Wed 131225 眠ろうと無理しない サンタは来ないが、朝は必ずやってくる(マタパリ21) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 131225 眠ろうと無理しない サンタは来ないが、朝は必ずやってくる(マタパリ21)

 「眠れぬ夜」というものは、いつか必ずやってくる。「たっぷり睡眠をとろう」と決めたセンター試験前日であっても、初日の3科目で疲労困憊したはずのセンター2日目の前夜であっても、いったん「眠れない」ということになったら、もう意地でも眠れない。
 それは「心も身体も若々しい」ということであって、別にイケナイことではない。そもそも「眠れなかったせいでダメだった」などというのはマレなので、大切なことは「気にしない」「眠れなかったことを悔やまない」「眠れないけど、元気すぎる証拠なんだから別にいいじゃん」という心の余裕である。
 無理して眠ったとしても、悪夢にうなされて苦しい一夜を過ごすことになったりする。シェイクスピアの描いた「マクベス」「リチャード3世」では、それまでの人生でタップリ蓄積してきた悪事の総量が、その10倍も20倍もの重苦しい悪夢になって主人公の胸を抑えつける。
 今井君は別に悪事を重ねてきたわけじゃないが、決戦前夜のリチャード3世みたいに悪夢にうなされるのはイヤである。特に悪夢に襲われやすいのは、1時間か2時間の深い眠りの後で、何かの拍子にふと目覚めてしまった直後である。
11834 洋梨
(ナシ。欧米の一流ホテルでもこんな小さなナシしか出てこない。味のほうは、推して知るべし。日本で生きる幸せを感じる一瞬である)

 そういう時に、無理をして「睡眠が大事」「しっかり睡眠をとらなくちゃ」と自分に言い聞かせ、「仰向けになったまま腕を組んでウトウト」などというのをやると、夢はテキメンに悪いほうに向かう。
 これはどうやら睡眠時の呼吸と関係しているらしいのだが、そういう時に見る夢は、むかし安部公房が書いた「夢の逃亡」にそっくりである。自分が走っているのは砂浜。あがいてもあがいても、砂に足がとられて思うように前進できない。誰かに追われていることは確かで、追手は着々と迫ってくる。
 精神科医の書いた本によれば、「砂浜」というシチュエーションが、「水飴」「砂漠」に変わることも多いらしい。サト助なんかは、高校生の時にダラしなく生活したツケで、
「登校時間が迫っているが、登校の準備がどうしてもできない」
「期末テストがどんどん迫ってくるのに、数学Ⅲと物理と化学の準備が全くできていない」
という同工異曲の悪夢を今でもよく見る。
 何しろ高3の9月まで医学志望で医系&理系クラス、10月から文転して日本史と古文と世界史に夢中。それなのに1月末に期末テストがあって、数学Ⅲと理系の物理&化学をチャンとやらないと、例え第1志望の東大文Ⅰに合格しても、高校を卒業できないハメになる。人生最大のピンチが1月末に待っていたのである。
11835 りんご
(欧米のリンゴ。これもまた1流ホテルのリンゴでござるよ)

 あのピンチがあまりに強烈だったせいか、789歳の超高齢になった今でさえ、サト助はまだ同工異曲の悪夢をみる。チャイムが鳴って、講師であるボクは授業に行かなきゃいけない。実際、講師仲間はみんな授業に出かけてしまった。しかしまず、「どの教室だったか」が分からない。
 講師室担当の事務職員に尋ねて、まあ教室は分かった。しかしその教室がどこにあるのかよく分からない。とりあえずエレベーターのボタンを適当に押して待つが、エレベーターはなかなかやってこない。
 ようやくやってきたエレベーターに乗って教室に向かうと、今井担当のはずの教室では、別の先生が熱のこもった授業を展開中である。尋ねてみると、「今井先生は別の教室ですよ」との答え。またエレベーターで講師室に引き返し、教室番号を確認し、エレベーターを待ってそこに尋ねてみると、やっぱり別の先生が授業をやっている。
 時計を見ると、もう授業時間の半分を過ぎている。もうどうしようもない、あきらめたほうがいいのだが、「10分でもいい、5分でもいい、とにかく授業をしなくちゃ」と焦って、手近にあった教室に入ってみる。
 すると、おお、まさにそこが今井先生の担当教室。でも、「今日は自習なんだ」と早とちりした生徒たちは、大半がとっくに帰ってしまっている。それでも授業を始めてみると、調子はいいのだが、やらなければならない量がビックリするぐらいあって、残った10分かそこらで最後まで終われるはずがない。
 夜中にふと眠りから醒めて、それでも無理して眠ろうと努めたあと、今井君は決まって上記のような夢をみる。午前3時とか4時とか、夜明け前の悪夢は特に受験生時代の夢が多い。
 あの頃よりずっと苦しい体験は、オトナになってからタップリしたはずであるが、「悪夢」ということになると、不思議なほど受験時代に集中する。オトナになってからのイヤな経験が夢に出てくることなんか、ほとんど記憶にないぐらいである。
11836 青りんご
(欧米の青リンゴ。日本のフルーツって、もしかしたらガラパゴス化しちゃってるのかい?)

