Wed 131204 リヨン旧市街の地形 ノドヒコについて 西の丘からの絶景(マタパリ5) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 131204 リヨン旧市街の地形 ノドヒコについて 西の丘からの絶景(マタパリ5)

 リヨンでも、駅前のクリスマス市がたいへんな賑わいである。何しろTGVで2時間も南下してきたわけだから、気温はパリよりも3~4℃高いだろうか。あまりに暖かくてクリスマスのピリッとした緊張感がないから、大好きなホットワインにも食指が動かない。

「クリスマス市」とはドイツ独特のものだったはずだが、この5年ぐらいで同じようなクリスマス市がヨーロッパ全域に一気に広まった。フランスでもスペインでも東欧各国でも、似たような屋台が広場を埋め尽くし、どこも同じような品物を並べている。

 おそらく日本でも、あと2~3年もすればクリスマス市は当たり前になってしまうだろう。すでに札幌の大通公園で、ドイツ仕様のクリスマス市を目撃した。「オマエの街にはクリスマス市がないの?」「なんだ、田舎だな!!」という状況が目前に迫っているような気がする。

 こうしてクリスマス市が世界中に増殖していけば、真夏の真っただ中の南半球でもクリスマス市が始まっちゃうんじゃないか。リオのコパカバーナ海岸でもクリスマス市、タヒチのパペーテでもクリスマス市。そういうことになってしまうと、何となく本家本元のドイツが可哀そうであるが、それが「世界って一つじゃないか」ということなら、やむを得ないものはやむを得ない。
丘からの絶景
(西の丘から眺める夕暮れのリヨンの絶景)

 さて、リヨンはフランス第2だか第3だかの大都会であって、人口も160万人を超え、国際警察インターポールの本部もここに置かれている。金融の一大中心地であり、サミットの会場になったこともある。なかなか侮れない、たいへんな大都市である。

 しかし話を観光に限れば、東のソーヌ河と西のローヌ河に挟まれた狭い旧市街をウロウロしただけで、ほぼ完了になる。マタパリ君がこれほどの大都市にたった半日しかかけないのは、そういう理由である。

 規模は全く違うけれども、リヨン旧市街の地形はニューヨークのマンハッタンをそっくりだ。NYのハドソン河にあたるのがソーヌ河。NYのイーストリバーに該当するのがローヌ河である。

 河に挟まれたマンハッタン島と同じように、リヨン旧市街は細い中洲のように南にむかってダランとぶら下がっている。その形は、赤塚不二夫が描いた人物の口の奥のノドチンコに似ている。
ソーヌ川の風景
(ソーヌ河の風景)

 「ノドチンコ」という音の響きが少なからず下品なので、なぜ下品なのかはここに書かなくても誰でもわかるだろうから説明は必要ないと思うが、上品なオカタは「ノドチンコ」というコトバを避けて通らなければならない。正式には「口蓋垂」であるが、今井君の語学のセンセの1人は、「ノドヒコ」という聞き慣れないコトバをおつかいになった。

 そのお気持ちもマコトによくわかるので、女子学生もたくさん出席しているドイツ語やフランス語の授業で、「Rの発音はノドチンコをふるわせるように致します」と連発するのは、上品な大学のセンセとしていかがなものか。そこで彼は「ノドヒコをふるわせるんです」と説明したが、今度は「ノドヒコって、なんだろう」ということになってしまった。

 すると「要するにノドチンコです!!」という元も子もない話になって、全てがオジャンになってしまうのだが、ノドヒコとは「喉彦」であり、「彦」とは「美しく強い男子」「身分の高い男子」を示す尊称または接尾辞の一つである。今でも「一彦」や「和彦」、「孝彦」や「明彦」、男子の名前としてそこいら中でヒコヒコ&ヒコヒコ言っているはずだ。

 しかしそういう話になってしまうと、「ノドチンコ」と「ノドヒコ」とがガッチリ握手をしてしまうというか、ノドチンコをノドヒコと呼び変えてもあんまり違いを感じなくなってしまう。というより、「なるほど」と頷いてしまうヒトが多いはずだ。
サンジャン大司教教会
(リヨン旧市街。サンジャン大司教教会)

