Fri 130215 黄色く染まった空 またベジャール 浦雄サンの「ウラオー」 ウラオーな2人 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 130215 黄色く染まった空 またベジャール 浦雄サンの「ウラオー」 ウラオーな2人

 3月9日、3日ぶりに帰京して新幹線を降りてみると、「もうすっかり春」などという暢気な話ではなくて、日差しは夏、気温は25℃、3月初旬なのに初夏の暑さである。ツクシさんもオオイヌフグリさんも、さぞかし驚いていることだろう。
 今井君は3月2日から4日にかけて、北海道のど真ん中で暴風雪を体験したばかり。今回の関西出張にも、思わず分厚いコートを着て出たが、東京駅丸の内口あたりをウロウロしている欧米男子連は、もうTシャツ1枚である。
 もちろん彼らは、どんなに寒い日だろうと「オレはTシャツで過ごしたい♨」と考えれば、意地でもTシャツ1枚になれるヒトビト。12月のブダペストでだって、ちょっとでも晴れ間が見えれば、そのスキをついてスカさず街をTシャツ1枚で走り抜ける。
 だから彼らのTシャツ1枚のことはさておくとしても、フツーの日本のオジサマもワイシャツ1枚、ごくフツーのジャパニーズ・オネーサマも短パンにナマ足。その集団の真ん中で分厚い真冬のコートを着込んだサトイモ閣下は、やっぱりかなり異様なカッコに見えたに違いない。
ホール
(またまた東京文化会館大ホールを訪れた)

 ナデシコの病気の具合がだいぶ良くなって、クマ蔵もヒト安心である。ゴハンも食べるし、水も飲む。おいしいカンヅメしか食べなくなり、ドライフードには見向きもしなくなってしまったが、もう少し太って元気になるまではこれでいいとしよう。
 一番心配していた点滴についても、世の中にはホントに便利な道具があるもので、気難しいナデシコでさえ前足も後足も動かせなくなるネットを購入。怖がってブルブル震えながらではあるが、5分ほどで規定の125mlの点滴が可能になった。
 こうしてみると、やっぱりニャゴの暢気さが際立つのである。ニャゴのほうは、首にネコ用のカラーをパカッとはめて、洗濯用ネットに入れてしまえば、それだけで5分の点滴を我慢する。さすがに機嫌の悪い時はモゾモゾ身動きしてたいへんだけれども、暴れて針が外れるようなことはない。
東京文化会館
(東京文化会館、ロビーにて)

 ニャゴロワは、ゴハンもドライフードをいくらでもバリバリ食べる。気がつくとバリバリ、また気がつくとカリカリ、休日の今井君がダラしなくお酒を飲みまくるのと同じような調子で、のべつ幕無しにパリパリ&カリカリやっている。「余命100日」のはずのニャゴが900日生きて、まだまだ気力も体力も全然衰えないのは、きっとこの食欲のせいである。
 しかしさすがのニャゴだって、ナデシコがコッソリおいしいカンヅメをもらっている気配には気づく。健康にはドライフードのほうがいいから、元気なニャゴには出来るかぎりカンヅメは与えたくない。するとやっぱり悔しいのか、スゴミのあるソプラノで激しく訴えかける。
 ニャゴはもう猫又になりかけていて、人間のコトバをいくらか話せるようである。階段の上で「よこせー」「よこせー」「食べさせろー」「ダマされないぞー」と、唸る声が、階下の書斎からもよく聞こえる。ナデシコに点滴するのは、半地下の書斎のジュータンの上なのである。
チケット
(今日は「ライト」。32年ぶりの上演だ)

 さて、ネコの心配は一段落したから、10日午後はベジャールのバレエを観に上野の東京文化会館に出かけた。この日の東京も気温25℃、南からの強風にチリとホコリが巻き上げられ、「煙霧」という珍しい現象が起こって、上空の厚い雲が真っ黄色に染まった。
 諸君、マッキイロに対するMac君の変換は「末期色」。しかしその変換があながちバカバカしいとは言い切れない、マコトに不気味な空の色であった。見上げると、東と南の方角の黄色が特に濃密。上野の駅で降りて、あのスカイツリーさえ霞んで見えにくい状況に、思わずゾッとした。
 混雑した地下鉄の中の会話は、みんなひたすら「黄砂」であり「PM2.5」であって、コドモのころはげしい喘息に悩んだ今井君は、ホコリと砂とチリの濃度の高い空気を吸うのが恐ろしい。お目目も心配。一昨年11月に手術した右眼に大っきなホコリでも入ったら、何だかオオゴトになりそうな気がする。
空
(3月10日午後、上野の空も黄色く染まっていた)

 5日前にも東京文化会館でベジャールをみたが、前回はAプログラムの「ボレロ」「ディオニュソス組曲」「シンコペ」。今回はBプログラムの「ライト」。1981年の大成功以来、32年ぶりの上演だという。
 舞台は、17世紀ヴェネツィア。ヴィヴァルディに、巨大な卵に、トルコの神秘主義教団の旋舞「セマー」に、聖フランチェスコまで複雑に絡みあって、予備知識なしに見たら、いったい舞台の上で何が起こっているのかサッパリ分からないかもしれない。
 幸いサトイモ男爵は昨年5月にイスタンブールでセマーを間近に見たばかりだから、セマーのことも、このベジャール作品にセマーがいろいろな形で何度も登場する意味も、何とかしっかりフォローできたようである。
上野駅ビュー
(夕食は、上野公園「音音」。カウンターは上野駅ビューである)

