Mon 130318 わざわざ大阪に文楽を見にいく テクテク歩くということ 闘志狂言 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 130318 わざわざ大阪に文楽を見にいく テクテク歩くということ 闘志狂言

 4月10日、朝5時起床。6時にはオウチを出て、羽田空港に向かった。「あれれ、講演会の時期でもないのに、何で?」ではあるが、これから今井君はちょっと大阪に出かけてこようと思う。大阪なら、羽田からヒコーキに乗ればたった1時間。横浜とか鎌倉とか箱根に遊びに行くのと、時間的にはほとんど変わらない。
 もちろん、単に遊びにいく時に「羽田までタクシー」などという贅沢はモッテノホカである。そんな贅沢をすれば、友人知人やネコちゃんたちや、神様やホトケサマがこぞって腹を立て、「サトイモに天罰をくだしてやろう」と意見が一致するに決まっている。
 天罰はマコトにオソロシイ。天罰を恐れるサトイモ軍曹は、羽田空港までチャンと電車を乗り継いでいく。「新宿からバス」という方法もあるが、遊びにいくのにも遅刻は絶対にイヤ。首都高が万が一渋滞したときのリスクを考え、あくまで電車を利用する。
文楽劇場1
(大阪、国立文楽劇場)

 地下鉄千代田線で二重橋前へ。二重橋前から東京駅まで地下道をテクテク歩いて、東京駅から山手線で浜松町へ。その間ずっと
「なぜ『歩く』の形容は『テクテク』なんだろう?」
「そもそも、『歩く』ことについて形容詞や副詞が必要なんだろうか」
「もちろん『颯爽と歩く』という場合があるから、『テクテク』というのは『颯爽と』と対極にある疲弊した精神状況を暗示する副詞なのだろうか」
「すると、『テクテク』と『トボトボ』は同義語関係?」
などという、マコトにラチの空かないことばかり考えていた。
難波本通
(大阪ミナミを歩く 難波本通)

 しかも「どうぎごかんけい」をMac君が「同義ご関係」と変換したりするから、「あらま、そりゃまたずいぶん怪しいご関係でござるね」とニヤニヤしているうちに、電車は浜松町駅へ。朝7時から驚くほど混雑したモノレールに乗りこんで、羽田空港には7時半に到着。大阪伊丹行きは8時出発だから、余裕で間に合った。しかしヒコーキに乗ってからも、サトイモ君の頭から「テクテク問題」がなかなか消えてくれない。
 英語なら「テクテク歩く」はtrampという動詞を使うところ。『tramp』を辞書で引いてみると、『ドシンドシン歩く』『トボトボ歩く』が併記されていて、こりゃ今井君はますます立ち往生する。「え? ドシンドシンもトボトボも同じ動詞?」であって、うーん、このあたり、京都大学の英作文でよく出題される類いのことかもしれない。
千日前
(大阪ミナミを歩く 千日前)

 諸君、副詞1つ1つ、形容詞1つ1つにこだわるのも、なかなか疲れるものである。しかしだからといって「メンドクセー」「ドーデモいいんじゃね?」などと言っていては、チャンとした教師にも弁護士にも、医者にもナースにもなれない。
 部下や生徒や、クライアントや患者さんがやってきて「お腹がシクシク痛みます」「喉がイガイガして、いがらっぽくガラガラします」「吐き気がして、胃のあたりがギュルギュルするんです」などと訴えるのを、「何言ってんだかサッパわかんね。うぜえヤツ」と怒鳴りつけるようじゃ、どんな職業でも失格なのである。
相合橋
(大阪ミナミを歩く 相合橋筋)

