Tue 140617 猛暑の柳川を訪ねる うなぎ♡うなぎ 白秋の生家 ブリュージュの思ひ出 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 140617 猛暑の柳川を訪ねる うなぎ♡うなぎ 白秋の生家 ブリュージュの思ひ出

 7月11日、クマ蔵どんは羽田空港のスイートラウンジにいる。昨日は福岡空港から、台風8号の真上をビューンと東に飛んで東京に帰ってきた。今日は今日とて、台風一過の猛暑の中を、大阪に向かってビューンをやる。
 よほどヒコーキ好きでなければ、こんなに果敢に「東へピョン&西へピョン」と牛若丸をマネするのは難しいかもしれないが、お仕事とあればイヤもオウもないのであって、今日は夕暮れから近鉄奈良駅前で熱い今井節を展開する予定になっている。
 昨日の夜も、新百合ケ丘で熱演した。しかもその後は下北沢の居酒屋で真夜中まで酒を飲んだ。黒ウーロン茶割り5杯、ウコン茶割り3杯を2時間で飲み干したスバラシー一夜についてはまた改めて詳述するが、今朝目が醒めてみると驚くばかりの晴天に太陽がギンラギラ。しばらく出番がなかった夏の太陽♡アポロ君も、牛若クマ蔵並みに張り切っていらっしゃるようである。
 台風8号は、来襲前にも日本列島に猛暑を呼び、はるか北の海上に去ってからも再び猛暑をもたらしている。まだ台風の渦巻き君が沖縄に居座っていた日、九州地方は軒並み35℃の猛暑に覆われ、道行くオジサマたちの汗臭さといったら、「おお、さすがに燃え盛る九州男児でござるね」とタメイキが漏れるほどであった。
柳川駅
(真夏の福岡・柳川を訪れる)

 猛暑の中、牛若クマ蔵は「せっかく時間がポッカリ空いたんだから、柳川に行ってウナギを満喫してくるべえ」と決め、さっそく長いヨダレの糸を垂らした。「あれれ、この間は下関で夏のフグ、昨日だって博多の中洲でイカのお刺身、今度は柳川のウナギの話ですかぁ?」であって、自分でもビックリするぐらい意地汚い食欲を発揮している。
 だってしょうがないじゃないか。旨いものがそこいら中にウジャウジャしているなら、そのウジャウジャの脇を知らんぷりで通り過ぎる質素倹約ぶりを自慢しても始まらない。クマどんはマコトに素直な生き物であって、旨いものがそこにあれば、避けて通るようなヒネクレ者ではないのである。
 福岡から柳川には、福岡天神から西鉄電車の特急を利用する。西鉄電車はペパーミントグリーンのフシギな色合いで博多-大牟田間を疾走するが、その勇猛果敢ぶりは福岡人の誇りである。
 昭和の時代、西鉄ライオンズの活躍は血気盛んな九州人を沸かせた。「神様・ホトケサマ・稲尾さま」の大活躍は、さすがに今井君の誕生前のことであるが、ピッチャーとして「5連投☞4完投」、バッターとしてもサヨナラホームランを打って、劇的な西鉄逆転優勝を実現した。3連敗の後の4連勝。おお、ジミー・コナーズの野球版である。
西鉄
(西鉄電車。ペパーミントグリーンが印象的だ)

 その伝説を聞かされながら、幼い今井君は成長した。「西鉄=勇猛果敢」のイメージが、すっかり脳裏に定着。今回の台風8号でも、JRは早々に「運転見合わせ」を決め、九州新幹線なんか前日の午後の段階で「明日の熊本—鹿児島中央間は終日運転見合わせ」と発表していた。それに対して西鉄は「ほぼ平常運行」。相変わらずの勇猛果敢である。
 もちろん、JRサイドの「安全第一」「どこまでも慎重に」という方針も正しいのだ。しかし諸君、実際に台風がやってきてみたら、もう970hPaのヨレヨレに衰弱していた。こんなヨレヨレ台風を怖がってカンタンに運休にしちゃうなんて、ちょっと判断が早すぎたんじゃないか。
 そこへいくと西鉄の態度はマコトに悠然としていた。
「なあに、平常運行いたしますクサね」
「九州人の足は、この西鉄が確保してみせますクサよ」。
というわけである。
 「クサ」とは、福岡方言。もちろん今井君は福岡人ではないから「クサ」の挿入の仕方が間違っているかもしれないが、語尾のマコトに微妙なところに「クサ」「クサ」が頻繁に入るのを聞くと、その勇猛果敢な響きが心地よい。「おお、夏だ♡博多だ♡山笠だ!!」であって、フンドシ姿の博多男児のカタマリが汗まみれになって街を駆け抜ける。
 冷静になって考えてみると、一瞬オゾマシサに全身が震えるが、祭といふもの、特に夏祭といふものに冷静さは禁物。フンドシ男子が200人も300人もカタマリになって駆け抜け、そのカタマリから大量の汗が噴き出す様子だなんてのは、冷静に考え込めば誰だってクラクラしてしまう。
川下り
(猛暑の柳川。舟下りのお客も少なかった)

