Thu 130523 ヤンキースタジアムに向かう 地下鉄カップル(アメリカ東海岸お花見旅49) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 130523 ヤンキースタジアムに向かう 地下鉄カップル(アメリカ東海岸お花見旅49)

 さすがに、今日の記事が短くなることは、許してくれたまえ。今日のボクチンは、何をどう書いていいか、さっぱり分からない。しかしまあいいじゃないか。去年の6月からほぼ1年、1日たりとも更新を怠ったことのないブログだ。もう「何をどう書こうかな」とか、メンドーなことを考えなくても、文章は自由自在に溢れ出してくる。
 4月27日、サトイモ君は「ヤンキースタジアムにヤンキースの試合を見にいこう」と決めた。と言うか、ヤンキースタジアムに野球観戦に出かけることは、昨日の深夜のうちに決めたので、インターネットというマホーの絨毯でとっくにチケットは手に入れていたのである。
 いやはや、ネットというマホーのジュータンさえ使えれば、試合前日の段階になっても、何ともゆっくり余裕でチケットを入手できるようになった。今井君みたいな昭和の野球ファンにとっては、「長蛇の列に並ばなくてもチケットが手に入る」という事態はむしろ寂しくて仕方ないのであるが、そういう贅沢な寂寥感に捕われるのは、また試合が終わってからにしても遅くない。
ヤンキースタジアム1
(ブロンクス、ヤンキースタジアム前で)

 試合は午後4時からだから、タイムズスクエアのホテルを出るのは3時で十分だ。午前からルーズベルト島のヤエザクラを楽しみ、昼過ぎには44丁目付近のラーメン屋でラーメン&カツ煮を満喫してきたあと、チョー余裕をコイてヤンキースタジアムに出かけることにした。
 ニューヨーカーの野球好きには、さすがのクマ蔵も呆れるぐらいである。クマ蔵だって、野球が好きなことについては人後に落ちるつもりはない。授業中のトークとして一番人気の高いのが、甲子園での「金足農vsPL学園」の話である。
 何しろ大正4年、中等学校野球選手権の第1回大会で、我が母校・秋田高校は準優勝の栄誉に輝いている。野球好きにかけて、今井君は誰かに負ける気は一切ない。
 ジャイアンツファン、タイガースファン、ドラゴンズファンと言ったって、じゃあ今井君みたいに「昭和40年代の選手たちの活躍を記憶しているかどうか」ということになれば、ま、滅多な人ではサトイモの右に出るヒトは考えられないのである。
チケット
(ヤンキースタジアムのチケット。ネットで手に入れた)

 しかしその今井君でも、午後4時の地下鉄に乗った瞬間に「これはもしかしたら、アメリカの野球ファンには勝てないんじゃないか」と感じたのである。みんなヤンキースのTシャツを着込んでいる。一番多いのは、背番号2。ウルトラ名選手ジーターの背番号であって、「背番号2」の比率は、他を全く寄せつけないものがある。
 ヤンキースタジアムはブロンクスの160丁目あたりにあって、ホテルのある42丁目から、「治安は決して保証しません」という地域に向かって、地下鉄は容赦なくどこまでも北上していく。
ヤンキースタジアム2
(席はライトスタンド 1)

 日本で売られているガイドブックだと、
「125丁目までは、最近になって治安も大幅に改善されました」
「日曜のミサがある時間帯には、135丁目までは大丈夫です」
「しかしそれはあくまで観光地の周辺のこと。観光が終わったら、余計な寄り道はせずに、さっさと安全なマンハッタンに戻りましょう」
という記述が多い。ハーレムでもそんな扱いなんだから、ハーレムよりもっと北上し、河を渡ってブロンクスということになれば、もう「治安がどうこう」というレベルを超越しているのである。
 それでも地下鉄はヤンキースファンでいっぱい。男子ばかりか女子の諸君も、みんなTシャツはヤンキース、帽子もヤンキース。地下鉄車内は「ヤンキースファン以外は許しません」という雰囲気。「全ニューヨーカー一丸となってヤンキースを応援に行くのだ」という結束と連帯の熱さは、野球好きのボクチンを感激させるほどのものだった。
ヤンキースファン1
(子育てパパと、CANOファンのコドモ。ガッツポーズ男もいた)

