Fri 130524 素晴らしい野球観戦 スコアボードでプロポーズ(アメリカ東海岸お花見旅50) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 130524 素晴らしい野球観戦 スコアボードでプロポーズ(アメリカ東海岸お花見旅50)

 甲子園や神宮球場や東京ドームに比べて、ヤンキースタジアムは「やっぱり巨大でござるなあ」と溜め息が出るほどに大きい。いや、もちろん東京ドームだって十分に巨大なのだが、数字で示せる大きさとはまたヒト味違う大きさが、世の中には存在するのである。
 「では、『ヒト味違う』って、どんなふうに違うの?」という質問に応えるのは、このクマ蔵にもなかなか難しい。説明するのも面倒だし、そんな説明を読むのも面倒だろうから、書く面倒と読む面倒を一気に解消してしまうには、アナタが実際にヤンキースタジアムに出かけてみるのが一番カンタンだ。
ライト
(この日のイチロー選手は、7番ライトだった)

 その辺の事情がよく飲み込めない人は、
「テレビで見ればいいじゃん」
「NHKのBSでヤンキースの試合はしょっちゅう中継してますよ」
みたいなツマランことを言ってくるけれども、いくらテレビでみたって、スタジアムのニオイも、西陽の眩しさも、3階席を吹き渡る風の熱さも、何にも分からない。ビールを売り歩く男たちの汗の迫力、スタンドを埋め尽くした観客のザワメキ、そういうものまで全部ひっくるめて、「ヤンキースタジアムは巨大だ」と表現するのである。
 「えー? 『ニオイや温度や音から大きさを感じる』って、何だか変じゃないですか?」という質問に至っては、さすがのサトイモ軍曹ももうお手上げだ。砂漠の茫漠は、照りつける太陽の熱さと、顔にぶつかる砂粒の感触で感じるもの。海の広大さは、潮のカホリと波の音の果てしない繰り返しで感じ取るものである。
 ま、あんまり詩人っぽくなると、「読むのがメンドーくせー」「コムズカシんじゃね?」と文句を言う読者も出てくるだろうし、Mac君みたいに「コムズカ信者ね?」という妙竹林な宗教を考え出すヤツもいたりするから、サトイモ軍曹はとにかく大急ぎでヤンキースタジアムの自分の席を探しにいくことにする。
一塁
(ヒットで出塁し、2塁盗塁を狙う)

 もう試合は始まっていて、スタジアム全体を大歓声が包み込んでいる。「おお、始まってるな!!」と思いながら、エスカレーターを駆け上がる(諸君、ヤンキースタジアムにはエスカレーターがあるのだ)。スポーツ観戦で一番ワクワクするのは、この瞬間かもしれない。
 もちろん基本は「試合開始の30分前には席について待ち受ける」なんだろうし、かく言う今井君だって、秩父宮や国立競技場に早稲田ラグビーを見にいくということになれば、何しろほとんど命がかかっている気分だから、チャンと試合開始30分前には席に座って待っている。
 もっとも、サトイモ君の悪いクセで、「待ち受ける30分」を飲まず食わずでは過ごせない。シュゴーい酒豪の今井君は、30分もあればビール2杯にカップの日本酒2本ぐらいはカンタンにカラッポにしているから、スポーツ観戦時は常に酔っぱらってしまっているのだ。
 その点、「おっ、始まってるな!!」の感覚はいい。暗い階段やエスカレーターを駆け上がりながら、雷鳴のような歓声が湧き上がるのが聞こえる。「お、タイムリーヒットが出たかな?」「お、独走トライか?」「お、スゴいタッチキックを蹴ったかな?」と、ますますワクワクしながら、もどかしい思いで自分の席に向かう。
 そういう時こそ、球場の広大さを如実に感じるのである。スタンドのザワメキ、ビールを売り歩くヒトビトの叫び、ポテトを揚げる油の匂い、照りつける太陽。で、やっと目の前が大きく開けると、グラウンドに散らばった選手たちがあまりに小さくしか見えないのである。
スタジアム1
(グラウンドが見えた瞬間の感激は大きい)

 席はあっけなく見つかった。係員の女性が「いま打席に立っているバッターの打撃が終わるまで、入場を待ってください」と、がんばって交通整理をしている。ニューヨーカーたちもたいへん従順に彼女に従い、苛立った荒っぽい空気や野次はほとんど飛ばないようである。
 席に腰を下ろしたのは1回裏。午後4時ちょうどに試合が始まって、もう15分ほど経過していた。イチロー選手も7番ライトで出場。この日は、4打数2安打。いかにもイチローらしい渋いヒットを、2回もナマで目撃することができた。
 「矢のようなバックホーム」も目撃。5回表だったか6回表だったか、ブルージェイズの攻撃、1アウト3塁の場面で、絵に描いたようなライトフライが飛んだ。観客もやっぱりよおっく分かっていて、ライトフライが上がった瞬間、スタジアム全体がイチローのバックホームに息を飲んだ。
 マコトに残念なことにアンパイアの腕が横に開いてしまったが、「アウト!!」と叫んでも誰も文句を付けられないぐらいの微妙なタイミング。あれほどの返球をヤンキースタジアムで見られただけで、今回のお花見旅の締めくくりとして十分である。
スタジアム2
(スコアボードもド派手である)

