Mon 131202 リヨンに向かうヨン 中央駅6つ リヨンに着いたヨン(マタパリ3) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 131202 リヨンに向かうヨン 中央駅6つ リヨンに着いたヨン(マタパリ3)

 パリ滞在2日目のマタパリ君は、日帰りでリヨンを旅してこようと思う。リヨンまではTGVで2時間の道のり。日帰りはちょっとキツいが、やって出来ない距離ではない。
 フランスは、パリ一極集中の国である。パリ以外にどんな都市があったか、なかなか名前が出てこない。リヨンは、マルセイユとともに「フランスの第2極」を争っている都市であって、ローヌ河とソーヌ河に挟まれた旧市街は、特に歴史と伝統が幾重にも積み重なっている。
 ローマ帝国時代までは、ガリアの中心は何と言ってもリヨン。海運と地中海交易の中心がマルセイユなら、ここは最大のローマ軍団基地を擁する政治と軍事の中心地。一方、ローマ帝国のパリは「ルテティア・パリジオールム」という名の要塞に過ぎなかった時代が長い。
 そのあたりは、ぜひ辻邦生「背教者ユリアヌス」を読んでくれたまえ。ただし、分厚い中公文庫で上・中・下3冊。辻邦生どんの重厚な語り口は、21世紀の青年たちにはなかなか親しみにくいかもしれない。
リヨン駅
(時計台が印象的なパリ・リヨン駅)

 近代国家の交通網は軍備拡張と密接な関連があって、港湾が海軍と、空港が空軍と、それぞれ直接的に結びつくのは当然のことである。同じように鉄道網の発達は、近代陸軍の成長とほとんど正比例するのであって、例えば昭和の北海道の地図を眺めると、日本軍が北海道をどれほど重視していたかがわかる。
 昭和40年代以降、廃止&廃止の連続で、今やすっかり昔の面影はないが、昭和中期の北海道の鉄道網は「おやおや、こんなところにまで?」と驚くぐらい、クモの巣なみの綿密さで張り巡らされていた。
 もちろん「石炭産業のめざましい発展に伴って」なのであるが、それは要するにキレイゴトであって、富国強兵の旗印のもと、石炭なんかちっともとれないところにも、マコトに緻密な鉄道網が存在した。
リヨン駅のTGV
(リヨン駅にはTGVがズラリと並んでいる)

 パリには中央駅が6つもあって、これもまた近代国家建設時にどれほど陸軍勢力の発言力が強かったかの証左である。
 ① 北方向へは、北駅(Gare du Nord)
 ② 東方向へは、東駅(Gare de l’Est)
 ③ リヨン方向(南東方向)へは、リヨン駅
 ④ 南方向へは、オーステルリッツ駅
 ⑤ 南西方向へは、モンパルナス駅
 ⑥ 北西方向(ノルマンジー)へは、サンラザール駅
以上6つの中央駅が、パリ都心をめぐって円形に立ち並んでいる。
 フランスの地図を、ちょっと目を離してマクロに眺めてみたまえ。フランスは6角形の国であって、その6角形を6分割すると、6つのパイのそれぞれに地方中心都市が1つずつ存在する。そのパイの6つの中心を、鉄道網でパリと緊密に結びつけようという意図がすぐに理解できる。
トランブルー
(リヨン駅構内の高級レストラン「LE TRAIN BLEU」。メニューを見るに、朝食だけで50ユーロぐらいかかりそうなので、遠慮することにした。だって諸君、50ユーロって、今や7500円でござるよ)

