Wed 121212 サントノレ通り バスティーユの新オペラ座 また肉(パリ速攻滞在記10) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Wed 121212 サントノレ通り バスティーユの新オペラ座 また肉(パリ速攻滞在記10)

 12月25日午後のクマ蔵どんは、ノートルダム・クリスマスミサの雑踏から脱出するところからスタートしよう。諸君、この雑踏はタダゴトではない。世界中から集まった観光客と、どうしてもクリスマスミサに出席したかったパリの善男善女が入り混じって、思うように真っ直ぐ前進できない。
 これはどうしても「脱出」であり、ノートルダムから外に出て、冷たい河風を頬に感じたときの爽快感もまた、「脱出」という語感に相応しいものである。いやはや、マコトにおめでたい。ヒトビトの表情も晴れやかで、やっぱり日本のお正月とソックリである。
チケット
(今夜はバスティーユの新オペラ座で「カルメン」。チケットと地下鉄カルネ往復分)

 パリ市庁舎の脇からメトロのホームに降りて、1号線でバスティーユに向かう。「火縄くすぶるバスティーユ」のバスティーユであって、約225年前、フランス革命はここでスタートしたわけである。バスティーユ直前の駅が「サンポール」。バスティーユに向かう日本人の7割か8割は、この駅であの強烈なトイレ洗剤のカホリを思い出すはずだ。
 さすがに「火縄くすぶる」というだけあって、バスティーユ駅周辺はこの日も何だか革命の荒々しい空気が漲っている。おそらくイブからクリスマスにかけて目一杯酔っぱらった若いヒトビトの集団だが、旗を押し立て、遠慮なく高歌放吟し、カネや太鼓を手に、何だか激しいシュプレヒコールを繰り返している。
新オペラ座
(昼さがりの新オペラ座)

 こういう集団は容易に暴徒化する。極右的かつナショナリスティックなシュプレヒコール集団には、何しろもうタップリのアルコールが染み込んでいるから、ホンのわずかな火花でさえも、たやすく暴徒化する危険性がある。
 クワバラ&クワバラでござる。「さわらぬ神に祟りなし」でござる。何しろ地下鉄のアナウンスにさえ日本語が入るほどの街だ。日本人の存在はどうしてもこういうアルコール集団の目に障る。逃げるべし&隠れるべし。今井君は逃げ隠れを潔しとしないが、渋谷でもパリでも、若いアルコール集団だけはゴメンこうむりたい。
サントノレ
(サントノレ通り)

 ところが、何故かアルコール集団は今井君についてくる。「類は友を呼ぶ」というのか、今井君からはこの789年肉体にジックリ染み込ませたアルコールのカホリがするから、酔っぱらい集団はどうもこのクマ蔵に親近感を覚えるらしい。右に逃げれば右へ、左に隠れれば左へ、わざわざ今井君を追いかけてくるかのようである。
 やがて、バスティーユ新オペラ座の前で渦巻いていた2つのアルコール集団が合流して、1つの大きな渦にまとまった。おお、まさにこりゃ「火縄くすぶるバスティーユ」の前兆である。
 世界史の授業中、コムズカシイ先生がコムズカシク語るフランス革命の直接のキッカケって、実は要するに「ワインの飲み過ぎ」なんじゃないのか。ワイン飲みすぎてヘベレケになった集団が、バスティーユの北と西から合流(=アルコール集団A)。南と東からも合流(=アルコール集団B)。さらにAとBが合流して「ヤッチマエ!!」になれば、当局のヒトビトだって、その勢いを止めるのはメンドクサイじゃないか。
エリゼ宮
(エリゼ宮)

 サトイモ男爵としても、こういう集団の前で東洋の小国からやってきたクマの権利を訴えるのは面倒だから、地下鉄に乗ってパリ中心部に逃げ帰ることにした。何だか荒んだ心を鎮めるには、高級店の立ち並ぶサントノレ通りをブラブラ歩いてホテルに帰るのが得策である。
 何しろクリスマスだから、店はみんな閉まっている。ふだん全く縁のない高級品店のウィンドウを覗きながら歩くには、ベストのシチュエーション。アフリカ系のイカついセキュリティに小突き回される気遣いも全くない。
衛兵
(エリゼ宮前の衛兵どん)

