Mon 121210 ラグビー観戦は終わっちゃった コキヤージュとの戦い(パリ速攻滞在記8)
あんなに夢中で応援していたのに、お正月のラグビーは応援していた2チームとも、カンタンに敗戦を迎えてしまった。1月2日、大学ラグビーの早稲田は帝京大学に完敗。1月3日、高校ラグビーのAシード、我が故郷代表の秋田工は、奈良の御所実業に惜敗。切歯扼腕というか残念無念というか、お正月早々、お雑煮が喉に詰まりそうな悔しさである。
ま、仕方ない。スポーツ観戦で一番大事なことは、潔さである。負けたものは負けたものであって、いつまでもそれを引きずっていては一歩も前に進めない。淡白すぎて情けないが、「今に見ていろ!!」「臥薪嘗胆♨」みたいな粘り強さを観客が発揮しても、どうせロクなことはない。
早稲田大学は放っておいてもどうせ復活する。ケガで1シーズンを棒に振ったフルバック藤田が復帰するだけで、局面は大きく変化しそうだ。来年になれば、まさにいま花園で大活躍中のスーパー1年生だってたくさん入学してくるだろう。その辺は、その辺のことを複雑微妙に担当するフロントサイドにお願いすればそれでいい。
![サンジェルマンデプレ1](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/7b/f2/j/o0400030012364985252.jpg?caw=800)
(クリスマスイブのサンジェルマン・デ・プレ)
心配なのは、「その辺のことを複雑微妙にお願い」というワケにはいかない公立高校の秋田工である。全国の中学の有力選手をいろいろ美味しい条件で入部に誘える私立高校とはワケが違う。「全国優勝15回」という輝かしい歴史だけで、地元の有力選手を秋田に留めておける時代ではないのだ。
しかし諸君、ベスト8で惜敗した今年のメンバーを見ても、その多くは2年生だ。バックスのうち、3年生はフルバックの成田君だけ。残るメンバーはすべて2年生だ。今日の試合で御所実業のモール攻撃に完敗したFWをもう1度地道に鍛えれば、「また来年がある」「来年こそは頂点を目指そう」という激励は、決してキレイゴトには終わらない。
![キャンドル](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/66/f4/j/o0400030012364985461.jpg?caw=800)
(サンジェルマン・デ・プレでローソクを1本あげる)
いやはや、心の底からガッカリした自分を立て直すのは、サトイモ男爵にだって容易なことではない。酒も飲んでみた。ウィスキー1ボトル、カラッポ。その後で赤ワインも半分カラッポ。「ありゃりゃ、これじゃブログ連続更新記録が半年で途絶えちゃう」と気づいても、それでもPCの前に座る気になれなかった。
だから、いまこれを書いているのは、メッタにない泥酔状態で、しかも相変わらずこみ上げる涙を拭いながらなのである。ニャゴロワの点滴も、涙をこらえながら済ませた。しかしなぜ、早稲田フィフティーンも秋田工の15人も、相手の怒濤の攻撃をゴールライン直前で食い止められなかったのだろう。
![ノートルダム1](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/b0/4d/j/o0400030012364985806.jpg?caw=800)
(クリスマスイブのノートルダム。上空に月が出た)
えーい、クソォ。クソクソ&クソォ。諸君、汚いコトバでマコトに申し訳ない。今井君はどうしても淡白に敗戦を受け入れられないのである。そもそも、ラグビーって何で15人なんだ。徳川将軍家や足利将軍家があるまいし。北条執権家は16代だったっけな?
