Sun 140216 寝台特急「北斗星」の旅(1) 夜行列車の思ひ出 札幌駅で食糧を買い込む | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 140216 寝台特急「北斗星」の旅(1) 夜行列車の思ひ出 札幌駅で食糧を買い込む

 以上のような次第で(スミマセン、昨日までの記事の続きです)、3月6日午後4時半、今井君はとうとう夕方のラッシュ真っただ中の札幌駅に到着した。札幌には今回はまったく用事がないのだが、すでにこのブログでも一度予告した通り、サト助はこれから7日午前にかけて「夜行列車・北斗星の旅」を敢行しようと思う。
 「なるほど、それでサトイモ今井はわざわざ函館から札幌へ、プロペラ機でブルンブルン飛んできたんだな」と、納得してもらえるヒトには納得してもらえるはずだ。確かに「北斗星」には函館からでも乗れるし、南千歳や苫小牧でも乗り込むことはできる。しかしせっかくなら、始発駅・札幌から乗りたいじゃないか。
 さすがに789年もの人生を歩んできたクマであるから、「夜行列車」というものは何度も何度も経験した。ついこの間、スペインのサンチャゴ・デ・コンポステラからマドリードまで、夜行急行に8時間も揺られてきたばかりだ。
 生まれて初めて秋田から上京したのは、6歳の時の夜行列車「おが」。小学校3年生の春休みの上京は、ミニくま君自身が家族の先頭に立って詳細を計画し、夜行急行「たざわ」で東京に向かった。
 その頃の秋田県は、まだ縄文時代から弥生時代への転換期♡。秋田発上野行きの夜行急行は、午後7時に秋田を出発して、上野駅着は朝9時を過ぎていた。四角い座席に家族4人つっぱらかったままで、何と14時間も上野到着を待ちわびるのである。
チケット
(札幌発上野行き「北斗星」チケット)

 大学学部時代には、夜行急行の旅が今井君の定番だった。学部1年のころ、家族は岩手の盛岡にいたから、夏休みやお正月の帰省には、上野発青森行きの夜行急行を利用した。「十和田」「八甲田」、今ではすっかり歴史のカナタに姿を消してしまった、マコトに懐かしい夜行急行群である。
 学部2年以降、帰省先は秋田県秋田市に戻った。すると今井君が帰省に利用するのは「おが」「津軽」「天の川」になって、またまた四角い座席につっぱらかって12時間。「天の川」みたいな「全車寝台」は、貧しかった今井君には敷居が高くて、「津軽」「おが」の普通座席で秋田を目指すのが定番だった。
 だから、寝台特急「出羽」「あけぼの」「鳥海」の寝台車なんか、あの頃の今井君にとってはまさに「高嶺の花」である。せいぜい利用できるのは、寝台幅60cmにも満たない、当時の狭苦しいB寝台。上段・中段・下段の3段に分かれ、頭上1メートルもない天井にしょっちゅう頭を激突させながら、それでも四角い座席につっぱらかって過ごす12時間に比較すれば、天国のように思ったものだった。
 初めて夜行特急の贅沢な寝台を経験したのは、青森発上野行きの「ゆうづる」。ただしあれは、25歳で夭折した親友のお葬式の翌日。「ゆうづる」という列車名もあって、マコトに悲しい初体験であった。
機関車
(札幌駅に入線した「北斗星」。函館までは、ディーゼル機関車の2連結で快走する)

 今日これから乗車するのは、「北斗星」のA寝台、しかも個室である。学部学生の頃の苦難の旅とは、まさに別格の贅沢といっていい。今でも大人気の夜行特急「北斗星」、まさか個室が予約できるとは思っていなかったが、これもまた何かの僥倖に違いない。
 2014年3月、乗り鉄サンたちの注目は、まもなく廃止になる「あけぼの」に向けられている。「あけぼの」は、1970年代から東北地方の日本海側と上野を結んで走り続けて来た夜行特急。今年3月15日のダイヤ改正で、すでに廃止が決まっている。
 「あけぼの」は、もともと青森⇔秋田⇔仙台の路線で走っていたディーゼル急行。それでも昭和30年代後半から40年代にはヒーロー的存在で、青森⇔秋田⇔金沢の急行「しらゆき」と連結して、北の大地を快走した。
 やがて夜行特急「あけぼの」の登場により、急行「あけぼの」は「きたかみ」に改称。だから、幼い今井君の頭脳に刻みつけられた「あけぼの」は、今でも奥羽山脈を横断して仙台に向かって走り続けている。
 ま、詳しいことはともかくとして、とにかく青森⇔秋田⇔上野の夜の闇を40年にわたって快走し続けた寝台特急「あけぼの」は、あと数日で廃止。廃止の理由は、①利用者の激減 ②車両の老朽化であって、それはこれから今井君が乗車する「北斗星」も同様である。
ホーム
(北斗星が入線する間近の札幌駅ホーム。うぉ、寒かった)