 32年前の初演当時、パリ、ヴェネツィア、ブリュッセルで大喝采を浴びたというバレエである。2013年3月の東京でも、やっぱり喝采は激しかった。カーテンコールが数回に及んでも喝采は止むことなく、最後のカーテンコールで舞台に「SAYONARA」の文字が現れると、大ホールを埋め尽くした3000人の観衆がほぼ全員立ち上がってのスタンディングオベーションになった。
 今井君は今日もまた、東京の観客の質の高さに感激するのである。これほど難解なバレエを、オジーチャンやオバーチャンから小さなコドモまで、みんなその素晴らしさを肌で感じ取り、喝采は大喝采を呼び、演じた者たちを激しく感動させる。パリやニューヨークの観客の質を、とっくに凌駕しているような気がする。
 やがて観客席に照明がつき、まだ鳴り止まない拍手の中、もうカーテンコールはないものと諦めたお客が三々五々帰りはじめた頃、カーテンの向こう側から大歓声が湧き上がった。演じ終えた者たちの、感激と感謝と感動の雄叫びなのである。涙もろいボクチンは、全身に鳥肌がたち、涙を抑えるのがやっとだった。
音音
(音音と書いて、「オトオト」と読む)

 ただし、これだけ観客がいれば、不思議な御仁も1人ぐらいまぎれこむ。今日の不思議オジサマは、名づけて「浦雄サン」。カーテンコールの間中、素っ気ない野太いで「ウラオー」「ウラオー」「ウラオー」と唸りつづけていた。
 周囲のお客は、何だか目が合ったらイヤだから、みんな無視を決め込んだ。しかし無視されても無視されても、ひたすら「ウラオー」。数えたわけではないが、浦雄さんは20回以上の「ウラオー」を叫んだはずだ。
 もちろん、実際には「ウラオー」ではなくて、彼独特の「ブラボー」なのである。しかし、ブラボーはもっとハッキリ発音しなきゃイケナイし、チャンと舞台に届く声で叫ばなければ意味がない。農家のウシが小屋の窓からヌッと鼻面を出して、田んぼや畑の様子を暢気に眺めながら「モゥォー」「モゥォー」と唸ってみるような、そんな麗らかな声じゃダメなのだ。
 最後のスタンディングオベーションになっても、浦雄サンはまだ野太く「ウラオー」をやっている。最初のうちこそあたりを席巻していたウラオーも、これほどの大喝采ではもう誰にも聞こえていない。しかし今井君は、浦雄サンの1列だけ斜め前の席。最後の最後まで、ブラボーじゃないウラオーがすぐ背中のあたりに聞こえて、マコトにくすぐったかった。
おでん
(音音の「おでん盛りあわせ」。ウラオー!!)

 空が真っ黄色に染まり、生暖かい風の吹き荒れた不気味な1日だったが、ウラオー20連発のあとで外に出てみると、気温が一気に下がって空気がギュッと引き締まり、空の黄色もすっかりとれてキレイに澄みわたっていた。
 夕食は、上野公園の「音音」。「音音」と書いて「ねね」と読むんだろう。あくまで冗談で「まさか『オトオト』ということはないだろう」。誰もがそう思うだろうが、諸君、冗談じゃない、ホントに「オトオト」なのである。次々にやってくる山手線と京浜東北線の電車を眺めつつ、オトオトの和食をサカナに、熱燗をチビチビやりながら1時間半座っていた。
醤油豆
(香川名物・しょうゆ豆。ウラオー!!)

 香川県のお店なのか、里之丞の大好物・香川名物の「しょうゆ豆」があった。早速3皿注文して、2合徳利も3本カラッポになった。他に、おでん盛り合わせ、辛子蓮根まんじゅう、エビとアボカドの生春巻きなど。たいへんおいしゅうございました。
 「なんで、上野で?」「なんで、そんな眺めの店で?」であるが、ナデシコが病気なのにバレエを観にフラフラ出かけたり、西麻布で焼き肉屋に入ったり、そういう行動がチョイと評判悪そうだったから、遠慮したのである。ま、上野の飲み屋に1時間半なら、あまり文句もいわれそうにない。おお、さすが控えめなサトイモ君、ウラオー、ウラオーだ。
辛子蓮根饅頭
(辛子蓮根まんじゅう。小ぶりで旨い。ウラオー!!)

 もっとも、こんな眺めのお店でも、熱く愛を語り合う不思議な2人を目撃できるから、やっぱり日本はウラオーだ。今井君の目の前のカウンター席にピッタリ寄り添って座った2人は、男子50歳代後半、女子20歳代なかば。マコトにイケナイ感じでござる。
 2人で同じ「かき揚げ定食」を注文し、夕暮れの上野駅を行ったり来たりする電車を眺めながら、お酒も一切ナシに、大っきなかき揚げをかじりながら熱い愛を語り合う様子。おお、まさに、ウラオー。農家のウシだって思わず顔を赤らめながら、一声高く「ウラオー」と叫びそうな、スンバラシイ光景であった。

1E(Cd) Blomstedt & Staatskapelle Dresden:BRUCKNER/SYMPHONY No.7
2E(Cd) Wand & Berliner:BRUCKNER/SYMPHONY No.8 1/2
3E(Cd) Wand & Berliner:BRUCKNER/SYMPHONY No.8 2/2
4E(Cd) Wand & Berliner:BRUCKNER/SYMPHONY No.9
5E(Cd) Ricci:TCHAIKOVSKY/VIONLIN CONCERTO・PAGANINI/CAPRICES
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