Wed 140716 女神の囁き vs 瓦そば 巌流島を目指す コロジー&ムサジー、巌流島の決闘 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 140716 女神の囁き vs 瓦そば 巌流島を目指す コロジー&ムサジー、巌流島の決闘

 8月7日午後、下関でFGUを満喫して(スミマセン、昨日の続きです)ふと時計を見ると、まだ時間の余裕はタップリある。筑前前原でのお仕事は夜8時から、ホテルロビーでのスタッフとの待ち合わせは5時半。ところが諸君、今井君の立派な腕時計の針は、まだ2時を過ぎたばかりであった。
 どのぐらい立派な時計かというに、これはIWCの逸品だ。
「IWCってなあに?」
「それって、国際捕鯨委員会じゃありませんか?」
と無邪気な声が聞こえてきそうだが、諸君、どこまで無邪気なんじゃ? 国際捕鯨委員会は、International Whaling Commissionの略。時計のIWCは全く別物でござる。
 トム・クルーズの映画「バニラ・スカイ」をご存知か? キャメロン・ディアスとペネロペ・クルスが共演。今から15年ほど前の作品で、1997年のスペイン映画「オープン・ユア・アイズ」のリメイクである。若干ストーリーが複雑かもしれないが、若い諸君も是非ご覧あれ。
 無人のNYタイムズ・スクエアを、トム・クルーズどんが疾走する冒頭シーンで有名。朝のベッドで目覚めた彼が、まず覗き込むのがIWCの腕時計。そこから誰一人いないタイムズ・スクエアを駆け回るまで、ほぼ一気呵成に進むのだが、15年前の若かりし今井君にはその「IWC」の文字がたいへん印象的に映った。
 IWCを手に入れたのは、今から5年ほど前。予備校の世界には、驚天動地の高価な時計をキラキラさせているカッコいい先生方は少なくないが、今井君自慢のIWCは、いやはや、何のことはない、マコトに控えめなお値段である。
巌流島1
(巌流島、佐々木小次郎と宮本武蔵の像。小次郎って、どうしてポニーテールなんですかね?)

 2014年8月7日午後、下関でFGU三昧の今井クルーズの耳に「オープン・ユア・アイズ!!」の囁きが聞こえた。ペネロペの声だったか、キャメロンの声だったか、野生のクマどんにはちっとも分からない。
 しかし少なくとも、その声はクマどんを静かに叱りつける響きがあった。
「このまま何もしないで福岡に帰っちゃうつもりかい?」
「それじゃFGUを貪っただけ。単なるクマと同じじゃないか?」
「あなたは欧米をノシ歩いても、美術館や名所旧跡に興味を示さない。世界中の居酒屋を制覇するのもいいけれど、少しは知性を磨いたらいかがですか?」
「何てダラしない。目を開きなさい。喝!!」
ま、そういう女神どんの囁きでござるね。
 ところが我が友Mac君は、せっかくの「女神どん」を「女神丼」と変換して、せっかく知性のほうにヨチヨチ歩みだしたクマどんを、再びFGU食堂のほうに誘惑する。夏の健康には、知性より食い気。確かにこの誘惑には真実がこもっている。
 うーん、確かに、下関での昼食は「FGUの刺身」「FGUの皮」「FGUの唐揚げ」だけである。〆に熱い丼物をワシワシやるのも悪くないし、下関には「瓦そば」という名物もあるらしい。事実、今井君のすぐ近くのテーブルでは家族連れのオジサマがその「瓦そば」をすすっている。
 知性より食い気を優先して、「オープン・ユア・アイズ」という女神の囁きを無視してしまう選択肢も、まだ濃厚に残っていたわけだ。「もしあの時『瓦そば』がもう少しだけ旨そうだったら、私の人生は違っていただろう」。おお、仮定法過去完了の例文そのものである。
ふぐ
(下関、FGUの像。対岸は九州・門司である)

 しかし少なくともあの店の「瓦そば」には、今井君を女神から引き離しておくダラしない魅力が不足していた。だって、ちっとも旨そうに見えないのだ。瓦そば、1030円。しかし隣のオジサマさまはたった3口か4口で食べ終わり、いかにも不満そうに口を歪めている。
 もちろんオジサマの不満げな表情には、他にも理由があったのかもしれない。例えば
① お酒が飲めない。家族をクルマに乗っけてきたんじゃ、せっかく夏休みの休日ランチなのに、ランチビールさえ言語道断である。ちぇっ、つまらない。
② 家族がいうことを聞かない。息子も娘も昔は可愛かったのに、小学校高学年の今では何かにつけてオヤジに盾をつく。ちぇっ、つまらない。
③ 奥方が増長している。「みんなダンナが悪い」「ダンナのスケジューリングが悪い」「そのせいでランチもこんな店になっちゃった」「ダメな人」。悪口雑言のかぎりであるが、よく考えてみるとまさにその通り。ちぇっ、つまらない。
 こうして今井君の頭脳は、灰色の脳細胞が加熱してケムリをあげるほどである。ダンナのいろいろな不幸を思って地球を7回り半する勢い。名物「瓦そば」に不満なだけで、まさかあんな歯を剥いて地球に噛みつきそうなシカメツラになることはないだろう。
 しかし諸君、それでも責任の一端は「瓦そば」が担って然るべきだ。そしてそれを感じ取った時、「オープン・ユア・アイズ」というアテナ女神の囁きは、いっそう大きな魅惑を帯びてクマどんを惹きつけた。丼物、瓦そば、ダラしない食欲にいつまでもデレデレ付きあってちゃダメだ。クマどん、今すぐ立ち上がりたまえ。
渡船乗り場