 だから諸君、クマどんは午前3時なり4時なりにふと目が覚めて「あれれ」と思った時は、もう無理をしない。消防車なり救急車なりが遠くを走りすぎて行ったり、月明かりが妙に明るかったり、しんしんと雪の降る気配がしていたり、イヌの遠吠えが聞こえていたりするのに、まだ目を閉じて「あと2時間どうしても眠らなくちゃ」というのは、やっぱり無理があるのである。
 そこで今井君は「午前3時以降にふと目が覚めたら、そのまま朝まで起きていよう」と決めている。12月25日、外で冷たい風雨が続いているパリの深夜3時、サト助はまさに「ふと目覚める」をやってしまった。おそらく昨夜遅くすすった「ひぐま」のラーメンが塩辛すぎたので、喉が渇いて目覚めたのである。
 受験生諸君は、こういうときはあくまで冷たいお水をゴクゴクやりたまえ。麦茶やウーロン茶やオレンジジュースでもいいが、サト助はもうすっかりオトナであるから、パリで午前3時に目覚めたら、何よりもまず冷たいビールをグビグビっとやって、50%の目覚めを100%までもっていく。
 この場合、水でなくてビールをグビグビやるのは「あわよくば、もうヒト寝入り」と企んでいるからであって、実際たった1杯のビールが利いて「そのまま翌朝9時までグッスリ」ということもマレにある。しかし普通はそれで完全に目が覚めて、じっくり読書しながら朝を迎えることになる。
11837 もろこし
(秋田銘菓 もろこし。眠れなかったパリの夜は、思い切って「もろこしナイト」にしてしまった)

 12月25日午前3時に目が覚めたパリのサト助は、何だか呆然としながらソファに座り、「よおし、ホントにサンタさんが回ってくるかどうか、待ち受けてやろうじゃないか」と考えた。確かに、まさにサンタさんが世界中でプレゼントを配っている時間帯なのであった。
 目の前のテーブルには、「コンシェルジュサービス」の無料フルーツ盛り合わせが置かれている。毎日1回、ミネラルウォーターと一緒にフルーツ盛り合わせのサービスがあって、ナシ、リンゴに青リンゴ、キウィ、ライチ、そういう新鮮な果実がお部屋にサービスされる。
 もちろんこれはサンタさんのプレゼントではないが、自慢気にサービスされるフルーツの1つ1つは、日本のフルーツを見慣れた目にはマコトに寂しいものがある。
 こんなに小さくて貧弱なフルーツでは、日本なら安売りのスーパーでも相手にされないかもしれない。しかし欧米では、これでも立派な高級フルーツ。超一流ホテルの朝食ビュッフェでも、並んでいるのはやっぱりこの程度のものばかりである。
 結局このまま朝まで呆然とソファに座っていただけであったが、やっぱりサンタさんは現れなかった。もちろんサンタ之助だって、東洋からやってきた巨大グマにどんなプレゼントを与えたらよいものか苦慮した末、無言のまま立ち去ったに違いない。
 あまりに寂しいからサト助は一計を案じ、テーブルの上にティッシュを広げ、「秋田銘菓 もろこし」を広げた。落雁と同じような干菓子で、落雁よりもずっとキナコの分量が多い。このあいだ秋田に日帰り旅行した時に、なつかしのステーションデパートで買ってきた。それをパリまで持参したのである。
 キナコをガッチリ固めた健康的なお菓子をポクポクやりながら緑茶をすすれば、パリに居ながらにして故郷・秋田を満喫できる。オペラ座でナマハゲが乱舞し、エッフェル塔の周囲を秋田犬が駆け回るような感覚だが、こういうミスマッチもまた素晴らしいじゃないか。
11838 オペラ座
(12月25日朝、冷たい雨の中に立つオペラ・ガルニエ)

 受験生諸君、センター2日目の朝まだき、初日の文系科目で疲れきっているはずの諸君でも「ふと目が覚めちゃった」ということは起こりがちだ。しかしそのとき決して焦ってはならないので、無理して眠ろうと努力する必要なんかないのである。
 眠れないで焦りながら今井ブログを読みふけり、「なんだ下らない」とタメイキをついてから、ニヤニヤしながら30分ぐらいそのまま横になっていたまえ。それでも再び眠りに戻れないようだったら、むしろサッサと起き上がったほうがいい。
 無理して悪夢にうなされるより、理科系科目のウォーミングアップでもしていれば、ホンモノの朝はあと2時間か3時間で呆気なくやってくる。そのぶん余裕をもって朝メシでも味わえば、2時間も悪夢にうなされるより遥かにマシな朝になるはずだ。

1E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES 6/6
2E(Cd) Kempe & Münchener:BEETHOVEN/SYNPHONIE Nr.6
3E(Cd) Karajan & Wiener:BEETHOVEN/MISSA SOLEMNIS 1/2
4E(Cd) Karajan & Wiener:BEETHOVEN/MISSA SOLEMNIS 2/2
5E(Cd) Furtwängler & Vienna:BEETHOVEN/SYMPHONY No.7
total m125 y2305 d12500