Sat 130914 暖かい拍手が湧きおこる パリはすっかり秋だ(第2次ンラゼマ地球一周記36) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 130914 暖かい拍手が湧きおこる パリはすっかり秋だ(第2次ンラゼマ地球一周記36)

 この世の中には、唖然とし呆然とするしかない出来事がいろいろあって、今井君みたいに長々と人生を生きていれば、唖然とした思い出の数知れず、呆然として笑い出すしかなかった経験も、10本の指で数えきれるものではない。
 もっとも、例えサトイモでもここまで成熟してくると、唖然&呆然の心境から立ち直るのも早いので、3分ほど唖然と口を開けてヨダレを垂らし、10分ほど呆然と目を見張った後は、もうニヤニヤ落着いた表情に戻っている。
 いやはや、成長とか成熟というのは、頑固な二枚貝の貝柱みたいに、口に靭帯が発達することなのかもしれない。唖然としてアングリ口が閉まらなくなるようなことがあっても、そのテイタラクが長続きすることはないのである。
ココナツ
(サンパウロ空港でココナッツジュースを購入)

 それでも9月8日の朝、無事パリの空港に着陸した瞬間に、サト助は久しぶりに唖然とさせられた。ブラジル航空TAMの機内で、一斉に暖かい拍手が湧き上がったのだ。こんな経験は30年ぶりである。
 30年前は、まだ米ソ冷戦の時代である。日本からヨーロッパへのヒコーキは、ソ連の上空を飛ぶことが出来なかったので、アラスカのアンカレジ経由で飛ぶ北回り航路と、ホンコンとニューデリー経由で飛ぶ南回り航路の2つがあった。
 若き今井君が選択したのは、26時間かけてローマに向かう南回りのアリタリア航空。まずホンコンに着陸して2時間、次にニューデリーに着陸して2時間、あの頃のヒコーキには「途中下車」だの「途中乗車」だのが普通にあって、そのたびにコワーい空港係官に小突き回された。
 26時間かけて、やっとローマに着いたのだ。機内からは思わず暖かい拍手が湧き上がって、みんな親しくお互いに肩を叩き合うような、優しさに溢れた空気に満たされた。今思えば、マコトに懐かしいシーンである。
オペラ座1
(夕暮れにパリ到着。オペラ座左のLE GRANDに宿泊する)

 あの時と同じ優しく暖かい拍手が、ブラジル航空TAMの機内で湧き上がったのである。唖然と
するサト助であったが、考えてみれば9月8日のTAM機内はオジーチャン&オバーチャンでいっぱい。無事パリに到着して拍手が巻き起こるのも、そんなにフシギな話ではなかったのだ。
 ジーチャン&バーチャンは、お揃いのスカーフを首に巻いている。スカーフのデザインはブラジル国旗。明らかに団体ツアーのフランス旅行であるが、いかにも「一生で一度のパリ」という、シアワセに満ちた表情が並んでいた。
ロワジーバス
(空港からオペラ座まで「ロワジーバス」を利用する)

 さて今井君であるが、話がパリということになると、サンパウロやリオデジャネイロみたいな緊張感は全くない。別に、自慢するのであるが、2005年以来のパリ滞在は30日を超えている。地下鉄路線図なんか見なくても、自由自在に街を歩き回れるぐらいにはなった。
 その分、実はつまらない。オッカナビックリもなければ、へっぴり腰もない。こんなんじゃ、東京と変わらない。実際、パリの地下鉄1号線では日本語のアナウンスまで入るのだ。フランス語→英語→ドイツ語→日本語の順番だから、パリの日本人がどれほど優遇されているかが分かる。
 旅の一番の醍醐味は、実際にはオッカナビックリにこそあるのだ。身の毛のよだつ思いがなければ、旅の妙味は半減してしまう。最近のサト助がブエノスアイレスだのサンパウロだのに異様に興味を示し、あげくの果てに「エクアドルのキトに行きたい」などと言い出したのは、本能的にオッカナビックリを求めている証左である。
 だって諸君、2008年ごろにはまだマドリードにさえたいへんなオッカナビックリで、何かと言えば「襲われるよぉ」「殺されるよぉ」「こわいよぉ」と手に汗を握っていた。
 2009年にはブダペストで、2010年にはリスボンで、2011年にはアテネで、2012年にはイスタンブールで、「恐ろしいよぉ」「こわいよぉ」を連発しながら、身の毛のよだつ感覚を楽しんでいた。どこへ行っても、鳥肌が立つほど面白かった。
カフェドラペ
(LE GRAND。1階がカフェ・ド・ラペ)

 ところがパリとなると、真夜中の地下鉄でも拍子抜けするぐらいコワさがない。いきなり日本語のアナウンスで「スリに狙われないように、お荷物はしっかりお持ちください」とくる。うにゃにゃ、緊張感に欠けること甚だしいのである。
 シャルルドゴール空港からパリ市内へは、ロワジーバスを利用する。いつもならタクシーに乗るのだが、たまにはチョイと変わったこともしてみたい。
 ロワジーバスは、空港から旧オペラ座の裏まで、たった10ユーロで連れて行ってくれる。宿泊予定のホテルがオペラ座のお隣なんだから、タクシーに60ユーロも70ユーロも使うより、ずっと気が楽だ。
 ただしバスは15分も遅れ、しかも満員でやってきた。バスの始発が第2ターミナル、今井君が乗り込んだのは第1ターミナル。もう荷物置き場にスーツケースを置くスペースもない。何とか空席を見つけたけれども、市内まで渋滞して45分、ずっと立っていた乗客もいた。
オペラ座2
(真夜中のオペラ・ガルニエ)

 オペラ・ガルニエ裏でバスを降りると、パリはすでに秋の真っただ中である。茶色いプラタナスの落ち葉が冷たい風に舞って、多くのヒトは厚手のコート姿。サト助は亜熱帯のサンパウロから到着したばかりだから、ワイシャツに薄いベスト、ズンボも夏物である。おお、パリでもまたボクチンは表六玉だ。
 宿泊するホテルは、オペラ座の脇の「LE GRAND」。ここもインターコンチネンタル・グループなので、今井君はいろいろ優遇を受けられる。1階は有名店「カフェ・ド・ラペ」。明日か明後日の晩飯はここのコキヤージュにするつもりである。
 最上階のだだっ広いお部屋に案内され、すぐに荷解きを始めた。ただし、やっぱりオッカナビックリ感が著しく欠如して、身の毛もよだたず、鳥肌も立たず、さっぱりウキウキしてこない。「しかたがない。今夜もまた、ラーメンでも食べに出かけますかね」と決めて、冷たい秋風の吹く夕暮れのパリの街に出ることにした。

1E(Cd) Jochum & Bavarian RSO:MOZART/THE CORONATION MASS
2E(Cd) Jochum & Bavarian RSO:MOZART/THE CORONATION MASS
3E(Cd) Jochum & Bavarian RSO:MOZART/THE CORONATION MASS
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