 スックと立ち上がった今井君は、IWCの腕時計をキラキラきらめかせながら、颯爽と船着き場に向かった。目指すは「巌流島」。巌流島クルーズ船乗り場には、他にも7~8人の知的なヒトビトが長蛇の列を作り、お船の到着を待ち受けていた。
 台風の影響か、狭い海峡は波が高い。30人乗りの小舟は大きく揺れながら、400年前の有名な決闘の島を目指した。巌流島まで10分ほど。「巌流島」というイカめしい名前は着いているが、下関からでも門司からでも10分。宮本武蔵どんの手漕ぎの舟でも、そんなに苦労することはなさそうだ。
 島に着くと、さっそく紙芝居のオジサンが待ち受けている。「1人400円よぉ」「歴史を知ることは重要よぉ」「ここが島で一番涼しい場所よぉ」と、マコトに巧みに観光客を誘い込もうとする。それでも無視すると「まあいいから見ていきなさい!!」と、笑顔で激しく命令する。
 この命令を無視したのは、いかにも「巌流島のベテラン」という雰囲気の地元のオジサマ。まるでこの無人島を知り尽くした野人のように、ヒョイヒョイ小岩を跳びこえて決闘現場に向かう。
 それに続くのは、たったいま女神の囁きでeyesがopenした今井君。8月の焼けるような陽を浴び、しかし爽快な海の風に吹かれながら、小次郎が武蔵に討ち果たされた史跡を目指した。
巌流島2
(巌流島にて)

 昔から苦手な歴史上の人物がいて、源頼朝、徳川家康、豊臣秀吉、そしてこの宮本武蔵である。うーん、武芸者としてファンも多いが、佐々木小次郎とのこの島での一件については、いろいろ卑怯なウワサも少なくないのだ。
 「ツバメ返し」の英雄・佐々木小次郎と「雌雄を決すべし」と固く約束した宮本武蔵は、約束の時間より遅れてこの島に到着。待ちかねた小次郎がイライラした様子で「遅いぞ、武蔵!!」と叫び、刃渡り1メートルもある日本刀を抜いて、鞘を海に投げ捨てる。通称「物干竿」という長尺の日本刀だ。
 一方の武蔵は、日本刀の重さと脆い構造を嫌って、木刀を常用する。この日も舟の櫂を木刀として使用し、その第一声が「小次郎、敗れたり!!」。つまり、鞘を捨てたりするのは、勝って帰る希望をもたない証拠。勝って帰るつもりなら鞘は捨てないはずだ。
 「そもそも武芸者ともあろう者が、たかが相手の遅刻で苛立つとは情けない。予備校講師が生徒の居眠りや私語に苛立つのと同じこと」。そう言ったか言わないか知らないが、自分の遅刻を棚に上げてイヤなことを言うイヤミなヤツである。
 しかし、イヤミなヤツのイヤミが功を奏するのは、残念ながらこの世の中の常。小次郎は木刀の一撃に倒れ、武蔵は飄々と島を去る。なんでそんなに飄々としているのかと言えば、島には先に子分4名が潜んでいて、この子分たちが瀕死の小次郎を殺戮する予定だったらしい。ウワサとはいえ、1vs1の決闘を誓っておきながら、何だか卑怯な影がチラつくでござるよ。
 それでもまだ仕返しがコワかったのか、(あくまでウワサであるが)武蔵どんは近くの有力者の屋敷にしばらく逗留してほとぼりを冷ます。小次郎君だって、有名な武芸者だ。弟子たちの間では報復の筋書きもいろいろ語られただろう。
小舟
(夏草やツワモノどもが夢のあと。武蔵の舟の模型だとさ)

 というわけで、今井君はこの島を敬遠していたのだが、小次郎君の別名が「岸竜」または「岩流」。もともと「舟島」だったのが「巌流島」に名称変更したのは、小次郎の別名をとったわけである。
 ハッキリはしないが、この時の宮本武蔵は20歳代。佐々木小次郎は、銅像では若々しいけれども、実年齢60歳に近かったらしい。70歳代説さえある。なんだ、銅像ではポニーテールなんかにして若ぶってるけど、もう相当なオジーチャンじゃないか。コジローというより、コロジーと言ったほうがいい。
 もしも佐々木コロジーと宮本ムサジーだったら、こんな血なまぐさい事件は起こらなかったはず。おお、またまた仮定法過去完了でござるね。
「ムサジーどん、遅いじゃござらぬか。遅刻厳禁って言ったはずじゃよ」
「なんじゃコロジーどん。たかが遅刻ぐらいで、そんなにイライラしなさんな」
「ムサジーどん、舟なんか漕いで、腹も減ったじゃろ。オムスビ、一緒に食おうじゃないか」
「そうじゃのう、コロジーどん。鞘なんか海に捨てるのは、環境を汚染するんじゃよ」
「そうかそうか、ワシとしたことが、アホーじゃったのぉ。さ、オムスビじゃオムスビじゃ。腹が減ってはイクサは出来んからのぉ」
「おお、ありがたい。それにしても暑い日じゃのお。ついでに、面倒なイクサもヤメにしようじゃないか」
「その通りじゃのぉ、がははははは♨」
「がははははは♡」
「がははははは♡」
 諸君、これでいいのだ。ケンカしそうになったら、まずメシだ。FGUでも瓦そばでも何でもOKだ。間違っても、木刀だの日本刀だのを手にしないこと。A4版4枚を書ききった今井ヒロジーの、本日の見事なマトメは以上の如し。めでたし&めでたし、であるね。

1E(Cd) Santana:EVOLUTION
2E(Cd) Sheila E. & The E-Train:HEAVEN
3E(Cd) Tower of Power:TOWER OF TOWER
4E(Rc) Solti & Chicago:MAHLER/SYMPOHONY No.5
5E(Rc) Solti & Chicago:MAHLER/SYMPOHONY No.5
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