 しかしそれでも、「公共の場での飲酒は厳禁」というルールだけは絶対なのである。クマ蔵も、42丁目で地下鉄に乗り込んだ段階から、1組のカップルが紙袋に隠して缶ビールを飲んでいるのを目撃していた。でも、何しろ今井君はTokyoiteだ。「缶ビールぐらい、何ともないじゃないか」という、甘い発想でニヤニヤ若いカップルを眺めていた。
 諸君、Tokyoiteと書いて「トーキョーアイト」と発音する。パリの人はパリジャンかパリジェンヌ。ニューヨークの人はニューヨーカー。ロンドンのオカタはロンドナー。で、もしも国家なら世界10位に入る経済規模の大東京は「トーキョーアイト」なのである。昔、東京FMに「おはようトーキョーアイト」という番組があったが、東京アイトは、マコトにアルコールに甘いのだ。
ヤンキースファン2
(このCANOファンのコドモが、ホントに試合に夢中だった)

 ところが、ニューヨーカーのアルコールに対するシビアさは、東京アイトなサトイモの想像をはるかに超えている。缶ビールを紙袋に隠して飲んでいるカップルを、中年のオバサマがマコトに厳しい表情で睨んでいるのは、確かにボクチンも目撃した。「おやおや、ずいぶんキツい目で睨んでいらっしゃいますね」なのであったが、おそらく警察に通報したのはあのオバサマである。
 「ヤンキースタジアムまであと1駅」という155丁目の駅まできて、1人の私服警官がIDを示しながら車両に乗り込んできた。すぐに缶ビールのカップルを発見して、下車を求めた。車内は一瞬ヒンヤリと静まり返り、
「どうしたんだ?」
「酒を飲んでたらしいよ」
「おやおや、バカだねえ」
「あと5分待てばいいのにね」
という囁きに包まれた。
ヤンキースタジアム3
(席はライトスタンド 2)

 今井君は、これだけのことで捕まっちゃったカップルの、20歳代後半の女子のほうが何だか哀れでならなかった。42丁目からずっと、彼女はホントに自信たっぷりで幸せに溢れていたのだ。
「ヤンキースを見るなら、ビールぐらい飲まなくちゃね」
「どうしてみんな、法律にそんなに遠慮して、シラフで野球なんか見にいくの?」
「ほーら、私は法律も警察も全然コワくない。缶ビールぐらい、みんなで飲みましょうよ」
という感じで、優越感あふれる視線で周囲を睥睨していたのだ。
 155丁目で電車を下ろされた彼女はすっかりションボリして、両方の瞳から涙がこぼれ落ちるのが見えた。しかし、今さら仕方がないのである。昨日ニューヘイブンから帰る電車の中では、缶ビールも全く大目に見てもらえていたが、近郊電車と地下鉄では、ルールの厳密さだって全く違うのだ。
イチロー
(イチロー選手も、いよいよスタンバイだ)

 そういうザワメキの中、電車はブロンクス161丁目に到着。もしあのザワメキがなかったら「自分は今、あの悪名高きブロンクスにいるんだ」という緊張感はもっとずっと大きかったと思う。だって諸君、つい20年前まで、「絶対に近づいてはいけません」と、この世の地獄みたいに言われていた超危険地帯ブロンクスに、これから足を踏み入れるのである。
 ヤンキースタジアムでの今井君の席は、外野ライトスタンド。「ビールを飲んじゃダメ」というエリアと、「ビールまでなら、まあいいですかね」というエリアに分かれているが、もちろんクマ蔵は「いいですかね」のほう。熱い4月下旬の陽光に照らされつつ、イチロー選手の登場をワクワクしながら待ち受けたのだった。

1E(Cd) Akiko Suwanai, Dutoit & NHK響:武満徹 ”FAR CALLS” ”REQUIEM FOR STRINGS”etc
2E(Cd) Amalia Rodrigues:SUPERNOW
3E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 1/18
4E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 2/18
5E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 3/18
total m120 y1035 d11230