 「鳴り物一切ナシ」「ケンカも下品な野次も一切ナシ」の2点も素晴らしかった。日本でプロ野球を見れば、試合終了まで3時間、間断なく鉦と太鼓とラッパの騒音に包まれ、ヒトビトはそこいら中でイヤミな野次を飛ばし、要するにムカムカしながら観戦しなければならない。
 ニューヨーカーたちは、70歳代の超オトナから、幼児や園児の超コドモまで、鳴り物を一切用いず、好プレーには歓声をあげ、相手の好プレーにもそれなりに喝采して、マコトに穏やかにプレーをエンジョイするのである。
 「公共の場での飲酒は禁止」「それを守れなければ罰金または逮捕」の原則は、さすがに野球観戦にまでは持ち込まれない。瓶ビールはアフリカ系の陽気なオジサンたちがいくらでも売りにくる。売りにくるビールが、「バドワイザー・ライト」ばかりなのはちょっと不満だが、ライトがイヤなら売店で生ビールを買えばいい。
スタジアム3
(ビールの売り子のオジサンたち)

 売店では、マコトに旨そうなレモンジュースも売っている。ビールもジュースもよく冷えていて、午後4時の強烈な西陽の中での野球観戦には、キリッと冷えた飲み物は他のどんなものより嬉しい。たとえヒイキのチームが負けてしまっても、生ビール1杯飲めばそれでスカッとするのだから、サトイモとはホントに単純な生き物なのである。
 ただし、ビールを買おうとすれば必ず「IDを提示してください」と要求される。どんな中年のオジサマでも、オジーサンでさえも、IDを提示しなければビールを売ってもらえない。それが常識になっているので、ニューヨーカーは誰一人「メンドーくせえなあ」という顔を見せず、水戸黄門の印籠みたいに誇らしげにIDを見せつける。
スタジアム4
(あと1球。外野席も総立ちだ)

 6回裏になると、ビールを売っていたオジサンたちの叫び声が変わる。「ラスト・コゥールド・ビア!!」「ラスト・コゥールド・ビア!!」というふうに、「もうこれで最後です」という切迫感を強調する。
 「どうせそんなのウソだろ?」と思うのだが、いやはや、ウソでも何でもない。7回表に入ると、売り子のオジサンさんたちは一斉に姿を消して、売店に行かないかぎりもう酒は買えなくなる。
 どうやら、飲み過ぎた観客が暴言を吐いたり、野次合戦が嵩じて殴り合いになったり、帰りの電車の中で暴れたり、そういうことを防ぐのが目的のようだ。
「そろそろ試合も終盤だ、試合に集中したまえ」
「帰り道も気をつけなきゃね。ここはブロンクスの真ん中。酔って歩いたら、危険なことも起こりますよ」
と、おそらくそういうことらしい。
勝利
(この日はヤンキースが逆転で勝利)

 攻守交代の間、スコアボードにもさまざまな工夫をしてくれる。スタンドに潜入したテレビカメラが観客をサプライズ撮影、いきなりスコアボードに自分の巨大な姿が映るのを見て、みんなハシャギまくっている。
 7回裏、ヤンキースの攻撃を前にして、何とこのスコアボードを使ってカノジョにプロポーズした男がいる。いやはや、やっぱりアメリカだ。映画とかドラマとかに、タイムズスクエアの大スクリーンでプロポーズするシーンがよくあるが、うにゃにゃ、ホントにこういうことをするのでござる。数万の観客から大喝采があがった。
試合終了
(さて、帰りますかね)

 試合終了、午後6時半。5—4でヤンキースが逆転勝ち。3ランホームランも出て、ファンにとっては、これ以上ありえないぐらいの大サービスになった。
 いままで、外国でのスポーツ観戦はあんまりしなかった。ヨーロッパのサッカーの試合などで、何となく暴動みたいになったり、発煙筒を投げ込んだり、ヒイキが嵩じた罵声の渦に加わらなければならなくなったり、そういうのがイヤだったのである。
 しかし、今日のような観戦なら悪くない。イタリアやドイツやブラジルでサッカー、アメリカでバスケにアイスホーケー、イングランドでラグビー、ついでにウィンブルドン。外国旅行のアイテムとしてスポーツ観戦を組み込めば、ますます旅が楽しくなるというものである。

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