Tue 130903 恐怖、爪かみ男 「弁慶」で1人の晩餐 熊本で講演会 爪かみ男に再会する | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 130903 恐怖、爪かみ男 「弁慶」で1人の晩餐 熊本で講演会 爪かみ男に再会する

 この辺でチョイと旅行記を一休みして、先週日曜日の熊本での講演会について、忘れないうちに書いておかなければならない。
 講演会は9月22日。しかし「午前10時半開演」という恐ろしく早い時間帯なので、「熊本へは前日移動、前泊」ということになった。「前泊」とは、もちろん「前の晩から宿泊」の略である。
 午後3時のヒコーキで熊本に飛んだ。ほぼ1年ぶりの熊本であるが、いやはや、プレミアムクラスの乗客にはマコトに変わった人が多い。ホンの1ヶ月前、8月下旬に乗った鹿児島便では「制服大好きオジサマ」あるいは「CAマニアオジサマ」がいてCAの写真を撮りまくり、サト助の度肝を抜いた(詳しくはSat 130803参照)。
 9月21日の熊本便では、今度は「恐怖の爪かみ男」に遭遇。今井君の席は窓際の1K。爪かみ男は左隣の1H。出発ギリギリに搭乗してきて、いきなり「日経ちょうだい!!」と横柄な口調でCAに注文。うーん、変人だ。どうやら今井君には、変人を引きつける引力があるらしい。
 ヒコーキが羽田を飛び立って15分ほど、すぐ「お食事サービス」が始まる。このごろのANAは、ほとんどの時間帯が「GOZEN」のサービスであって、GOZENつまり御膳であるから、豪華な食事付きで目的地に向かうことができる。
 しかしさすがに15時台では、昼食と夕食のまんまん中の時間帯であって、サービスは「SABO」、つまり「茶房」。フォカッチャとお菓子だけのサービスである。2年ほど前までは「マグカフェ」といって、マグカップでコーヒーが出たが、さすがに面倒になったらしくて、コーヒーは紙コップでサーブされる。
熊本1
(9月22日、熊本での講演会)

 それでも意地汚いサト助は、フォカッチャとコーヒーのサービスが大好き。大喜びでムシャムシャやるし、後ろに講演や公開授業が控えていない帰りのヒコーキでは「赤ワインありますか?」「スパークリングワインください」と、ワガママにこの時間帯を楽しむことにしている。
 ところが諸君、左隣の爪かみ男は、いきなり「いらない!!」とCAを冷たく突き放した。おお、イヤなヤツだ。ボクなら、例え食べたくなくてもごく丁寧に「ホントにスミマセン。たったいま空港で食べたばかりなんで」ぐらいのお愛想を惜しまない。いきなり「いらない!!」だなんて、何様のつもりだ?
 CAオネーサマは悲しそうに「お召し上がりになりませんか?」「では、何かお飲物だけでもいかがですか?」と尋ねた。すると、何とただヒトコト「水!!」ときた。「レモンか氷はいかがですか?」に対しても、「いらない。ただの水!!」とマコトに冷淡に言い放つ。
 うにゃにゃ、サト助は、こういう横柄なヤツは大キライだ。プレミアムシートなんて言ったって、5000円多く払っただけじゃないか。CAの皆さんにも出来るだけ丁寧に対応するのが、旅を楽しくする秘訣だと信じる。
快晴の熊本
(快晴の熊本。全日空ホテル22階から)

 やがて京都の上空へ。この日は琵琶湖がキレイに見えた。爪かみどんは、このあたりでPCに飽き、持ち込んだHow to本にもすぐに飽きて、いよいよ爪を噛みはじめた。おかしな柄のあるグレーのスーツ。白い靴。40歳代半ばぐらいかねえ。
 ここから1時間、彼はひたすら爪を噛み続けた。きっと何かに欲求不満なのだが、噛むは噛むは、「そんなんじゃ、両手の爪が全部なくなっちゃいますよ」と心配になるぐらい、パキパキ、カチカチ、ほとんど金属音と言っていいほどの激しい音をたてながら、延々と爪を噛みとっていく。
 驚くなかれ、しかもその爪を彼は「飲み込んでしまう」「食ってしまう」のである。ま、「ペッ」とか「プッ」とかその辺に吐き出されても困るが、マコトにdisgustingなことに、彼のノドのあたりから「ゴクッ」という嚥下の音が響き続けた。
 肘掛けに載っけた彼の手を見ると、またまたdisgustingなことに、その指先は生々しい唾にヌラヌラと濡れ、肘掛けにヨダレが糸を引いて、哀れクマ蔵の肘に迫る勢い。やがてヒコーキは国東半島の南、大分の上空から熊本に向かって高度を下げはじめたが、ボクチンとしては生きた心地もしない。
 その様子を、CAのオネーサマがジッとご覧になっていたらしい。ヒコーキを降りぎわ、彼女はニッコリ笑って「今井さま、実は私、受験生時代に東進ハイスクールで先生の授業を受講しておりました。お世話になりました」と丁寧にお辞儀してくれた。
赤ワイン
(ホテル日航熊本「弁慶」で赤ワインを楽しむ)