 そこで、難しい顔で考え込むのはヤメにして、とにかく天神の駅から勇猛果敢な大牟田行き西鉄特急に乗り込んでみる。一般の電車がフシギなペパーミントグリーンに統一されているのに対し、30分に1本の特急だけは赤とベージュの2トーンカラーである。
 柳川までは50分弱。猛暑の筑紫平野を一気に南下して、運河の街・柳川に到着してみると、猛暑は博多よりもう1ランクアップして、アチチ偏差値は60台から70台へ。この勢いなら東大でも何でもカンタンに合格できそうな勢いだ。
 で、いよいよウナギであるが、予約したのは柳川第一を誇る名店「本吉屋」。城跡のお堀のほとりにも支店があるが、やっぱり由緒正しい本店がいいじゃないか。フグ☞イカ☞ウナギ。お肉以外のグルメを総ナメにする、クマ蔵の九州総攻撃はこれでほぼ完成することになる。
白秋生家
(北原白秋の生家。古い商家である)

 しかし諸君、せっかく柳川に来て「ウナギだけ貪ってサッサと退散した」ということになれば、知性の化身♡今井クマ蔵の名折れになる。世界中を股にかけて旅を続けるクマの旺盛な知性に、柳川でもまた磨きをかけておきたい。
 柳川は、マコトに知性的な城下町である。名門・柳川伝習館高校は元の藩校。柳河藩主・立花鑑賢(はるかた)が19世紀初頭に設立した藩校の名がそのまま残った、福岡県南部きっての名門だ。現在の東京大学応援部キャプテンは、この高校の出身である。
 そしてもちろん、何と言っても北原白秋どんでござる。猛暑の柳川駅に降りて「すぐウナギ♡」みたいに食欲を優先させるようなダラしない行動は、知性のクマ蔵に似合わない。駅前のタクシーに乗り込むと早速、落ち着いた深い知性を漂わせながら「白秋の生家まで」と告げた。「行ってくれたまえ」と、つけくわえんばかりの勢いである。
 夏の柳川は観光シーズンのはずであるが、タクシーの車窓から眺める限り、観光客の姿は皆無。マコトに静かな、素晴らしい雰囲気である。かつて福永武彦が名作「廃市」をイメージした柳川は、北原白秋「おもひで」の中では「さながら水に浮いた灰色の棺である」と表現される。手っ取り早く映画でという人は、1983年の大林宣彦作品がある。
お城付近で
(柳川風景。城址付近の神社)

 今井君が冬のベルギーを2週間もほっつき歩いたのは、早いものでもう1年半も前のことである。「ムール貝の酒蒸しを60個ずつ14日間食べ続ける」というクダランことにも夢中になったが、さすが知性のクマ蔵は、柳川と北原白秋の世界を髣髴とさせるブリュージュの街が気に入り、2週間のうちに2回も「死都」と呼ばれる運河の街を訪れた。
 あの冬のブリュージュの様子は、このブログにも詳述した。Tue 130122「福永武彦『廃市』とローデンバック『死都ブリュージュ』(ベルギー冬物語19)」であるが、グーグルで「福永武彦 廃市」と検索すると、このブログが上から10番目ぐらいに登場する。とっても知的♡だから、ちょっと味読してみたまえ。
 ベルギーやブリュージュの思ひ出もあったからこそ、けふの今井君は柳川を訪ねたのだ。決してニョロニョロうなぎ君を貪るためだけに来たんじゃない。ほらその証拠に、北原白秋の生家にも入ってみた。
 もっとも、他人のオウチの中をノコノコ歩き回り、鵜の目鷹の目で見て回るというのは、あまり趣味のいい行動ではない。15分ほどお邪魔して、そそくさと退散を決め、クマ蔵はいよいよ颯爽と本吉屋を目指すことにした。
 しかも諸君、あくまで知的な今井君は、北原白秋も何度も味わったであろう老舗のウナギを食してみることによって、ますます白秋を身近に感じてみたかったのである。もちろんそんなのはウソに決まっているが、お城をめぐるお堀と運河を左に見ながら、白秋のイタズラっぽい笑顔を思い浮かべたことだけは間違いなくホントである。

1E(Cd) Stan Getz & Joao Gilberto:GETZ/GILBERTO
2E(Cd) Keith Jarrett & Charlie Haden:JASMINE
3E(Cd) Ann Burton:BLUE BURTON
4E(Cd) Harbie Hancock:MAIDEN VOYAGE
5E(Cd) Miles Davis:KIND OF BLUE
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