Sun 130609 あと10000回の晩飯 1回たりとも後悔はイヤだ 銀座で牡蠣を食べる | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 130609 あと10000回の晩飯 1回たりとも後悔はイヤだ 銀座で牡蠣を食べる

 もし人生があと30年も残っているとして、365日×30年=10950日しかエンジョイできないわけである。1日に1冊の本を欠かさず読みつづけても、まあ10000冊が限度。普通の書棚の1段に50冊の本が入るとすれば、200段分しか読めない計算になる。
 そういうのは、音楽でも映画でも芝居でも同じことで、毎日CD5枚分の音楽を聞き続けても、1万日で50000枚分にしかならない。「映画か演劇かオペラを毎日1本ずつ」という離れ業を30年続けたって、やっぱり数は知れたものである
 最近ちょっとお疲れ気味の今井君だって、諸君みたいに若い頃には「不可能なことなんかない」「どんなことだってやり遂げられる」と信じ込み、山の中のクマ君よろしく、威勢よく月に向かって吠えていた。
 しかしついこの間「うーん、10年続けるブログも折り返し点を過ぎたな」としみじみ考え込んだあたりから、「あとたった1820回の更新で終わっちゃうのか」と、無性に寂しくなってしまった。1820回の更新も、残り10000冊の読書も、何だか大して違わないじゃないか。
笑い飛ばす
(すべてを笑いとばす豪快なヤツ)

 中でも最も寂しいのは「あと10000回の晩飯」という言葉を思う瞬間である。里芋サト助は、朝飯はコーヒー2杯だけ、昼飯もジュースだけというマコトに偏屈な食生活を送っているから、好きなだけ食べて腹をいっぱいにするのは、晩飯の時だけなのである。
 もちろん、こんなことを告白すれば、いろんな人に叱られる。「朝こそしっかり食べなきゃね」であり、「学力をあげるには、早寝早起き朝ゴハン」なのであって、日本で褒められようと思ったら、朝一番からカーカー元気に飛び回っている早起きカラス君たちをマネるしかない。
 若い諸君は、ダラしない今井君を他山の石にしてくんろ。
「チャンと朝ゴハンを食べないと、今井みたいなサトイモになっちゃうよ」
「朝メシ食べないから、東京大学に合格できなかったんだ」
「朝はコーヒー、昼はジュース、そんな生活してるから、あんなに短足になるんだよ」
「身長172cm、座高100cm、そんな非常識な体型なのも、朝ゴハンを食べないせいなんだよ」
こりゃスンバラスイ他山の石であって、他山の石のお手本というか、他山の石の模範というか、他山の石の優等生。そういうマコトに矛盾した存在として、これからのクマ蔵は生きていこうと思う。
スタジオ1
(スタジオの寂しげなサトイモ)

 だって諸君、内田百閒も「空腹は心地よい」と名随筆の中で繰り返し繰り返し述べている。「朝は食べない」「昼はもりそば1枚」という生活を続けた。ボクチンは何も百閒先生のマネをしているわけではないが、気がつくとほとんど同じ生活をしていた。
 百閒先生は90年近く生きて、随筆家として最期までカクシャクと活躍し続けた。愛すべき弟子たちに「あの世行きはまあだかい?まあだかい?」と囃されながら、「まあだだよ」とニヤニヤ笑って、すっかりオジーチャンになっても、たくさんのビールとお酒とシャンパンを飲み続けた。
 朝も昼も食べ物を寄せつけず、夕暮れまで難しい顔をして座っていると、夕暮れに飲むビールの旨さは格別である。「あと10000回の晩飯」と考えると、そのうちの1回たりとも無駄に過ごしたくない。晩飯の1回1回をこの上なく大切なものと考えて、後悔なんか絶対にしないようにしたい。
 そういうのは読書でも映画でも音楽でも同じことなので、たった10000日の中に、「うへ、つまんなかった」などという後悔は絶対にしたくない。もちろん旅も同じことで、今さら後悔するのだけはイヤである。
スタジオ2
(吉祥寺スタジオの風景)

 常に心の底から満喫して、「読まなきゃ死ねない本」「行ってみなきゃ死ねない場所へ旅」を心がけるわけだが、サトイモ君はとっても卑しいから、同様に晩飯においても毎日必ず「うへ、楽しかった!!」と叫んで箸を置き、「うへ、最高だった!!」「すみません、お酒もう少しください」とツブヤキたいのである。
 もちろん、贅沢な食事をしたいというのではない。何しろサト助が一番好きなのは「焙じ茶のお茶漬け」であり、2番目に好きなのは「緑茶のお茶漬け」である。
 3つ星とか2つ星とかの有名飲食店でフレンチ/高級和食に高級ワインという世界より、近所の蕎麦屋でダラしなく「熱燗1本と、鴨南蛮。お蕎麦で」というのが好きなのだ。
 どこの店でもやがて今井君の正体がバレ、「ああ、先生、いらっしゃい」みたいなことになるが、それもまたスンバラスイ。こっそり「先生だけですよ」と小皿なんかが運ばれてくると、「今日の晩飯も最高だな」ということになる。
竹輪
(小皿の風景。お魚のマークの竹輪と、オクラのネバネバ料理)

