Sun 130505 トレイル完全踏破 諸君、こっそり喝采したまえ(アメリカ東海岸お花見旅36) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 130505 トレイル完全踏破 諸君、こっそり喝采したまえ(アメリカ東海岸お花見旅36)

 子供のころから、今井君はたいへん飽きっぽい性格。物事を最後までやり遂げた経験は余りないし、飽きたりイヤになったりすると、周囲がビックリ仰天するほどカンタンに投げ出してしまう。マコトに困った里芋サト次郎なのである。
「いったん始めた物事は、最後まであきめないで、チャンとガマン強くやりぬきなさい」
「オマエは、何故もっと辛抱強くなれないんだ?」
「飽きないでやり遂げるから、『商い』と言うんやでぇ!!」
の類いのお説教を諄々と説き聞かされた経験、数知れず。それでもそういうお説教を右の耳から左の耳へ、風向きが違えば左の耳から右の耳へ、あっという間に通過させてしまう術にも長けているから、お説教を面倒くさいと思うイトマさえない。何事もラクチン優先、超ラクチン人生である。
ゴール地点
(ボストン・フリーダム・トレイル、終着点のオベリスク)

 まず「参考書を最後までやり遂げた」という経験が、受験生時代に一度たりともない。まあ、山川出版社の日本史の教科書ぐらいは最後まで読み切ったが、それも受験の前々日、秋田から上京する電車が大雪のために5時間遅延したおかげ。仲間の受験生からみれば、「早稲田の入試前日にようやく教科書を最後まで読み上げた」という、ほとんど驚異的に怠惰な男であった。
 受験生のころには、他に「やり遂げた!!」と絶叫できるようなものは何一つない。そもそも高2の11月に医学部志望に決めたクセに、高3の5月にはもう文転して、数学Ⅲの授業も、物理Ⅱの教科書も、化学Ⅱの問題集も、全部ムダにしてしまった、ホントにロクでもない受験生である。
ヒーロー1
(独立の志士たちは、自ら剣を抜いて戦いの先頭に立った 1)

 そういう話は大学の学部在籍中にも延々と続くので、市川海老蔵どんが「もうブログは飽きてきた」と弱音を吐くのが、とても他人事とは思えない。1年の5月にもう大学の喧噪に飽き飽きし、6月にはすでに受講している教授のほとんどがキライになった。
 特に英語の授業がキライ。
「何で朝1番の教室で、選りにも選ってエドガー・アラン・ポーの恐怖小説なんか読まなきゃいけないの? ポーって、朝8時20分から教室に集まって読むもんなの?」
「だって、黒板の文字が特徴的すぎて読めない。ほとんどアラビア語のカリグラフィーみたいだ」
「英語の発音が個性的すぎて、ネイティブのヒトが聞いたって『イッタイコレハ何語ノ授業デスカ?』と目を丸くするだろう」
以上のような愚痴を学食でぶつけあっては、「この学部をいつヤメちゃうか」を深刻に語り合った。結局、ホントにヤメちゃったヤツは50人のクラスで2人だけだったが、今井君は「在籍してるけど、ほぼ休学に等しい状態」で残り数年を過ごした。
桜
(東海岸のどの街でも、白いサクラも印象的だった)

 もちろん、話が仕事となると全く別なので、心底からマジメに申し上げて、30歳以降の今井君は「仕事をサボった」「無断で仕事を休んで生徒たちに迷惑をかけた」という記憶は、ただの1度もない。授業も講演会もいつでも全力投球であって、熱意が余って蛇足なり何なりはあるにしても、「手抜き」などというマヌケな言葉は、今井君の辞書にはその類義語さえも載っていない。
 だから今井君は、年をとるに従ってマジメさが板についてきたのである。このブログを見てみたまえ。「そろそろ飽きてきた」も何もあったものではない。まもなく開設まる5年を経過するが、更新が遅れているのは5年通算して25回分だけ。それも「いつか必ず追いついてみせる」とばかり、この11ヶ月は更新を1日も怠けていない。
拡大図
(白いサクラ、拡大図)

