Sun 121111 オペラ「セビリヤの理髪師」を観に行く 幡ヶ谷「可禮亜」の焼き肉を食す | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 121111 オペラ「セビリヤの理髪師」を観に行く 幡ヶ谷「可禮亜」の焼き肉を食す

 12月4日、講演会ラッシュは秋と冬の谷間で一息ついたので、久しぶりに新国立劇場に出掛けてオペラを見ようと思う。今年は1年、ずいぶん勤勉にコンサートホールや大小の劇場に通ってきたが、この1ヶ月はすっかり怠けてしまった。11月16日に大阪・国立文楽劇場で11時間の長丁場をこなしたのが最後である。
 All work and no play makes Jack a dull boyなワケだから、このあたりはチャンと反省したほうがいい。このままだとJackグマはdullなクマになってしまう。サトイモグマでもキウィグマでも構わないが、dullグマではどうもカッコがつかない。
 Playを「遊び」と捉えるとしたら、11月のサトイモ大将は十分によく遊んだ。京都に出張すれば、高雄にも槙尾にも栂尾にも出かけ、鷹峯の光悦寺・源光庵・常照寺も訪問し、湯豆腐だってチャンと平らげた。札幌に出張したかと思えば、ちゃっかり旭川まで足を伸ばして、雪の中で旭川ラーメンも丸いポンポンに収めた。
オペラシティ
(オペラシティのクリスマスツリー)

 しかしplayには「お芝居」「演劇」も含まれるので、遊んでばかりでお芝居を見なければ、やっぱりJackはdullになる。Jackがdullになれば、つられてクマもdullになる。仕事ばかりで芝居を見ないと、ジャックはツマらんヤツになる。20日も芝居を観ていないから、そろそろdullグマ誕生近し。そりゃマズいだろう。
 ついこの間、予備校界の至宝・超有名古文講師と酒を飲んでいたら、
「芝居ってのはさ、芝の上に座って観るから『芝居』って呼ぶんだよ」
「知ってた?知ってた?知ってた?知ってた? はははははは」
と教えてもらったばかりだ。古文の「居る」は「座っている」ことであって、だからこそ「居ても立ってもいられない」なのである。
オペラパレス
(オペラパレス、エントランスのクリスマスツリー)

 サトイモ男爵は大慌てでいろんなHPを検索。「どこかで芝居をやってないかな」「dullにならないように、早く芝の上に座らなきゃな」とクリックしまくって、新国立劇場でオペラ「セビリヤの理髪師」をやっているのを発見した。
 Mac君の変換では「せびり矢野理髪師」であるが、矢野君はいったい何をせびるんだい? いやだねえ、せびり矢野。ボクが観たいのは、あくまで「セビリヤの理髪師」であって、「せびり矢野」などというフザケたニーチャンではない。
チケット
(今日のチケット)

 サッカーの世界では、「セビリヤ」はとっくにスペイン語の発音通り「セヴィージャ」になっている。ついでにロッシーニのこのオペラも「セヴィージャの理髪師」と呼ぶようにしたらどうだろう。イタリア語の発音なら「セヴィーリャ」でござるね。
 せっかくなら「理髪師」も変えたほうがいい。理髪師=フィガロは、「フィガロの結婚」にも登場するトリックスター。理髪師というより、機転のきくチョイ悪どん。セビリヤの理髪師は、実は「セヴィージャのチョイ悪オトコ」なのである。
 しかしMac君の前で今井君は迷いに迷った。だって「S席」しか空いていないのだ。2階席も3階席も満員で、チケットが買えるのはS席だけ。オペラでS席なんか買ったら、諸君、20000円じゃ足りないのだ。
 それでもキヨミズの舞台から飛び降りる気概をもって、思い切って「この席を購入する」をクリック。そのまま2回だか3回だかクリックして、懸命に稼いだオカネ21000円が、チョイ悪オペラのS席に泡と消えることになった。
ロース1
(オペラの後は、もちろん焼き肉を予定)

 うにゃにゃ、甚だもったいないが、これもdullなJackにならないためだ。やむを得ないものは、やむを得ない。オカネとは、うたかたのようなもの、流れに浮かぶウタカタは、かつ消え、かつ結びて、おサイフの中に長く留まりたるタメシはない。
 ならば、鴨長明どんのおっしゃる通り、オカネなんていうウタカタなんかにすがりついているより、dullなジャックにならないようにオカネを賢明な消費に結びつけるべきだ。クマ蔵は、せっかくのウタカタをフグだの焼き肉だの、胃袋優先で消費する悪いクセがある。ここは一番、オペラという知的消費に資金を投入すべき時が来た。
オペラパレス内
(オペラパレスにもクリスマスツリー)

