Fri 130208 釧路から鉄道で帰る 今のJALはキライだ シカと遭遇 トマム、バブル残照 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 130208 釧路から鉄道で帰る 今のJALはキライだ シカと遭遇 トマム、バブル残照

 3月3日、「日曜日のひなまつり」などというのは、オウチにパパもいて、幼い娘にとってこんなに嬉しい日はないのである。毎日の仕事に疲れきったパパが、それでも昼前に不承不承に起きてきて、ひなあられ、ひしもち、白酒につきあわされる。
 起こされたパパも不満。パパの不機嫌で眠そうな顔が、幼い娘も大嫌いだ。それでも、まあいいじゃないか。日曜の午前11時、ムクれた顔で向かい合って、ひなあられをボリボリかじるシアワセなんか、日本みたいなトコトン平和な国でなければ味わうことは出来ない。
おおぞら1
(特急「スーパーおおぞら」札幌行き。釧路駅にて)

 かく言う今井君が目を覚ましたのは、北海道の凶悪な暴風雪の真っただ中。しかしホテルの窓から眺める釧路の街は、今朝もまた穏やかな春うららの快晴であって、日差しを浴びた雪がどんどん融けていく。11時、ホテルをチェックアウトして、タクシーでJR釧路駅に向かった。
 「あれれ、飛行機じゃないの?」であるが、「はい。飛行機じゃございません」と答えるしかない。サトイモ君はこれからJRでノンビリ新千歳空港に向かい、そこからANAの飛行機で東京に帰る。マトモな人なら「何でそんなメンドクサイことするの?」「釧路から直通の飛行機があるじゃないか」と、ビックリするところである。
快晴の釧路
(釧路は今日も快晴である)

 しかし諸君、サトイモ男爵は昨夜の激しい祝勝会の間に、コッソリ決意を固めていた。どうしても早春の北海道を車窓から満喫したい。雪に覆われた根釧台地の荒れ果てた風景も見たいし、まだ豪雪が続く石勝峠を走り抜けてもみたい。運がよければ、車窓からエゾシカの姿を見ることだって出来るはずだ。
 考えてみれば、北海道を旅する時は今までいつも西から東に向かっていた。東から西に向かう車窓は、今回が初めてなのである。釧路から新千歳まで3時間半あまり、新幹線なら東京から姫路ぐらいまでの時間で早春の北海道を満喫できるなら、何も直通の飛行機にこだわることはないのである。
荒野1
(荒野の風景)

 ついでに、今井君はどうしても今のJALに乗ってあげる気になれない。会社が手配してくれたチケットはJAL便であるが、「JALはまず、全国民にキチンと謝罪すべきなんじゃないか?」というのがサトイモ男爵の意見。「チャンと謝ってもらうまでは、JALには乗ってあげない」。ガンコなサトイモオヤジは、あくまでガンコに生きていきたい。
 何よりイヤなのが、このところ遠慮なくガンガン流れているJALのCM。テレビだけじゃない。新聞でもネットでも、嵐なんかを起用して、広告費をタンマリつかってダラしない広告を流しまくっている。何だか嵐のメンバーが気の毒だ。
 しかし諸君、税金をジャブジャブつかって救済してもらい、モトの株主がもっていた虎の子の株券を紙切れ同然にしておきながら、チャンと謝罪した形跡は見当たらない。そこへ嵐の素晴らしくカッコイイ5人が登場し、5本の大木を見上げながら「オレたちも立たなきゃ」「立たなきゃな」などというCMを流すのは、サービス業者としてあまりにオコがましくないか。
厚岸・摩周
(厚岸行きと摩周行き。「思えば遠くにきたもんだ」でござる)

 ついでにいえば、このCMを作ったプランナーやコピーライターにも若干の文句がある。「立たなきゃ」だなんて、中2男子やオヤジが4~5人集まれば、おそらく間違いなくニヤニヤお互いをつつきあうようなコピーは、今の状況を考えれば絶対にヤメるべきだ。
 広告宣伝部のエラいヒトや、広告案を見た経営陣が、このコピーにストップをかけなかったとすれば、その辺に何となく精神のタルミを感じるのはクマ蔵だけだろうか。インターネット上でこんなに広告の大攻勢をかける余裕があるなら、そのオカネは利用客やモトの株主、税金を払った国民への還元に回すべきだ。
 いやはや、ガンコなクマどんは、以上のように少し感情的になりつつ、広告を見るたびに「今のJALには絶対に乗ってやらない」というポリシーを貫きたい。JRで3時間半以上かかっても、千歳からANA利用で帰る。一昨日あんなに夢中で世話してくれたANAのグラウンドスタッフのことを思い出すにつけ、ボクチンはどうしてもANA派である。
くしろ
(釧路駅)

