Sun 121216 パリの和食ブーム Lamen vs Ramenの論争(パリ速攻滞在記14) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 121216 パリの和食ブーム Lamen vs Ramenの論争(パリ速攻滞在記14)

 12月27日午前7時、パリのサトイモ君は、何となくタチの悪い悪寒を感じながら目覚めた。この旅行期間中のサトイモ男爵は、どういう風の吹き回しかたいへん品行方正で、毎朝7時にはムックリ起き上がって行動を開始していたのである。ただ「悪寒とともに」という事態はこの朝が初めてであった。
 そもそも、「いつもと違う」というのは良い兆候ではない。毎晩1時にはベッドに入り、7時に起床する。おお、こんな品行方正なクマ蔵は、自分でも生まれて初めてである。4時就寝、9時起床。そういう悪いクマ蔵が常態なのに、善良なクマ、品行方正なクマ、早寝早起き朝ゴハンなクマ、そりゃおそらく何か病気の印である。
ひぐま1
(パリ「ひぐま」。さすが老舗、長い列ができていた 1)

 考えてみれば今井君は、12月中旬から原因不明の肩コリに悩んでいた。何となくやる気が100%にまで高まってこない。喉の奥が痛いような痒いようなイヤな感じ。講演会の冒頭、チョイと喉が嗄れたような感覚もあった。
 熱っぽくて、吐き気があるようなないような、中途半端な感覚。ノロウィルスの劇的症状じゃないから、どうやら「しつこい風邪」というヤツである。全身の不快感はすでに半月以上続いていて、それを決定づけたのが昨夜の「グラン・カフェ」、ジョルジュ・ママの強烈な視線だった(スミマセン、昨日の続きです)のである。
ひぐま2
(パリ「ひぐま」。さすが老舗、長い列ができていた 2)

 吐き気と悪寒に耐えきれずにムックリ起き上がった今井君としては、「さあ、ここが正念場だ」という切羽詰まった気持ちがあった。熱が急激に上昇したり、吐き気が強烈でホントにゲロに走りたくなるなら、自分で自分をこの部屋に隔離または幽閉して、2~3日は動かずにいなければならない。パリのヒトビトに迷惑をかけるわけにはいかないのだ。
 ノロに感染したか、インフルエンザか。それとも単なる思い過ごしか。ジョルジュ・ママの呪いの視線に屈服したのか。7時から8時過ぎまで、ベッドの上でブログの更新を急ぎながら、クマ蔵は自分の症状が激しく変わるかどうかを、ごく冷静に見つめていたのである。
スンハウス
(おや、「スンハウス」って? もちろん「スシハウス」の間違い。「シ」と「ン」、外国人にとってはアラビア文字より区別が難しい。)

 8時半、ブログを更新。悪寒も吐き気も熱っぽさも、中途半端なまま変化はない。「11時までもう1回寝てみるか」の努力もしたが、折悪しくお隣のお部屋で「激しすぎる愛の世界♡」が展開しはじめ、それが騒々しくてとてもゆっくり休養できる状況ではなくなってしまった。
 正午ギリギリになって、「どうやら、大した症状ではなさそうだ」と最終判断した今井君は、「ラーメンを食べに行こう」と決意。喉が痛くて、軽く吐き気がして、熱っぽい。おそらく熱のせいで右肩が引きつれるように痛い。しかしどれも軽症である以上、他人に迷惑をかけることはないだろう。
ロイヤル沖縄
(パリ「おきなわ」の「ロイヤルオキナワ定食」、69ユーロ)

 「欧米では日本食がブーム」というトピックは、もう20年も前から日本のニュースショーの定番である。「寿司がブーム、ラーメンが人気、盛りだくさんな鍋物や、カラフルなBENTOが人気沸騰中」。「欧米人はヘルシーな日本食が大好きで、日本食レストランには長い列が出来ている」。そういう報道である。
 しかし実際に欧米の街に出てみると、日本食レストランは街はずれの寂しい一角で細々と営業を続けているだけのことが多い。ニューヨークやミュンヘンやロンドンみたいな、日本人ドッサリの街だって、「細々と」「やっとこさ」な感じは変わらない。
 アメリカのテレビドラマを見ていても、日本食の扱いはやっぱり「ちょっと変わった世界」に過ぎない。日本人からみた「ハンガリー料理」「シリア料理」「ウクライナ料理」というイメージ。男子が女子を誘うにしても、「イチかバチかのデート」「あっと驚かせよう」の感覚がつきまとう。
なりたけ
(この店にも長蛇の列)

 では、パリの日本料理はどうなのだろう。7年前のパリでもラーメン屋を何軒か見かけたが、状況はミュンヘンやウィーンと大差なかった。中国人か韓国人がやっている「ナンチャッテ和食」が大半を占め、「おやおやこれでも和食のつもり?」と眼を剥くようなシロモノが多かった。
 もちろん今井君としてはその「ナンチャッテぶり」が楽しみでならないので、今までで最も楽しかったラーメンは、ウィーン「京都」で注文した「ラーメン」である。野菜ばかりでスープすらほとんど見えない丼の中に、「おそらくこれがラーメンのつもり」と思われる麺が3~4本泳いでいる姿には、今もなお忘れられない感動を覚えた。
なおこ
(モンマルトルの和食店「なおこ」)