 新国立劇場は初台だから、今井君のお散歩コース。代々木上原からなら、徒歩20分である。ただしこの日は新宿駅に所用があったから、所用を済ませて新宿からのんびり歩いて行った。午後2時開演、午後5時終了。修学旅行の高校生軍団も来ていて、「ははあ、なるほど、それで2階席&3階席がとっくに満員だったんだな」と納得がいった。
 完全にクリスマスモードの新国立劇場は、さすがに平日の真っ昼間、3時間のオペラに2万円も払う人々だから、たいへん知的なムードで満たされている。平均年齢65歳ぐらいだろうか。「日本の知的中高年を一堂に集めた」ような高級感。男子も女子もいかにもIQの高そうな、「地位にも財産にも恵まれておりましてね」な人々である。
 しかしこれだけパンパンに満員になれば、マナーのよくないお客もいる。開演ギリギリになって駆けつけた中高年男性は、お馴染み「のりだし男」。芝居やコンサートで最近目立つようになったのが「のりだし男」「のりだし女」であって、席からグッと前にのりだして周囲の人の視界を遮ってしまうのである。
 しかし諸君、オペラの観衆→恐るべしだ。彼の隣りの席を占めた70歳ぐらいのオバーサマが、すかさず彼をたしなめた。
「そんなふうに前におのりだしになると、後ろのお客さまにご迷惑がかかりますよ、ほほほほ」
でござるよ。
ロース2
(可禮亜のロース)

 普段なら「なんだと、こら。うるせえんだよ、ババー」の類いの受け答えをしそうなオヤジであったが、なにせ周囲の高級な雰囲気もあり、高級オバーサマの威厳もあり、すぐに理解し、シュンとなって、その後3時間マコトに大人しくオペラに見入っていた。
 おお、国際社会の見本でござる。「ボクらはミサイルを打つんだ!!」「あそこの島はボクらのもんだ」「それどころか、あっちの島も、こっちの島も、みんなボクらのだ」「前にのりだすのはボクらの権利だ」と絶叫する国にあったら、ぜひ今日のオバーサマみたいな威厳を発揮したいじゃないか。21世紀の高齢ジャパンにとって、世界での立ち位置はまさに今日のオバーサマなんじゃないか。
カレア1
(幡ヶ谷「可禮亜」の店構え 1)

 こういうこともあって、オペラはますます楽しくなった。何しろロッシーニのオペラ・ブッファ。楽しめなかったら、せっかくの2万円が台無しだ。サトイモ君は、ひたすら「楽しもう」「楽しもう」と奮闘努力し、「奮闘努力の末の楽しさ」という妙竹林な楽しさを十二分に味わった。
 中でも悪役「バルトロ」を演じたブルーノ・プラティコが秀逸。思わず悪役であることを忘れて感情移入し、要するに女タラシの「伯爵」だの、要するにナラズモノに過ぎないフィガロだの、そんな連中よりずっとバルトロが好きになった。
 満員の観衆の多くがサトイモ君と同じだったに違いない。ヤンチャな少年がそのまま老いて、まあるくデップリ太った感じのブルーノ・プラティコが、みんな大好き。ほぼ球の形に太っちゃった陽気でイタズラなオジーチャンがキライな人なんか、そんなにたくさんいるものではない。カーテンコールでの拍手も一番大きかったように思う。
カレア2
(幡ヶ谷「可禮亜」の店構え 2)

 おお、面白かった。あんまり面白かったから、終演後はさっそく焼き肉を食べに行くことに決めた。初台からいつもの西麻布や恵比寿は遠いから、オペラシティからすぐそばの幡ヶ谷「可禮亜」を試してみることにした。
 「可禮亜」と書いてカレアと読む。どういう意味の命名か分からないが、オペラシティから徒歩10分。今井君のオウチからも徒歩15分。タクシーで新宿方面に走るたびに「地味な焼き肉屋だな」と思って眺めていたが、何しろ渋谷や新宿がすぐそばだから、近くに住むタレントさんたちも頻繁に顔を出すらしい。
 安倍晋三・自民党総裁の行きつけ焼き肉屋でもあるそうだ。お腹をこわしがちだった元首相も、今やハイペースで焼き肉をワシワシやる元気なオジサンの仲間入りをしたらしい。
ホルモンセット
(ホルモンセット)

 安倍氏とはニアミスが結構あって、つい2週間前には博多から小倉までの新幹線で前の前の席にいらっしゃったし、むかし山口県宇部のANAホテルで「安倍晋三が泊まった部屋」にも泊まらせていただいた。
 キウィ軍曹はいま愛媛県新居浜でこれを書いているが、この新居浜に、明日・麻生太郎→明後日・安倍晋三と、最近の総理経験者が立て続けに遊説に来ることになっているのだ。いやはや、露払い・サトイモ君まで、何だかエラくなったような気がするから不思議である。
韓国の真露
(真露は、韓国の真露のほうが旨い)

 で、肝腎の焼き肉であるが、さすがにタレントさんや元総理の御用達店であって、地味な見かけに反してマコトに旨い。通好みの店である。大好きなロースは少々アブラが多すぎて「あれれ?」であったが、名物「ホルモンセット」は絶品。この夜は特にミノとギャラが気に入って、4人前も5人前も平らげた。
 その結果、新居浜クマ蔵は2カ所の筋肉痛に苦しんでいる。アゴと右腕であるが、もちろんアゴのほうは、噛んでも噛んでもどこまでも味の深まっていくミノを、一晩で数人前も堪能したせい。右腕の筋肉痛は、言わずと知れた「トングの握り過ぎ」のせいである。

1E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 10/18
2E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 11/18
3E(Cd) Haydon Trio Eisenstadt:JOSEPH HAYDN:SCOTTISH SONGS 12/18
6D(Pl) 2012/13シーズン オペラ:セビリアの理髪師:新国立劇場オペラパレス
total m56 y1968 d9862