Fri 130201 読書が順調だ 再びブリュージュへ 酒と活字の両立(ベルギー冬物語25) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 130201 読書が順調だ 再びブリュージュへ 酒と活字の両立(ベルギー冬物語25)

 この1ヶ月で書いたブログの分量は、とうとうA4版105枚を超えてしまった。1ヶ月にほぼ1回ずつ深く反省して、「そろそろ文章の量を減らさなきゃな」と決意し、しかもその決意を「これからは半分にします」「これからはA4版で1枚。それがダメでも、何とか2枚以内に収めます」と、高らかに宣言する。しかしすでに4年半、その宣言が実行できたタメシは1度もないのである。
 どうせ読者諸君も「また例の宣言か」と呆れて舌打ちするぐらいが関の山。まさに「オオカミ少年」であって、「今日から生まれかわったよ!!」「計画表を作りなおしたよ!!」「もう大丈夫だよ」と、目を輝かせる受験生と同じことである。
今井君1
(ブリュッセル北駅から、再びブリュージュに向かう。なんだか風格タップリの今井君を自分撮り)

 いいんだ、いいんだ。「また始まった」とせせら笑いたまえ。「どうせ短くなんかできないさ」「どうせまた、『書くことがいくらでもあるんで』と言い訳して、ますます長くなるに決まってるさ」と徹底的にバカにするがいい。
 何しろ、非はサトイモ男爵にある。短く簡潔にまとめる意思なんか全くないクセに、「今度こそ短くします!!」宣言を10回も15回も続けていたら、そりゃ呆れられるのも当たり前。「軽薄短小が全て」の世の中で、「重厚ではなくとも長大はである」とか、その種のフザけたことを主張しても、受け入れられるはずはない。
今井君2
(ブリュージュに向かうサトイモ男爵。旅人の風格は、すでにデルス・ウザーラを髣髴とさせる)

 しかし、ま、見ていてくれたまえ。「生まれかわるよ」というサトイモ宣言は、今度こそホンモノかもしれない。生まれかわって、忙しいオトナの人々にも我慢できるように、全てを箇条書きに変える可能性だって無きにしもあらずなのだ。
① 今日も朝寝坊
② 朝食、コーヒー、ハミガキ
③ 朝寝・朝酒・朝湯が大好きで
④ ほぼオハラショースケさんな毎日
⑤ 昼は読書三昧、夕方から公開授業
⑥ 今夜も大盛況、ありがとう
⑦ たっぷり飲んで食べて楽しかったよん
こういうブログが連日続けば、そりゃ書くほうも気楽、読むほうも気楽だ。
 いっそのこと、書くほうは毎日「昨日のコピーでいいかな」、読むほうも「きっと昨日と同じだから、読まなくてもいいかな」。そもそもブログなんてモノは、あってもなくてもどうでもいいものなのかもしれない。
トラム
(まず地下鉄でブリュッセル北駅に向かう。地下鉄と言っても、トラムが地下を走っているだけである。)

 あらら、すでに「かもしれない」という留保条件だらけだ。この段階ですでに自信はフラつきはじめ、「でもホンモノじゃなくても許してね」と横目で必死に訴えてるんじゃ、決意はますますオオカミ少年。いったいいつ実現できるのか、本人にも全く分からない。
 ま、優しく見守ってくんなまし。今井君の頭の中には「書きたいこと」「書かずには済ませられないこと」「書かないと春の淡雪のように消えていくけれど、書けばますます盛り上がって、楽しい話に発展しそうなこと」が、鳴門の渦潮よろしく激しく泡だちながら、常に大量に渦巻いている。
 それを「書くな」「長過ぎる」「面倒だ」「読むヒトが迷惑する」と、自分に向かって冷酷に命ずるほどの力量は、まだまだ未熟な今井君にはない。面倒や迷惑を感じるなら、読んでくれなくていい。選択は読者諸君にお任せするので、サトイモ男爵はPCのこちら側からひたすら発信しつづけるだけである。
北駅にて
(ブリュッセル北駅で)

 リエージュから帰った1月20日、今井君はまだチャンと「深夜の読書」を続けている。「旅先での読書」はマコトに珍しい現象であって、これは別に今井君に限った話ではない。19世紀20世紀の世界中の大作家も、多くが同じ経験を語っている。ある作家の独白によれば、
「旅に出る直前には『あれも読もう』『これも読もう』『あれも読破するだろう』『これも読破して、きっと読む本がなくなってしまうだろう』と考え、スーツケースは重たい本でいっぱいになってしまう。しかし旅から帰る頃には結局、十数ページか、せいぜいで数十ページしか読書が進んでいなかったことに気づいて愕然とする」
今井君3
(ブリュージュに向かう里之丞、自分撮りに励む)

