Tue 140211 北海道室蘭でお仕事 故郷の訛りなつかし 暴風雪の始まりは、ベトベトの湿雪 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 140211 北海道室蘭でお仕事 故郷の訛りなつかし 暴風雪の始まりは、ベトベトの湿雪

 3月4日、北海道室蘭でお仕事。今井君は北海道の人たちにもビックリされるほど、これまでの長い人生で北海道の隅々まで旅してきたが、なぜか室蘭は今回が初めて。室蘭と苫小牧は北海道を代表する工業地帯であるから、暢気な物見遊山ばかりしているクマ蔵の旅のプランにはなかなか入ってこないのだ。
 北海道のスタッフに、興部とか紋別とか、音威子府とか増毛とか留萌とか、そういう場所を旅した経験を語ると、まず確実に目を丸くされるのである。「北海道に住んでいる私たちだって、興部や音威子府に行ったことのある人間は滅多にいませんよ」というのである。
 しかしそんなこと言われたって、何しろサト助は旅マニアである。ヒトの行かないところに行き、ヒトの食べたことのないクマやシカやイノシシの肉をむさぼり、ヒトの入らない鄙びた店に入って、鄙びたラーメンをすする。それが今井君の趣味なんだから、ビックリされるのはむしろ恐縮の極みである。
 そこでクマ蔵は、「室蘭でお仕事」ということになっても、なかなか会社の指定した電車で移動したりしない。会社側としては、指定した通りの特急グリーン車で大人しく移動してほしいんだろうけれども、クマどんを檻に入れるのは、やっぱり至難のワザである。
室蘭1
(北海道室蘭でお仕事)

 そこで自由奔放なクマどんは、「特急『すずらん』に乗って室蘭に向かうべし」という指示を完全に無視して、「この際、北海道のローカル線の旅を満喫しよう」という暴挙に出る。
 とにかく室蘭に14時に到着すればいいのだから、たった1両編成で雪の北海道内を走るチョロQみたいなローカル線の旅を目いっぱい楽しみたい。サト助の頭の中には、北海道ローカル線の路線図と時刻表がビシッと記憶されていて、ちょっとやそっとの事故が起こっても、「室蘭14時到着」という条件は100%クリアできるのである。
 ローカル線の駅の待合室に座って、地元のジーチャン&バーチャンの雑談に耳を傾けるのは、マコトに楽しい経験である。「故郷の訛りなつかし 停車場の人ごみの中に そを聴きに行く」とは、石川啄木が20世紀初頭にツブヤいた歌であるが、100年後のサト助がまさか北海道の停車場で同じことをするとは予想もしなかった。
 別に北海道がサト助の故郷である訳ではないが、諸君、「故郷の訛り」などというものを耳にするのは、今やほとんど不可能である。若者たちは、函館でも秋田でも熊本でも高知でも、例の味もソッケもない標準語しか話さない。「方言は、話せないどころか、聞いても意味が分かりません」という返答しか返ってこない。
ローカル線
(北海道、ローカル線での移動を満喫する 1)

 今井君としては、もはや方言の復活も保存も夢みてはいない。復活も保存もありえないとすれば、せめて生き残った方言の残滓を、機会あるごとに満喫するだけである。
 クマ蔵は100%カンペキな秋田弁を話せるから、寂しくなるたびに自分で自分の秋田弁に酔うことが出来るが、しかしチャンスがあれば、誰か他の人が話す温かい湯気の出るような100%の方言が聞きたいじゃないか。
 北海道のローカル線なら、その夢が十分に叶いそうなのである。2時間か3時間に1本、1両編成でやってくるガラガラのローカル列車。近くの町の病院に通うジーチャンやバーチャンの愚痴のこぼしあい。そこに溢れる遠慮会釈のない訛りがあまりに懐かしくて、21世紀の石川クマ木は、わざわざ「そを聴きに行く」のである。
 ところがこの日のローカル列車には、ジーチャンやバーチャンの姿は見えない。ひたすら高校生あるのみ。右も左も前も後ろも、見渡す限りの高校生で埋め尽くされた。車内に溢れるのは「ツイッター的」というか「LINE的」というか、要するにSNS的な言語のみ。クマ蔵が求めていた懐かしい「故郷の訛り」などといふものは、そこにはヒトかけらも存在しないのであった。
車内
(北海道、ローカル線での移動を満喫する 2)

