Sun 130428 ハーバードの白熱と今井君の赤熱 桜満開(アメリカ東海岸お花見旅29) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 130428 ハーバードの白熱と今井君の赤熱 桜満開(アメリカ東海岸お花見旅29)

 4月23日午前11時、今井君としては相当に張り切って「ハーバード大学に入った」わけであるが、諸君、サトイモが拍子抜けしてゴロゴロ転がりだすほど、キャンパスに活気が感じられない。
 「ハーバード正門」という響きから想像していたのは、東大赤門のような花やかな雰囲気。井の頭線・東大駒場駅のような、晴れ晴れとした活気。しかし今ハーバード大学のジョンストン・ゲートをくぐった今井君は、あまりの静謐ぶりに呆気にとられてしまった。
 一度入った門をもう1回外に出てみたり、今度はもう1つの正門ワイドナー・ゲートをくぐりなおしたり、花やかさを求めて右往左往してみたが、全ての努力は無駄に終わる。周囲で動き回るものは、まるまると太ったリス君たちばかり。冷えきった早春の空気の中、陰鬱とさえ言っていい静寂が、広大なキャンパスを支配しているのだった。
ハーバード卿1
(若干セクシーなショットだが、これがハーバード卿の靴。ナデナデするとアタマが良くなる。諸君、たっぷりナデナデしたまえ)

 ハーバード卿の銅像のあたりも同じこと。銅の靴先がピカピカ金色に光っているところを見れば、多くの学生や観光客がここに来て「どうか1つ、私のアタマが良くなりますように」をやりつづけていることは間違いないのだが、今日クマ蔵と一緒に「あんよナデナデ」をやってみたのは、5~6歳の幼女とそのママだけなのであった。しかも完全にご近所のオカタ。「ランチのお買い物の帰りに寄りました」という感覚である。
 サトイモ君は、ビックリするのである。何しろ今井君が通っていた頃の早稲田大学は、朝から晩までド派手な喧噪のまっただ中。大隈講堂前も、大隈銅像前も、「これでもか!!」と絶叫するほどたくさんの立て看板がひしめき合い、タテカン前では3組も4組ものグループがマイクを握しめり、誰も聞いていない演説を繰り広げた。
キャンパス1
(ハーバードの静謐。大学のあるべき姿を知る)

 そこいら中のベンチには学生がひしめき合って、何やら盛んに論じあっている。それがサークルの運営方法であれ、夏休みの旅行の計画であれ、昨日の合コンの反省会であれ、受験生時代に通った予備校自慢であれ、とにかくみんなしゃべる&しゃべる。ベンチが埋まれば、路上に立ったまま、あるいはその辺の地べたに座り込んで、常にワイワイ、いつでもガヤガヤであった。
  もちろん、間違わないでくれたまえ、以上の描写はあくまで「今井君がいた頃の早稲田大学の姿」である。今や、もちろんあんなお祭騒ぎの喧噪は過去のものとなり、東大どころかハーバードみたいな陰鬱な静謐がキャンパスを満たしているに違いない。ボクチンが書いているのは、あくまで数百年前の日本の大学のイメージに過ぎない。
キャンパス2
(椅子とテーブルはあっても、談笑なんかは起こらない)

 あのころ、万が一「大隈銅像の靴に触れば、オツムが良くなるようだよ」などというウワサが広がれば、おそらく長蛇の列ができただろう。学生たちも長蛇の列を作るだろうが、ご近所の皆さんが絶対に黙っていない。商店街のオジサンも、都営住宅のオバサマも、みんなコドモを連れてやってくる。
 下手をすれば、教授や准教授や大学院生だって列に並びかねない。誰だって、アタマやオツムの血流を少しでも良くしたくて、日頃からウズウズしているのだ。列にゼミの教授が並んでいても、あんなにツンツン威張っているドクターコースの院生を発見しても、学部生たちはちっとも変だとは思わない。センセーたちのオツムが良くなるのは、学部生にとってもたいへん素晴らしいことである。
東洋言語
(我々の文化や言語も研究してもらっている)

 「これから2年ほど猛勉強するから、オマエたちには不義理することになる」と高らかに宣言するようなヤツも少なくなかった。ところが諸君、猛勉強しているはずの彼らに、何故か必ず会える場所がある。
 A君の顔を見たくなったら、社会科学部のラウンジに行けばいい。いつでも自動販売機のコーヒーを、顔をしかめてすすっている。B君には法学部のラウンジ。C君には図書館の新聞閲覧室。D君は大隈通りのお蕎麦屋。E君は政経学部の掲示板前。要するに、彼らは全然「猛勉強」なんかしていないのである。
リス1
(まるまるリス右衛門)

