Thu 130704 合宿最後の夜は、午前5時まで 根性論はもう古い みんなすっかりオトナだ | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 130704 合宿最後の夜は、午前5時まで 根性論はもう古い みんなすっかりオトナだ

 7月24日午後9時、里芋カッカはホントにカッカしながら、合宿第1期の最後の授業に向かった。

 今井君のお部屋は「ホテル美富士園」の本館4階。教室として使っている宴会場「よいまち草」は新館の7階。5階でエレベーターを乗りついで行くのであるが、「今年の合宿も半分終わったな」という感慨が、ふと溢れ出る瞬間である。
BADTORO
(第1期の最終講に出陣。戦闘服は「BAD TORO」のTシャツ。バルセロナで購入)

 ラストの第11講のテーマは、仮定法である。最初にディクテーション5問、続いて仮定法関連の文法問題を20問。「仮定法現在」とその例外事項まで詳細に説明した後で、長文読解問題を1問。以上を90分に詰め込むのだから、講師としても生徒としても相当な集中力が必要だ。

 しかしすでに11回の授業を経て、生徒たちは集中の仕方をしっかりと把握している。「集中しろよぉ」とか「いいかー、ね、はい、集中しましょうね、うん」とか、寝ぼけたマヌケなことを言う必要は皆無なのである。

 むしろ「サッサと授業やっちゃおうぜ」「その後は、午前5時まで一気に行こうぜ」と、7時間の個別学習のほうをウキウキ楽しみにしているので、「早く終わらせるためにも、ここは集中♡集中!!」という感じ。雑談好きなサトイモ閣下も、この雰囲気ではなかなか雑談をはさみこむことが出来ない。
拡大図
(BAD TORO、拡大図)

 11時に授業が終わると、まず0時までの1時間は第11講の個別学習。0時きっかりに、11講の確認テストを実施。キチンとスケジュールをこなして、午前1時ごろからテキスト全体に関する個別学習が始まる。

 ここまで合計14回の小テストがあって、14回全てで満点をとり続けた女子生徒がいる。諸君、これはたいへんなことだ。ケアレスミスさえ一切なしで14回を乗り切るというのは、「やっとこさで満点」というのとは全く次元の違う快挙である。

 他にも「満点を13回」「満点を12回」という生徒が続出したので、今井君は急遽「サトイモ特別賞」を創設。確認テスト合計得点のトップから第3位まで、サト助からボールペンを手渡しすることにした。
足
(アンヨの光景。サト助はだんだんラフなカッコになる)

 「ペンを贈る」というのは、その人の知性に対する敬意を示す行為である。詳しくは、映画「A BEAUTIFUL MIND」を見てくれたまえ。ノーベル経済学賞を受賞した数学者ジョン・ナッシュが主人公であるが、大学院生のころに「ペンを贈る」儀式を見た彼が、最終的にペンを贈られる側になるまでの感動の物語である。

 ボクチンは「全ての小テストで満点をとり続ける」ことこそ勉強の王道だと信じている。だからこそ今年のTVコマーシャルでも「基礎を徹底的に鍛える。基礎!! 基本!!」と叫びながら、地面を力強く指差してみせている。
スケジュール1
(朝までのスケジュール)

 もちろん歴史に残るような大学者になるには、それだけでは決定的に足りないものがあって、夏の強烈な陽光の下でさえキラキラ煌めくような花々しい才能が必要なのであるが、それはまた別の話である。

 予備校講師が特別に生徒を表彰するとしたら、カンペキな努力の積み重ねをこそ表彰すべきなのだ。今回「ペンを贈る」を急遽やることにしたのは、8年=16回にわたる合宿で「100%満点」が出たのが初めての経験だったからである。
最後の音読
(今夜も音読が続く)

 さて、午前1時、いよいよテキスト全体を徹底的に復習する個別学習の時間が始まる。5時まで、ほぼノンストップで4時間。ここまで4日間、1日18時間の勉強を継続してきた諸君にとって、この4時間はきわめてキツいはず。しかしグルジェフがかつて述べたように、「もうダメだと思ってから進む1歩1歩が天才を作る」のである。

 ここで大切なのは、生徒を孤立させないことである。若いスタッフがさまざまに工夫して、「30分に1度は全員で声を合わせて音読する」とか、「自主制作の小テストを実施する」とか、「徹底的に書いて書いて書きまくりながら音読」とか、いろいろ目先を変えながら全員で朝5時までを乗り切る。
おむすび
(夜食として、人数分のオムスビが用意される。午前3時にはもう1個も残っていない)