 釧路の駅でお弁当を買って、「スーパーおおぞら」のグリーン車にふんぞり返れば、たった3時間半の旅なんか、ちっともツラくない。「ツラくない」とかではなくて、楽しくて楽しくて仕方がない。釧路から白糠までは雪の海岸線を走り、白糠から内陸に入ると、どこまでも雪の荒野が続く。大好きな鉄道の旅の中でも、きっと世界中で一番美しい風景の一つである。
おおぞら2
(スーパーおおぞら。釧路駅にて)

 白糠の駅を過ぎると、凍った河から朦々と湯気が上がっている光景に出会う。学部生のころ、友人たちと札幌から夜行急行で釧路にたどり着く寸前、白々と明けてきた夜明けの河から上がる湯気に感激したことがあるが、あれから数百年経過しても、河の姿は全く変わらずにそこに残っていた。
白糠
(白糠駅)

 そして諸君、驚いたことに今井君は、車窓からエゾシカの姿を確認したのである。場所は、池田駅から帯広に向かって電車が走り出した直後。根釧台地の西の果て、断崖にぶら下がった無数のツララから、春の日差しをうけて激しく水滴が落ちているあたりだった。
 シカは女の子で、ひなまつりの白酒みたいにツララから滴る水を、おいしそうに夢中で舐めているのであった。空は、快晴。青い空、真っ白な残雪、根釧台地の断崖の岩は、独特の黄土色。北海道の早春の風景がこれほど豊かな色彩に満ちているとは予想もつかないことである。
荒野2
(白糠駅付近で)

 この辺で、釧路で買ったお弁当をあける。シャケとカニとイクラが乗っかった1000円のお弁当は、釧路駅のホームに陣取った若い夫婦のお弁当屋さんから買った。「ウチの2番人気のお弁当です」と若いダンナがニッコリ笑った。駅のホームで冷えきっていたから、ちょうどよく温まるまで、ビールを飲みながら1時間ほど待ったわけだ。
 「うちの1番人気です」と言われたカニのお寿司でもよかったが、うーん、今井君は電車の中でお寿司を食べるのはキライ。というか、周囲のお客さんにお寿司の酸っぱいニオイで迷惑をかけるのがイヤなのである。チョイと周囲に気を配りすぎかもしれない。
駅弁
(釧路駅のお弁当)

 このタイミングで、カップの日本酒も開けた。昨日の祝勝会で「根室の地酒です」「生しぼりの原酒です」と言われて感激した酒「北の勝」である。弁当をぶら下げて釧路駅のホームをブラブラしていたら、キオスクの棚に普通に並んでいた。
 もちろん、生しぼりの原酒とカップ酒では同じ銘柄でも雲泥の違いのはずであるが、味覚にだらしないクマ蔵にとっては、とにかく酒なら何でも旨い。まだ冷たいお弁当に生ぬるいカップ酒は、絶妙。ダラしなければダラしないほど、酒は旨いものである。
北の勝
(北の勝、カップ版)

 帯広を出て、新得→トマム→夕張と、スキー場で有名な駅に次々と停車する。新得にはサホロがあり、「クラブメッド・サホロ」が有名。トマムには、経営権がアッチに行ったりコッチにきたり、やたらいろいろあったトマムリゾートがある。夕張には「マウントレースイ」。何だか、バブルの名残を東から西に向かって復習するような路線である。
 サトイモ男爵は秋田出身だから、スキーにはそれなりの自信があって、1980年代のスキーブームには相当に燃えた。スノーボードというものが登場してスキーへの情熱は一気に失せてしまったが、バブルの頃の日本の若者はほとんどがスキーに夢中だった。
 重罪を犯した犯人が、自首する前にスキー場に行き「牢屋に入る前に最後のスキーを楽しんだ」などという、ビックリするようなニュースだってあった。さぞかし悲しいスキーだったろうな。リフトやゴンドラに乗って白い雪を眺めながら「さあ、明日は自首しよう」だなんて、どんな気持ちだっただろうな。彼の気持ちを考えると、今井君は今でも号泣しそうになる。
トマム
(バブルの名残、赤く錆びついたトマム駅)

 その今井君が最後にマトモにスキーを楽しんだのが、数百年前のサホロ。新得まで電車で隣り合ったカップルが、トマムの駅に着くなり軽いケンカを始めたのを、今でもまだ記憶している。
「どうしてトマムにしなかったの?」
「次は、トマムにしてね♡」
「こんどは、ぜったい、トマムー♡」
最後のセリフを、サトイモ閣下は今でもソックリにモノマネできるのである。
 うにゃにゃ、あれから数百年。「トマムー」と叫んだバブルな彼女も、もう50歳に近いはず。かつて若者の憧れだったトマムの駅も、閑散と雪に埋もれたまま赤く錆びついて、「バブルは遠くなりにけり」と寂しく呟いているかのようであった。

1E(Cd) Weather Report:HEAVY WEATHER
2E(Cd) Sonny Clark:COOL STRUTTIN’
3E(Cd) Kenny Dorham:QUIET KENNY
4E(Cd) Shelly Manne & His Friends:MY FAIR LADY
5E(Cd) Sarah Vaughan:SARAH VAUGHAN
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