 ただ、1年先輩のF氏だけは明らかに違った。彼はいつでも学部の読書室にいた。朝から晩まで12時間、間違いなく学部の読書室にいて、彼が占領した机の上には、常に4~5冊の分厚い書物が積み重ねられていた。お目目は真っ赤に血走って、その血走った目でマコトに嬉しそうに、読書室奥の書架に駆け込んでいく。
 一度だけ、書架の前のF氏を目撃したことがある。吸血鬼が餌食を発見した瞬間のように、笑いで真っ赤に裂けた口からヨダレの糸を垂らさんばかりの表情で、ある1冊の書物を手に取ったのである。うぉ、恐ろしい。あまりの恐ろしさに、サトイモ君は「見つかってはならない」「決して見つかってはならない」と、小走りに読書室を後にした。
リス2
(まるまるリス五郎)

 諸君、目の前のハーバードが閑散とした静寂に包まれているのは、要するにここに集まった世界の超秀才たちが、ほとんどM氏みたいなヒトビトだからである。偏差値100のハカセ君&ハカセちゃんたちは、決して路上や銅像の前で白熱したりしないのだ。白熱するなら、教室の中か、図書館の書架の前か、大講堂で教授と正義について論じあう時に限られる。
教会
(かわいい教会があった)

 いやはや、若い頃の今井君は、白熱する場所を間違えたのだ。お蕎麦「浅野屋」だの、学食でSランチをかきこみながらだの、法学部ラウンジで自販機コーヒーをすすりながらだの、妙竹林な場所でばかりカッカ&カッカ熱くなったあげく、白熱して激烈な化学変化を起こし続けるはずの脳ミソは、炉端焼き屋の炭火よろしく弱々しく赤熱して、ついに燃え尽きた。
 静寂が支配するのは、何も正門や銅像付近ばかりではない。ワイドナー図書館→記念教会→メモリアルホール→自然史博物館と、大学構内をどんどん深く入り込んでいっても、「談笑」「団欒」「骨休め」のようなヌルマ湯とか、穏やかな眠気を誘うダラしない赤熱なんかは、ちっとも見当たらない。
満開1
(ちょうど桜が満開だった 1)

 時おり出会う学生たちは、みんな張りつめた表情。「次の教室へ」「次のゼミ室へ」「図書館へ」「実験室へ」。しっかり目的地があって、多くが冷たい風の中を小走りに行く。そう言えば、「集団」「グループ」というものもあまり見かけない。単独行動か、多くても2人1組で駈けていく。間違っても
「あれ、あれって田中じゃね?」
「おお、田中、久しぶり。どうしてた?」
「あぁ? おぉ、ちょっといろいろあってな」
「黙ってゼミ休むなよ。センセー呆れてたぜ」
「みんなでコーヒー行く? スタバ? それとも学部のラウンジにしとく?」
「ラウンジ、ラウンジ。山本と後藤と中川にもメールすっか?」
「あと、長谷川も呼んどけよ」
うーん、こういう赤熱的♡サトイモ的なヌルマ湯の学部生活に陥る可能性は、ハーバードには皆無のようであった。
満開2
(ちょうど桜が満開だった 2)

 超有名なハーバード大学自然史博物館の前では、美しい桜の大木がちょうど満開を迎えていた。桜のピンクが、レンガの壁によく映える。これほどの美しさであれば、日本ならさしづめ卒業アルバムの表紙にでもなりそうなもの。ちらちらと散る桜の花びらの中、人々は花やかに語り合い、暖かく笑いさざめくことだろう。
 しかし諸君、ハーバードの端正な静謐は、ここでもまた決して崩れることがない。銅像の靴に触ったり、大喜びで桜の写真をとったり、可愛らしい教会を見つけて興奮したりしているのは、暢気な日本のクマさんだけなのであった。
ハーバード卿2
(帰る前にもう1度ハーバード卿に挨拶)


1E(Cd) Schreier:BACH/MASS IN B MINOR①
2E(Cd) Schreier:BACH/MASS IN B MINOR②
3E(Cd) Hilary Hahn:BACH/PARTITAS Nos.2&3 SONATA No.3
4E(Cd) Santana:EVOLUTION
5E(Cd) Marvin Gaye:WHAT’S GOING ON
total m152 y757 d10952