Tue 131224 センター試験の前夜 冷たい雨のパリの夜 それでもラーメン(マタパリ20) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 131224 センター試験の前夜 冷たい雨のパリの夜 それでもラーメン(マタパリ20)

 予備校講師というのはマコトに困ったヒトビトであって、センター試験本番が迫ると何だか寂しくてたまらない。「ああ、今年の生徒たちも、みんないいヤツらだったな」とツブヤキながら、ひとり寂しくサカズキを傾けていたりする。
 その心境はちょうど、息子や娘を東京の大学に旅立たせてしまった田舎の両親と同じようなものであって、「これでもうオレの出る幕は終わったんだな」とタメイキをつく父親の気持ちは、きっとこんな感じなんだと思う。ま、大袈裟に言えば、「娘をヨメにやる」という晴れがましい日のパパみたいなもんである。
 浪人生対象の予備校だと、この寂しさはもうワンランク強烈なものがあって、油断するとホロリと涙がこぼれたりする。
「去年の4月に初めて出会った時のオマエたちは、まだコドモっぽかったよな」
「この1年でオマエらもすっかり成長したよな♡」
「いいかオマエたち、全力を出し切ってこいよ♨」
みたいな、マコトに微笑ましい「出陣式」や「壮行会」が開催され、生徒たちも激しくシャクリあげながら「センセー!!」「泣かないで!!」と絶叫することになる。
オペラ座
(冷たい雨に濡れる夜のオペラ・ガルニエ)

 代ゼミから移籍して9年が経過、今井君はセンター前日のそういう感動的シーンからは、もうすっかりご無沙汰である。センター試験を間近に控えた受験生に直接ゲキを飛ばす機会は、滅多にやってこない。
 もちろんそのほうがノーマルな世界なので、青年期を左右するかもしれない大切な試験の前日や前々日に、「頑張れよ」「緊張するなよ」と講師が絶叫し、生徒たちも「センセー!!」「悔いのないよう力を100%出し切ってきます」「センセが大好きでした♡」と絶叫を返すような、そんな昭和じみた青春ドラマごっこをやってるんじゃ、落ち着いて試験に臨めない。
 ま、一応それでも常識的な挨拶だけはしておかなくてはならないから、「普段どおりやってきなさい」とだけ言っておく。「大逆転だぁ!!」とか「ミラクルを起こしてこいよぉ」とか、そういうお気楽なことを言っているから生徒が力を出し切れないのであって、今後のシューカツでも資格試験でも、何より大切なのは「普通にやってくる」ということである。
イルミネーション
(クリスマスイブの雨のパリ。向こうはヴァンドーム広場)

 そこでそろそろ今井ブログも普段に戻ることにしたい。センターが迫ったこの2~3日、受験生諸君のことが心配になりすぎて、思わずサト助自身が普段通りではなくなっていた。
 このブログの読者は受験生ばかりではない。というより、受験生世代よりずっとオトナ世代が多いのであって、受験生のパパやママ、予備校職員として受験生をサポートするオトナたち、大学学部生やシューカツに励む諸君、そういう読者層のことを忘れてはならない。
 そこでホントに不謹慎ではあるのだが、センター前日のブログなのに旅行記「マタパリ」に戻ることにする。世間の目を気にしてセンター試験のことも書いてみたが、明日センターを受けにいく受験生諸君だって、内心では「誰かセンター以外のことを書いてくれないかな」と思っているに違いない。
 この記事を1月18日の朝、センター試験会場に向かう電車の中で読むヒトもいるだろう。緊張で目の前が赤や緑に染まる思いの中、せっかく緊張を和らげようとサト助ブログを開く。すると、ありゃりゃ、サト助までが「いいか、緊張するな」「集中するんだ」の類いのことばかり延々と書いているとしたら、そっちのほうがダメじゃないか。
クマさん
(パリ、東駅でクマさんに遭遇)

