Fri 130118 新聞写真に一驚 同じ形態の物が無数に並ぶことへの嫌悪(ベルギー冬物語18) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Fri 130118 新聞写真に一驚 同じ形態の物が無数に並ぶことへの嫌悪(ベルギー冬物語18)

 2月10日、午前11時すぎにノコノコ起きだしたサトイモ男爵は、2日酔いの目をショボショボさせながら、テーブルの上の朝日新聞を手に取って一驚を喫した。この朝の「一驚」は余りにも激しい一驚だったので、両手がワナワナ震えだすほどであった。
 では、「何に一驚を喫したか」であるが、それを書く前にまず「2日酔い」について釈明しなければならないし、また全国各地で受験生たちが全力を尽くしている季節に「11時まで暢気に寝坊していたこと」についてもチャンと謝罪しなければならない。ダラしない予備校講師で、マコトに申し訳ない。
街並み1
(1月18日はブリュッセルを散策。王宮付近には美しい町並みが続く)

 2日酔いだったことは、昨日の記事を熟読すれば明らかである。三軒茶屋の寿司屋で2時間半も座っていれば、猛烈な勢いで日本酒を飲みつづける今井君のこと、飲酒量は徳利7本に及んだ。泥酔は必然、避けられない結果である。
 「1合徳利には7酌ぐらいしか入らない」が定番だから、徳利7本は約5合であるが、ぬる燗の日本酒5合を2時間で飲み干せば、デカいクマでも2日酔いは当然の報いである。しかもそのあと「〆はラーメン」などというバカなことを考えて、痛飲した日本酒に上からフタをするようなことをしちゃったから、朝になっても酒が抜けないのも当たり前だ。
街並み2
(王宮の丘から、グランプラスを俯瞰する。市庁舎の塔が美しい)

 では、「受験生がみんな頑張っているのに、講師が11時まで寝坊していていいのか?」であるが、こちらのほうは黙って許してもらうしかない。生活時間帯が一般の人々と違うからといって、それを理由に叱られる必然性は皆無である。
 驚くなかれ、あんなに酒を痛飲して帰宅した後、ボクチンはチャンと朝6時まで勉強していたのである。というか、高校生の頃からボクチンは「朝型」なるものが大の苦手。「朝4時起きで勉強しなさい」とか「朝5時に起きるようにすれば、全てがウマくいきます」みたいなアドバイスをするヒトがいると、うにゃにゃ、とても信じられないのである。
王宮
(王宮)

 夜が更けるほど目がランランと輝き、朝が近づくほど読書の充実度が上がり、あたりが静まりかえるほどモノを書く集中力が研ぎすまされていく。それを経験則としてハッキリ知っているのに、ビジネス書の著者たちの言うことを素直に聞いて「ハイハイ、分かりました。朝4時起きなら人生が変わるんですね?」と、潔くサッサとベッドに入る気持ちにはなれないのである。
 だって、要するにビジネス書のライターさんでしょ? 「長財布をもてば人生はウマくいく」とか「成功したかったら、長い財布をもちなさい」とかでしょ? 「年収は、財布の値段の200倍」「10万円の財布をもちなさい」→「年収は2000万円になりますよ」でしょ? は? 何でサトイモ閣下ともあろう者が、その程度のバカバカしいアドバイスに従わなきゃイケナイの?
王宮前
(このころから、ベルギーの寒さはいっそう厳しくなった)

 というワケで、今井君の理想は今でも「朝5時就寝、10時起床」なのである。789年生きてきたクマの経験則では、どうも5時間睡眠がボクチンにとってはベストらしいので、4時まで頑張って9時起床、ちょっと興が乗りすぎて6時まで頑張っちゃった日は11時起床。それから2時間お風呂に入って、汗を1リットルから1.2リットルぐらい流して、それでマコトに清々しく新しい1日が始まる。
 ま、普通の人から見たら明らかに異常な生物であるが、そんなの当たり前。今井君は普通の価値観からしたら明らかに異常な生物。異常な生物が他者の目に異常に映ったとして、それって何か異常です?
 異常、結構。異様、また結構。異常or異様であることにこそ、人生の価値がある。異常や異様を排撃するのは、前近代的価値観としか言いようがない(これが今日の記事の伏線になっています)。日本国憲法♡13条、知ってます?
出典『朝日新聞』2013年2月10日付朝刊、第14版
(2月10日、朝日新聞朝刊に掲載された浅田選手)