 いやはや、そういうチョー面倒なことをコネクリ回しながら、今井君は大阪伊丹空港に降りたった。大阪はマコトに麗らかな春の1日。ヒコーキのプレミアムクラスで偉そうにふんぞり返っていたオジサマたちの醜いツバぜり合いがウソのようである。
 伊丹から難波までは、リムジンバスを利用。620円だったかな? 700円だったかな? タクシーに乗れば5000円もかかるから、やっぱり遊びにきたときの今井君は、ホントにホントにマジメに控えめに行動しているわけだ。難波から日本橋の国立文楽劇場までも、決してタクシーを利用したりしない。麗らかな春の日差しを浴びながら、ゆっくり散歩していった。
文楽劇場2
(国立文楽劇場に到着)

 だって、今日の今井君は完全に手ぶらである。普段着のセーターに、普段着のズンボ。カバンなし、一切の荷物なし。セーター1枚で、ズンボのポケットに両手をつっこみ、まるで近所のコンビニに朝食を買いに行くような態度で大阪にやってきた。
 周囲にヒトは誰一人として「このオッサンは2時間前まで東京にいて、空を飛んで大阪にやってきたばかりだ」とは信じないだろう。こんなカッコなら、散歩するのが一番楽しいのだ。諸君、どうやら人生というものも同じことで、手ぶらで散歩気分のほうがラク。本来の仕事だって、きっとウマくいくに違いない。
プログラム
(本日のプログラム。今日は「第1部」をみる)

 大阪には、文楽を観にきた。今井君が文楽をホンキで観はじめてから、すでに35年が経過する。35年前の夏、今は亡き竹本津大夫と吉田玉男の共演、「摂州合邦辻」を東京の国立劇場で観たのが始まりである。まだ若かった吉田蓑助も、中国の習近平サンみたいな黒髪で出演。文楽ファンなら誰でもが垂涎の舞台だった。
 当時の義太夫は、竹本越路大夫と津大夫の2枚看板。今を時めく竹本住大夫だって、当時はまだ「文字大夫」。今回は病気休演の竹本源大夫は、綱大夫になる前の織大夫の時代だった。人形浄瑠璃・文楽自体にも「まだ補助金なんか必要ありません」という壮年のエネルギーに満ちていた。
 今井君の書斎には、昭和50年代からの文楽公演パンフレットがズラリと揃っていて、これはおそらく神田神保町の古書店でさえ一目置くであろう一大コレクション。うひゃ、フツーの予備校英語講師と思ってもらっては困る♨ 大阪にブラリと現れ、5時間の文楽公演を満喫して帰ろうという、甚だ高尚な御仁なのでござる♡
チケット
(本日のチケット)

 今回も、学部1年の頃(恐竜時代)からの友人と一緒である。昨年10月にも、同じ友人と大阪で「仮名手本忠臣蔵」を通し狂言を満喫した。今井君が入力を間違えたせいで、Mac君は「通し狂言」を「闘志狂言」と変換してくれたが、確かに11時間にわたって例の狭い座席に縛りつけられて文楽を見るなどというのは「闘志狂言」の名にふさわしかった。
 今回はさすがに「11時間ぶっ続け」は避けることにした。「24時間テレビ」とか「27時間!! 体力の限界に挑戦!!」みたいな、テレビ局独特の土台ムリな企画のマネにならずに済ませるのが賢明というものだ。
エントランス
(エントランス。さて、ではジックリみますかね)

 11時開演、16時終了。大阪中のオジーチャン&オバーチャンが集まって、文楽劇場は全席売り切れ、完全に満席である。「何だ、こんなに人気なら、補助金なんかに頼らなくてもやっていけそうじゃないか」。一瞬そう勘違いできるような、マコトに素晴らしいパンパンぶりであった(明日に続く)。

1E(Cd) The Doobie Brothers:MINUTE BY MINUTE
2E(Cd) The Doobie Brothers:MINUTE BY MINUTE
3E(Cd) Boz Scaggs:BOZ THE BALLARDE
6D(Pl) 4月文楽公演:伽蘿先代萩/新版歌祭/釣女:大阪・国立文楽劇場
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