 宿泊したのは「ホテル日航熊本」。この日「日本心臓学会」というお医者さまたちの大きな学会が熊本で開催されていたらしく、ホテルはどこも超満員。最初の予定では「旅亭松屋SUIZENJI」という和風旅館に泊まることになりそうだったが、奇跡的に1部屋だけキャンセルがあって、サト助はそこに潜り込んだ。
 晩飯は1人でホテル内「弁慶」へ。「弁慶」は懐かしい。9年前の3月、パリで10連泊したのがNOVOTEL。元・ホテル日航パリであるから、和食レストラン「弁慶」があって、10泊の朝食で何度か「弁慶」のお世話になった。今日の熊本の弁慶も、同じ系列でござるね。
 注文したのは、阿蘇赤牛ディナーコース。4500円で天ぷらにお刺身に赤牛ステーキまでつくというのだから、なかなかのお値打ちであるが、肉の量を聞いてみたら、「60グラム」という寂しい答えである。
 うにゃ、そりゃ少なすぎだ。こちとら、アメリカで300グラム、アルゼンチンで500グラム、ブラジルでも300グラム、そういうデカい肉をワシワシやっている豪傑グマである。
 もちろんそんなことを口に出しはなかったが、「料金を追加して、200グラムぐらいになりませんか?」とワガママを言ってみた。するとウェイターさんがすぐに引き受けてくれて、「1500円の追加で200グラムに出来ますよ」とのこと。早速お願いすることにした。
 諸君、冷淡に「いらない!!」とかじゃなくて、恥ずかしそうにアタマをかきながらワガママを言ってみるほうが、客も店もずっと楽しくなるのである。せっかくだから、赤ワインもフルボトル注文して、1人ではあったがマコトに楽しい夜になった。
肉増量
(お肉を60グラムから200グラムに増やしてもらう)

 熊本での講演会、10時半開始、12時終了、出席者275名。普段は「講演会」ではなくて、正式名称「公開授業」なのであるが、この日の出席者は全て保護者であって、まさに「講演会」そのものになった。
 ただし、出席者は全員「高校入試を半年後に控えた中3生の保護者」。熊本高校をはじめとして、県内トップレベルの高校を目指す中学生の保護者なので、最初のうちは話すほうも聞くほうも、お互いに違和感を隠せない。
「何で、3連休の真ん中の日に塾に呼び出され、何のカンケーもない大学受験の英語講師の話を、90分も聞かなきゃイケナイの?」
どう考えても、これが保護者の皆さんの正直な気持ちである。今井君としても、熊本県の高校入試の問題がどんな傾向で、どんな対策が必要なのか、それほど詳しい専門家ではない。
 しかしそこはさすがにサト助だ。双方の違和感の払拭まで10分。大学受験のリスニングや長文読解の話をするうちに、あっという間に会場の違和感は雲散霧消して、上品で爽やかな笑いが会場を満たすようになった。出席者によるアンケートでは「前代未聞の満足感」だったそうである。
熊本2
(熊本での講演会。完全に保護者だけである。中3生も出席したほうがよかったかも)

 この夜は熊本駅前の全日空ホテルに移動して、もう1泊。翌日11時のヒコーキで東京に戻った。しかし奇跡的な偶然は、すぐ身近に発生するものなのである。帰りのヒコーキで1Aに座ったサト助は、出発直前に乗り込んできた1Cの乗客を見て慄然とした。
 うぉ、柄つきのグレースーツ。うぉ、白の革靴。「日経、ちょうだい!!」の横柄な口調。PC、How to本。まぎれもない、一昨日の「恐怖の爪かみ男」との再会である。運命の糸で結ばれたというか、ヨダレの糸で結ばれたというか。これでまたサト助は東京まで1時間半、パキパキ爪を噛んでは嚥下する気配に悩まされなければならない。
 昼食の時間帯なので、今日のヒコーキは豪華お弁当が出た。しかし再び爪かみ男の返答は「イラナイ!!」「水!!」。今日はもう仕事のない今井君が「赤ワイン、ありますか?」とニコニコしていたのに、彼の食べ物はこの日もまたカルシウムたっぷりの爪の破片なのであった。

1E(Cd) Carmina Quartet:HAYDN/THE SEVEN LAST WORDS OF OUR SAVIOUR ON THE CROSS
2E(Cd) Alban Berg Quartett:HAYDN/STREICHQUARTETTE Op. 76, Nr. 2-4
3E(Cd) Bernstein:HAYDN/PAUKENMESSE
6D(DMv) OCEAN’ S TWELVE
total m18 y1549 d11744