Sun 131013 牡蠣で仕上げ キント雲 ゼロ成長(第2次ンラゼマ地球一周記50 最終回) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 131013 牡蠣で仕上げ キント雲 ゼロ成長(第2次ンラゼマ地球一周記50 最終回)

 こうして諸君、第2次ンラゼマはとうとう無事に最終回までたどり着いた。8月末に旅とほとんど同時進行で書きはじめて以来、途中少々中断もあったが、11月6日、旅から帰って約2ヶ月後の完結となる。いやはや、マコトにおめでたい。
 旅の総仕上げは、サントノレ通りから少し入ったところにあるオイスターバーを選んだ。いや、実際には「オイスターバー」と呼んでいいものかどうか、少なからず躊躇せざるを得ない。パリの酔っぱらいが昼間からタムロする類いの「一杯飲み屋」の風情。もうとっくに酔っぱらいが集まっていた。
 それでも、自分たちで堂々と看板に「オイスターバー」と書いちゃった手前、チャンと新鮮な生牡蠣を揃えている。「EXPRESS」とヒトコト注文すれば、写真のような生牡蠣6個と白ワイン1杯がすぐに出てくる。
牡蠣
(EXPRESSの生牡蠣6個)

 店先には北斎の「神奈川沖浪裏」のつもりだろうと思われる絵が描かれ、店を切り盛りするオジサマ2名は、なかなかの日本ファンらしい。パリには、日本ファンがホントに多くて、旅していると快適でもあり、少々こそばゆくもある。
 店内には余り豪華とは言えないテーブルが3つ。奥のほうにもいくらか席があるようだが、カモメの鳴き声やら波の音やらが低いボリュームで店内に流れ続けて、客としてはますますこそばゆい。
 あんまりこそばゆいから、サト助はみんなが注文しているスタンダードな「EXPRESS」にプラスして、白ワインをボトル1本追加することにした。EXPRESSのグラス1杯を飲み干す前に「ボトル1本ください」とちょっとせかしてみたら、「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ」とオジサマに笑われた。
「店の奥に大きな倉庫があってね、ワインならいくらでも持ってきますよ」
「昼間からあんまり慌てて飲むと、酔っぱらってグデングデンになっちゃいますよ」
と、東洋のクマどんを上手に冷やかしてくれた。
店構え
(オイスターバー、店構え)

 牡蠣は、日本のオイスターバーで出てくるものに比較すれば、メッタヤタラに小さい。6個食べたって、満腹感は全くない。しかしそれは逆に「日本の牡蠣がデカすぎる」ということであって、牡蠣は出来ればこういう一口で食べきれる大きさがいい。
 いつの間に日本の牡蠣は、あんなに巨大な牡蠣ばかりになったのだろう。ニューヨークやボストンでオイスターバーに入っても、マルセイユやパリで牡蠣を注文しても、あんな夢のように大きな牡蠣が登場することはない。巨大牡蠣は、日本独特のものと言っていいかもしれない。
殻
(あっという間に牡蠣はカラだけになった)

 「ガラケー」というモノがあるが、日本の牡蠣はガラパゴス牡蠣になってしまったんじゃないか。略してガラガキ。3個も食べれば満腹で「もう勘弁」と唸りたくなるような巨大牡蠣は、うーん、今井君はあまり好きじゃない。牡蠣には牡蠣の適正な大きさがあって、「一口で飲み込める」というのが牡蠣のあるべき姿なんじゃないかと思う。
 ついでに思うのが、最近大流行であるらしい「牛脂注入肉」というシロモノもまた、日本独特のガラニクなのかということである。「ヒトクチ噛みしめるとアブラがジュワーッ」などというのは、考えてみるとやっぱり変なのだ。グルメも行き過ぎると、いろいろ奇怪なものが登場するのであるね。
看板
(大胆な看板。チャンと「オイスターバー」とある)

 ワインをボトル1本飲み干したって、30分もかからないのがクマ蔵だ。オイスターバーを出たのが午後2時前。まだまだ空港に向かうには早すぎる。せめてもう30分、締めくくりのパリを楽しんでいたい。
 そこで、「昨夜の立ち飲みワインバーに寄っていこう」と思いついた。思いついたも何も、オイスターバーとワインバーとは目と鼻の先であって、ホンの1ブロック、徒歩で30秒もかからない。昨夜サト助がテーブル代わりに使ったワイン樽が、すぐそこに見えている。
 昨夜のバーテンダーの優しいオジサマは見当たらなくて、きっとオジサマの奥方であるオバサマがカウンターに立っていた。「赤ワインをください」と声をかけると、昨日のオジサマと全く同じ口調で「ボルドーにしますか、それともブルゴーニュ?」と聞き返された。もちろんクマ蔵は昨夜と同じボルドーを選んだ。
ワインバー
(ワインバーで自分撮りを試みる。カウンターに小さくオバサマが写っている)

 さて、こうしてシミジミと旅が終わる。地球を東回りにグルリと1周して、人生を1日分だけ得したような気がするが、もちろんそんなはずはないのである。
  ① 東京からシカゴまで、時差はマイナス14時間。
  ② シカゴからサンパウロ、時差はプラス3時間。
  ③ サンパウロからパリ、時差はプラス4時間。
  ④ パリから東京、時差はプラス7時間。
 以上、地球を一周して、-14+3+4+7=0。マコトに悲しいことに、計算はピタリと合っている。キント雲に乗った孫悟空よろしく、里芋クマ助は自由自在に地球を飛び回ったように見えたが、実際には神やホトケの掌の上でチョロチョロやっていたに過ぎないのであった。
 こりゃ、致し方ない。旅のラストシーンも、徹底的に暴飲暴食をやろうじゃないか。シャルル・ドゴール空港ターミナル1のラウンジに陣取ったサト助は、「タダで飲み食い」に熱中することにした。考えてみれば出発の日の成田空港と全く同じことをやっている。ヒトもクマもサトイモも、そうカンタンには成長しないものなのである。

1E(Rc) Amadeus String Quartet:SCHUBERT/DEATH AND THE MAIDEN
2E(Rc) Solti & Chicago:BRUCKNER/SYMPHONY No.6
3E(Rc) Muti & Philadelphia:PROKOFIEV/ROMEO AND JULIET
4E(Cd) Midori & Mcdonald:ELGAR & FRANCK VIOLIN SONATAS
5E(Rc) Walter & Columbia:HAYDN/SYMPHONY No.88 & 100
total m65 y1927 d12122