Mon 131125 原点回帰 秋田への旅 ラーメン白樺の感激(第1999回 カウントダウン1) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 131125 原点回帰 秋田への旅 ラーメン白樺の感激(第1999回 カウントダウン1)

 更新1999回を迎え、いよいよミレニアムが迫ってきた。明日の第2000回が1つの到達点、明後日の2001回が再スタートラインである。
 これほど大切な3回を、何の変哲もない記事で済ませるわけにはいかないから、12月18日、早朝4時に起床してミレニアムへのカウントダウン2を書き終えた直後、今井君はかねてから企てていた「秋田への日帰り旅」に出発した。
 「2000回を記念して原点に戻ろう」という発想であり、2001回を原点からのスタートで飾りたかったわけである。今井クマ蔵の原点は、何と言っても故郷・秋田であって、江戸時代に河村瑞軒「東廻り航路」の港町だった秋田市土崎港こそ、すべての出発点であった。
 タップリ貯まっているANAのマイルを駆使すれば、秋田への日帰り旅は、少なくともヒコーキ代については、ゼロ円で可能。バス代とか電車代とか食事代は少々かかるけれども、まあそんなにうるさく批判しなさんな。
 これだけお仕事が立て込んで、首都圏と全国各地をビョンビョン飛び回ってきたスケジュールも、なぜかこの日1日だけポッカリ空いて、クマ蔵の原点回帰を促してくれた。10時半に羽田を飛び立てば、午後1時すぎには秋田市土崎港に到着できる。帰路は、夕暮れ7時がラスト。ゆっくり6時間の滞在が可能だ。
味噌ラーメン
(秋田市土崎港、「白樺」の味噌ラーメン。これこそクマ蔵の原点回帰である)

 「なぜ原点回帰なんか考えたのか」であるが、この2年ほど今井君がマコトに寂しく&ションボリ過ごしていて、あまり元気がなかったからである。こんなに世界中をビュンビュン旅してまわり、全国各地に出没しては大喝采と大爆笑の渦を巻き起こしているサト助が、実はションボリしていたとは、読者諸君は想像もできないだろう。
 実は2011年の夏ごろ、ある超有名国立大学から今井君に「特任准教授を引き受けてもらえないか?」と、ごく内々に話があった。もちろん今井君としては予備校講師こそ本業であって、予備校をヤメる気なんかサラサラなかったが、「いまの立場はそのまま、大学には週1回か2回だけ顔を出すだけでいい」とのことだったから、内心マコトに嬉しかった。
 准教授として成果を出せば、特任教授への昇格も考えられるという。今井君みたいな、学問上では何の業績もない平凡な人間として、「特任」という但し書きがついているとしても、「准教授」とか「教授」とか、そんな晴れがましく華々しい肩書きをもらえるなんて、そりゃお断りするほうが変である。
 ただし、とにかく本業をオロソカにするつもりはないし、周囲に迷惑をかける訳にもいかないから、「たとえ『週1~2日』という条件であっても、少なくとも3年は待ってほしい」「5年待ってもらうかもしれない」と、謙虚にお返事しておいた。
 お話をくれた側でも、「それはもちろんだ」「その間にどうしても論文を1本書いてもらわなければならない」とおっしゃるので、早速クマ蔵は5年後を目指し、論文の執筆を準備。国会図書館で資料収集さえ開始した。
白樺
(秋田市土崎港、サッポロラーメン「白樺」。さすがに店舗はすっかり古びていた)

 お話をくれたヒトに迷惑がかかるといけないので、当然そんな話があったことを外に漏らすわけにはいかない。ごく親しいヒトにだけ、大学名を伏せたままでいろいろ相談してみた。「それは是非チャレンジしてみるべきだ」という意見を聞き、2011年秋から2012年春にかけてのクマ蔵は、前代未聞に張り切っていた。
 中でも今井君の母上「快傑ババサマ」の反応は秀逸。「そんな虫のいい話があるわけがない」「何を馬鹿げたこと言ってるんだ」と一蹴するのだった。何しろババサマの兄上(今井君の伯父上)は静岡大学・元学長であるから、兄がどんなに努力のヒトであるかを間近で見てきた。
 ババサマによれば、「兄サンなんか、頭はちっともよくない」「読書のスピードも数学の頭のキレもごく平凡」「それなのに、よくもまああそこまでいった」「努力は才能に勝る」なのである。その上で、
「大学教授というものになるには、どれほどの努力が必要か」
「それなのにオマエはこの30年間、ずっと怠けてばっかりだ」
と、まるで突き放すように可能性のすべてを否定。そして最後に、
「しかし万が一そんな話が実現するなら、ワタシが死ぬ前に実現しなければ、何のイミもない」
と、カンラカンラ豪傑のように大笑いするのだった。ババサマ85歳、いまだに豪傑ぶりに衰えは見られない。
たてやま
(園児や小学生のころのクマ蔵が、快傑ババサマと何度も立ち寄った「オヤツの店 たてやま」。店舗は当時のままであった)