 うにゃにゃ、しかしそういう成長は、あくまで「どうしてもやらなきゃいけないこと」に限られる。授業だって講演会だって、受講生諸君に胸を張って「やります」「みんなぜひ受講してください」と宣言したことなんだから、まさか途中で投げ出すわけにはいかない。ブログだって同じことで、2008年6月5日に「10年、毎日更新します」と宣言した以上、5年で25日分遅れてしまったことだって、本来は恥ずべきことだと考えている。
 しかし、「別にやり遂げなくていいこと」「投げ出しても誰にも文句を言われないと分かっていること」となると、サトイモ君には若い頃の怠惰の痕跡が実にハッキリと残っていて、「初めても、すぐヤメる」「あっという間にあきらめる」という悪いクセは、今もなくなっていない。
ヒーロー2
(独立の志士たちは、自ら剣を抜いて戦いの先頭に立った 2)

 だからこそ4月24日、ボストン・フリーダム・トレイルの完全踏破が近づいてきた時、サトイモ君はあまりにも興奮して、坂道をゴロゴロ転がっていきたいほど嬉しくなっていた。
 「やらなくても誰にも迷惑がかからないこと」「やり遂げても誰一人褒めてくれないこと」、要するに「どうだっていいこと」を、崖っぷちで踏みとどまりながら、ついに目の前にゴールが見えてきたのである。ここで興奮しなくてどうするんだ?
 もし手許にボストンの地図があったら、今すぐ開いてみてくれたまえ。もちろん、ボストンの地図なんかが手許にあるヒトは、日本には極めて少ないだろうが、諸君、いったい何のためにスマホがあり、何のためにグーグルマップが存在するのかね?
 地図を見れば、一目瞭然だ。今井君がこの日の午後にどれほどの道のりを踏破し、どれほどの名所旧蹟に感激し、スタートからどれほど呆気なく悪魔のワナとササヤキに直面しルースクリス/ユニオン・オイスター・ハウス/イタリア人街のオープンカフェなどの誘惑に耐え、どんなに雄々しく、どんなに勇敢に誘惑に立ち向かって、とうとう今、ゴールに向かって驀進中であるか。
ボストンハーバー
(ボストン・ハーバー。春の海風が爽快だ)

 午後4時近く、ボクチンは海にかかる橋をわたり、爽やかな風の吹き渡るボストン・ハーバーの向こうに、ゴール地点のバンカーヒル記念塔が見えた。「記念塔」とはつまりオベリスクであって、高さ約70メートル。独立戦争のさなか、1775年6月17日のバンカーヒルの激戦を記念して立てられた。周囲のチャールズタウンは、イングランドの田舎町にそっくりの、落ち着いたたたずまいを残している。
 フリーダム・トレイルの最後の10分ほど、今井君は自分で自分の実況中継をしながら坂道を急いだ。小学生男子なら誰でもやることであるが、マラソン中継の終盤をマネて心の中でアナウンスするのである。
イギリス風
(チャールズタウンで。イングランド風の風景が目立つ)

「先頭集団のどの選手も、全く疲れを見せません。ゴール地点のタワーが、間近に見えてまいりました。レースは最終盤に入りました、誰が勝つのか、誰が最後のスパートをかけるのか。残り1.5キロを切りましたが、まだ勝敗の行方は分かりません」
「お、一般参加のサトイモ選手、ちょっと前に出ましたか? 最後の力を振りしぼって、ついにこの坂道でスパートであります。あとゴールまで1キロ少々。どんどん坂を登ってゆきます」
ま、すっかり中年になっても、男子にはこの程度の精神年齢のヒトが少なくない。可愛いもんじゃないか。
終着点
(ついに完全踏破、オベリスクに到着)

 「英雄ポール・リビアの真夜中の疾駆」に感動した今井君は、こうして2013年4月24日「里芋サト助の真っ昼間の疾走」を敢行。数々の誘惑に耐えて、ついに誰にも褒めてもらえそうにない「フリーダム・トレイル完全踏破」をついにやり遂げたのである。せめてブログ読者諸君だけは、真夜中のPC画面の前でいい、コッソリ喝采をおくってくれたまえ。

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