Thu 130829 ファベーラの光景に息を呑む カリオカ到着(第2次ンラゼマ地球一周記24) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 130829 ファベーラの光景に息を呑む カリオカ到着(第2次ンラゼマ地球一周記24)

 9月4日、朝7時にホテルを出て、サンパウロからリオデジャネイロに向かう。あくまで1泊のショートトリップだから、大きな荷物はない。リュック1つの身軽な出で立ちである。
 まずホテルのフロントに立ち寄って、ヒコーキのeチケットをプリントアウトしてもらう。利用するのはブラジル航空(TAM)であるが、まだスマホやクレジットカードをタッチしてチェックインできるところまでは行っていないようである。
 今朝もまたフロントにはマエストロ氏が立っていて、丁寧に対応してくれた。慣れない国で、日本のホテルに負けないこういう丁寧さは嬉しい。今井君のPCからホテルのコンピュータにeチケットをメールで送り、それをすぐにプリントアウトしてくれる。1分もかからない。
 タクシーで向かうのは、サンパウロ・グアルーリョス国際空港である。リオデジャネイロとサンパウロの間には、いろいろな空港からいろいろなヒコーキがビュンビュン飛んでいる。日本なら東京—大阪に該当するわけだから、ヒコーキの頻度が高いのも当たり前。今のところ新幹線に相当する高速鉄道は走っていないのだ。
TAM
(リオデジャネイロに向かう)

 南半球の9月、朝7時は「まだ夜が明けたばかり」の雰囲気である。雨模様の寒い朝だったから、バスを待つヒトビトは、分厚いコートを着て、手をこすりあわせながら白い息をはいている。バス停のそばでは、大きな鍋から湯気の上がるスープをカップに注いで売っている。「軽い朝食」ということらしい。
 空港まで1時間弱。高速道路なのに、自転車で走っている人もいれば、リュックを背負って歩いているヒトビトもたくさん見かける。しかし早朝の街もマコトに平静であって、日本出発時にあんなに治安を心配したのが、今ではバカげた思い出のように思われる。
 全日空の略称はNH、ユナイテッドはUA。ルフトハンザはLH。これから利用するブラジル航空TAMの略称は、おやおや、「JJ」である。「あまちゃん」が最終盤を迎えようとしている今、略称JJのヒコーキに乗るということになると、それこそ「じぇじぇじぇ」であって、9時発リオ行、JJ3648便ということになる。
大聖堂1
(リオデジャネイロ、カテドラル・メトロポリターナ)

 こうして諸君、サト助はとうとうリオデジャネイロの街に近づいた。天候は雨。ヒコーキが降下して、分厚い雲の下に雨に濡れたリオの街が広がると、最初にショックを受けたのは、真っ赤な赤土の色であった。クマ蔵は鈍感なヤツだから、滅多なことでショックを感じたりはしないが、これほどの赤土を目にすることは、なかなか出来ない経験である。
 空港からは、高速バスに乗った。古ぼけた空港は、おそらくワールドカップやオリンピックを控えて、大規模な改装工事中。空港を出たところで、コパカバーナ方面行きのバスがタイミングよく目の前に止まった。
 「カリオカまで」と告げると運転手さんがニッコリしたので、これに乗っていくことにした。しかし、車内はもうすっかり満員である。一番後ろの一番奥の席が一つだけ空いていたので、何とかそこに割り込んだ。
 諸君、空港から市内中心部までの車窓風景は、これは大袈裟でも何でもなく、ホントにホントにショッキングである。持参したガイドブックには情け容赦なく「貧民街」というコトバがつかわれているが、正式名称は「ファベーラ」。リオデジャネイロ市民の20%がファベーラの住民なのだそうだ。
 リオの人口は600万。その20%ということは、120万人がファベーラで生活していることになる。バス右側の車窓にいきなりファベーラの丘が広がった時、さすがに暢気なサト助くんも「こりゃ、たいへんなところに来たな」と、まさに息を呑む気持ちであった。
大聖堂2
(カテドラル・メトロポリターナ。内部はなかなか派手である)

