Tue 120924 相似形の日々 相似どころか合同だ 御茶ノ水で授業 吉祥寺で収録 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Tue 120924 相似形の日々 相似どころか合同だ 御茶ノ水で授業 吉祥寺で収録

 人生の基本は、毎日毎日がほぼ相似形であることであって、日々の生活が互いに区別がつかないほど似通っているタイプのヒトでなければ、少なくとも現代社会はきわめて生きにくい。
 ほぼ同じ時刻に目覚め、ほぼ同じ道を通って駅にたどり着き、乗る電車も、乗る車両も、乗った車両の乗客の顔ぶれも、みんなほぼ同じである。高校生から大学生へ、大学生から社会人へ、ヒトの生活の形が大きな断層を飛び越えるのはその2回ぐらいである。
 いったん社会人になったら最後、思い切って転職でもしない限り、第一線を退くまでの約40年間、生活は連日ほぼ相似形のままである。現代社会で生きるとはそういうことであって、生活の大枠が連日大きく変化するようでは、天才的芸術家である場合を除いて「社会に適応していない」「適応できていない」という激しい批判の対象になることを覚悟しなければならない。
御茶ノ水1
(御茶ノ水で授業 1)

 そういう相似形の生活が30年も40年も連続することを。多くの人間が嫌悪するかと言えば、嫌悪どころかむしろ心の底から希求するのであって、世の中に受験勉強があるのも、シューカツに大学生が夢中で励むのも、多くの場合「相似形の生活を数十年にわたって継続したい」という欲求のせいである。
 「安定した生活」というコトバが意味するのも、より正確には「相似形の生活をできる限り長期間継続すること」である。職場で顔を合わせるヒトもほぼ同じ。帰りの時刻もほぼ同じ。食事の時刻も、食事の場所も質も値段も、緩やかに変化することはあっても、一生にわたって極端な断層を経験することはない。
 そこに「不安定な要素」を求めると、今井君みたいにヤタラ旅に出かけたり、今井君みたいにヤタラ職場をかえたりして、「落ち着きの無いヤツだ」と呆れられ、批判なり冷笑なり非難なりの対象になる。不安定を愛し、変化を好み、相似形の継続を拒絶するのは、現代社会ではマコトに困難なのである。
御茶ノ水2
(御茶ノ水で授業 2)

 こういうことを述べると「オマエ、何言ってんの?(Mac君の変換は「何一点の?」であるが)」という、カンタンに言えば「理解の拒絶」というカタクナで頑迷な表情のカベが立ちはだかる。
 するとサトイモ大将は大慌てで「いや、ボクチンは、夏休みが永遠に続くことを望んできただけなんです」と頭を掻いてみせるしかない。「だって、せめて夏休みぐらい、日々が相似形であることから解放されたいじゃないですか」。ま、そんな話である。
 ところが諸君、夏休みでさえ、日々を相似形にする訓練に費やされるのだから、現代社会というものは実に堅固にできている。「計画表を作成せよ」「規則正しい生活が重要だ」。夏休みが近づくと、先生がたはそう連呼する。
 相似形の生活の連続を愛することにおいて、教師の右に出る存在はない。愛するが故に、目の前の生徒たちにも「計画表」という形で、日々の相似性を確保させようとするのだ。
御茶ノ水3
(語るサトイモ大将 at 御茶ノ水)

 ところが、肉食系の生物にとって、日々の相似性は耐えがたい。肉食とは、高いレベルまで偶然に依存した生活であって、一定の時刻に一定の獲物に接近しやすいという規則性はあっても、草食動物が日々草を噛むほどには相似性に依存できないのである。
 というわけで、現代社会の枠にハマりにくいクマ蔵どんの日々は、現代社会では滅多に見られないほど不規則性に満ちている。まあ外見的には「ヤタラ旅をするから」「ヤタラ講演に出かけけているから」が、2大原因である。
 いつ、どこで、どんなふうに目覚めるか、自分でもサッパリ予測がつかない。ある時はイスタンブールで朝4時に、モスクの祈りの声で目を覚ます。ある時はニューヨークで午後5時に目覚め、大慌てで劇場に走る。またある時はブエノスアイレスの午前2時、パーティールームの騒音に舌打ちしながら、ビールの栓を抜く。
 10月11月12月は、神戸、金沢、富山、熊本、福岡、また熊本、大阪大阪また大阪、京都、札幌、また神戸、松山、また金沢。クマのくせに相似形の生活に憧れを居抱きそうなほど、日々の生活は相似の形跡さえ留めない。
チケット
(再びサントリーホールでフェドセーエフを聴いた。今回は当日券である)

 もちろん、こんなことを書いて「忙しい」「忙しい」「おお、忙しい」と、自らの多忙を誇示するのではない。少なくともキウィ軍曹の書くことはもう3~4段は複雑であって、これを読んで「へぇ、忙しくてたいへんでござるな」の類いの反応をされては困るのである。
 では、今日のサトイモ閣下はいったい何を言おうとしているのか。1センテンスで書くから、よく理解したまえ。「ボクは、相似形の生活の連続を拒絶してここまで来たのに、ふと気づくと相似どころか『合同』な生活をすることだってあるのだ」。以上である。
 諸君、これから昨日10月17日の行動を書くから、それが10月15日の行動と合同になっていないか、ちょっと確かめてみたまえ。ブログ上では、一昨日の記事が10月15日の行動。先にそれを読んでくれてもいい。
あわ
(コンサートの後は再び「えびす今井屋総本店」。再び秋田のシャンペン「あわ」を1本カラッポに)

