Tue 130423 毛はえカフェで巨大バーガー DCダックの旅(アメリカ東海岸お花見旅24) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 130423 毛はえカフェで巨大バーガー DCダックの旅(アメリカ東海岸お花見旅24)

 ユニオン・ステーションは、ワシントンDC中心街の北東の端っこにあって、鉄道でアメリカの首都にやってくるヒトビトが、最初に降り立つのがこの駅である。
 今井君自身ホンの2日前にニューヨークからアムトラックでここにやってきたのだが、ついにたどり着いた中央駅の駅舎は、中から見ても外から見ても日本の大都市の中央駅とは全く趣を異にする。
 列車の姿は全く見えない。危機感を漂わせる差し迫った口調のアナウンスも聞こえない。上品な静寂の中、ヒトビトの足音だけが石の壁に固く反響する。この雰囲気はむしろ地方都市の空港のものである。
 この日の今井君は喉の渇きと空腹をかかえ、「とにかく駅に行けば何とかなるだろう」と救いを求める気持ちで駅にたどり着いた。だから、この固い空気にはちょっと面喰らった。「とにかく、まずビール…」「何でもいいから、食い物…」と、ほぼウワゴトに近いコトバが、ヨダレと一緒に流れ出しそうになっていた。
ダックツアー1
(DCダック。これからこれに乗ろうと思う。チケットを衝動買いしてしまった)

 しかしそれでも、まあ何とか2軒のレストランを発見。1軒はシーフードレストラン。お客はほとんど見当たらないが、チョイと高級そうで「予約なしのお客は困ります」みたいな、ツンとした雰囲気である。
 もう1軒は、カフェに毛が生えたような軽い感じのお店。カフェちゃんが「ごめんなさい。ホントはカフェのままでいたかったのに、気がついたら毛がはえちゃってたんです」と客に謝罪しているような、マコトに不思議なたたずまいである。
ユニオン駅
(ワシントン、ユニオン駅)

 ちょっと迷ったあと、サトイモ閣下は「カフェに毛がはえちゃった」ほうを選択。「何が何でも今すぐにビール!!」というぐらい危機的かつ切迫した喉の渇きだったので、店構えの重厚さとか料理の味よりも、「毛はえカフェ」の手っ取り早さを優先した。
 注文したのは、ビールとハンバーガー。「公共の場での飲酒は厳禁」という国であるが、駅構内の吹きっさらし(Mac君の変換は「不喫茶裸子」。何なんだこりゃ?)とはいえ、一応は飲食店内。ぎりぎりセーフな感じで、ここでのビールは許されているのである。
ハンバーガー
(毛はえカフェのハンバーガー)

 しかし諸君、このハンバーガーの巨大さはさすがにアメリカである。何しろ毛はえカフェであるから、味の方は「うーん」であるが、この巨大さだけで十分に土産話にはなる感じ。テーブルクロスのアメリカ国旗とともに、「うぉ、ボクはいまアメリカの真ん中にいるんだな」と実感させてくれるのだった。
 ハンバーガーがこんなに巨大では、黄色いお飲物のほうももう1杯ほしくなるが、何しろ今井君はこれから「DC Duckツアー」に参加する。黄色いお飲物を飲みすぎてお腹の中がアブクだらけになると、途中でトイレに行きたくなるおそれがある。ここは我慢&我慢。1杯目だけでヤセ我慢を貫き、15分ちょっとで毛はえカフェを後にした。
自分撮り
(毛はえカフェの自撮りイモ)

 DC Duckとは、上の写真のような奇妙な乗り物。水陸両用のコイツに乗り込めば、まずワシントン市内の観光名所を走り、アーリントン墓地の向こう側のヨットハーバーから、ポトマック河にザブンと飛び込み、河からのワシントン観光も楽しませてくれるという趣向。所要1時間半ほどの、要するに変わり種の観光バスである。
 同じ趣向の観光バスはボストンでも目撃したが、もともとは第2次世界大戦中にアメリカ軍が開発した水陸両用車。真珠湾攻撃をキッカケに開発が始まり、ノルマンジー上陸作戦で大活躍したというのだから、上陸用舟艇の一種であり、ホントの初期の揚陸艦だったわけである。
ダックツアー2
(さて、それではそろそろ行きましょう)

