Mon 130923 ミラクル君と兼好さま 4つから1つ選べ(第2次ンラゼマ地球一周記43) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 130923 ミラクル君と兼好さま 4つから1つ選べ(第2次ンラゼマ地球一周記43)

 9月11日、もう明日はホテルをチェックアウトして東京に帰ることになるから、実質今日がパリの最終日。ということは、8月28日に東京を出発して17日間、長かった今回の「第2次ンラゼマ」も、明日が最終日ということになる。
 いやはや、マコトにあっけない。4月末にボストンから帰国して以来、5月6月7月8月と、あれほど楽しみにして待ちに待った東回り地球一周だったのに、もう終わりがやってきてしまった。
 しかし諸君、短いのは旅ばかりではない。高校生活の3年だってあっという間、高校時代に夢中で受験勉強に取り組んでも、いざ大学に入ってみれば、学部の4年間なんか瞬く間に過ぎてしまう。ということは諸君、セネカどんも言ったように、要するに人生は短いのである。
日本語1
(パリの書店で発見、日本語の教科書。Vol.1は「かな編」だ)

 徒然草59段じゃないが、やりたいことがあったら、ためらわず直ちに取り組むべきである。大事を思い立ったら、今やっている気がかりなあれこれなんか全部ポイッとゴミ箱に捨てて、サッサとその「大事」を始めることである。
 「人はどう思うだろうか」とか「他人に笑われないようにチャンと準備してから」とか言って躊躇していると、心配事がどんどん出てきて、大事には一向に取りかかれない。命はヒトを待ってくれたりはしない。「ちょっと様子をみてから」とか言っているから、結局やらないままで一生が終わってしまう。
 もちろんこの場合、兼好法師が「すぐやれ」「すぐやれ」とせっついているのは「出家せよ」「仏門に入れ」ということであるが、話は別に出家に限らない。やりたいことや大事なことは、とにかくどんどんやってしまわないと、どんなに若い人たちだって、人生の終わりはすぐそこ、ホンの60年か50年かしか残っていない。
日本語2
(パリの書店で発見、日本語の教科書。Vol.2は「かな-漢字編」。pas à pas「1歩1歩着実に」の文字がある)

 今井君の授業中の雑談に「ミラクル君」というのがある。ミラクル君とは、来る日も来る日も「オレは奇跡を起こすぜぇ!!」「ミラクルを起こすぜぇ!!」「大逆転だぜぇ!!」と叫んでは、「計画表の練り直し」ばっかりやっているヤツ。滑稽さを指摘すると、教室内は爆笑の渦になる。
 計画表をいくら練り直しても、目標の実現からはむしろ遠ざかるばかりである。「明日から朝型に変えるぜぇ!!」と絶叫しても、朝4時に目覚まし時計かアラームが鳴るだけで、結局ベッドから出るのは10時過ぎ。むしろ計画表を朝型なんかに変えないほうが、キチンと7時に起きられる。
 計画表を5回も6回も練り直したあげく、いつの間にかハッキリ実現不可能な計画が出来上がる。数学の参考書を1冊1週間で仕上げることになっていたり、毎日の睡眠時間が3時間になっていたり、マトモな大人が見たら噴き出すようなプランを、数時間もかかって練り上げ、机の前に貼って眺めては悦に入っているだけである。
ヴァンドーム広場
(ヴァンドーム広場。ホテルリッツを中心に、広場全体が大改修中である)

 何を隠そう今井君は、20歳代にも30歳代にもそれに近いことを続けて、大事な人生の半ばまでを無駄にした。白状すれば、このサトちゃん本人がミラクル君そのものだったのであって、だからこそそのバカバカしさを痛いほど知っている。若い人には「いいからすぐに取りかかりたまえ」と忠告し続けたいのだ。
 ついでに諸君、今井君はもう1つ白状しておく。ボクチンは徒然草59段をずっと間違って記憶していて、兼好法師は「歳月はヒトを待つものかは?」と書いたのだと思っていた。正しくは「命はヒトを待つものかは」である。もっとも、歳月でも命でも、どちらもヒトを待たないことでは変わらない。諸君、いいからすぐに、やりたいことにとりかかりたまえ。
 9月11日、パリ最終日のサト助は、またまた悪いクセの「ミラクル君」になりかけていた。この日の計画を「ああでもない」「こうでもない」と練り直しているうちに、大切な朝の時間帯はどんどん過ぎていった。
オブジェ1
(ヴァンドーム広場。この広場に相応しいとは思えない、たくさんのオブジェが占領していた 1)

