Thu 140807 グロニンゲン鉄道駅 自転車洪水が心配 (おらんだサトン事件帖19) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 140807 グロニンゲン鉄道駅 自転車洪水が心配 (おらんだサトン事件帖19)

 では、そうやって苦労の末に到着したグロニンゲンは、いったいどんな町だったかであるが(スミマセン、昨日の続きです)、「意外なほど活気に満ちている」というのが正直な印象であった。
 アムステルダムから北に向かって電車が黙々と走りつづけるにつれ、車窓の風景はどんどん寂しくなっていった。乗換駅のアーメルスフォールトまでは、そこいら中にウシやヒツジが群れを作り、たくさんの馬が立ち尽くしたまま電車を見送っていて、「酪農の国に来たんだな」が実感である。
 しかし諸君、アーメルスフォールトで電車を乗り換えたあとは、「寂寥」というか「荒涼」というか、ウシもヒツジもいない荒野に似た風景に変わっていった。吹く風も、何となく硬質で冷たい感じ。「見渡せばウシもヒツジもなかりけり 北の荒れ野の春の夕暮れ」なのであった。
 ただし、時刻はまだお昼を少し過ぎたばかりであって、「夕暮れ」というのは事実と異なる。ならどうして「夕暮れ」などと言うと言えば、荒涼感が夕暮れを思わせたからで、そのぐらいは定家どんも許してくれるだろう。
 こうなると、流れとしては①都会から田園へ、②田園から寂寥へ、③寂寥から荒涼へと進む。物語を組み立てるなら、ついにたどり着いた町はすっかり荒廃して住む人の気配さえマバラであり、旅人に対しても猜疑心が丸出しという設定にしたくなるだろう。
「おめえ、こんな何にもねえ町に、何の下心があってノコノコやって来ただ?」
「怪しいヤツだ。何にも知らねえ田舎もんをダマして、マンマとカネでもせしめようって魂胆じゃねえかい?」
疑り深いオジーチャンが、暗い窓の向こうから厳しい表情で声をかけ、問いつめる。昔の時代劇なんかでよくあるシーンであった。
グロニンゲン駅
(19世紀末の建築。グロニンゲン駅の豪華さに感激する)

 実際のグロニンゲンは、グロニンゲン州の州都。オランダの北東の端にあってその向こうはドイツ、人口は約20万を数える。日本の県庁所在地でも人口約20万というのはいくつもあって、活気と伝統に満ちた町であることが多い。
 グロニンゲンの場合、まずビックリするのは鉄道駅の豪華さである。19世紀末に建てられた駅舎は、首都アムステルダムの駅舎にヒケをとらないし、構内待合室や天井を飾るタイル絵はマコトに壮麗である。
 こんな立派な駅になると、例えスタバであっても、ただのスタバでは済まされない。帰りの電車を待ちながら、ほとんど利用したことのないスタバにも入店してみたのだが、その重々しい店内があまりに楽しかったので、ここでオミヤゲを買っていくことにした。
 下の写真で示す通り、「Groningen」という文字の入った巨大なマグカップである。グロニンゲンの象徴マルティーニ教会がデザインされている。この教会のテッペンに立つのが「風見鶏」ではなく「風見馬」ま、悪くない。
 よく見てみると、しっかりMADE IN CHINAの文字がある。今もなお中国は世界の工場であり続けているのである。そろそろ世界の工場であることに疲労困憊の様子も見え隠れするが、オランダ北東の端までやってきて、中国製のマグカップを10ユーロも出して買って帰るとなると、やはり深い感慨を禁じ得ない。
マグカップ
(駅構内の豪華スタバで購入のマグカップ)