どうだろう。徳川チームvs足利チームってのは? 徳川チームは、プロップ1番・家康、3番・家光。2番フッカー・秀家。おお、こりゃ強力な第一列だ。家綱/綱吉のロック陣は、何だか気弱そうだが、何しろNo.8吉宗は暴れん坊将軍だ。なかなか行けるじゃないか。
![サンジェルマンデプレ2](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/be/a7/j/o0300040012364986029.jpg?caw=800)
(サンジェルマン・デ・プレ、拡大図)
もっとも、このチームはバックスが弱い。ウィング11番・家斉は子だくさん。妻16人、生まれた子供が53人。マネジャー田沼意次を罷免したのはよかったのか悪かったのか、松平定信だの、水野忠邦だの、Kuso-majimeなマネジャーを次々に採用して、国を暗くした。そんなことやってっから、次々に飢饉が次々くるんだよ。
ウィング14番、家茂。フルバックは慶喜。この辺は、防御専門というか逃げ足自慢というか、臆病で攻撃に加わらないディフェンス専門の選手たちである。ま、いいか。フォワード一辺倒のこういうチームも悪くない。FWが疲労すれば一気に戦力ダウンするが、1990年代の大学ラグビーはこういうチームが圧倒的に強かった。
![市庁舎](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/33/de/j/o0400030012364986161.jpg?caw=800)
(クリスマスイブのパリ市庁舎)
足利チームについて、泥酔中の今井君としては冷静に戦力分析できる状態にない。フランカー足利義教の精神状態は、現在の今井君にソックリな狂乱状況であるが、マネジャー赤松満祐がきっと何とかしてくれる。No8義政のやる気のなさも問題だが、それで東山文化が生まれれば、一種独特の東山ラグビーだって発生するだろう。
![ノートルダム2](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/9e/f9/j/o0400030012364986265.jpg?caw=800)
(クリスマスイブのノートルダム。大混雑だった)
今井君が大好きなのは13番・CTBの義輝である。うにゃにゃ、この選手は個に強い。松永弾正の大軍に囲まれても、ただ一人で名剣を並べて戦い抜く。「せっかく趣味で揃えた名剣だ」「どうせ死ぬなら名剣の切れ味を徹底的に試してみようじゃないか」「試し斬りしながら、自らもあの世行き」。おお、快足バックスに相応しい、スンバラシイ切れ味だ。
フルバック・義昭の悪辣さも大好き。このチームは、フォワードのまとまりは悪いが、バックス陣の鋭い切れ味で歴史に名を残す。すると諸君、「歴史に名を残す」ということの本質も分かってくる。決して力量だけではない、一瞬の悪辣な輝きだけでもかまわないのだ。
![シェクレマン1](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/32/88/j/o0400030012364986415.jpg?caw=800)
(12月24日、カルチェラタンの「シェ・クレマン」で夕食)
さて12月24日、パリのサトイモ男爵を探しにいこう。「今日は1日お寺巡り」「深夜までクリスマスミサ」と決めたまではよかったが、決めた通りをやり抜けないのがキウィ軍曹の弱さである。遅い昼食にシャブリ1本を短時間でカラッポにすれば、心の弱いキウィ君はもちろん「どこかでもう1本行けないかな?」とそのことばかりに夢中になる。
モンマルトルから地下鉄4号線でノートルダム方面に戻ったまでは立派。ノートルダムの直前で「サンジェルマン・デ・プレにも挨拶に行かなくちゃな」と考えたのも立派。クリスマスイブのサンジェルマン・デ・プレでローソクを1本あげたのも、マコトに立派。しかしその後が続かなかった。
![シェクレマン2](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/2e/c1/j/o0400030012364986552.jpg?caw=800)
(シェ・クレマンにも夕暮れが迫る)
諸君、この教会の起源は6世紀である。起源をたどれば、「メロヴィング朝の王クローヴィス」などという、恐るべき大昔のヒトが登場する。8世紀にはベネディクト会の修道院として隆盛を極めたというのだから、足利フィフティーンだって、徳川の15人だって、100歳のオジーチャンの前に出た70歳のオジチャンみたいに、一瞬でシュンとなる。
しかし、サンジェルマン・デ・プレからノートルダムに向かうには、カルチェラタンを通らなければならない。ソルボンヌ大学の学生や院生や、チョイと怠け心をおこした教授連が、研究に疲れた心を癒そうと立ち寄る、楽しいカフェやパブが立ちならぶあたりだ。
![コキヤージュ](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/e4/a1/j/o0400030012364986701.jpg?caw=800)
(シェ・クレマンのコキヤージュ)
すると、秋冬の講演会ラッシュに疲れた今井君の心も、「もうちょっと癒されてもいいんじゃないか」と言語道断に弛緩しはじめる。次々に現れては消える楽しそうなカフェ、「これでもか」「これでもか」と姿を現す心地よさそうな飲み屋。荒野のキリストを苦しめた悪魔とは、まさにこのような光景のことだったのではあるまいか。
![自分撮り1](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/75/dc/j/o0400030012364986843.jpg?caw=800)
(こんな大っきなカニさんもついてくる)
ついにサトイモ男爵は、一軒の悪魔的飲み屋に誘い込まれることになる。店の名は「シェ・クレマン」。パリに20軒近い店舗をもつチェーン店に過ぎない。実は昨夜、このチェーンのシャンゼリゼ店に入ろうとして「スミマセン、23時半で閉店です」と断られたばかりである。