 さて、では冒頭に戻って、「2月10日付朝日新聞の何に一驚を喫したか」であるが、すでに示した通り、スポーツ欄に掲載されていた浅田真央選手の写真である。3回転半ジャンプに成功、SP首位。マコトにおめでたい。しかし、なぜ朝日の担当者は、あえてこの写真を選択して掲載したのであろうか。
 このテーマについては、クマ蔵はこのブログですでに2回触れている。1回目はフィギュアの村主章枝選手について。2回目はテニスの伊達公子選手について。女子アスリートの活躍を伝える紙面において、どうしてもこの種の写真を掲載しなければならないものであろうか。
出典『朝日新聞』2013年2月10日付朝刊、第14版
(拡大図。どうしてこの写真を選んだの?)

 そりゃ、力強さを前面に出すスポーツなら、この写真でいいのだ。2月11日朝刊に載った広島カープ・前田健太投手(通称マエケン)なら、このものすごい表情こそが彼の強さの本質を伝えて、マコトに素晴らしいと思う。
 しかし諸君、女子フィギュア、新体操や女子体操、シンクロナイズド・スイミング、そういう「美しさこそ競技の本質」というスポーツについての報道で、こういう写真を掲載することはタブーなんじゃないか。
 乾坤一擲のジャンプの瞬間の表情を撮影するのは結構。今井君だって、その真剣さを美しいと感じることにヤブサカではない。しかしそれを500万部印刷し、日本中の1000万人もの人々に配布してしまうのに、何の躊躇も感じなかったのか。他に数百枚近く撮影した浅田選手の写真の中から、どうしても「この1枚」を選ばなければならない理由があったのだろうか。
 日本を代表する大新聞だからこそ、美しさを競い合う女子アスリートの心情にも配慮してほしいのだ。「演技を終えて観客席に笑顔で手をふる姿」のほうがいいんじゃないかい? 演技の迫力を伝えたい気持ちは分かるが、それは映像メディアに任せたほうがいいと愚考する。
ワッフル屋
(ブリュッセル、ヌーブ通りのワッフル屋さん)

 たかがブログであっても、サトイモ里之丞なんかは、「どれを掲載しようかな?」とクヨクヨ悩みに悩んでいる。自分撮りの写真だって「これを掲載したら、醜悪すぎないか」「公共の福祉に反するんじゃないか」と、載せたり消したり、載せたり消したりをウジウジ繰り返すのである。
 昨日の記事のハチノス写真4枚も同様である。あのハチノス写真のせいで、読者の中には気分を悪くする人だって相当数存在することは分かっている。あの写真が気持ち悪くて、途中で読むのをヤメたヒトだっているだろう。
 ヒトを不快にするのは筆者として本意ではないから、気になった時は掲載前に周囲の人たちに相談する。あんまりマジメに相談するので「そんなに気にする必要はないんじゃないの? たかがブログなんだし」という態度をとるヒトもいるぐらいだ。
 しかし諸君、ハチノス写真のせいで、林家木久扇師匠のクダリや、ラーメン屋の顛末や、なか卯パーティーのアリサマについて、もし読まずに終わったヒトがいたら、可哀そうじゃないか。
地下鉄構内ベンチ
(トイレみたいに見えるが、ブリュッセル地下鉄のベンチである)

 そこでクマ蔵は、「何故ハチノス写真がヒトを不快にするのか」を検討するのである。誰でも思いつくのは、
① 虫というもの全般についての嫌悪感
② 危険なハチの集団に対する本能的な警戒感
③ 同じ形態のものが無数に整然と並んでいることへの不快感
であるが、ま、①と②は多くのオトナに共通だろう。
 コドモの頃は大好きだった「昆虫の図鑑」だが、今はもう本に触れるのさえイヤ。まず図鑑の中の蛾のページがイヤになり、やがてチョウや甲虫やセミのページもキライになり、本にさわるのもゾッと鳥肌が立って、本棚のその一角を見るのさえオッカナビックリになる。スズメバチ集団を見て「うれしいな」「食べたいな」と思うヒトは極めて稀である。
ベンチ拡大図
(地下鉄ベンチ、拡大図)