 「喉彦」を「喉肥子」と書く場合もある。「彦」→「美しく強い男子」→「肥子」というわけである。赤ん坊がムクムク太っているのは昔はたいへん喜ばしいことだったので、「こんなによく太って、将来は美しく強い男子になるでしょうね」と、みんなニコニコしながら赤ちゃんの顔を覗き込んだものだった。

 うにゃにゃ、こんなことじゃリヨンの話に集中できないリヨン。ただ、この上品な語学のセンセこそ、昨日の記事の「ヨーロッパでメニューと言ったら『定食』のこと。うっかり『メニューください』なんて言ったら、たいへんなことになります」という作り話を今井君にした張本人である。

 つまり、ノドチンコはあくまでノドチンコであって、無理してノドヒコなどという珍語を持ち出すまでもない。上品にしようというツマラン意識が作り話を生み出すので、珍語なんかつかって上品ぶると、かえって恥をかくことになるのである。
ケーブルカー
(丘にのぼるケーブルカー)

 さて、そこでマタパリ君はノドチンコの形のリヨン旧市街を横切り、西のソーヌ河をわたって、安くて旨い小レストラン=ブションの立ち並ぶ薄暗い一帯に入り込んだ。リヨンの観光客は何よりもまずこのあたりをウロウロするのである。

 NYで言えばニュージャージーにあたる地域が、リヨンでは小高い丘になっていて、丘の上には大聖堂もあるし、大聖堂の脇には見晴し台があって、リヨン旧市街を一望できる。

 丘の上からの眺めは、リヨンの代表的な風景であって、ガイドブックや観光用のパンフレットでは多くの場合この写真が表紙に採用されている。夜景も美しいだろうが、立ち並んだ白い壁に夕陽があたってオレンジ色に染まる景色は、おそらく夜景以上に美しい。

 マタパリ君がケーブルカーで丘にのぼったのが、午後3時ごろ。リヨンは北海道よりも緯度が高いから、12月の午後3時はすでに夕暮れであって、まさに白い壁がオレンジに染まっていくその瞬間であった。赤い屋根もますます赤く染まって、今井君は最高の時間帯にここにやってきたことになる。
蜂蜜
(おみやげに、ハチノス入りのこんなハチミツを買った。フランス人オバーチャンのお客が、うらやましそうに瓶をつまんで眺めていた)

 ヒコーキに乗ってミラノのマルペンサ空港に降りていく時にも、これとソックリの美しい町並みを見下ろすことができる。ヒコーキの左側にはコモ湖。右側はマッジョーレ湖。どちらの湖畔も白い壁に赤い屋根が印象的な美しい街が並ぶ。

 もう十年近くも昔のことになるが、ミラノに向かってどんどん高度を下げていくヒコーキからその絶景をみて、「こりゃ何がなんでもコモとマッジョーレを旅しなくちゃイカン」と決意した。しかもそれをホンの2~3年後に実現するところが、クマ蔵どんの素晴らしさなのである。

 夕陽に照らされるリヨンの絶景を眺めつつ、「おお、これは近いうちにもう1度、コモでもマッジョーレでもいい、イタリアの湖水地方を訪れなけりゃイカンな」と、思わず歯を食いしばった。「何で歯を食いしばったか」はマコトに理解しがたいところであるが、要するにクマどんは泣きそうだったのである。

 やがて夕陽はますます傾いて、遠いリヨンの町並みに1つ2つと明かりが灯りはじめた。そろそろ周囲のヒトビトも丘を降りようと焦り始めた様子。クリスマス市が似合わないほど暖かなリヨンだって、日が落ちれば一気に気温が下がってしまう。その前に丘を降りなければならないのである。帰りのサト助は、ゆっくり徒歩で丘を降りることにした。

1E(Cd) Preston:BACH/ORGELWERKE 6/6
2E(Cd) J.S.BACH/SILVIA(Cantata Opera in 3 Acts)1/
3E(Cd) J.S.BACH/SILVIA(Cantata Opera in 3 Acts)2/2
4E(Cd) Münchinger & Stuttgart Chamber:BACH/MUSICAL OFFERING
5E(Cd) Jochum & Concertgebouw:BACH/JOHANNES-PASSION 1/2
total m20 y2200 d12395