Sat 140628 豪風が大活躍 ワチャワチャでもいい、優勝を夢見る 河口湖の日々が始まった | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 140628 豪風が大活躍 ワチャワチャでもいい、優勝を夢見る 河口湖の日々が始まった

 コドモの頃から夕方になると「お相撲」というものを見せられて、大鵬に柏戸、北の富士に玉の海、栃の海に佐田の山、そういう名勝負もタップリ目撃してきた。そうやって数百年が過ぎれば、今井君がすっかりお相撲通であるのも仕方ないかもしれない。

 一度だけお相撲に興味を失ったのは、「若貴時代」である。「正義の味方」役のヒトビトばかりあんなにチヤホヤされ、彼らと敵対する力士たちが無条件のブーイングを浴びるようじゃ、見ていてもちっとも爽快感がなかった。

 ついでに言えば、朝青龍がマスメディアの徹底したバッシングないしイジメを受けていた時代にも、しばらくテレビ中継から遠ざかっていた。一方的なバッシングが大嫌いなことでは、今井君は人後に落ちないクマである。

 いやはや、当時は全くひどかった。こんなバッシングのアリサマを子供たちに見せていいものか、クマどんは大いに迷ったものである。朝青龍が画面に映れば、話題は必然的に「品格があるかどうか」。軽薄なタレントたちが口を皮肉に歪めては、「品格がありませんねえ」と薄ら笑いを浮かべたものである。

 するとそういう薄ら笑いは一般の視聴者にも伝染していく。街でインタビューを受けた主婦やサラリーマンやタクシードライバーも「品格が感じられない」の一点張りになった。「お相撲なんか見たこともありません」というジョシコーセーでさえ「品格、ねーんじゃね?」と口走りそうな勢いだった。
河口湖駅
(河口湖駅に到着)

 あれから長い年月が経過して、今井君も久しぶりにお相撲に興味が湧くようになってきた。しかし諸君、今井君ほど観戦歴が長くなると、横綱&大関とか、遠藤や大砂嵐みたいな「注目の若手」とか、そういう誰でも喝采を送るタイプの力士には、あまり関心がないのである。

 以前にも一度書いたことがあるが、クマどんがいま注目している力士は、何と言っても豪風と宝富士の2人である。豪風と書いて「たけかぜ」と読むが、一般の注目度が低い証拠に、Mac君の変換も「炊け風」「他から富士」というのだから恐れ入る。

 今日でも明日でもいいから、ぜひNHKの大相撲中継を録画して、豪風と宝富士の2人に注目してくれたまえ。特に豪風のほうは、今日が横綱♡白鵬との対戦。ぜひとも諸君に「何でこんな力士に今井は注目してんの?」「おかしいんじゃね?」と首を傾げてほしいのだ。
初日
(合宿初日の富士山は、例年こんな雲の中だ)

 だって諸君、特に豪風であるが、「何の特徴もない」「別に取り柄を感じない」のだ。巨体どころか、上背もなく小柄、筋肉がムキムキ盛り上がっているわけでもない。押し相撲でも四つ相撲でもなく、「足腰が強靭」とか「左上手をとったら万全」みたいな、安定した取り口でもない。

 なのに、幕内上位にずっと安定して、ほぼ毎場所必ず横綱や大関との対戦を繰り返している。しかしこういう力士だから、横綱にも大関にも全く歯が立たない。金星や銀星がほぼゼロの力士なのに、どうやって上位に安定しているかと言えば、
「下位の相手には負けない」
「よくても8勝7敗、悪くても7勝8敗」
「そういう地味な成績を続けて、何とか位置を持ちこたえる」
という戦法である。

 ニュースになることもないが、大きなケガもない。三役になることもまずないが、「十両落ち」どころか幕内下位に落ちることすらない。いやはやそのシブトサ、まさに別世界だ。出世しすぎずに定年まで大過なく生き抜く。こういう人がいてこそ、社会は健全なのである。

 相撲内容が、また何とも言えない。立ち会い、まずモチャモチャッと暴れ、ワチャワチャッともがく。「ガーンとぶちかます」「ノド輪で攻め込む」とか「激しい突っ張り」「前マワシを引きつけて一気の押し」みたいな、キチンと説明のつく相撲ではない。「モチャモチャッと暴れ、ワチャワチャッともがく」としか説明しようがない、マコトにフシギな取り口である。
美富士園
(合宿宿舎は10年変わらず「美富士園」である)