時刻は16時。12月下旬のパリは、すでに夕暮れの空気に満たされている。銅製の鍋や釜のオブジェで飾られた店内は、中途半端な時間帯でお客もマバラ。クマ蔵が通された窓際のテーブルも、パリ独特の寿司詰め&ギューギューとはほど遠い、マコトに心地よい座り心地である。
![自分撮り2](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/9c/b8/j/o0300040012364986963.jpg?caw=800)
(カニはたちまちカラッポだ)
こうなれば、注文するのはもちろんコキヤージュ。カキを中心に、豊富な貝類を大きなお皿に大盛りにして運んでくる。大きなカニさんの半身ものってくる。別に旨くはないが、こういう豪快なヤツを、白ワイン1本を相棒につぎつぎと平らげていくのがこの上なく楽しいのだ。
お隣のテーブルの厳しい目がないのもスバラシイ。コキヤージュを注文して、何よりも困るのがお隣のテーブルからの厳しい視線なのである。ニースで、エジンバラで、パリで、とにかくコキヤージュを注文するたびに、
「何でアンタはそんな野蛮なものを手づかみで食べるんですか?」
「周囲の迷惑ぐらい考えるべきじゃないんですか?」
という視線が集まって、まさに四面楚歌の状況になる。
![完食](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/33/b3/j/o0300040012364987117.jpg?caw=800)
(30分もかからずにペロリである)
もっとも、今井君は昔から四面楚歌に慣れている。四面楚歌であればあるほど、「ほほい!!」と絶叫したくなる快感がこみ上げる。むしろ、四面楚歌の状況をこそ心から楽しみ、それをはねのけて驀進する自らの姿に酔うのである。
だからこの日は、「あれれ、ぜんぜん四面楚歌じゃないじゃないか」「こんなんじゃ、驀進する快感がないじゃないか」と、むしろ拍子抜けなコキヤージュであった。はねのける快感がない。昔から強敵に出会うたびに日本の武士が口にした「相手にとって不足はない」というのは、やっぱりヤセ我慢のウソじゃなかったのだ。
1E(Cd) Ralph Towner:ANA
2E(Cd) Stan Getz & Joao Gilberto:GETZ/GILBERTO
3E(Cd) Keith Jarrett & Charlie Haden:JASMINE
4E(Cd) Ann Burton:BLUE BURTON
5E(Cd) Harbie Hancock:MAIDEN VOYAGE
total m50 y2115 d10009
ま、仕方ない。スポーツ観戦で一番大事なことは、潔さである。負けたものは負けたものであって、いつまでもそれを引きずっていては一歩も前に進めない。淡白すぎて情けないが、「今に見ていろ!!」「臥薪嘗胆♨」みたいな粘り強さを観客が発揮しても、どうせロクなことはない。
早稲田大学は放っておいてもどうせ復活する。ケガで1シーズンを棒に振ったフルバック藤田が復帰するだけで、局面は大きく変化しそうだ。来年になれば、まさにいま花園で大活躍中のスーパー1年生だってたくさん入学してくるだろう。その辺は、その辺のことを複雑微妙に担当するフロントサイドにお願いすればそれでいい。
![サンジェルマンデプレ1](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/7b/f2/j/o0400030012364985252.jpg?caw=800)
(クリスマスイブのサンジェルマン・デ・プレ)
心配なのは、「その辺のことを複雑微妙にお願い」というワケにはいかない公立高校の秋田工である。全国の中学の有力選手をいろいろ美味しい条件で入部に誘える私立高校とはワケが違う。「全国優勝15回」という輝かしい歴史だけで、地元の有力選手を秋田に留めておける時代ではないのだ。
しかし諸君、ベスト8で惜敗した今年のメンバーを見ても、その多くは2年生だ。バックスのうち、3年生はフルバックの成田君だけ。残るメンバーはすべて2年生だ。今日の試合で御所実業のモール攻撃に完敗したFWをもう1度地道に鍛えれば、「また来年がある」「来年こそは頂点を目指そう」という激励は、決してキレイゴトには終わらない。
![キャンドル](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/66/f4/j/o0400030012364985461.jpg?caw=800)
(サンジェルマン・デ・プレでローソクを1本あげる)
いやはや、心の底からガッカリした自分を立て直すのは、サトイモ男爵にだって容易なことではない。酒も飲んでみた。ウィスキー1ボトル、カラッポ。その後で赤ワインも半分カラッポ。「ありゃりゃ、これじゃブログ連続更新記録が半年で途絶えちゃう」と気づいても、それでもPCの前に座る気になれなかった。
だから、いまこれを書いているのは、メッタにない泥酔状態で、しかも相変わらずこみ上げる涙を拭いながらなのである。ニャゴロワの点滴も、涙をこらえながら済ませた。しかしなぜ、早稲田フィフティーンも秋田工の15人も、相手の怒濤の攻撃をゴールライン直前で食い止められなかったのだろう。
![ノートルダム1](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/b0/4d/j/o0400030012364985806.jpg?caw=800)
(クリスマスイブのノートルダム。上空に月が出た)
えーい、クソォ。クソクソ&クソォ。諸君、汚いコトバでマコトに申し訳ない。今井君はどうしても淡白に敗戦を受け入れられないのである。そもそも、ラグビーって何で15人なんだ。徳川将軍家や足利将軍家があるまいし。北条執権家は16代だったっけな?