 エリゼ宮から左に折れて、シャンゼリゼのクリスマス・マーケットの雑踏の中を歩いていく。サントノレ通りがあんなに閑散としていたのに、シャンゼリゼのほうはヨーロッパ中の有象無象をすべて呼び集めてきたかのような、収拾のつかない混沌の状況である。
 混沌のなか、クマ蔵はベルギー・ビール1パイントとギリシャ風サンドイッチを購入。「サンドイッチ」とは言っても、日本の食パン1斤ほどの重量のある巨大な丸パンの真ん中をくり抜き、そのアナの中に、ヒツジの肉を焼いて薄切りにしたのを思い切り詰め込んだ、マコトに乱暴きわまりない食べ物である。
自分撮り
(ビアと「サンドイッチ」をかかえて四苦八苦するクマ蔵)

 「ベルギー・ビール」も、アルコール度8.5という激しいシロモノである。日本のラガービールがアルコール度4.5。白ワインなら、12から13ぐらい。ビールのクセしてアルコール度8.5とは、なかなかスミにおけないというか、善良な婦女子を酔っぱらわせて悪だくみでも考えているんじゃないかというか、いやはや、何とも腹の底から温まる仕儀と相成った。
サンドイッチ
(ギリシャ風サンドイッチ、拡大図)

 いったんホテルに戻って、一休みすることにする。19時半からは再びバスティーユの新オペラ座に出かけ、23時近くまでビゼー「カルメン」だ。今日から4日連続オペラ座なので、日本からはスーツも持参。革靴も持参。一応は周囲の観客の手前も考えたわけである。
 しつこく繰り返すようだが、スーツは1997年購入、16年目を迎えるZEGNA製。2012年秋冬の講演会にも大活躍してくれた。コートは、1988年購入、今年で24年目を迎える大ベテラン。今井君の成長を毎冬見守ってくれた、親代わりともいえる暖かいコートである。
館内風景
(バルコニー席からの風景。舞台はあまりに遠い)

 持参した革靴は、2005年購入、スペインのメーカー「ヤンコ」製の赤茶の靴である。3万円で購入した割に、一昨年1万円チョイかけて大修理。ところがこの修理が大失敗で、2012年秋、別の店に再び修理に出したら「2万円かかります」ということになった。
 諸君、購入価格を上回るほど修理にオカネがかかっても、今井君はどうしても物と大事に大事に付き合っていきたい。納得のいくものを買ったら、10年でも20年でも、人間と付き合うのと同じように大事に付き合っていきたい。それにしても、「24年目のコート」って、行き過ぎですかね。大した高級コートでもないんですが。
シャンゼリゼ
(夜のシャンゼリゼと凱旋門)

 新オペラ座については、特に述べることはない。あんまり建物が現代的すぎて、これじゃ東京・初台のオペラパレスと全くおんなじだ。今日はバルコニー席だったから、席からの音響も、席の雰囲気も、やっぱり初台とソックリだ。
 それにしても、観客に日本人が多いのにはビックリである。今井君は日本人の比率を略して「ジャポネ率」と呼んでいるが、今日のジャポネ率は10%を超えていた。パリ地下鉄で日本語アナウンスが流れるのも「むべなるかな」である。
 実はこの3日後、旧オペラ座・ガルニエのジャポネ率25%に度肝を抜かれることになるのだが、ワイルドな場所ではほとんど見かけない日本人は、世界中の美術館とオペラ座を席巻しているのである。
ステーキ
(今夜もDeauvilleでステーキを食べる)

 オペラが終わって22時半。メトロでシャンゼリゼに戻り、大好きなDeauvilleで遅い夕食にした。23時を過ぎても、やっぱり人気のDeauvilleは大混雑。直径40cmの丸テーブル1個しか与えてもらえない。前回と同じマキマキ軍団(エスカルゴ12個)と、分厚いステーキ1枚を平らげた。
 エス・カルゴ王子率いるマキマキ軍団は、今日もまた実に旨い。ステーキにも味が染み込んで、前回以上の美味。焼く前に相当な長時間タレにつけこんで、丁寧に仕込みをしているものと思われる。中国系ウェイターの対応も、丁寧で、優しくて、マコトに心地よかった。
本日のオススメ
(Deauvilleで。メニューを読むのもたいへんだ)

 もっとも、サトイモ君のお隣のイタリア系のカップルに対しては、さすがに2人の注文が難しすぎて、ウェイターどんも手を焼いた様子。何を頼んでも「気に入らない」「こんなのを注文したつもりはなかった」のクレームの連続。しまいにウェイターどんが「いったい何をお望みですか?」と問い返したのには、今井君も何だか快哉を叫ぶ気持ちだった。

1E(Cd) Sarah Vaughan:SARAH VAUGHAN
2E(Cd) José James:BLACKMAGIC
3E(Cd) Radka Toneff/Steve Dobrogosz:FAIRYTALES
6D(Op):Opéra national de Paris:CARMEN:Paris Opéra Bastille
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