 10月17日、今井君はサントリーホールに現れた。ロシアの巨匠フェドセーエフが指揮する、チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラの演奏を聞くためである。一昨日の演奏にあまりに感激したので、フェドセーエフが東京にいるうちに、どうしてももう1度聞いておきたくなったのである。
 開演まで1時間ほど時間があったので、お隣のANAインターコンチネンタルホテル36階のバーに入った。「ハッピーアワー」で、こんな高級ホテル最上階のバーでもシャンペン1杯500円。東京の美しい夜景を堪能しながら、シャンペン3杯飲んでも1500円しかかからない。
 オーケストラは、元のモスクワ放送交響楽団。まさに名門であって、打楽器の名手をズラリと揃え、悲しく美しい小品でも、重く激しくスケールの大きな交響曲でも、感激はヒトシオである。80歳の巨匠フェドセーエフは、連日の熱演にも関わらず疲れを全く感じさせない。
 2時間の演奏の後、鳴り止まない拍手に応えてアンコール。曲はもちろん彼らの十八番「白鳥の湖から『スペインの踊り』」であって、「スネアのおっさん」を筆頭に打楽器陣が大活躍する。会場の喝采は幾何級数的に激しくなって、6~7割しか客が入らなかった主催者のミスは、観客の喝采のボルテージで十分に補われた。
塩焼き
(今井屋、比内地鶏の塩焼き)

 終演後、恵比寿の「えびす今井屋総本店」で高級焼き鳥を賞味する。ネギマ、セギモ、砂肝に、バクダン。ビアの後は秋田のシャンペン「大森のあわ」を1本カラッポにして、日付が変わるころ店を出た。
 諸君、こうして一昨日と相似形、いんにゃ「ほぼ合同」な1日を締めくくった。相似形の連続を拒絶して肉食獣的に生きていても、時にこうして「合同な日々」を満喫する。こういうのも、また楽しからずや、である。
 違ったのは、
① ずっと秋の雨が降っていて、夜景も滲んでいた
② 交響曲がチャイコフスキーではなくショスタコビッチだった
③ 前席のオジサマが余りに汗臭くて、音楽に集中できなかった
④ 恵比寿の今井屋が大混雑で、大好きなモモ肉が品切れだった
以上4点ぐらい。おお、合同でも相似でも、探せば相違点もたくさん見つかるのである。
ネバネバ1
(バクダン。納豆とイクラと長芋と、ネカブとキムチとタマゴの黄身を全力でかき混ぜ、泡が立つほどネバネバさせたのを海苔にのっけて食する。気の弱いヒトにはオススメできない)

ネバネバ2
(食す直前のバクダン。気の弱いヒトは目撃しないように注意)

 翌日は朝9時半から御茶ノ水で本科生対象の授業。サトイモ閣下は、朝一番に入浴する習慣であるから、朝9時半に御茶ノ水に現れるには、6時ごろ起床しなければならない。日付が変わる頃まで恵比寿でニワトリをワシワシ食らっていたクマにとって、朝6時起床は厳しいものがあるが、やむを得ないものは、ツベコベ言ってもやっぱりやむを得ない。
御茶ノ水4
(御茶ノ水、授業開始前。首都圏各地から100名が集まった)

 東進で浪人生活を送っている諸君の生真面目さは、授業をする今井君が感激するほどである。出席者約100人。千葉や吉祥寺や津田沼からもたくさんの参加者があった。むかし教えていた予備校の生徒とは、何から何まで明らかに違う。素直であり、積極的であり、どんなことにも前向きである。
 そんなことを書くと、まるで小学校の教室に貼ってある「明るく、すなおで、元気なよい子」のポスターみたいで気持ち悪いかもしれないが、もちろんそんなことはない。サトイモ大将は、心の底から彼ら彼女らの素晴らしさを讃えているのである。
 すでに「勉強するのが当然」という域を超えている。「むしろ怠けるのが不思議」「勉強しないのは非日常」なのである。11時半まで授業。質問を13時まで受けてから、吉祥寺に移動。吉祥寺で20分ほどのごく短い収録をこなした。

1E(Cd) Goldberg & Lupu:SCHUBERT/MUSIC FOR VIOLIN & PIANO 1/2
2E(Cd) Goldberg & Lupu:SCHUBERT/MUSIC FOR VIOLIN & PIANO 2/2
3E(Cd) Wand & Berliner:SCHUBERT/SYMPHONY No.8 & No.9 1/2
6E(Cn) フェドセーエフ&チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ:スヴィリードフ交響組曲「吹雪」/リムスキー=コルサコフ「スペイン奇想曲」/ショスタコヴィッチ交響曲第10番:サントリーホール
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