 そしてそのモチャモチャやワチャワチャのあとは、決まって「はたき」がくる。お相撲の解説者で「はたき」みたいな引き技を高く評価する人は皆無であり、万が一横綱が引き技なんか見せようものなら、それは直ちに集中砲火の対象。「品格に欠ける」と最大限の低評価を受ける。

 しかし話が豪風の時には、解説者は特に何も言わない。むしろ負けたほうが批判され、実況アナが「何であんな引き技を食うんでしょうね」と首を傾げたかと思うと、解説者は「稽古が足りないからですよ」と舌打ち気味に吐き捨てる。

 こうしてワチャワチャからドタバタで勝利を収め、下位力士から勝利を重ねてギリギリで勝ち越しても、あまり褒めてくれる人はいない。シコ名は「豪風」であるが、取り口を見るかぎり「豪」でもなければ「風」でもない。今年で35歳、お相撲の世界では大ベテランだけれども、土俵入りの時の館内の拍手は、他力士に比べてビックリするほど少ない。
こなみ
(1軒はさんでお隣にお食事処「こなみ」がある)

 だからこそ諸君、注目してあげてくれたまえ。先場所あたりから何か目覚めるものがあったらしく、久しぶりに大関に勝った。負けた琴奨菊はそのまま負け越し、大関陥落の危機に陥った。それをバネに初日から8連勝した琴奨菊のド根性も素晴らしいが、とにかくあの勝利をキッカケに豪風に追い風が吹きはじめた。

 7月中旬に始まった名古屋場所では、豪風の勢いが止まらない。相変わらずのモチャモチャ&ワチャワチャであるが、他の力士の「稽古が足りない」ということなのか、はたき込みが次から次へと面白いように決まる。

 先場所の「銀星」が「久しぶりの銀星です!!」というビックリマークで迎えられたと思ったら、今場所はついに「豪風、人生初の金星」。横綱・日馬富士を一瞬のはたき込みから寄り切りで破ったのである。

 35歳での初金星は、大相撲の最年長記録である。しかも9日目が終わって7勝2敗。うひゃ、ワチャワチャ相撲にも、どうやら春がめぐってきた。それなのにインタビューには落ち着き払って返答し、ワチャワチャの片鱗すら見せない。

 今井君が夢見ているのは、「豪風優勝!!」の瞬間である。30年前、平幕・多賀竜が優勝したことがあった。25年前には琴富士の平幕優勝もあった。モチャモチャだろうがワチャワチャだろうが、地味に稽古を重ね続けてきた人に花が咲くのはマコトに素晴らしいことである。
鰻重
(合宿の始まりは「こなみ」の「うなぎ定食。毎年の定番である)

 そういうことを考えながら、7月21日の今井君はとうとう河口湖にやってきた。東進移籍以来、これが10年目の河口湖合宿。第1期が21日から25日、第2期が26日から30日。生徒は入れ替わるが、講師はそのまま居残って、1期と2期でほぼ同じことを繰り返すのである。

 それを10年続けて、こなした合宿は合計20回。宿舎も10年間変わらずに「ホテル美富士園」だから、すでにこのホテルに100日も宿泊したことになる。人生を80年として計算すると、80×365日=29200日。そのうちの100日だから、人生の0.3%をここで過ごした計算である。

 着いてすぐ、何と言っても「まず昼飯!!」である。河口湖は、東京への外国人観光客の多くがエクスカーションでやってくる有名観光地であって、旨いものも少なくない。もちろん「ほうとう」でもいいが、今井君が気に入っているのはウナギ。東京のウナギみたいな高級感はなくても、昼飯なら十分に満足のいく味だ。

 合宿でお世話になるホテルから徒歩で50歩あまり、昨年も同じ「こなみ」のウナギから合宿が始まった。こうしてヒトというものは、長く生きているうちに、いろんな定番の儀式が蓄積していくものなのである。

1E(Cd) Krause:BACH/DIE LAUTENWERKE・PRELUDES&FUGEN 1/2
2E(Cd) Krause:BACH/DIE LAUTENWERKE・PRELUDES&FUGEN 2/2
3E(Cd) Karajan & Berliner:BACH/MATTHÄUS-PASSION 1/3
6D(DMv) DANGEROUS LIAISONS
total m141 y1108 d14038