 17歳18歳の若者たちだから、音読を続ければお腹も減り、喉も渇く。廊下には人数分のオムスビが準備され、冷たいお茶の大きなポットも置かれて、生徒諸君をサポートする。廊下でも音読できるように、廊下にはパイプ椅子と扇風機が並べられる。

 サトイモ閣下が東進に移籍してきた当初は、最終日の個別学習は「朝7時まで」というのが慣例だった。要するに完全徹夜だったのであり、生徒もスタッフも完全な徹夜に異様にこだわったものだった。
 一人でも寝てしまう者がいれば「今回の合宿は失敗だった」「最後までやりきることが出来なかった」という総括になり、大男のスタッフが、「オレは、悔しいんだよ」「あとちょっとでパーフェクトだったのに」と涙を拭ったりしたものである。
もうすぐ朝だ
(もうすぐ朝がくる)

 今井君も、移籍当初は朝7時まで生徒たちにつきあった。0時から7時まで教室に残り、生徒以上に熱心に音読を続けた。2005年夏、北イタリア旅行とフランス・プロバンス&コートダジュールの旅を控えていたので、イタリア語とフランス語の本を持ち込んで、朝7時まで音読に励んだ。

 朝5時、いよいよ夜が明けはじめると、あの当時の今井君は生徒たちをいったん教室に集め、それまで固く閉ざしていたカーテンを、一気に開け放って見せたものだった。

 すると目の前には、早朝の青白い河口湖が広がり、その向こうには余りにも雄大な富士がそびえたっている。感激のどよめきが上がった。しかし、まだ朝5時だ。まだまだ個別学習は2時間も続くのである。
扇風機
(クーラーの補助として、扇風機にもお世話になった)

 しかし諸君、よく考えてみると、そういう根性論はさすがにそろそろ終わりにしていい。「根性」「克己心」「やりぬくぞ」と大書して、ただ単に徹夜するためにだけ徹夜するんじゃバカバカしいじゃないか。

 襲いくる睡魔のせいで、多くの生徒の顔は暗緑色にむくみ、眠くて口も回らない。それでも
「音読だ」「音読が全てだ」
「君たちは『最後までやりぬく』って自分に誓ったはずだ」
「最後までやりぬかなきゃ、合宿にきた意味がない」
と、同じぐらい睡魔に負けそうなスタッフが青黒い顔で絶叫しているとすれば、それはちょっと時代錯誤である。
朝の挨拶
(朝5時、スタッフ代表によるミーティング)

 だから6年前から、最終日の個別学習も「5時までが限度」と決まった。朝9時から開始される「修了判定テスト」のために、「ホンの少しでいいから睡眠をとっておく」という練習である。

 英語なら「go get some sleep」「try get some sleep」であって、デンゼル・ワシントンが主役の刑事ドラマなんかで、しょっちゅう登場する台詞でござるね。それでも5年前にはまだ
「中途半端に睡眠をとるより、完全に徹夜した方がずっと楽だ」
「ちょっと寝たりすると、かえってツラい」
「やっぱり完全徹夜したほうが達成感も大きい」
と、暗緑色の顔でダダをこねる生徒が多かったものだが、昨年も今年もそういう生徒は皆無になった。
朝のスケジュール
(朝のスケジュール)

 朝4時50分、スタッフ代表が黒板の前に立ち、感激する生徒たちの前で、この一夜の総括をする。サト助は午前1時ごろに1回、午前4時半に1回、合計2回教室を訪れただけであったが、生徒諸君の集中力は、最後まで途切れなかったようである。

 そして朝5時、「それではこれから1時間ちょっと、睡眠をとりましょう」というスタッフの指示とともに、86人全員が粛々と教室の後片付けを開始。私語するものもなく教室から各部屋に移動し、「try get some sleep」の練習になった。

「いけいけドンドン」なタイプの今井君としては、あんまり生徒が素直なのでちょっと可哀そうになったが、個別の行動も集団行動も、マコトによく統制がとれている。「これなら日本も当分は大丈夫だ」「世界も大丈夫だ」と、ふと胸を撫で下ろしたくなるような素晴らしい光景なのだった。

1E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER④
2E(Cd) Glenn Gould:BACH/GOLDBERG VARIATION
3E(Cd) Fischer & Budapest Festival:BRAHMS/HUNGARIAN DANCES
4E(Cd) Hungarian Quartet:BRAHMS/CLARINET QUARTET・PIANO QUINTET
5E(Cd) Alban Berg:BRAHMS/KLARINETTEN QUINTETT & STREICH QUINTETT
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