どうだろう。徳川チームvs足利チームってのは? 徳川チームは、プロップ1番・家康、3番・家光。2番フッカー・秀家。おお、こりゃ強力な第一列だ。家綱/綱吉のロック陣は、何だか気弱そうだが、何しろNo.8吉宗は暴れん坊将軍だ。なかなか行けるじゃないか。
![サンジェルマンデプレ2](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/be/a7/j/o0300040012364986029.jpg?caw=800)
(サンジェルマン・デ・プレ、拡大図)
もっとも、このチームはバックスが弱い。ウィング11番・家斉は子だくさん。妻16人、生まれた子供が53人。マネジャー田沼意次を罷免したのはよかったのか悪かったのか、松平定信だの、水野忠邦だの、Kuso-majimeなマネジャーを次々に採用して、国を暗くした。そんなことやってっから、次々に飢饉が次々くるんだよ。
ウィング14番、家茂。フルバックは慶喜。この辺は、防御専門というか逃げ足自慢というか、臆病で攻撃に加わらないディフェンス専門の選手たちである。ま、いいか。フォワード一辺倒のこういうチームも悪くない。FWが疲労すれば一気に戦力ダウンするが、1990年代の大学ラグビーはこういうチームが圧倒的に強かった。
![市庁舎](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/33/de/j/o0400030012364986161.jpg?caw=800)
(クリスマスイブのパリ市庁舎)
足利チームについて、泥酔中の今井君としては冷静に戦力分析できる状態にない。フランカー足利義教の精神状態は、現在の今井君にソックリな狂乱状況であるが、マネジャー赤松満祐がきっと何とかしてくれる。No8義政のやる気のなさも問題だが、それで東山文化が生まれれば、一種独特の東山ラグビーだって発生するだろう。
![ノートルダム2](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/9e/f9/j/o0400030012364986265.jpg?caw=800)
(クリスマスイブのノートルダム。大混雑だった)
今井君が大好きなのは13番・CTBの義輝である。うにゃにゃ、この選手は個に強い。松永弾正の大軍に囲まれても、ただ一人で名剣を並べて戦い抜く。「せっかく趣味で揃えた名剣だ」「どうせ死ぬなら名剣の切れ味を徹底的に試してみようじゃないか」「試し斬りしながら、自らもあの世行き」。おお、快足バックスに相応しい、スンバラシイ切れ味だ。
フルバック・義昭の悪辣さも大好き。このチームは、フォワードのまとまりは悪いが、バックス陣の鋭い切れ味で歴史に名を残す。すると諸君、「歴史に名を残す」ということの本質も分かってくる。決して力量だけではない、一瞬の悪辣な輝きだけでもかまわないのだ。
![シェクレマン1](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/32/88/j/o0400030012364986415.jpg?caw=800)
(12月24日、カルチェラタンの「シェ・クレマン」で夕食)
さて12月24日、パリのサトイモ男爵を探しにいこう。「今日は1日お寺巡り」「深夜までクリスマスミサ」と決めたまではよかったが、決めた通りをやり抜けないのがキウィ軍曹の弱さである。遅い昼食にシャブリ1本を短時間でカラッポにすれば、心の弱いキウィ君はもちろん「どこかでもう1本行けないかな?」とそのことばかりに夢中になる。
モンマルトルから地下鉄4号線でノートルダム方面に戻ったまでは立派。ノートルダムの直前で「サンジェルマン・デ・プレにも挨拶に行かなくちゃな」と考えたのも立派。クリスマスイブのサンジェルマン・デ・プレでローソクを1本あげたのも、マコトに立派。しかしその後が続かなかった。
![シェクレマン2](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/2e/c1/j/o0400030012364986552.jpg?caw=800)
(シェ・クレマンにも夕暮れが迫る)