 地理を学んだヒトは、「ケスタ地形」という言葉を記憶していると思うが、地形自体が城塞として機能するケスタの真ん中に、圧倒的大都市の首府パリを置き、6地方をパリと緊密に結びつけた上で、地方どうしの横の結びつきをあえて構築しないまま、長期にわたって放置したのである。
 近代フランス政府による地方掌握の戦略が、こうしてあまりにも露骨に見えてくる。地方どうしが手を結んで首府パリに反抗しようとしても、交通網がそれを許さない。
 こうして地方都市はパリに力を吸収され、強烈な一極が出来あがる。この状況では、外国勢力がどこか1つの地方都市に肩入れして勢力を伸ばし、そこを橋頭堡としてフランス国内に侵入することも困難になる。近代フランスは、陸軍優先の大陸国家を志向したのである。
 その志向の強さは、「中央駅6つ」という状況に今も強烈に現れている。ニューヨークだって、グランドセントラルとペンステーションの2つ。ライバル・ロンドンも、ヴィクトリア・キングズクロス・チャリングクロス・ウォータールーの4つである。
 ベルリンはオスト駅とツォーロギッシャーガルテン駅に分かれていたが、最近になって中央駅を統合してしまった。東京は、「上野駅」という中央駅の存在意義がどんどん薄れていって、2015年には東京駅にほぼ統合。いまだに「6つ」という帝国主義時代的状況が残っているパリは、マコトに珍しい都市である。
10時58分発
(リヨン駅10時58分のTGVでリヨンに向かうヨン)

 おやおや、クマ蔵どんの悪いクセで、ついつい盛り上がってしまった。予備校講師の日常茶飯にしか興味のない諸君、ホントに申し訳ない。しかし、今井君がいつもブログをこんなに長く書くのには意味があって、実は受験生諸君に「長文アレルギーをなくしてほしい」という一心なのである。
 気づいていただろうか。今井ブログは、ほぼ毎回A4版2枚半から3枚の分量。これって、難関大学の英語長文問題とほとんど同じ長さなのだ。旧帝国大学レベルの国立大、早稲田慶応上智に関関同立、およそ「難関」と名のつく大学の英語長文問題と同じ長さなのである。
 たとえ日本語であっても、このぐらいの長さの文章を連日読破していれば、少なくとも長文アレルギーはなくなる。この長さの文章を一息に読み通す忍耐力がついて、別に肩に力を入れなくとも、リラックスして最後まで読み切れる。
 話は国語の現代文でも同様であって、もちろん質の違いに目をつぶってもらわなければならないにしても、コムズカシイ長文を毎日読破することで、少なくともアレルギーぐらいはなくなるかもしれないと期待している。
 しかしマコトに残念なことに、やっぱりブログはブログであって、読者の興味はこの類いのことにはなかなか向かってくれない。
「もっと手っ取り早く、予備校講師の日常生活を知りたい」
「先生は他のどんな先生と仲がいいんですか?」
「最近だれと飲みに行きましたか?」
みたいな週刊誌的興味が中心になるのが実情。「将来の夢は?」と尋ねられれば「国際的な仕事がしたい!!」と異口同音に答えるワリに、外国の旅の話になると、いきなり興味を失うヒトが多いようである。
一等車
(TGVの一等車内。新幹線グリーン車に比べると、さすがに貧弱な感じが否めない)

 というわけで、パリからリヨンに行くには、リヨン駅からTGVに乗る。リヨン方面に向かうからリヨン駅。わかりやすそうで、わかりにくいネーミングであるが、11時にリヨン駅を出発したTGVは、13時にリヨン・ペラーシュ駅に到着する。
 パリは冷たい雨だったが、リヨンに着いてみると雨はすっかり上がっていて、重い曇り空ではあるが観光には十分である。というか、TGVで2時間も走れば、東京と京都、あるいは大阪と福岡ぐらいの距離を駆け抜けたことになる。天気が違うのも当たり前だ。
 では、これからリヨンの街に出る。とりあえず、腹が減った。リヨンは食い道楽の街であって、観光もまず何と言ってもメシから始まる。とにかくメシ&メシ。ついでにワイン。こうして、すっかり堕落したマタパリ君のリヨン観光が始まった。

1E(Cd) Harnoncourt:BACH/WEIHNACHTSORATORIUM 2/2
2E(Cd) Eduardo Egüez:THE LUTE MUSIC OF J.S.BACH vol.1
3E(Cd) Brendel:BACH/ITALIENISCHES KONZERT
4E(Cd) Casals:BACH/6 SUITEN FÜR VIOLONCELLO 1/2
5E(Cd) Casals:BACH/6 SUITEN FÜR VIOLONCELLO 2/2
total m10 y2190 d12385