 ③はどうだろう。「同じ形態のものが整然と無数に並んでいること」には、激しい快感を感じるヒトと、嘔吐を伴う激しい不快感を感じるヒトとが、ほぼ半々なんじゃないだろうか。
 サトイモ君は完全に「不快感」「不安感」派だが、正反対に「マスゲームが好き」「トウモロコシに美を感じる」「魚卵の拡大写真♡命」「制服制帽でズラリと並んだ兵士の映像や、全校生徒の集合写真を見るとウットリする」というヒトもいる。
 「マスゲーム大好き」という国が近くに存在するから、彼らの行動形態を観察してみるといい。一糸乱れぬ軍隊の行進。政府要人の到着を、花束を振りかざし、感激の涙と歓呼で迎える人々。ミツバチさんやアリさんの群れの驚嘆すべき合理性と機能性を、そのまま人間社会に写しとったような、感動的ネットワーク。近世農耕社会を理想的に発展させれば、この社会形態に収束するんじゃないか。
小便小僧1
(1月18日、小便小憎は豪華な衣装を着込んでいた)

 しかし今井君は、このタイプの社会に激しい嫌悪を感じるのである。相似形どころか、互いに相違点を発見することが困難な「ほぼ合同」の仲間たちが無数に集まって、集団の合理性を高め、互いに相似性と共通性を確認してウットリ頷きあう。そりゃ、ほとんどSF的な悪夢に近いじゃないか。
みんな5時起き。みんな朝型。みんな長財布。若者が目指すものは、みんな東大か医学部。夜10時にはそろってベッドに入り、読む本はみんな村上春樹。みんな同じ間取りのマンションで、年収も同じ、趣味も同じ、外食はみんなサイゼリア。みんなツイッター、ブログもみんな紙芝居形式。おお、ボクチンはそういうのはキライでござる。
 どうでしょう、そろそろ伏線にはお気づきになりました? こういうわけで、1月の今井君はベルギーを目指した。それと同じ理由で、5月のサトイモはイスタンブールを目指し、9月のクマはブエノスアイレスを旅し、どの予備校講師もみんなマジメに参考書を書いているから、年末の里之丞はパリをうろつき回った。
小便小僧2
(1月18日の小便小憎 2)

 1月18日午後、「ベルギー冬物語」もいよいよ後半に入ったが、丸一日ムダにしてブリュッセル散策を楽しんだのも、「みんなと同じはイヤでござる」というワガママを貫きたかったからである。
 ボクチンは、ハチノスの周囲をブンブンやって一生を終わりたくない。有名観光地をブンブン飛び回って終わるTrapicsやクラブ・ツーリズムみたいな旅とは、絶対に一線を画したいのである。
 日本人が誰も行かない妙竹林な立ち飲み屋Noord Zeeで、ジモティなオジサマやオバサマ、超ジモティな田舎臭いオニーサンやオネーサンに囲まれて、スープに入った変なエスカルゴに舌鼓を打つ。観光客が誰も行かない怪しい横丁や、メッチャ怪しいノミの市を覗いて、ケラケラ笑っていたいのである。
 そして、究極は「今日は、何をして過ごしたの?」という質問に対して「何かしなきゃイケナイの?」と真顔で尋ねかえすことである。「何もしない」をするために、イスタンブールで2週間、ブエノスアイレスで1週間を費やした。
 今年の「何もしない」の皮切りはベルギーを選んだが、これが見事に大成功。残りの1週間のベルギー滞在で、この段階で決まっているのは「ブリュージュ訪問」「リエージュ訪問」の2日分だけなのであった。

1E(Cd) Solti & Wiener:MOZART/GROßE MESSE
2E(Cd) Rilling:MOZART/REQUIEM
3E(Cd) Jochum & Bavarian Radio:MOZART/THE CORONATION MASS
4E(Cd) Kremer:MOZART/VIOLINKONZERTE Nos. 2 & 3
5E(Cd) Barenboim:MENDELSSOHN/LIEDER OHNE WORTE①
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資料出典:『朝日新聞』2013年2月10日付朝刊、第14版