 こうして残されたたった10000回を、心ゆくまで満喫する。1度たりとも無駄に終わらせたくない。若い諸君にも、ぜひ同じことを考えてほしい。人生があと60年あっても、晩飯は21900回しかないのだ。その1回1回を、スマホなんかイジクリながらテキトーに終わらせてしまうようでは、あまり素晴らしい人生とは思えない。
 読書でも何でも同じことであって、残り60年あっても、1日1冊で2万冊にしかならない。優先順位をキチンとつけて、世界中の古典を翻訳でいいからどんどん読破したまえ。ホメロスは、読んだかい? エッダは?サガは? アリストテレスは?ルバイヤートは? 少なくとも、ハウツー本とか自己啓発本とか、そういうのは後回しでいいんじゃないの?
クマモト1
(銀座のオイスターバー「オストレア」のクマモト君たち7名)

 というわけで、7月2日、吉祥寺スタジオでの収録を終えた夕暮れの今井君は、銀座8丁目のオイスターバー「オストレア」を訪問することにした。今日の収録は、岡山大学2013年の解説授業。ちょっと時間が余るほどだったが、ま、このあたりも超ベテランの余裕でござるよ。
 「オストレア」でも、もうクマ蔵はしっかり記憶してもらっている。「ありゃりゃ、まだ2回目なのに、何で記憶されているの?」であるが、
  ① 外見に特徴がありすぎる
  ② 食べ方に特徴がありすぎる
のである。①については、テレビCMを見ても、LINEのスタンプを見ても明らか。7月20日すぎには、誰一人予期しない雑誌にオドロキのTシャツ姿で登場するが、そこでもまた外見はサトイモグマ以外の何者でもない。お店の人だって「クマが牡蠣を食べにきた」という異常事態に半分腰を抜かしているに違いないのだ。
 ②については、今井君独特の「一点集中」がオドロキの的になる。牡蠣は牡蠣でも、サト助の大好きな牡蠣は1つ決まっていて、「あれもこれも」ということは決してしない。好きなのは、あくまで「クマモト」。クマモト以外なら、別にわざわざ銀座まで来たりはしない。
クマモト2
(平らげられたクマモト君たち7名。これを2皿ペロリといく)

 入店してすぐ、ウェイトレスのお姉さんが向こうから「クマモト、たくさん入ってますよ」と声をかけてくれる。するとサト助も「クマモト、全部平らげて帰ります」と応じる。これで記憶されないはずはないのである。
 マトモな人は、こういうことはしない。みんな大人しく「オススメ・オイスター・プラッター」を注文する。「あれもこれも」な感じの各種カキ盛り合わせだが、投資信託じゃあるまいし、あと10000回しか残っていない大切な晩飯を、無責任に他人任せにするのはイヤである。
 こうして、平らげたクマモトは14個。おそらく、クマ蔵がお店に入っていった瞬間、店のクマモト君たちは口々に「あーあ、俺たちみんなあのクマに平らげられるんだな」「おい、死ぬまで一緒だぞ!! じゃ、クマの腹の中でな」と叫んだに違いない。
 「クマモトがお好きであれば、2日前までにお電話をいただければ、今井様のためにクマモトをタップリお取り置きいたしますよ」とまで言ってもらって、20時半、意気揚々と店を出た。だって、嬉しいじゃないか。
岩牡蠣1号
(三軒茶屋「くら嶋」の岩牡蠣1号)

 しかしクマモトは、味はたいへん濃密だけれども、ハマグリ程度の小ぶりな牡蠣である。14個平らげたって、お腹がいっぱいになることはない。クマモトだけで満腹するには、50個あったって足りないぐらいだが、もし50個平らげたら、お財布への負担がタダゴトでは済まない。
 そこでサトイモ君は、三軒茶屋でこのごろすっかり馴染みになっちゃったお蕎麦屋「くら嶋」に急行。昨日は「お寿司で〆」。今夜は「お蕎麦で〆」。おお、日本人に生まれてよかったなと実感する日々である。
 しかし諸君、クマ蔵の奇癖はここでもまた姿を現した。蕎麦屋のテーブルに座って、最初のヒトコトが「岩牡蠣、2つください」だったのである。オイスターバーで14個ペロリと平らげ、そのあとの〆に入った蕎麦屋で、〆の蕎麦じゃなくてまたまた牡蠣が食べたくなったのだ。
岩牡蠣2号
(三軒茶屋「くら嶋」の岩牡蠣2号)

 もちろん、「巨大な岩牡蠣で〆」という行動も悪くない。「くら嶋」の岩牡蠣は、1個でクマモト5個分ぐらいのボリュームがある。この間「5個!!」と言ってみたら「お一人じゃ、無理だと思いますよ」「2個ぐらいになさったら」とたしなめられて、結局3個で我慢した。今夜は2個にしておくべ。
 しかしやっぱりお蕎麦も食べたい。何しろ「あと10000回」だ。今井君の貪欲さはとどまるところを知らない。さんざん迷ったあげく、注文したのは「カレーじゃーじゃー麺」。うーん、さすがに食べすぎかねえ。「もうこれ以上お腹に入りません」というところまで飲み食いして、貪欲さをホンの少々反省する夜になった。

1E(Cd) Art Blakey:NIGHT IN TUNISIA
2E(Cd) Walt Dickerson Trio:SERENDIPITY
3E(Cd) Surface:SURFACE
4E(Cd) Surface:2nd WAVE
5E(Cd) Enrico Pieranunzi Trio:THE CHANT OF TIME
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