Sat 140215 後期試験に向かうヒトたち 大震災の記憶 暴風雪の中、小魚君は札幌を目指す | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 140215 後期試験に向かうヒトたち 大震災の記憶 暴風雪の中、小魚君は札幌を目指す

 3月11日、今井君は昨日の豊橋での仕事からの帰り、新幹線の車中にいた。1つ後ろの席では、いかにも賢げな男子の受験生が一人、窓際に数冊の受験参考書を積み上げ、何やら英語の本を読んでいる。そのお隣、通路側の席で週刊誌をめくっている上品なオバサマは、おそらく彼のママだろう。
 昨日が東京大学前期日程の発表日。後期日程の試験が3月13日であるから、わずか100名の枠を狙って、全国から東京に優秀な受験生が集結しつつあるのだ。前期がダメでもやっぱり「第1志望はゆずれない」のである。
 東京大学としても、「早稲田や慶応には合格しても、やっぱり東大はゆずれない」という優秀な諸君の獲得に努めるわけだ。新幹線の車窓はマコトにキレイに晴れて、彼ら彼女らの前途を明るく照らしている。陳腐なセリフでマコトに申し訳ないが、最後まであきらめずに努力を重ねていただきたい。
 それに比べて、各予備校の貪欲ぶりはどうだろう。東京大学の合格発表の前日、河合塾からのダイレクトメールが受験生宅に届けられた。「河合塾新宿校で、始めませんか?」とおっしゃるのである。10日、東大前期の発表を待っていたかのように、駿台と河合塾から浪人生募集の分厚いパンフレットも郵送される。
 何でもう5~6日待ってあげないの? それが無理でも、せめて2~3日はDMの送付をガマンして、受験生の最後の努力を見守ってあげたらいいんじゃないの? 3月10日の朝刊を出してきてみたまえ。テレビ欄には駿台と代ゼミ、社会面には四谷学院、揃いも揃って「新学期生募集」の広告を出している。
箱館山
(3月6日、吹雪の直前の函館山)

 このあと今井君は東京駅に到着し、2時ごろタクシーで三宅坂の国立劇場付近を通過する。今日は日本人全員が大震災の記憶を新たにすべき1日である。ちょうど国立劇場では震災犠牲者の追悼式が進行中。タクシーの車中からではあるが、大震災発生の2時46分には、車中からではあるが黙祷を捧げようと思う。
 すでに何度も書いたことであるが、3年前の2時46分、京都から金沢への移動で特急「サンダーバード」の車中にいた。北陸は大雪の1日で、車窓右側に広がる琵琶湖の湖面にも、春の冷たい雪が舞っていた。敦賀を過ぎ、北陸トンネルを抜けた頃には、列車の右も左も湿った新雪に埋もれていた。
 金沢のANAクラウンプラザホテルにチェックインしてすぐに、窓のブラインドの異常に気がついた。どういうわけかブラインドが大きく揺れ、壁にぶつかって「コーン コーン コーン」と重い音が鳴り止まなかった。今井君の頭はマコトに単純だから、「ブラインドが故障しています」とフロントに電話をかけそうになった。
 その前にテレビをつけて、大震災の発生を知った。テレビはまず千葉の石油工場の火災を伝え、大地震発生直後の首都圏の混乱の様子が画面に映った。その直後、仙台の名取川をさかのぼってくる津波の映像に切り替わり、津波は見る間に名取川の堤防を乗り越えて、田んぼも畑も民家も、あっという間にどす黒い水に飲み込まれていった。
小魚君
(吹雪の函館空港に、小魚君が姿を現した)

 その夜は富山で仕事があったので、こんなたいへんな映像を見た直後に、再び富山行きの特急に飛び乗らなければならなかった。富山の会場には高1生と高2生が130人。保護者も十数人参加してくれて、熱気溢れる90分を過ごしたのだったが、東京との連絡手段はメールのみ。電話は全くつながらなかった。
 終了後すぐに電車に乗って、宿泊先の金沢に引き返した。日本海にも津波警報が出て、特急は全て運休。残る移動手段は各駅停車のみになって、金沢まで戻るのに2時間もかかった。
 途中「倶利伽藍」という深い山の中の駅で電車が動かなくなり、たいへん心細い思いもした。倶利伽羅峠と言えば、木曾義仲の活躍で有名。数百頭のウシの角に松明をくくりつけて突進させ、平家の大軍を討ち破った。雪がますます強くなって、電車はこんな場所で運転打ち切りになる可能性さえあった。
 真夜中過ぎ、ほうほうのていで金沢に到着すると、ホームには札幌行き寝台特急「トワイライトエキスプレス」が停車中。もちろんこんな大災害の夜だ、トワイライトエキスプレスは金沢で運転打ち切りになったのであったが、薄暗闇のホームに停車した深い緑の車体の様子が、何故か今でも印象に残っている。
親子
(函館空港にて。小魚君の奮闘ぶりに拍手)