 そもそも不謹慎というのは、旅行記の程度のことじゃないのだ。昨日のニュースで見かけた東北地方某県の小学校教師の話をチョイと引用しておこう。ホントに困った先生なのだが、ヤフーニュースによるとこのセンセは、
「宿泊施設内で缶ビール1缶、日本酒7~9合を飲み…(中略)…外の飲食店でビールを中ジョッキ1杯、日本酒コップ10杯、焼酎の水割り5杯程度飲んだという。その後、男性教諭は無施錠の…(後略)」
と、恐るべき酒豪ぶりを発揮し、その後で問題行動に至っている。センセー、いくらなんでも飲み過ぎじゃないですか。おお、こりゃやっぱりヒドすぎるね。
 このレベルの不謹慎に比較すれば、センター前日のブログに旅行記を掲載するぐらいは不謹慎でも何でもないので、ただ単に「緊張するなよ」と連呼するより、遥かに受験生の緊張を和らげる効果があると信じる。
ひぐま
(ラーメン ひぐま。オペラ・ガルニエ前店)

 ただし、「旅行記マタパリに戻る」と宣言したまではいいが、「じゃあ何を書くんだ?」と自問してみると、あらら、今夜は何も書くことがないのに気がついて愕然とする。
 12月24日午後9時、ストラスブールからTGVでパリ東駅にたどり着いてみると、パリは今朝と同じ冷たい雨が降り続いている。ますます北風が強くなって、「もう今夜はホテルに帰って眠るしかないな」と、あきらめて俯くしかなかった。
 そこで諸君、サト助は12月24日の夜を、ラーメンを食べて過ごすことにした。クリスマスイブのパリでラーメン。古今東西、これほど自暴自棄な行動が考えられるだろうか。
 昨年のクリスマスもパリ。今年のクリスマスもパリ。こんなにパリのクリスマスが好きということは、お下劣な「下司の勘ぐり」をするヒトなら、「ははあ、なるほど」とニタニタしたくなるかもしれない。
 つまり、「さてはパリに何かあるんだな♡」であって、クリスティーヌとかカトリーヌとか、ジョセフィーヌとかイボンヌとか、その類いの特濃な人物と一緒にパリのクリスマスを過ごす。オシャレでUOMOなオヤジとか、ちょいワルでLEONなオヤジなら、そのぐらいやりそうじゃないか。
 しかし諸君、さすがにUOMOにLEONはもう古い。「ちょいワル」なんて、20世紀末の話である。「クリスマスのパリだから、シャンパンにフランス料理に高級ワイン」というんじゃ、あまりに発想がステレオタイプだ。
 それとも、このクマ蔵がカトリーヌやクリスティーヌを相手に「ジュテーム」「モワ、オースィ」「シルブプレ」「ウィ」「オー、ララー」とか、そんな恐ろしい世界を演じなきゃイケナイの? そんなの、内気なサト助は確実に卒倒しちゃうよん。
ラーメン餃子
(オペラ座前の「ひぐま」。餃子はいいが、ラーメンはどうも...)

 もしそんなことやんなきゃいけないんだったら、ボクチンは絶対パリになんか来ない。東京で「日本酒コップ10杯」みたいなことをやって、あとはもうカラオケで高歌放吟、慶応「若き血」に早稲田「紺碧の空」、そういうものを熱唱して酔いつぶれるほうがずっとマシである。
 というわけで確認するけれども、12月24日の今井君はガラガラの「ラーメン ひぐま」に入った。いつもは行列が出来ていて20分待ちor30分待ちは珍しくない「ひぐま」であるが、さすがにクリスマスイブの「ひぐま」はお客もマバラである。
 しかも、この日クマどんが選んだのはオペラ座前の「ひぐま」。ホントなら本家本元の「ひぐま」まで足を伸ばすところだか、さすがにこの夜の雨は冷たすぎた。手近な店でいいから、とにかく早く暖まりたかった。
 どうやら「ひぐま」は多店舗展開に舵を切ったようである。オペラ座前にも、ルーブル付近にも、どんどん「ひぐま」が姿を現し、そして店舗が新しければ新しいほど、そのラーメンにはガッカリする。
 この夜のオペラ座前店は、「ガラガラも、むべなるかな」という感じ。見た目はキレイで悪くないが、麺がボソボソ喉に引っかかって、とても最後まで食べきれるシロモノではなかった。
 完食を途中であきらめて店を出ると、身体ばかりか心まで冷えきって、「こりゃ何でもいいから早くお部屋に戻って、ヌクヌクしながら明日の計画を練るしかないな」と決めた。
 というか、明日の計画はもうすっかり決まっている。とにかく暖かい部屋に帰ること、マズかったラーメンの記憶を消し去ること、それだけのためにクマどんは、雨に濡れた夜のパリを駆け抜けたのである。

1E(Cd) Solti & Chicago:BEETHOVEN/SYMPHONIES 1/6
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