 日々旅にして旅を住処としたサマセット・モームだって、同じようなことを言っている。ましてサトイモ男爵の場合、夕食や夜食にどうしても酒が欠かせない。酒がなくて、いったい食事のどこがウマいのかよく分からない、まして酒なしの旅では、旅を旅と呼んでいいのかさえ確信が持てない。
 そこで、昼食の時にも夕食のテーブルでも、常にビール2杯から始まって、気がつくとワインがボトル1本カラッポになっている。そんなアリサマで午後9時にホテルの部屋に戻り、「さ、では読書に励みますか」などという殊勝な気持ちになれないのは当たり前である。
まもなく到着
(まもなくブリュージュ行きICが到着)

 もちろんタテマエ上は、「100年も200年も前の作家と活字を通じて語り合う喜びは、極上の酒のウマさをはるかに凌駕する」はずである。しかも今井君は、1000年昔の西欧中世の作家とか、2000年昔の古典古代の詩人とか、5000年昔の古代メソポタミアの変人とか、「普通の人々の10倍の年月を遡った付き合いが好き」という天下の変わり者だ。
電話ボックス1
(20世紀のヒーロー「公衆電話ボックス」。しかしベルギーでもすでに公衆電話は撤去されていた)

 ならば、たったこの10年かそこらの間に作られた酒との付き合いより、5000年以上にわたるホモ・サピエンスの文明を最初の1行まで遡ることのできる書物との付き合いを優先すべきはず。ところが諸君、特に旅先では、そんなのただのキレイゴトに過ぎない。古代エジプトの作家の1行より、トロトロした赤紫の液体が優先。何ともバカバカしい話だが、どうやらそれが人間の本性であるらしい。
 ところがブリュッセル滞在の2週間は、さすがの今井君も人間性がワンステージ上がったようである。一杯の酒より、書物を10ページでも読み進めたい。濃密なベルギービールに酔っぱらって眠りに落ちても、午前1時に目を覚ましては、そのまま午前5時近くまでページをめくりつづけた。
電話ボックス2
(各ホームに1つずつ公衆電話ボックスが並んでいる。電話が撤去されても、ここでどれほど多くの愛憎劇が繰り広げられたか、その総量を思うとメマイがするほどだ)

 旅先の理想は、以下の通りである。6時起床、11時まで雑用と執筆。11時、部屋を出て、午後22時まで街歩き。もちろんその「街歩き」には、昼食/電車での移動/夕食/オペラやバレエやコンサートも含む。22時から午前1時まで読書。午前1時に就寝。うーん。今回のブリュッセルでは、ほぼ理想の毎日が過ごせたようである。
 読書の友は、ベルギービールと紅茶。紅茶は、ティーパックを日本から大量に持参、ハチミツとウィスキーの小瓶も持参した。さすがにクマ蔵はクマであるから、紅茶にもハチミツをスプーン2杯入れて、キャンディみたいに甘くして飲むのが好き。ウィスキーもスプーン2杯。紅茶それ自体はあまりこだわらないが、アールグレイなら申しぶんない。
ブリュージュ
(ブリュージュ・トリプル。ボトルもオシャレだ)

 1月20日から21日にかけての夜も、そうやって更けていった。明日は2度目のブリュージュに出かけようと思う。冷蔵庫では、ブリュージュ・トリプルがちょうどよく冷えて、素晴らしい読書の友になってくれた。
 アルコール度の高いベルギービールは「冷えているうちに急いで飲まなくちゃ」という強迫観念とは無縁。むしろ「若干ヌルくなったかな」という頃のほうが飲み頃である。だからこそ、気づいた頃にチビチビ飲む「読書中の酒」にもってこいなのだ。
ブリュージュ拡大図
(ブリュージュ・トリプル拡大図)

 このごろでは「酒を飲みながらの読書という理想は、どうも人間には無理な話なんじゃないか」とあきらめかけていた。読書好きなら、活字のほうに夢中になってつい酒を忘れる。酒好きなら、酒を夢中で飲み干すうちに活字なんか追っている余裕がなくなってしまう。
 好きなものを2つ並べて「どっちも楽しもう」などというフシダラなことは、あきらめたほうが潔いのかもしれない。しかし諸君、ベルギービールなら、それが可能なようなのだ。酒と活字の両方に、ちょうどホドよく酔っぱらう。しかもそれを2時間でも3時間でも継続可能。何だか夢のようなフシダラが、ベルギーではずっと続けられそうな気がする。
ベルギービール
(読書の友、ベルギービール諸君)

 
1E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 2/9
2E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 3/9
3E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 4/9
4E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 5/9
5E(Cd) Barenboim, Zukerman & Du Pré:BEETHOVEN/PIANO TRIOS, VIOLIN AND CELLO SONATAS 6/9
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