberg & Lupu:SCHUBERT/MUSIC FOR VIOLIN & PIANO 2/2
4E(Cd) Wand & Berliner:SCHUBERT/SYMPHONY No.8 & No.9 1/2
5E(Cd) Wand & Berliner:SCHUBERT/SYMPHONY No.8 & No.9 2/2
total m123 y1418 d14348