 札幌駅の待合室で、赤く燃えるストーブのそばに座って発車時刻を待ったが、どんなにストーブの近くに座っても、やっぱり堪えがたいほどの寒さである。さすがに暴風雪警報の発令された北海道の寒さは別格であって、この数百年すっかり都会の生ぬるい生活にタルんでしまった軟派なクマどんは、ここでちょっと反省したほうがいいのかもしれない。
 それでも「これから『北斗星』で東京を目指す」ということだけで、すっかりクマの心は浮き立っている。まず、駅の売店でビールと日本酒を買い込む。もちろんビールだけでもいいのだが、諸君、北斗星の個室には冷蔵庫がない。冷たいビールなんか買ったって、1時間ももたない。ここはどうしても「生ぬるくても大丈夫」というダラしない日本酒が必要だ。
 他に、お弁当とオツマミも必要だ。お弁当は迷いに迷ったあげくに「ジンギスカン弁当」を購入。ついさっき新千歳空港で「松尾ジンギスカン」をたらふく腹に詰め込んできたばかりだが、「ヒモを引っ張ればすぐに熱々になります」というシカケに心を惹かれたのである。
ロイヤル・ソロ
(北斗星のロイヤル・ソロ。文字の色や形にも、老朽化を感じる)

 お酒のツマミは、①キャンディーみたいに包んだ一口大のチーズを1袋、②魚肉ソーセージ4本、③鮭トバなど。弁当と一緒に紙袋に詰込んだら、紙袋が破けそうなほどのパンパンになった。
 イヤだねえ、いい年をしたクマがこんなにイヤしいんじゃ。食い物と飲み物で肩が抜けそうになるほどに重い袋をぶらさけて、いよいよ「北斗星」の乗り場に向かうことになった。
 だって諸君、しょうがないじゃないか。札幌発17時12分、上野到着は翌日の10時07分。約17時間の長旅だ。東京国際空港からヒコーキに乗っても、ヨーロッパのハブ空港まで12時間。乗り継いで、ナポリやマドリードやアテネ、リスボンやイスタンブールやブダペストを目指しても、合計17時間なら余裕で到着する。
 ということは、いま今井君が乗り込もうとする「北斗星」の旅は、ヨーロッパへの長旅に一歩たりともヒケをとらない難行苦行なのである。ならば、このぐらいの食糧と酒を買い込んだって、何の不思議もないじゃないか。
A寝台
(むかしむかしの憧れだったA寝台に乗り込む)

 ホームに上がってみると、いるわいるわ、たくさんの乗り鉄諸君&撮り鉄諸君で、大いに盛り上がっている。この時間帯に札幌に到着するすべての電車が雪まみれ&氷まみれ。こんな天候で、よく「北斗星」の運行に踏み切ってくれたものだと感激する。
 17時を少し過ぎて、いよいよ「北斗星」が入線。何だか「出し惜しみ」というか、乗客としては落ち着いて写真を撮影するヒマもないが、確かに運行開始から25年、四半世紀の時を経て、車両はもうすっかり老朽化してしまった。
 今井君が予備校講師になったのが1991年。おやおや、すると今井君の老朽化だって、「北斗星」や「あけぼの」に実はヒケをとらないのであるが、今井君自身としてはちっとも自らの老朽化を感じない。ヒトというものは、マコトに強靭な存在なのである。

1E(Cd) Karajan:BACH/MATTHÄUS PASSION③
2E(Cd) Karajan:BACH/MATTHÄUS PASSION①
3E(Cd) Karajan:BACH/MATTHÄUS PASSION②
13G(α) 塩野七生:迷走する帝国(中):新潮文庫
total m96 y251 d13171