 この日は「近郊への小旅行」を考えていたが、候補の街は4つもあったのである。
① ルーアン。セーヌ河に沿って北北西に1時間ほど。ジャンヌ・ダルクの火刑が行われた街で、ルーアン大聖堂が有名。
② ランス。パリから北東に1時間ほど。シャンパン醸造とノートルダム大聖堂とサンレミ聖堂が有名。歴代フランス国王の戴冠式はこの街で行われた。
③ アミアン。パリから真北へ1時間ほど。フランス最大と言われるノートルダム大聖堂と、「リトル・ヴェネツィア」と呼ばれる運河地区が有名。ナポレオンが1802年にイギリスと締結した「アミアンの和約」も有名。
④ シャルトル。パリ・モンパルナスから1時間ほど。言わずと知れたシャルトル大聖堂がスーパー有名。他に「ピカシェットの家」なんてのもあるが、オウチまるまる1軒にお皿の破片を貼りつけたシロモノ。別に見に行くほどでもない。
 以上、候補が4つもあって、4つとも2005年に訪問した経験あり。うーん、やっぱり、①が正解かねえ。②も悪くない。◎まではいかないが、○の可能性なら大きい。③はどうやら×だ。④は、大聖堂はまた見たいけれども、ピカシェットが何だかバカバカしくて△だ。
 このレベルの競争になると、準決勝を勝ち抜くのはなかなか困難だ。センター試験の出題者が「4つの中から正しいもの1つを選べ」とか、無遠慮に命令形で要求してくるけれども、パリの今井君は、試験会場の受験生諸君よりもずっとずっと深く悩んで、兼好法師に叱られそうになっていた。
オブジェ2
(ヴァンドーム広場。この広場に相応しいとは思えない、たくさんのオブジェが占領していた 2)

 そのうちに、冷たい雨が降り始めた。4つの中から1つ選ぶ作業に悩み苦しんでいる時に、この雨はあまりに決定的だった。「なら、全部ヤメにしちゃおう」ということになりがちなのである。
 本屋さんで、よさそうな参考書4冊のどれにするか悩んでいる時、「じゃ、今日はヤメとこう」という結論になるのは珍しくない。レストランや飲み屋もそうだ。4つの候補がみんなよさそうで結論が出ないでいると、結局「今日は帰って寝ちゃおうかな」ということになりがちだ。
 せっかくの熱意を雨で冷やされて、9月11日のサト助の選択は「せっかくの最終日だ。パリの散策で満喫しよう」ということになってしまった。地下鉄1号線の上をジグザグに縫うようにしながら、下町に向かって東へ東へと歩き、「ゴールはサンマルタン運河」と決めた。
 予定のコースは、オペラ・ガルニエ→ヴァンドーム広場→サントノレ通り→サンジャックの塔→ポン・ヌフ→シテ島→ノートルダム→サン・ルイ島→マレ地区→サンポール→バスティーユ→サンマルタン運河。ランチを入れて、5~6時間の散策になる。
 さあ、決まった。命はヒトを待つものかは。「しばし、このこと果てて」とか言っていちゃダメだ。あれこれやりたいことはあるけれども、とにかく街に出ることだ。やっぱり兼好ちゃん、さすがにいいこと言うじゃないか。

1E(Cd) Argerich, Chailly & RSO Berlin:TCHAIKOVSKY/PIANO CONCERTO No.1 & RACHMANINOV/PIANO CONCERTO No.3
2E(Cd) Gergiev & Kirov:RACHMANINOV/SYMPHONY No.2
3E(Cd) Ashkenazy:RACHMANINOV/PIANO CONCERTOS 1-4 1/2
4E(Cd) Ashkenazy:RACHMANINOV/PIANO CONCERTOS 1-4 2/2
5E(Cd) The State Moscow Chamber Choir:RACHMANINOV/VESPERS op.37
total m133 y1664 d11860