Mon 121203 エッフェル→穴場と定番 6号線 世界で一番高いビア(パリ速攻滞在記3) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 121203 エッフェル→穴場と定番 6号線 世界で一番高いビア(パリ速攻滞在記3)

 12月22日、まさにこれから厳かなクリスマス儀式が始まろうとしているノートルダムを後にしたサトイモ閣下は、「それではこれからエッフェル塔に挨拶しにいこう」と決めた。セーヌ河を左岸に渡って近郊電車RERに乗れば、トゥール・エッフェル駅までは4駅か5駅、15分程度の移動である。
ノートルダム
(真冬の夜のノートルダム)

 RERはメトロよりも停車駅が少ないから、急ぎの移動の時にはたいへん便利な乗り物である。東京で言えば、東海道線とか横須賀線、関西方面ならJR新快速に該当する。ただし、どうもパリ市内のヒトビトには人気がないようである。
 まず、何と言っても「何となく治安が悪そうな感じ」。パリ市内ではほとんど地下を走るが、メトロ構内より照明がずっと暗い。暗いのは、車内も同じ。人気がないから、特に夜間は人影がまばらになる。そこへ持ってきてこの暗さじゃ、デフレスパイラル的にますます人気は下がる一方だ。
RER
(パリ郊外電車RER)

 あと、「木で鼻をくくったような態度」にも不人気の原因があるかもしれない。メトロなら、降りる時は改札機を通る必要さえないのだが、RERだと厳重な自動改札機がまるで地獄の門のように横柄に突っ立っていて、ちょっとでも行き先を間違えようものなら「オマエは不正乗車を試みたな!!」と、まるで重罪人を裁くかのように立ちふさがる。
 これが無人駅での出来事だったりすると、悲劇はちょっとやそっとのことでは済まない。幸い今井君はまだそういう目に遭ってはいないが、ケアレスミスをおかした乗客を、鉄の門は決して許そうとはせず、係員が駆けつけるまで絶対に外に出られない。
 もちろん、不承不承にやがて駈けつける係員は徹底的に鉄の門の味方。一生トラウマが消えないほどに厳しく問いつめられる。「降車駅で精算」などという甘い制度が成り立つのは、どうやら日本ぐらいのもののようである。
車内風景
(2階建て車両の2階席。市中部でもご覧の通りガラガラだ)

 RERのトゥール・エッフェル駅で降りれば、エッフェル塔は目の前である。穴場スポットは、この駅から地下鉄6号線のガード下をパッシー駅方面に1分ほど歩いたあたり。橋がセーヌ河に大きく張り出し、まるでステージのようになったあたりに、アマチュアカメラマンが十数人、カメラを構えてクライマックスを待ちうけている。
 毎正時になると、言語道断といっていい激しいライトアップが始まる。もともとオレンジ色に輝くエッフェルに、さらに数千個の電球を目いっぱい巻き付けて、その数千個を約5分にわたって「これでもかぁ!!」「これでもかぁ!!」とギンギラギンに点滅させるのである。
エッフェル1
(穴場からのセーヌ河とエッフェル塔)

 こういうことをやるから、エッフェル塔を目のカタキのように冷笑するヒトが、もう100年以上もいなくならないのだ。「エッフェル」と聞いただけで、不満げに鼻をならし、失笑あるいは冷笑、場合によっては嘲笑して「あれさえなければ、パリはもっといい街なんですがね」と言ってみる。
 うにゃにゃ、めんどくさいヒトというのは、古今東西そこいら中にウヨウヨしているものである。いいじゃん、こんなにみんな楽しそうなんだから。いい年したオジサマたちが、1時間も前からニタニタ&ニヤニヤしながら橋の上でシャッターチャンスを待ち受けているんだから。
自分撮り
(エッフェル塔と、左手で自分撮りのクマ)

 一番楽しそうだったのは、橋の上の暗闇で写真の撮りっこをしていたアラビア系女性3人組。20歳代後半から30歳代前半かねえ。3人をAちゃんBちゃんCちゃんとしよう。
 5分間のギンギラギンライトアップが始まると、まず、Aちゃんとエッフェル、Bちゃんとエッフェル、Cちゃんとエッフェル。次に3人の中から2人を選んで組み合わせ、A+Bちゃんとエッフェル、B+Cちゃんとエッフェル、C+Aちゃんとエッフェル。「こんな楽しいことはない」「いくら写真を撮っても撮り足りない」というハシャギようは、傍らで見ていても胸のすく思いだ。
 こんなに幸せいっぱいのアラビア系女性グループを、今井君は今までの長い一生で初めて見たような気がする。アラビア系だけではない。トルコのイスタンブールにもいなかったし、ブエノスアイレスの女性たちだって、こんなに底抜けに嬉しそうなヒトビトを見たことがない。
 その様子をどこかの物陰からコッソリ冷笑的に眺めていて、鼻でフンと冷笑してみせ、「パリのホントのよさをちっとも分かっていませんね」などというのは、まあ要するに余計なお世話なのだ。評論家みたいな人たちは、だいたい同じだ。みんなで楽しんでいる脇で、「あまりオススメできません」とか、おお、メンドーな人たちでござるね。
エッフェル2
(定番、シャイヨー宮からのエッフェル塔)