 丘の斜面が不法に占拠され、麻薬の密売組織が跋扈し、レンガや廃材で建てられた屋根もない小屋が無数に集まっている。遠目から見ても、衛生状態が劣悪なのは一目瞭然。川だか沼だか判別できない水たまりを、ゴミやボロ布が埋め尽くしている。
 網の目のように電線が張られ、大昔の街灯みたいなものも灯っているが、これも近くの電線から無許可で電気を引いているのだという。ハゲタカにソックリの大きな黒い鳥が低空を舞い、電線にズラリと並んで羽を乾かしている。野生化したウマがボンヤリ立ち尽くしているのも見える。
 無計画に無数の小屋が建てられた結果、道路は入り組んでクルマも走れそうにない。こういうフェベーラがリオの各地に点在していて、ファベーラどうしの抗争もあり、警察との抗争もあって、麻薬組織を中心に急速に武装化した。銃器を多数所持するギャング集団も存在して、特殊警察が掃討作戦にのりだして大激戦を繰り広げても、なかなか効果が上がらない。
 ま、それ以上詳しいことは、「ファベーラ」をググってくれたまえ。「ググるなんてメンドー」という人は、映画「ワイルドスピード MEGA MAX」をビデオ屋さんで借りてくるのもよし。原題は、FAST FIVE。リオのファベーラに逃げ込んだ主人公たちが、どんな大激戦を演じることになるか、マコトに激烈な映像を延々と目撃することができる。
大聖堂3
(カテドラル・メトロポリターナ、聖フランチェスコは可哀想なほど痩せほそっていた)

 クルマが渋滞すると、ファベーラの住民たちが高速道路の壁の隙間からワラワラと入り込んでくる。コドモたちも多い。ゴミ袋に入れた花やスナック菓子を売ったり、クルマの窓を拭いたり、そういうことをやってオカネをもらおうというわけだ。
 もちろん強盗まがいのことをやろうという者も少なくないらしいので、「アイツは旅行者だ」と分かるような行動はとってはならない。荷物も、できるかぎりクルマの外から見えないように、足許に隠しておく。うーん、サンパウロでも同じことを言われたが、リオの状況はサンパウロとは比較にならないぐらい劣悪である。
 やがてバスはファベーラの風景を抜け、高速道路を降りてリオの中心街へ。しかし諸君、そのあたりの状況もファベーラと似通ったものがある。道路のアスファルトは剥がれ、赤土の泥が車道も歩道も覆っている。
 壁という壁、シャッターというシャッターは、汚い落書きでいっぱいである。オリンピックが3年後に迫っているせいだろう、街中には工事現場が多い。しかし、激しい雨の中で見たせいもあるんだろうが、工事は一向に捗っていないようである。
 重機でも使っているなら話も分かるが、男たちが手に手にシャベルを握って、濡れた赤土をノンビリかき混ぜているだけでは、「こりゃ間に合わないんじゃないか」と見ている日本のサト助のほうが心配になるのであった。
カリオカ駅
(パッとしない地下鉄カリオカ駅)

 空港を出発して1時間あまり、バスは目指すカリオカに到着。カリオカとは、もともと「リオデジャネイロのヒト」という意味であって、東京なら銀座、大阪なら梅田、そういう位置づけのリオの中心である。しかし、うーん、やっぱりどうもパッとしない。
 今井君は大学3年の時、パナソニックのコーヒーメーカー「カリオカ」を購入。その後カリオカ君はたいへん長持ちして、30歳を過ぎるまで今井君のコーヒーを作りつづけてくれた。マコトに素晴らしい相棒だった。
 それなのに、本家本元のカリオカちゃんは、冷たい雨と泥にまみれて寂しそう。ま、とりあえずは巨大な「カテドラル・メトロポリターナ」を訪ねてみたが、その余りバッタモノ感に圧倒されるばかり。「カリオカちゃん、もっと頑張ってくれなきゃ困るよ」と嘆きつつ、地下鉄カリオカ駅を目指すサト助であった。

1E(Cd) Karajan & Wiener:BEETHOVEN/MISSA SOLEMNIS 2/2
2E(Cd) Furtwängler & Vienna:BEETHOVEN/SYMPHONY No.7
3E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 1/9
4E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 2/9
5E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 3/9
total m161 y1521 d11715