Tue 131203 速いけどコキタナイ 美食の街リヨンでテリーヌに感激する(マタパリ4) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 131203 速いけどコキタナイ 美食の街リヨンでテリーヌに感激する(マタパリ4)

 諸君、TGVはマジで速い。ブログ読者はご存知の通り、マタパリ君は滅多に「マジで」という言葉をつかわないから、そのマタパリ君が1行目から「マジで」と断言するとすれば、TGVはホントにマジで速いのである。
 パリの市街地は狭いから、駅近くのちょっと雰囲気の悪い地域を抜けてホンの10分も走れば、そこはもう田園風景である。するとTGVは遠慮も会釈もなしにいきなり最高時速に達し、あとは目的地まで時速300kmで疾走するのである。
 この15年、ヨーロッパには高速鉄道が雨後のタケノコのようにニョキニョキ登場した。ドイツのICEも速いし、イタリアのESも速い。オーストリアにはRJというものがあって、RJ=レイルジェットという命名に若干の恥ずかしさも感じるが、それでもやっぱり速い。
 しかし、ICEもESもRJも、速いのは「ところどころ」であって、ノロノロ運転の合間合間に、高速運転がチョコッと顔を出すという程度である。「普段はこんなにゆっくりですが、実はボクはこんなにスピードを出せるんですよ」と呟いて、ホンの10分か15分ホンキ出してみせるだけである。
 ところがフランスTGVとなると、様相は全く違うのである。最初の10分だけ遠慮してノロノロ、しかしそのあとは最後まで、ほぼ一定の高速を保って快走する。乗り心地は日本の新幹線とほとんど変わらない。
ルノール
(リヨンの名店、LE NORD)

 もちろん、弱点もたくさん見つかる。まず何といっても、運転間隔。新幹線みたいに「5分に1本」とか「10分に1本」とか、そんな夢のような話にはならない。せいぜいで1時間に1本だから、万が一乗り遅れたら、呆然と口を開けたまま1時間立ち尽くして待つしかない。
 「車両がコキタナイ」というのが次の弱点。こんなにオシャレなフランス人が、何で車両をこんなにコキタナイままにしておくんだか、マタパリ君にはちょっと不思議に思えるぐらいだ。まず、外見がコキタナイし、座席もトイレもデッキもみんなコキタナイ。何もかも清潔でピカピカの新幹線とは比べようもない。
 しかしそのあたりは、むしろ「オシャレなフランス人」という認識のほうに間違いがあるので、そこいら中にタバコの吸い殻をポイポイ投げ捨て、吸い殻だらけの道路をなかなか掃除しようとしないフランス人は、ごく一部はオシャレかもしれないが、全体としてはあんまり清潔好きとは言えないのだ。
ワイン
(LE NORDで飲んだ赤ワイン)

 正確には、「コキタナサを楽しんでいる」「清潔かつピカピカであることに、こだわりをもたな
い」「過度の清潔やピカピカを病的と感じる」ということかもしれない。うーん、日本人としてはやっぱりピカピカが好きなのだが、郷に入っては郷に従うしかない。
 沿線風景は、日本ではもう考えられないほど、広大な田園風景の連続である。見渡す限りの牧場と小麦畑が地平線まで続いている。パリ→リヨンの沿線には目立った山地もないし、深い森林地帯も存在しないから、ホントに地平線まで、どこまでもどこまでも田園風景である。
 雨模様の広大な風景のあちこちで、白い牛の群れやヒツジの群れが草を食んでいたり、馬が呆然と立ち尽くしていたりする。30年前の北海道ならこういう光景もあちこちで見られたかもしれないが、今井君の知る限り、北海道もすっかり都市化してしまって、なかなかこれだけの広大さを目にすることは出来ない。
店内風景
(LE NORD店内。頑張って着飾ったオジーチャン&オバーチャン集団が、マコトに可愛らしかった)

 さて、「とにかく、メシ」。腹を減らしたマタパリ・クマどんは、リヨンの街を一気にノシノシ北上して、目指す名店「LE NORD」に入った。リヨンには「ブション」と呼ばれる安くて旨い店がたくさん軒を並べているのだが、たった半日のリヨン滞在だから、そういう店をゆっくり物色しているヒマはない。
 もしもリヨンの街が気に入ったら、また次の機会に1週間か2週間の予定で長期滞在すればいい。安くて旨い店の物色は余裕のあるときにすればいいので、今日はとにかく名の通った名店に最初から決めていた。ガイドブックによれば、LE NORDは「ポール・ボキューズ氏プロデュースのお店」。ま、間違いはなさそうだ。
 店内は、クリスマスの華やいだ雰囲気。オジーチャンやオバーチャンの集団が5組も6組も、彼ら彼女らなりにドレスアップしてやってきたという風情で楽しそうに騒いでいる。店内はほぼ満員。運よく奥のテーブルが1つだけ空いていたが、下手をすれば入口近くの吹きさらしで寂しいランチを余儀なくされるところだった。
 注文したのは、32ユーロのムニュ。ムニュとは「Menu」のことであって、前菜1品+メイン1品+デザート1品のコース料理である。腹を減らしたマタパリどんは、前菜にお肉のテリーヌ、主菜に大きなタラ料理、デザートにこれまた巨大なリンゴのケーキを選んだ。
タラ
(メインのタラ料理)

 1度書いたことがあるが、語学のセンセが授業中にする作り話の定番に、
「ヨーロッパでメニューと言ったら『定食』のこと。うっかり『メニューください』などと言ったら、メニューじゃなくて『定食』が運ばれてきてタイヘンなことになります」
というのがある。語学のセンセばかりではない。旅行用のガイドブックなんかにも、そういう話がマコトシヤカに掲載されているのをよく見かける。
 しかし諸君、その作り話、そろそろヤメにしたほうがいい。客が「メニュー」と言ったからといって、情け容赦なく『定食』なるものが運ばれてくるなんてことはありえない。
① Menuを注文するには、たくさんある前菜から1品、数々の主菜から1品、自分で選んで注文しなければならない。「前菜はどうしますか?」「メインは何になさいますか?」という質問なしに、いきなり「ハイ、これ定食ね」と運んでくるようなことは考えられない。
② いわゆる「メニュー」なら、ウェイターにお願いして1分もかからないはず。コース料理が運ばれてくるまでは、10分も15分もかかる。まさかメニューをもってくるまで、10分も我慢づよく待つヒトはいませんよね。
テリーヌ
(異様なほど旨かったテリーヌ)

 ま、そういうことであるが、諸君、この店のテリーヌは旨かった。何でこんなに旨いのか、理解できないぐらいに旨かった。別にクマどんはテリーヌ好きではないし、テリーヌを注文したのも「他にメボしい選択肢がないから」に過ぎなかったのだが、ホントに驚くほど旨かった。
 もちろん「空腹が最高のソース」なのであって、リヨンに着くまで飲まず食わずで通したのも一因だったかもしれない。しかしあの旨さは、まさに初体験。うにゃ、フォアグラでもタップリ練り込んであったかね。さすが美食の街リヨンのことだけはあった。
 もっとも、あんまりテリーヌに夢中になったおかげで、主菜のタラをもてあました。リンゴのケーキはもっともてあまして、最後まで平らげることが出来なかった。お店の人たちがとても優しくしてくれたのに、何だか申し訳ない気持ちでお店を後にすることになった。

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4E(Cd) Preston:BACH/ORGELWERKE 4/6
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