Thu 140320 ハクセンバウアー 雪の結晶と大雪の予感 ユーゴ靴(ヨーロッパ40日の旅7)
2月14日、無事ミュンヘンのHOTEL PLATZLに到着したはいいが、とにかく腹が減った。考えてみれば、今朝ベルリンのツォーロギッシャー・ガルテン駅で買ったハムとチーズのサンドイッチを、列車の中でモンゴモゴモゴやっただけだ。ポンポンがカラッポな感じなのもやむを得ない。
行き当たりばったりで外に出て、行き当たりばったりのお店に入る。サト助の旅のやりかたはそれなので、夕暮れの街をとにかく歩き回ってみることにした。初めての街で大切なのは、まずは足慣らしにその辺をブラついてみることである。
しかもそうしてホンの1ブロック歩いただけで、マコトにヨサゲな店が見つかってしまった。店先で小さな子豚さんを1匹、丸ごとアブって焼いている。いい色に焼けた子豚さんからはまだポタポタ脂が滴っている。いやはや何とも残酷で、しかし素晴らしい香りがした。
後で調べてみたら、店の名前はハクセンバウアー。多くのガイドブックに掲載されているミュンヘンの有名店であった。19時過ぎ、まだ時間が早かったのか、店内はほぼカラッポ。広い店内の奥のほうのテーブルに通されて、「あれれ、こりゃ表六玉だったかな?」とアタマを掻いた。
(ハクセンバウアーの子豚料理。2011年5月)
注文したのは、まずビア1杯とフランケンワインを1本。食べるのは、もちろんグリルした子豚さんのお肉。出来ればザワークラウトはナシにしてほしいが、いやいや、まだそんなワガママな注文のできる度胸はついていない。
あのころはブログなんかやっていなかったし、食事のたびに料理の写真を撮るような趣味もなかった。だから今日の写真の豚肉料理は、2011年5月にミュンヘンを再訪し、10日ほど滞在したときのもの。ハクセンバウアーが気に入ったサト助は、あの時も2回この店を訪れた。
フランケンワインの写真も2011年、ニンフェンベルグ城前のお店のもの。この特徴的なボトルは「ボックスボイテル」と呼ばれる。もともとは「山羊の陰嚢」という意味で、オスのヤギさんを後ろから見ると、アンヨの間にほぼ同じ形のモノをぶら下げているんだそうな。
フランケンワインの主な産地は、ヴュルツブルグの周辺である。ヴュルツグルグは3日後に訪ねる予定。ロマンティック街道の中心地の一つだが、ロマンティックも何も「山羊さんの陰嚢」じゃ、マコトに困ったものでござるよ。
(フランケンワイン、2011年5月)
しかし例えばゲーテさまは、このフランケンワインのウルトラ愛好者。旅先から奥方に送ったお手紙の中に、以下のようなコトバがある。
「何本か、ヴュルツブルグのワインを送ってもらいたい。私は困っている。他のワインはどれ1つとして美味しく思えない。大好物のいつものワインが手許にないと、私は不機嫌になってしまう」
そういうワインだから、サト助も1本目を20分もかからずにカラッポにしてしまった。うにゃにゃ、ドイツの白ワインは、クマにとっては水のようなもの。焼けた子豚さんがまだ半分も残っている状況だったから、クマどんはすぐ迷わずに同じワインをもう1本注文。それもまた30分ほどでカラッポになった。
こういうふうだから、この夜の今井君はマコトに上機嫌。旅の疲れもすっかり忘れて、「もう1軒いくかな」「超有名店・ホフブロイハウスに攻め込むかな」と決めた。午後9時ごろのことである。
ところが諸君、たどり着いたホフブロイハウスはウルトラ&スーパー混雑の真っ最中。夢のような大混雑で、まさに足の踏み場もない。しかも、聞こえてくるのは中国語の響きばかり。「ここって、上海?」「ここって、北京?」と、ふと錯覚するほどである。
せっかくミュンヘンにきたのに、中国の団体旅行のヒトビトに取り巻かれても仕方がないから、今井君はウルトラ大混雑を避けてお隣の静かな店に入った。残念だけれども、この街にはまだ4日も滞在するんだ。明日でも明後日でも、ホフブロイハウスを訪れるチャンスはいくらでもあるだろう。
(ホテル・プラッツル。ホフブロイハウスのすぐそばである)
入った静かな店でビールを1杯飲んで、気がつくともう11時に近い。外に出てみると、雪がチラついている。気温も驚くほど下がった。風がないから寒さは感じないが、空から落ちてくる雪の結晶がコートの上でいつまで経っても溶けることなく、六角形のキレイな形を保っている。
そのキレイな結晶が、翌日の午後から降り始めた大雪の前触れだったのである。翌朝、北国生まれ&北国育ちの鋭い嗅覚で「大雪が来るぞ」と嗅ぎつけたクマ蔵は、まず黄色いテアティナー教会(昨日の写真参照)の近くの靴屋さんで雪道専用の安い靴を購入。昼過ぎから雪がいよいよ激しくなって、クマの勘はマコトに見事に的中したのである。