 今回のパリでも、この日まで見かけた日本食レストランは、やっぱり寂しい光景ばかりだった。モンマルトルの「なおこ」。カルチェラタンの「まつど」。オペラ座近くの「おきなわ」。頑張ってはいるけれども、他の店が超満員の時間帯に、客の入りは半分にも達していない。やっぱり日本人としては、この情景に寂しい思いを禁じえなかった。
まつど
(カルチェラタンの和食屋「まつど」)

 しかし諸君、パリはやっぱり「日本大好き」という点で、世界でも群を抜いている。オペラ・ガルニエからルーブル方向に徒歩4~5分の日本人街の賑わいは、これだけ頻繁に世界を歩いているサトイモ男爵でも、ビックリ仰天のアリサマだった。
 何しろ、どの店も長蛇の列なのだ。この街ですっかり老舗になった「ひぐま」はもちろんのこと、「大勝軒」も、「サッポロラーメン」も、押すな&押すなの長蛇の列。「押すな&押すな」はそのまま店の中まで続いていて、朝の山手線ほどではないにしても、地下鉄銀座線/丸ノ内線/大阪都なら地下鉄御堂筋線、そのレベルの大混雑である。
うどん
(パリでは、うどん屋さんも大繁盛)

 このクマ蔵のコトバは決して大袈裟ではない。ドンブリを掲げた店員さんたちが、店内をマトモに進んでいけないぐらいの混雑なのだ。湯気よりも人いきれで窓が曇り、寒風吹きすさぶ外の列に並んだフランス人たちは、その人いきれの店内に早く入りたくて、何度も背伸びしながら窓の中を覗き込んでいる。
 店の数も相当増えた。7年前には6~7軒あるかないかだったが、今や見渡しただけでも20軒ぐらいの店が並んでいる。ラーメンがこんなに売れたせいか、うどん屋もある。居酒屋もあるし、高級店ぶった和食屋もチラホラ見かける。便乗した韓国料理屋も1軒紛れ込んでいた。
イーピンラーメン
(一品ラーメン。「一品」と書いて「イーピン」と読む。こういう中国系のお店もたくさんできている)

 中国人や韓国人のラーメン屋も乱立しているようだ。そのせいなのかもしれないが、同じラーメンでもRamenという表記とLamenという表記が並立している。今井君は最初「中国系の店はLamen、日本人の店はRamenの記述を使っているんじゃないか」と考えたが、そうとも言えないようである。
 同じラーメンでも、「拉麺」と表記する場合と「柳麺」と書く場合があるじゃないか。その違いか? いやはや、クマさんはラーメン通ではないから、サッパリわからない。ウェブ上でも「Lamen vs Ramen」の論争は激しいようで、欧米人どうしが「正しい発音はLamenだ」「オマエはアホか? Ramenに決まってるじゃないか」と罵りあっている。
サッポロラーメン2
(「サッポロラーメン2号店」。何とか並ばずに入り込めた)

 まあ、ラーメンのシロート♨クマ蔵としては、「並ばずに入れる店」を安易に選択。だって、こんな長蛇の列に並んでいて風邪をこじらせでもしたら、元も子もない。昨夜のグラン・カフェでツムリン王国マキマキ軍団を応援してサトイモ大将に呪いをかけた、あのジョルジュ・ママの思うツボじゃないか。
 焦りに負けて今井君が選んだ店は「サッポロラーメン2号店」。店主夫妻が日本人、従業員はフランス語を話す中国人。お客はみんな日本料理通のフランス人。「カラアゲ!!」「テンプーラ、ドーダロー?」「ギョーザ、マダデショカ?」「ヤサイイターメ、ウマイッスネ!!」の声が飛び交っている。
メニュー
(こんなメニューでございました)

 たいへんシュールな状況のせいで、サトイモ男爵はまたまた目眩がしてきた。目眩というか、食欲減退というか、うにゃにゃ、とにかく何も旨いと思えない。注文したのは、①アサヒスーパードライ ②ラーメン ③半カレーライスである。
 ②③が旨くないのは、まあご愛嬌。パリのど真ん中ですするラーメンが涙チョチョギレなほど激ウマだったり、カレーの旨さにインド人がビックリしたりしたんじゃ、やかましくて落ち着いて座っていられない。
 問題は、今井君がこの世で最も愛する飲料→①アサヒスーパードライがちっとも旨くないことである。諸君、これはホントに由々しき事態だ。風邪気味を押してここまで出てきたが、どうやらこの風邪はホンモノだ。早くホテルに帰って、しっかり寝なければ、ココから先の旅がすべて台無しになってしまう。
ラーメン
(こんなラーメンでございました)

 それでも、狭い店内でパリジャンとパリジェンヌにはさまれたまま、クマ蔵は平らげるべきものは平らげ、飲み干すべきものはすべて飲み干した。考えてみたまえ。日本のフレンチの店でフランス人が食べ残したり、イタリアンの店でイタリア人が食べ残したりすれば、それはすぐに店の評判に関わるはずである。
 食べログみたいな所に「フランス人が食べ残してました」「イタリア人が旨くなさそうでした」と、得意げに書き込むヒトだって必ず存在する。パリの日本人が日本料理を食べ残したら、同じようなインパクトがあるじゃないか。諸君、我々が海外で日本料理屋に入る時は、常にそのぐらいの自覚が必要なのだ。

1E(Cd) AZERBAIJAN Traditional Music
2E(Cd) Ibn Baya:MUSICA ANDALUSI
3E(Cd) T.Beecham:BERLIOZ/LES TROYENS 1/3
4E(Cd) T.Beecham:BERLIOZ/LES TROYENS 2/3
5E(Cd) T.Beecham:BERLIOZ/LES TROYENS 3/3
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