 快傑ババサマのお言葉を裏書きするように、その後クマ蔵への連絡はピッタリと途絶えた。2012年は、苛立ちの1年。2012年の今井君が奇妙なほどイライラしていたとすれば、何の連絡もないことへの苛立ちのせいで、他者のすべてが憎悪の対象になっていたのである。
 そのまま2013年になって「話は立ち消え」。この1年は諦めの1年であった。連絡がないまま1年→2年と空しく過ぎていき、今さらそんな話題をもちだしても、
「ああ、大昔そんな話もありましたな」
「あんな夢物語を、ホンキで信じていたんですか?」
と笑われるぐらい、すっかり生ぬるく気が抜けてしまった。2013年3月ごろ、今井君はもうすっかりションボリして、椅子から立ち上がるのも容易ではないぐらいだった。
 それでも、もちろん日々の仕事をないがしろにする訳にはいかないので、全国どこへ出かけても全力でお仕事に取り組んだ。せっかく集まってくれた生徒諸君や保護者の皆さんを失望させるなんてのは、予備校講師の風上にもおけない。
 だから2013年のサト助は、これまで20数年の講師生活の中で、おそらく最も充実した日々を送った。ふと溜め息をついて見渡せば、かつてあんなに重厚だった予備校の世界が、何となく幼くシボんでいくような気がする。重鎮・クマ蔵は、この流れをどうしても食い止めたいのである。
 業界全体として、若手の養成が足りなかったんじゃないか。20年も前のビッグネームが今もなおビッグネームの座に君臨し、それを脅かす存在がなかなか出現しない。ならば今井君はもっともっと意地でも大活躍して、いつか遠い将来、有望な若手講師が出現し、あとを引き継いでくれるのをじっと待ち受けようと思うのである。
銀水
(秋田市土崎港「港の銀水」。土崎のオトナの忘年会といえば、昔は必ずここだった)

 原点回帰とは、そういうことである。秋田空港から秋田駅まで、リムジンバスで30分ほど。秋田駅からすぐに乗合バス「将軍野線」に乗って、土崎中学校前まで30分。母校の姿を遠目に見て、これまた原点回帰である。
 ホンの小さなコグマ時代の今井君が遊び回ったのが、「お稲荷さん」「弔魂碑」「カネコ山」。すべて健在で、カネコ山の松の木1本1本に見覚えがあり、この数十年でどんな成長をとげたのか、成長の後さえ辿れるほどである。
 母校「土崎小学校」を眺めた後、秋田港の方向につながる「中央通り商店街」へ。ここには今井君の小中学校時代の懐かしい記憶がひしめき合っている。2~3週間前の記事に書いた文房具「オキナヤ」はまだ健在だったが、モンマ屋は影も形もなかった。
 他に消滅してしまったのは、山本スポーツ店、斉藤精肉店、パチンコ「さざなみホール」に「アイチセンター」、土屋せともの屋、石田文房具店、山本生花店、スーパー「ふせ」、フルーツの「つしま」、タクシー「港きんぐ」営業所、文具の「柴英」など。その中には、かつての同級生が営んでいたはずの店も多い。いやはや、年月の流れとは、マコトに容赦ないものである。
 しかし、サッポロラーメン「白樺」は、まだ健在だった。中学卒業直後、高校入学の直前に、担任だった佐藤先生に連れられて、クラスの数人でこのラーメン屋に入った。おやおや、ウルトラ大昔の記憶である。
かねこ書店
(中学時代の今井君が連日のように立ち寄った「かねこ書店」。マコトに残念なことに「売物件」の貼り紙があった)

 おそるおそるカウンターに座ると、おそらく2代目のガンコオヤジが暖かく迎えてくれた。今井君と同世代、街の衰退の歴史をラーメン屋のカウンターの奥から寂しく見守ってきた時代の証人である。カウンターの椅子も、あの頃から変わっていない。恐るべき時代物であった。
 「醤油ラーメン!!」「ビールも1本!!」と、勢い込んで注文すると、「ウチは、味噌ラーメンがウリなんですけどね」と苦笑いする。慌てて「やっぱり味噌にします」と注文し直した。
 5分ほど待って運ばれてきた味噌ラーメンの旨さに、まさにサト助は一驚を喫した。アブラでデロデロのラーメンや、1ブロック先からウンザリするほどトンコツ臭いラーメンに辟易してきた者として、こんなにシッカリ洗練されたラーメンにここで出会えるとは、全く期待していなかった。
 これこそ諸君、原点であり、原点回帰なのである。この味噌ラーメンに出会えただけで、もうイライラもションボリも全て解消できる。1999回、到達点2000回、再出発2001回の直前に、こんな素晴らしい原点回帰を可能にしてくれるとは、ラーメンとはマコトにフシギな食べ物である。
 ただし、中3と高1の間にはさまった宙ぶらりんの我々が、中3の担任教師とすすったラーメンが「味噌」だったか「醤油」だったか、さすがクマ蔵の記憶も定かではない。とにかく旨かった記憶だけがそこにあって、原点とはつねにそのようなものである。

1E(Cd) Ibn Baya:MUSICA ANDALUSI
2E(Cd) T.Beecham:BERLIOZ/LES TROYENS 1/3
3E(Cd) T.Beecham:BERLIOZ/LES TROYENS 2/3
4E(Cd) T.Beecham:BERLIOZ/LES TROYENS 3/3
5E(Cd) Zagrosek & Berin:SCHREKER/DIE GEZEICHNETEN 1/3
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