Sun 131215 ストラスブールに出発 モスクワ行も出る東駅 インテリ家族(マタパリ13) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 131215 ストラスブールに出発 モスクワ行も出る東駅 インテリ家族(マタパリ13)

 「ホテルを7時前に出る」などという勤勉なことをしたのはホントに久しぶりである。外国での今井君は、骨の髄まで怠け者。普段なら9時に起きて、それから1時間もタップリお風呂につかって、お昼近くまでゆっくりしてから、やっと腰をあげる。
 部屋の外ではハウスキーピングのオバサマたちが「早く部屋を出てくれませんかね」と、盛んにプレッシャーをかけてくる。掃除機の音がブンブン響き、タオルやシャンプーや石鹸を満載したワゴンが、今井君のお部屋の前にデンと据えつけられる。
 まるで「この部屋のヒト、お昼近くなのにまだ部屋にいるんですよ」「困ったクマですよね」「冬眠中なのかしらね」と、肩をすくめながらヒトビトに訴えかけるかのようである。国内のホテルでもだいたい同じアリサマになるので、要するにこの怠けグマのグータラぶりは日本でも外国でも変わらないのだ。
 しかし諸君、この朝は普段の朝とは別格、何しろ12月24日の朝なのだ。ハウスキーピングのヒトだって、早く仕事を一段落させてオウチに帰りたいだろう。その辺のことも考慮して、朝6時45分にお部屋を出るプランを前もって確定させてあった。さすがは日本一優しいサトイモである。
ストラスブール1
(ドイツ国境の町、ストラスブールの大聖堂。天使の羽根に見えるのは、もちろんクリスマスデコレーション)

 優しいサトイモ君は、12月24日・25日・26日の3日間、お部屋係のヒトに普段より多くのチップを置くことにしている。もちろん威張るわけであるが、さすがにクリスマス3日間は特別なんだから、お礼だって多めでいいはずだ。26日はBOXING DAY。日本とはちょっと違って、特別の日が1日多いのである。
 では、まだ真夜中の雰囲気の6時45分にホテルを出て、いったいサト助君はどこに向かうのであろうか。まず地下鉄でパリ東駅へ。オペラ駅から東駅Gare de l’Estまで、7号線で5駅か6駅。東駅からはTGVで3時間、今日の目的地はドイツ国境の町ストラスブールである。
 サンラザール駅やリヨン駅に比較すると、東駅は圧倒的に雰囲気がよろしくない。リヨン駅のような高級レストランもないし、キレイに改修されたサンラザールみたいに、ショッピングモールを形成しているわけでもない。
 ましてこの日は、朝まだきの暗闇の中を冷たい雨が横なぐりに降りしきっている状況。地下鉄から国鉄駅への扉が閉鎖されたままで、大きなスーツケースを抱えた旅行客が右往左往したり、雰囲気はどんどん悪くなる。
東駅
(朝まだきの雨に濡れ、何となく危険なカホリのパリ東駅)

 それでもここは、巨大な中央駅である。ヨーロッパにおけるフランスの位置を考えればわかるように、国際列車の多くはパリから東に向かう。だから東駅は、たくさんの国際列車が発着する。今井君がこれから乗車するストラスブール行きTGVはかろうじて国内路線だが、15分後にはルクセンブルグ行きが出るし、ほんの3分後には何と「モスクワ行き」が控えている。
 ベルリン経由でモスクワまで、50時間以上、乗車料金は15万円ほど。ナポレオンでさえ惨めな撤退を余儀なくされた、あの遥かなモスクワに直通列車が走っているのだ。モスクワ・ベラルースカヤ中央駅に到着するのは、まる2日後のことである。
 おおむかし、今井君が学部生だった頃、「ハバロフスクからモスクワまでシベリア鉄道で1週間」という旅が大人気だったような記憶があるが、さすがに7日間の列車乗りっぱなしにチャレンジする勇気がないヒトは、まず「パリ⇔モスクワ2日間」に挑戦してみてはどうだろう。
発車案内
(ストラスブール行きの直後、モスクワ行きが出発する。その後はルクセンブルグ行きだ)