 さて、どういうわけか先にオミヤゲの話を書いてしまったが、今井君はチャンとグロニンゲン観光もしたのである。一昨日のデルフト、昨日のアルクマールと同じように、グロニンゲン旧市街もまた運河に囲まれた可愛い町。
 鉄道駅は運河の外にあり、旧市街には賑やかな橋をわたって入る。市街の中心グローテ・マルクトには日曜の市がたち、たいへんな賑わいである。真っ直ぐ歩いていくこともままならない。
 「真っ直ぐ歩くことも困難」という理由には、日曜市の賑わいの他に「自転車洪水」がある。諸君、オランダは世界に冠たる自転車大国であって、いつどこに行っても自転車・自転車・また自転車の嵐である。歩行者よりも自転車が遥かに多いから、暢気にブラブラしているとすぐに自転車に邪魔にされる。
 かなり大きな道路でも、クルマが2車線、自転車も2車線。市街地中心部となると、クルマの乗り入れが禁止されているところもあるから、自転車はますます我がもの顔であって、オランダ滞在4日目ともなれば、そろそろ自転車に対する苛立ちが募ってくる。
自転車1
(町中が自転車大洪水。この山をどう撤去するか、それが問題だ)

 何でこんなに自転車だらけなんだ? グロニンゲンなんか、人口20万に対して自転車は30万台だとさ。「駐輪場はすべて無料」であるらしいのだが、無料だからといってみんなが駐輪場を利用するわけではない。
 「メンドくせ!!」という思いが多数派を占めるようになれば、路上だろうが、お店の前だろうが、ヒトんちの前だろうが、構わずどんどん自転車を置いていく行動が支配的になる。たちまちそこいら中が自転車の山になって、オランダ中で街のあちこちが自転車山のせいでマヒしてしまう。
 グロニンゲン大学は、創立1614年。江戸時代初期から続く北の名門で、日本なら北海道大学にあたる。その本部前も、やっぱり自転車の山になっている。人々が颯爽と自転車で快走するサマは確かに素晴らしいが、だからと言ってこのアリサマは行き過ぎなんじゃないか。
 ついでに、ごく稀ではあるが、歩行者に向かって罵声を上げるようなヤカラも出現する。これはまさに言語道断であって、罵声の対象になった人のその日一日が、罵声1つや舌打ちの響き1つで台無しになってしまうことを知るべきである。
自転車2
(グロニンゲン大学本部前。自転車洪水が押し寄せる)

 オランダ人の乗っている自転車は、また例外なくたいへんゴツいヤツである。日本で自転車通勤&通学ブームなんかが起こると、8万円も10万円もする高級自転車で、「まず形から入る」人が多いが、オランダは全くの別世界。ゴツゴツにゴツゴツした見るからに安いオジサン自転車で、女子大生もOLさんもオバサマがたも、そこいら中をビュンビュン飛ばしていく。
 かく言う今井君も、高校3年間は颯爽と自転車通学していたものだ。どんなに颯爽としていても、冬は雪混じりの向かい風に向かい、夏は太陽に焼かれながら田んぼの真ん中の田舎道を、片道1時間近くかけて自転車をこいでいけば、あっという間に疲労困憊だ。
 毎日毎日通学だけで疲労困憊しているわけにはいかないから、若き今井君は「5段変速」という当時最新流行の自転車を購入。少しでも「颯爽」の時間帯を長くして、通学の負担を和らげようと考えた。
 しかし諸君、オランダの人々はそんなヤワなことは考えない。5段変速も何も、変速用のギアなんかついている様子は露ほどもない。自転車全体が極めて単純。「これ以上ゴツいものは作れません」というぐらいゴツいヤツが遠慮会釈なしに走り回り、ところかまわず大きな自転車山が出現すれば、山の撤去もそのゴツさゆえに困難の度を増していく。
駅舎
(豪華な駅のタイル画と天井画にホッとする)

 滞在4日目のクマどんは「オランダの国土全体が自転車山に占拠されないか」、それを真剣に心配しながらグロニンゲンを後にした。もちろん「プリンセンホフの庭園」も美しかったし、庭園脇で飲んだビールも旨かった。しかし街のあちこちに増殖している様子の自転車山が、グロニンゲンで特に心配になった。
 帰りは、ドイツ鉄道(DBのICに乗って、乗り換えなしでアムステルダムに到着した。列車の出発駅は、何とベルリンである。ベルリンから旧東ドイツ地域をひたすら西に走り、やがてライン川を渡ってオランダに入ってきたわけである。
 DB独特の白い車体に赤いラインが懐かしいが、さすがにベルリンからの長旅で電車君も疲れてしまった様子。車内は新聞や紙くずがたくさん散乱し、ほうほうの態でアムステルダムにたどり着いたという風情であった。

1E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES 1/6
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