 なぜ昼過ぎのローカル列車が高校生満載であったかというに、この日は北海道内の高校入試の前日だったである。入試の前日、早く高校生を帰らせて、先生方は翌日の入試の準備に夢中。そういうことである。
 だから、今井君のお仕事も午後3時開始、4時半終了。出席する高校生たちとしても、午後はまるまるヒマになったんだから、今井君の話を聞きにくるには絶好のチャンスなのであった。
 出席者、約140名。室蘭地区きっての名門校・室蘭栄高校の生徒諸君を中心に、今井史上ベスト10に入るほどの激しい大爆笑の連続であった。いやはや、激しかった。あんまり激しく、あんまり楽しいので、ついつい今井君の普段のポリシーに反してまで、15分も延長することにした。
 諸君、優秀なヤツほどよく笑う。これは間違いなく真実であって、英語がコミュニケーションであり、笑いがコミュニケーションの基本である以上、笑えないヒトは英語の上達も見込めない。この日の室蘭の生徒諸君を見ていると、「こりゃ今日から先、英語はメッタヤタラに伸びだろう」と確信するほどであった。
湿雪
(北海道、ローカル線での移動を満喫する 3)

 終了後、もちろんこんなに盛り上がった直後であるから、意地でも「大祝勝会」ということになった。スタッフの中には、明日の高校入試に備えて「今夜はどうしても先生とご一緒できません」と言っていたヒトもいたが、結局ラストまでウーロン茶で付き合ってくれた。
 だって仕方ないじゃないか。今井君の奮闘の後は、誰だって間違いなく異様に楽しくなるのだ。あれほど生徒たちが大爆笑を続けるアリサマを見てしまった後で、「それでもちっとも楽しくない」「笑ってばかりじゃ成績は上がりません」と冷たく言い放つヒトがいたら、その人はもともと教育の世界には向かないのかもしれない。
 北海道は、この夜から暴風雪に襲われることになる。暴風雨が本格化したのは、3月6日の朝。今井君が室蘭にいたのは3月4日であるから、まだまだ余裕はあったのがが、諸君、暴風雪というものは、襲来するのにキチンと段階を踏んでやってくるのだ。
 4日夜、室蘭の気温は上昇し、3月上旬の北海道とは思えない暖かい風に乗って、生温い湿った雪が降り出した。北海道の雪は一般に乾いた軽い雪であって、クルマの屋根や電線や木の枝にしつこく付着するような湿雪は珍しい。
 しかし4日夜の祝勝会場から出てみると、室蘭の街はまるで春先の新潟の温泉町のような、重く湿った雪に覆われていた。昨年3月の釧路での暴風雪前夜と状況は全く同じ。雪から湯気が上がりそうな、異様な雰囲気であった。
室蘭2
(室蘭でお仕事。最後に花束をもらう)

 サト助はここから遠路タクシーに乗って宿泊先まで帰ることにしたのだったが、タクシーの運転手さんも
「こんなに湿った雪は滅多に経験しません」
「スタッドレスタイヤですが、ここまで雪が湿ってくると、さすがに我々でもコワくなります」
と素直に告白してくれたのだった。
 それでも何とかクマ蔵は、宿泊先のホテルまで無事たどり着いた。「うにゃにゃ、こりゃたいへんだ」と思っているうちに、雪も風もどんどん強くなっていく。
「明日は函館でお仕事だけれども、果たして大丈夫だろうか」
「そもそも函館まで移動できるんだろうか
と不安を抱えつつ、ルームサービスでビーフカレーを注文。確かに室蘭の祝勝会で腹一杯詰込んできたのだが、雪道をはるばるタクシーに揺られて来る間に、クマのポンポンはすっかりカラッポになっていたのである。

1E(Cd) Karajan:BACH/MATTHÄUS PASSION③
2E(Cd) Karajan:BACH/MATTHÄUS PASSION①
3E(Cd) Karajan:BACH/MATTHÄUS PASSION②
4E(Cd) Karajan:BACH/MATTHÄUS PASSION③
5E(Cd) Karajan:BACH/MATTHÄUS PASSION③
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