この靴には「ユーゴスラビア製」のタグがついていた。ユーゴスラビアの完全消滅は2006年であるから、2005年2月のこの段階では、ユーゴスラビアで作られた靴がドイツの靴屋に流通していたとしてもおかしくないのである。
(バイエルン州立歌劇場。2011年5月)
こういうふうで、この日のミュンヘン観光は「いかにも超定番」な所ばかりを駆け足で回って終わってしまった。東京にきた外国人観光客が、スカイツリー→浅草雷門→六本木ヒルズ→東京タワー→原宿と回って、最後にビュッフェのお寿司と天ぷらを食べて満足する類いのものである。
そう考えるとサト助は何だか寂しくなったから、雪の中をバイエルン州立歌劇場のチケットを買いに出かけた。演目は「後宮からの誘拐」。明日の夜のチケットが買えた。チケット売り場が劇場の裏にあってちょっと分かりにくかったが、通りかかったオジサマに「チケットはどこで?」と尋ねると、ホントに親切に教えてくれた。
考えてみればあのオジサマは、劇場関係者ではなかったのかもしれない。雪の中で右往左往している東洋のクマが、きっと実にアワレに見えたのだ。「ドイツの人は愛想が悪い」「そっけない」「他者に手厳しい」みたいな先入観があるが、本来は優しさに溢れる愛すべきヒトビトである。
(モリッツィオ)
ホテル・プラッツルの従業員も同じことである。この日の朝、「モリッツィオ」と名乗る男子従業員と仲良くなった。「グーテンモルゲンの正しい発音を教えてあげましょう」と言うのである。
Guten Morgen=Good Morningであるが、モリッツィオというからにはおそらくイタリア系の彼に何度か発音を直されて、それだけのことでたいへん楽しい朝になった。国際交流なんてのは、実はこの程度から始めればいいのである。
1E(Cd) Schreier:BACH/MASS IN B MINOR①
2E(Cd) Schreier:BACH/MASS IN B MINOR②
3E(Cd) Schreier:BACH/MASS IN B MINOR①
4E(Cd) Schreier:BACH/MASS IN B MINOR②
5E(Cd) Schreier:BACH/MASS IN B MINOR①
total m100 y411 d13331
行き当たりばったりで外に出て、行き当たりばったりのお店に入る。サト助の旅のやりかたはそれなので、夕暮れの街をとにかく歩き回ってみることにした。初めての街で大切なのは、まずは足慣らしにその辺をブラついてみることである。
しかもそうしてホンの1ブロック歩いただけで、マコトにヨサゲな店が見つかってしまった。店先で小さな子豚さんを1匹、丸ごとアブって焼いている。いい色に焼けた子豚さんからはまだポタポタ脂が滴っている。いやはや何とも残酷で、しかし素晴らしい香りがした。
後で調べてみたら、店の名前はハクセンバウアー。多くのガイドブックに掲載されているミュンヘンの有名店であった。19時過ぎ、まだ時間が早かったのか、店内はほぼカラッポ。広い店内の奥のほうのテーブルに通されて、「あれれ、こりゃ表六玉だったかな?」とアタマを掻いた。
(ハクセンバウアーの子豚料理。2011年5月)
注文したのは、まずビア1杯とフランケンワインを1本。食べるのは、もちろんグリルした子豚さんのお肉。出来ればザワークラウトはナシにしてほしいが、いやいや、まだそんなワガママな注文のできる度胸はついていない。
あのころはブログなんかやっていなかったし、食事のたびに料理の写真を撮るような趣味もなかった。だから今日の写真の豚肉料理は、2011年5月にミュンヘンを再訪し、10日ほど滞在したときのもの。ハクセンバウアーが気に入ったサト助は、あの時も2回この店を訪れた。
フランケンワインの写真も2011年、ニンフェンベルグ城前のお店のもの。この特徴的なボトルは「ボックスボイテル」と呼ばれる。もともとは「山羊の陰嚢」という意味で、オスのヤギさんを後ろから見ると、アンヨの間にほぼ同じ形のモノをぶら下げているんだそうな。
フランケンワインの主な産地は、ヴュルツブルグの周辺である。ヴュルツグルグは3日後に訪ねる予定。ロマンティック街道の中心地の一つだが、ロマンティックも何も「山羊さんの陰嚢」じゃ、マコトに困ったものでござるよ。
(フランケンワイン、2011年5月)