 さてと、穴場からのエッフェル鑑賞が終わったところで、クマ蔵は今度は「定番エッフェル」が楽しめる場所に移動することにした。定番は、ここから十数分歩いたトロカデロ、シャイヨー宮前の広場である。小高い丘の上にあって、昼でも夜でも団体ツアーの観光客でごったがえしている。
 さすが、定番でござるね。芝居とかオペラとかで言えば、舞台正面、前から10列目というところか。さっきの穴場が舞台脇から眺める貴賓席みたいな位置だったのに対し、「ホントに芝居や演劇の好きなヒトは、やっぱり10列目ですよね」という感じである。
凱旋門
(クリスマスのシャンゼリゼ。坂の上は凱旋門)

 ただし、そういうクロート好みの席には、物売りの人たちもたくさんやってくる。昔の日本なら「おせんにキャラメル♡」、新幹線では「アイスクリーム、ビールにおツマミ、沿線のお土産品はいかがでございますか?」であるが、エッフェルやルーブル前はアフリカ系のヒトビトがズラリと並んで、何が何でも土産物を買わせようとする。
 彼らの商品は、昔も今も大小のエッフェル塔。金属製のもの、いろいろな蛍光色が怪しく光るものと、キーフォルダータイプのもの。あと、やっぱり蛍光色に光る竹トンボみたいなヤツ。「わざわざエッフェル塔までやってきて、今ここでそれを買う客がいるわけないじゃないか」と思うが、少なくともこの8年、この光景には変化がないようだ。
メトロ
(大好きな地下鉄6号線)

 帰りは、トロカデロの駅から大好きな地下鉄6号線に乗る。白にペパーミントグリーンの色彩感覚も大好き、東京の大江戸線よりもう一回り小さい豆電車ふうの風情もいかにもパリらしい。終点エトワールまで5分足らずだが、電車好きのサトイモ男爵としては、3~4時間なら飽きずに、この電車で何度もパリの街を往復していたいと思うのである。
 地下鉄から地上に上がると、凱旋門の真下である。このまま凱旋門の中に入ってもいいが、いやいや無理はやめておこう。明日も明後日もパリに滞在、しかもホテルはジョルジュサンク。凱旋門まで徒歩5分だ。今日はホテルに戻って、早めに一休みしよう。
 考えてみれば、12月22日朝7時半に代々木上原を出て、すでにまるまる24時間が過ぎている。疲労の蓄積も相当なものだろう。そう考えつつ、シャンゼリゼの坂道をルイヴィトン本店の前まで降りていった。
シャンゼリゼ
(シャンゼリゼのクリスマス・デコレーション)

 しかし、まあ最後にもう一杯飲んでいくのも悪くない。入ったのは、ルイヴィトン本店から1本道路を横切った「フーケッツ」。23時近くなっても、お店の前に椅子とテーブルを並べ、ガラスとビニールで覆って風を防ぎ、テーブルの上からは照明代わりに遠赤外線コタツの熱線をあてている。おお、暖かい。暖かすぎる。こんなに暖かかったら、意地でもビアを飲みたくなるじゃないか。
 で、この店でこのとき飲んだのが「世界で(おそらく)一番高いビア」。350mlのグラスで、約20ユーロ。うにゃにゃ、アベノミクスの影響もあって「ビア1杯2200円」という驚異のお値段が実現した。ふと間違えて「もう1杯ください」などと叫んでみたまえ。ビア2杯で4400円。普通のサラリーマンの10日分のサラメシ代が、ビア2杯で吹っ飛んでしまう。
フーケッツ
(世界で「おそらく」一番高いビアの店)

 ま、いっか。ロケーション的にも、クリスマスデコレーションが美しいシャンゼリゼ、坂の上は凱旋門、坂の下はコンコルド広場とルーブル。ニューヨークのタイムズスクウェア、東京・銀座、ロンドン・ピカデリー、そういう街の、世界に冠たる超高級ビアどもといえども、シャンゼリゼ様の前では「ひかえおろう。このモンドコロが目に入らぬか?」「ははははあーーーっ」と、平身低頭せざるを得ないような気がするのだった。

1E(Cd) Weather Report:HEAVY WEATHER
2E(Cd) Sonny Clark:COOL STRUTTIN’
3E(Cd) Kenny Dorham:QUIET KENNY
4E(Cd) Shelly Manne & His Friends:MY FAIR LADY
5E(Cd) Sarah Vaughan:SARAH VAUGHAN
total m15 y2080 d9974