 そんな物騒なものがワシントンやボストンの街を走り回って、マコトに暢気な観光に使われている。今井君がこういう観光バスに乗るのはホントに珍しいが、何しろ博物館歩きで疲労困憊したあとだ。疲労回復を兼ねて、夕暮れの1時間半をノンビリ過ごすにはもってこいの手軽さであった。
 午後4時にユニオン駅を出発する最終便で、国会議事堂→スミソニアン博物館群→リンカーン記念館までは、徐行しながらドライバーが早口で観光案内をする。乗客は、ちょっと疲れた感じの中年オヤジがほとんどである。
 ところが、同じ中年オヤジでも日本とアメリカではその積極性に大差があって、ドライバーの説明にいちいち熱く反応するし、質問もすれば反論もし、提案もすれば手助けもする。「いよいよ川に入ります」の時には大喝采になったし、みんなにアヒルの笛が配られると、早速その笛を吹いてみる。知らない者どうしが仲良くなるのも早い。まさに「満喫」というコトバそのものの満喫ぶりである。
ダックツアー3
(DCダックの内部)

 クルマから船に変身したDuck君はポトマック河をロナルド・レーガン空港の方向に下りはじめた。1982年1月、エア・フロリダの飛行機が氷結した河に墜落した現場付近である。乗客乗員80名近くが死亡。飛行機が激突した橋の上のクルマ数台も巻き込まれ、数名が命を落とした。
 悲劇の起こったワシントン・ナショナル空港は、その後ロナルド・レーガン・ナショナル空港に名を改め、今もたくさんの飛行機が次々に離着陸している。我々のお船のすぐ頭上、手で触れられそうなほど近くを、大型航空機が轟音をあげながら上昇していく。事故の激しさを想像すると、身のすくむ思いである。
飛行機
(今日も大型機が離着陸する)

 あのとき、水没していく飛行機にはまだ数名の生存者がいた。水面上に残った垂直尾翼にしがみつく生存者を、橋の上に集まった群衆が懸命に力づけるシーンは、今でもたまにテレビで特集されるほどである。
 救助に駆けつけたヘリコプターから下ろされる命綱。その命綱を他の女性乗客に譲り、やがて力つきて水面下に消えていく男性。橋の上からも男性2名が飛び込んで、女性2名を救助するが、命綱をゆずった男性はそのまま水死してしまった。あまりに悲惨な事故だったが、男性たちの勇敢さはアメリカの人々の心を揺すぶった。
ダックツアー4
(オヤジたちはみんな記憶している)

 今日DC Duckに乗り込んだ中年オヤジたちは、今から30年前のその事故の光景を「オレは覚えてるぞ!!」と語り合いはじめた。「ほら、あの橋の上だ。あそこから男が飛び込んだんだ!!」と叫んだのは、今井君の目の前の赤い野球帽のオヤジである。
 事故当時、彼はおそらく中学生だったか高校生だったか。30年経過して、もうすっかり疲れ果ててしまったが、気概は失くしていないようである。「オレだって万が一の場合には、自分を犠牲にしてでも、弱い人を全力で救うんだ!!」「オマエたちも、全員同じ決意だろ?」という力強い視線で、DC Duckの乗組員仲間である今井君たちを見回してみせたのであった。

1E(Cd) J.S.BACH/SILVIA(Cantata Opera in 3 Acts)①
2E(Cd) J.S.BACH/SILVIA(Cantata Opera in 3 Acts)②
3E(Cd) Schiff:BACH/GOLDBERG VARIATIONS
4E(Cd) Michael Davis:MIDNIGHT CROSSING
5E(Cd) Marvin Gaye:WHAT’S GOING ON
total m127 y732 d10927