 その夜は明け方までテレビの画面を見つめて過ごした。巨大津波襲来のビデオ映像が繰り返され、その間を縫うように、夜の気仙沼を襲った大火災の真っ赤な炎の様子が映し出された。そのころすでに、福島の原子力発電所は制御不能に陥っていたのである。
 今井君としてもさすがにこの大災害の中でブログを継続するわけにはいかないから、まず1週間のブログ休止を宣言。翌日は小松空港から羽田に戻り、大混乱の首都圏を横切って何とかオウチに帰還した。3月12日の夕刻からは、神奈川県平塚で公開授業を実施。出席予定の100名のうち、約50名が参加した。
 その後しばらくは、さすがに首都圏での仕事のほとんどが中止。3月14日には大阪で公開授業があったが、震災発生1週間後の今井君は、大阪・堂島で買い込んだコメその他の食糧をスーツケースに詰め込んで、被災地のど真ん中・宮城県仙台市に向かった。
 あれだけの震災でも、仙台のお隣の山形空港にヒコーキは飛んだのである。山形から仙台まではタクシー。片道3万円、往復6万円したが、それも致し方ない。当時の様子については、右のアーカイブ欄で「2011年3月」をクリックして読んでみてくれたまえ。
ジンギスカン
(新千歳空港でジンギスカンを味わう)

 3月11日とは、まず犠牲者の冥福を祈り、さらに「あの時自分がどこで何をしていたか」を思い出す日。大震災の記憶と教訓を確認する日である。だから、サト助のふざけた旅行記を、今日はいったん休止することにした。
 しかし諸君、掲載した写真の説明ぐらいはしておかなきゃイケナイ。2014年3月6日のサト助は、函館から札幌に向かう途中であった。午前10時すぎから天候が急激に悪化して、さっきまであんなにキレイに見えていた函館山が、吹雪の向こう側にすっかり姿を隠してしまった。
 タクシーで15分ほど、湯の川温泉を過ぎて函館空港に到着すると、新千歳空港ゆきのヒコーキは「10分遅れ」の表示。他のヒコーキもみんなほぼ時刻通りの運航で、ひとまずホッとした。羽田や札幌みたいな本格的なラウンジではないが、クレジットカード会社が共同で運営する小さなラウンジがあって、クマはそこで時間までくつろぐことにした。
 ところが、新千歳行きの遅れはその後どんどん拡大していく。「10分遅れ」はまもなく30分遅れになり、30分は40分、40分は60分にかわり、ラウンジ内は諦め気味の空気になってきた。新千歳から函館に飛んできたヒコーキが、折り返しで新千歳行きになるのだが、そのプロペラ機がまだ新千歳を離陸していないのだという。
 外の天候を眺めていると、「まあそれも当然かね」と感じるような猛吹雪である。すぐ近くの滑走路も見えない。やがて「折り返しになる機材が、ただいま新千歳空港を離陸いたしました」とアナウンスがあり、20分ほどして「まもなく函館に到着したします」ということになった。
 ホッと安堵した空気を一気に凍りつかせたのが「最終の着陸態勢に入っておりました折り返しのヒコーキは、函館空港悪天候のため、着陸をいったん中止して、上空を旋回しております」のアナウンス。ベテランと思われる乗客の数人が「結局、千歳に引き返しちゃうんじゃないか」と自嘲気味にツブヤクのが聞こえた。
さとすけ
(ジンギスカン屋のクマ蔵、自分撮り)

 それでも午後1時、予定到着時刻から約100分遅れで、小魚みたいなボンバルディア機はとうとう函館に到着。小魚君は丸い2つのプロペラをブルンブルン言わせながら、とうとう空港のスポットに姿を現した。
 この可愛らしい小魚君に、乗客は地面を歩いて乗り込むのである。到着が100分遅れ、翼の上に積もった雪を融かすのに時間がかかって、出発は120分遅れ。何となく「満身創痍」の感じで、小魚君はやがて分厚い雪雲に負けず、雪雲の上の青空に舞い上がったのである。
 いやはや、小魚君が暴風雪と凶悪な雲に翻弄されて大揺れに揺れることを、サト助は覚悟していたのだ。ところが諸君、小魚君は意外なほどの大健闘を見せた。函館から新千歳まで、40分。乗客は異様なほどオジサマ率が高くて、75名ほどの乗客のうち70名は「いかにもオジサマなオジサマ」ばかりなのであった。
 新千歳空港で、サト助は「松尾ジンギスカン」の店に入った。今回の北海道の旅で、まだ一度もジンギスカンを味わっていない。ホントは普通のジンギスカン屋で薄切りのヒツジさんを豪快にワシワシやりたいのだが、ヒコーキの大幅な遅れのせいで、それは諦めなければならなくなった。
 松尾ジンギスカンは、あらかじめ甘辛いタレにつけ込んだ厚めのヒツジさんを鉄板で焼く。野菜もこのタレの中で煮込んで食べる。甘辛さが口の中に充満するのが、好き嫌いの分かれるところ。サト助はどちらかというと「普通のほうがいい」派であるが、ま、これもまた悪くないじゃないか。

1E(Cd) Karajan:BACH/MATTHÄUS PASSION②
2E(Cd) Karajan:BACH/MATTHÄUS PASSION③
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4E(Cd) Karajan:BACH/MATTHÄUS PASSION①
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