諸君、この教会の起源は6世紀である。起源をたどれば、「メロヴィング朝の王クローヴィス」などという、恐るべき大昔のヒトが登場する。8世紀にはベネディクト会の修道院として隆盛を極めたというのだから、足利フィフティーンだって、徳川の15人だって、100歳のオジーチャンの前に出た70歳のオジチャンみたいに、一瞬でシュンとなる。
しかし、サンジェルマン・デ・プレからノートルダムに向かうには、カルチェラタンを通らなければならない。ソルボンヌ大学の学生や院生や、チョイと怠け心をおこした教授連が、研究に疲れた心を癒そうと立ち寄る、楽しいカフェやパブが立ちならぶあたりだ。
![コキヤージュ](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/e4/a1/j/o0400030012364986701.jpg?caw=800)
(シェ・クレマンのコキヤージュ)
すると、秋冬の講演会ラッシュに疲れた今井君の心も、「もうちょっと癒されてもいいんじゃないか」と言語道断に弛緩しはじめる。次々に現れては消える楽しそうなカフェ、「これでもか」「これでもか」と姿を現す心地よさそうな飲み屋。荒野のキリストを苦しめた悪魔とは、まさにこのような光景のことだったのではあるまいか。
![自分撮り1](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/75/dc/j/o0400030012364986843.jpg?caw=800)
(こんな大っきなカニさんもついてくる)
ついにサトイモ男爵は、一軒の悪魔的飲み屋に誘い込まれることになる。店の名は「シェ・クレマン」。パリに20軒近い店舗をもつチェーン店に過ぎない。実は昨夜、このチェーンのシャンゼリゼ店に入ろうとして「スミマセン、23時半で閉店です」と断られたばかりである。
時刻は16時。12月下旬のパリは、すでに夕暮れの空気に満たされている。銅製の鍋や釜のオブジェで飾られた店内は、中途半端な時間帯でお客もマバラ。クマ蔵が通された窓際のテーブルも、パリ独特の寿司詰め&ギューギューとはほど遠い、マコトに心地よい座り心地である。
![自分撮り2](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/9c/b8/j/o0300040012364986963.jpg?caw=800)
(カニはたちまちカラッポだ)
こうなれば、注文するのはもちろんコキヤージュ。カキを中心に、豊富な貝類を大きなお皿に大盛りにして運んでくる。大きなカニさんの半身ものってくる。別に旨くはないが、こういう豪快なヤツを、白ワイン1本を相棒につぎつぎと平らげていくのがこの上なく楽しいのだ。
お隣のテーブルの厳しい目がないのもスバラシイ。コキヤージュを注文して、何よりも困るのがお隣のテーブルからの厳しい視線なのである。ニースで、エジンバラで、パリで、とにかくコキヤージュを注文するたびに、
「何でアンタはそんな野蛮なものを手づかみで食べるんですか?」
「周囲の迷惑ぐらい考えるべきじゃないんですか?」
という視線が集まって、まさに四面楚歌の状況になる。
![完食](https://stat.ameba.jp/user_images/20130106/09/imai-hiroshi/33/b3/j/o0300040012364987117.jpg?caw=800)
(30分もかからずにペロリである)
もっとも、今井君は昔から四面楚歌に慣れている。四面楚歌であればあるほど、「ほほい!!」と絶叫したくなる快感がこみ上げる。むしろ、四面楚歌の状況をこそ心から楽しみ、それをはねのけて驀進する自らの姿に酔うのである。
だからこの日は、「あれれ、ぜんぜん四面楚歌じゃないじゃないか」「こんなんじゃ、驀進する快感がないじゃないか」と、むしろ拍子抜けなコキヤージュであった。はねのける快感がない。昔から強敵に出会うたびに日本の武士が口にした「相手にとって不足はない」というのは、やっぱりヤセ我慢のウソじゃなかったのだ。
1E(Cd) Ralph Towner:ANA
2E(Cd) Stan Getz & Joao Gilberto:GETZ/GILBERTO
3E(Cd) Keith Jarrett & Charlie Haden:JASMINE
4E(Cd) Ann Burton:BLUE BURTON
5E(Cd) Harbie Hancock:MAIDEN VOYAGE
total m50 y2115 d10009