しかし例えばゲーテさまは、このフランケンワインのウルトラ愛好者。旅先から奥方に送ったお手紙の中に、以下のようなコトバがある。
「何本か、ヴュルツブルグのワインを送ってもらいたい。私は困っている。他のワインはどれ1つとして美味しく思えない。大好物のいつものワインが手許にないと、私は不機嫌になってしまう」
そういうワインだから、サト助も1本目を20分もかからずにカラッポにしてしまった。うにゃにゃ、ドイツの白ワインは、クマにとっては水のようなもの。焼けた子豚さんがまだ半分も残っている状況だったから、クマどんはすぐ迷わずに同じワインをもう1本注文。それもまた30分ほどでカラッポになった。
こういうふうだから、この夜の今井君はマコトに上機嫌。旅の疲れもすっかり忘れて、「もう1軒いくかな」「超有名店・ホフブロイハウスに攻め込むかな」と決めた。午後9時ごろのことである。
ところが諸君、たどり着いたホフブロイハウスはウルトラ&スーパー混雑の真っ最中。夢のような大混雑で、まさに足の踏み場もない。しかも、聞こえてくるのは中国語の響きばかり。「ここって、上海?」「ここって、北京?」と、ふと錯覚するほどである。
せっかくミュンヘンにきたのに、中国の団体旅行のヒトビトに取り巻かれても仕方がないから、今井君はウルトラ大混雑を避けてお隣の静かな店に入った。残念だけれども、この街にはまだ4日も滞在するんだ。明日でも明後日でも、ホフブロイハウスを訪れるチャンスはいくらでもあるだろう。
(ホテル・プラッツル。ホフブロイハウスのすぐそばである)
入った静かな店でビールを1杯飲んで、気がつくともう11時に近い。外に出てみると、雪がチラついている。気温も驚くほど下がった。風がないから寒さは感じないが、空から落ちてくる雪の結晶がコートの上でいつまで経っても溶けることなく、六角形のキレイな形を保っている。
そのキレイな結晶が、翌日の午後から降り始めた大雪の前触れだったのである。翌朝、北国生まれ&北国育ちの鋭い嗅覚で「大雪が来るぞ」と嗅ぎつけたクマ蔵は、まず黄色いテアティナー教会(昨日の写真参照)の近くの靴屋さんで雪道専用の安い靴を購入。昼過ぎから雪がいよいよ激しくなって、クマの勘はマコトに見事に的中したのである。
この靴には「ユーゴスラビア製」のタグがついていた。ユーゴスラビアの完全消滅は2006年であるから、2005年2月のこの段階では、ユーゴスラビアで作られた靴がドイツの靴屋に流通していたとしてもおかしくないのである。
(バイエルン州立歌劇場。2011年5月)
こういうふうで、この日のミュンヘン観光は「いかにも超定番」な所ばかりを駆け足で回って終わってしまった。東京にきた外国人観光客が、スカイツリー→浅草雷門→六本木ヒルズ→東京タワー→原宿と回って、最後にビュッフェのお寿司と天ぷらを食べて満足する類いのものである。
そう考えるとサト助は何だか寂しくなったから、雪の中をバイエルン州立歌劇場のチケットを買いに出かけた。演目は「後宮からの誘拐」。明日の夜のチケットが買えた。チケット売り場が劇場の裏にあってちょっと分かりにくかったが、通りかかったオジサマに「チケットはどこで?」と尋ねると、ホントに親切に教えてくれた。
考えてみればあのオジサマは、劇場関係者ではなかったのかもしれない。雪の中で右往左往している東洋のクマが、きっと実にアワレに見えたのだ。「ドイツの人は愛想が悪い」「そっけない」「他者に手厳しい」みたいな先入観があるが、本来は優しさに溢れる愛すべきヒトビトである。
(モリッツィオ)
ホテル・プラッツルの従業員も同じことである。この日の朝、「モリッツィオ」と名乗る男子従業員と仲良くなった。「グーテンモルゲンの正しい発音を教えてあげましょう」と言うのである。
Guten Morgen=Good Morningであるが、モリッツィオというからにはおそらくイタリア系の彼に何度か発音を直されて、それだけのことでたいへん楽しい朝になった。国際交流なんてのは、実はこの程度から始めればいいのである。
1E(Cd) Schreier:BACH/MASS IN B MINOR①
2E(Cd) Schreier:BACH/MASS IN B MINOR②
3E(Cd) Schreier:BACH/MASS IN B MINOR①
4E(Cd) Schreier:BACH/MASS IN B MINOR②
5E(Cd) Schreier:BACH/MASS IN B MINOR①
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