 さて、ストラスブールへのTGVであるが、今日もまた今井君はナマイキにも1等車に乗車する。これもフランス国鉄パスの威力であって、とりあえず3日間は1等車に乗り放題。往復ともTGVの1等車でふんぞり返ってこようと思う。
 通路を隔ててサト助の向こう側には、インテリ家族4人組が席を占めた。パパ・ママ・息子・娘の4人である。何で「インテリ家族」と分かるかというに、席に着くやいなや家族のうちの3人が無言で分厚い本を読みはじめたのだから、こりゃインテリに違いない。
 本を取り出さなかったのは、学部生と思われるお兄ちゃんだけ。彼はすぐにMac君を開いて、おそらく冬休みの宿題のレポートを書きはじめた。16歳か17歳の妹は、300ページぐらいあるペーパーバックス。50歳代前半のママは、やっぱり300ページぐらいのハードカバーを開いて読みはじめた。
 パパだけ何だかソワソワ落ち着かずに、ダラしなく息子にチョッカイを出していたが、息子が相手にしてくれないので、開いた本に仕方なく目を落とした。日本の家族みたいに「みんな一斉にスマホ」、兄はゲーム、妹はLINE、パパもママもメールに夢中、そんな姿はここにはない。
ストラスブール2
(ストラスブール大聖堂の遠景)

 そういうフランスのインテリ家族を眺めながら、それではサト助くんが何をしていたのかと言えば、「早速テーブルにお菓子を出して食べはじめた」というのだから恐れ入る。
 まずとりだしたのは、1年前のブリュッセル滞在時に大好きになった薄い生地のチョコパイ。ストラスブールまで3時間もかかるんだから、「朝からお酒」はガマンするにしても、こういうお菓子を持ち込んでパリパリやるのが、サト助の旅の楽しみである。旅は、オヤツをパリパリ&お酒をチビチビ、そういうダラしないことをしなきゃ楽しくない。
 ただし、今回みたいにすぐ近くにインテリ家族が座ったりすると、さすがのサト助だって遠慮が先にたつ。チョコパイをパリパリ、ナッツをカリカリ、そんなことをやって、彼らの読書や執筆の邪魔になりはしないか。「しょうがないアジア人だ」という冷たい視線を向けられないか。それが心配で首をすくめながら、できるだけ音がしないようにパリパリ&カリカリを続けた。
チョコ菓子
(チョコパイ。フランスのスーパーチェーン「MONOPRIX」のオリジナルブランド。薄くて軽い生地がサクサクして旨い)

 しかし諸君、こういう心配はご無用である。Mac君みたいに、暢気に「心配ゴム用」とか、そんなバカな変換をしたって、冷たい視線を飛ばしてくるヒトは誰もいない。
 お隣のインテリ家族の読書が続いたのも、せいぜいで15分。まずパパがグースカ眠りこけ、次に妹が、その次にママが、次々と睡魔に討死して、残るはお兄ちゃんだけとなった。何だ、みんな見栄を張ってただけじゃないか。
 お兄ちゃんはその後も30分ほど粘っていたが、太陽が顔を出した午前9時半まえには、彼もまた睡魔に降参した様子。結局、家族の読書は300ページのうち10ページ進んだ程度。あんなに分厚い本を、いつになったら読み上げるんだろうと、むしろサト助はそれが心配になるのだった。

1E(Cd) Jochum & Bavarian Radio:MOZART/THE CORONATION MASS
2E(Cd) Kremer:MOZART/VIOLINKONZERTE Nos. 2 & 3
3E(Cd) Jandó:MOZART/COMPLETE PIANO CONCERTOS vol.1
4E(Cd) Jandó:MOZART/COMPLETE PIANO CONCERTOS vol.2
5E(Cd) Jandó:MOZART/COMPLETE PIANO CONCERTOS vol.3
total m75 y2255 d12450