Sun 120922 巨匠フェドセーエフに感激 ホントに拍手が鳴り止まない 〆は今井屋で | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sun 120922 巨匠フェドセーエフに感激 ホントに拍手が鳴り止まない 〆は今井屋で

 10月15日のサトイモ大将は、午前から午後にかけてまず「今日が締切」の原稿を書き上げた。昔からの悪い&悪いホントに悪いクセは今でも健在で、締切のある原稿は締切ギリギリにならないと絶対に腰を上げない。
 しかし、いったん腰を上げてしまえば滅法速いのもキウィ男爵の特長。速いのなんのって、「締切だ♨締切だ」と悩みに悩んだあげく、実際に執筆時間はたった40分しかかからない。
 ホッと一息ついて、夕方からサントリーホールに出かけた。2時間半ほど、チャイコフスキーを聴いてこようというわけである。天ぷら蕎麦で腹ごしらえをし、さらにANAインターコンチネンタルホテル36階のバーで、シャンペンを3杯飲んだ。
 このホテルはサントリーホールのお隣だから、開演15分前までバーに座っていても大丈夫である。しかも諸君、ふつう「高級ホテル最上階のバー」ということになれば、シャンペン3杯の値段はきっと恐ろしく高いものになるはずだが、何と「平日20時まではハッピーアワー、ドリンク1杯=500円でご提供」。シャンペン3杯=1500円だ。
 コンサート会場内でシャンペンを注文すれば、生温いシャンペンを立ちん坊で飲んでも1300円はとられる。それを、国会議事堂や丸の内方面の夜景をホテル36階から眺めながら、ゆっくり座って3杯1500円。こりゃ、お得感も抜群だ。
フェドセーエフ
(巨匠フェドセーエフ。公演チラシより)

 18時40分、バーのお姉さまに「行ってらっしゃい」と優しくコンサートホールに送り出される。こういうのもまた悪くない。向こうも「あのヒトはこれからクラシック」と分かっているわけだ。「終わったら、また来ます」ぐらいのお愛想は、クマ蔵にだって言える。
 ただし心配なのは、「コンサート前にシャンペンなんか飲んで、眠くなっちゃわないの?」でござるね。しかし、心配はご無用。何しろ今日のコンサートはロシアの巨匠フェドセーエフ。演奏は彼が40年近く率いてきたチャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ。元のモスクワ放送交響楽団でござる。眠くなりようがないのだ。
 演奏は、前半が「エフゲニー・オネーギン」「弦楽のためのセレナーデ」。20分休憩が入って、後半が交響曲第6番「悲愴」。前半は悲しく美しく、後半は深く重く激しく、スケールの大きな演奏は、さすが巨匠、さすが名門オーケストラである。
チケット
(サントリーホールのチケット。B席で9000円もする)

 マコトに残念なことに、サントリーホールは6割程度しか埋まっていない。1階席も2階席も、後ろのほうはガラガラ。これは主催者の責任だ。心身が弱っている時なら、ステージに上がる者にとって、この状況は心にもカラダにもたいへんキツいものである。
 しかし、さすが巨匠。80歳にして気力も体力も充実しきっている。少し脚が悪いのかもしれない。指揮台に上がる時にちょっとつらそうな様子を見せる。しかしいったん演奏が始まればまさに大迫力であって、指揮ぶりに衰えなんか全く感じさせない。ホンの少しコミカルなポーズも忘れない。サービス精神に溢れるマコトに素敵なオジーチャンである。
 この日の今井君は2階席後方、B席に座っていた。だって、B席でも9000円だ。S席なんかに座ったら15000円もとられちゃう。しかし諸君、「サントリーホールはむしろ2階席のほうが音響はいいんじゃないか」、負け惜しみでなくそう実感させてくれるスンバラシイ演奏でござった。
えびす今井屋
(素晴らしかった夜の〆は、高級焼き鳥屋で)

 2度にわたるアンコールも秀逸。特に2曲目「白鳥の湖から『スペインの踊り』」は、この日のコンサートを締めくくるに最高の楽しい一曲。ほとんどの聴衆が席に残って、心からの大喝采をおくった。
 諸君、これはどうしても諸君に追体験してもらいたい。YouTubeで「白鳥の湖~スペインの踊り(スネアのおっさん)」を検索してくれたまえ。昨夜の今井君が目撃したのと、同じ指揮者、同じオーケストラ、同じ「スネアのおっさん」が目の前に現れる。
 「スネアのおっさん」とは何者であるかについても、ぜひ諸君が自ら目撃することをお勧めする。誰でも一目見て「ははん、あれね」と理解できるだろうし、フェドセーエフの演奏にはどうしても無くてはならない存在であることも分かるはずだ。
 これこそ彼と彼らと彼女らの十八番なのである。十八番と書いてオハコと読む。しかし「オハコとはこういうもの」「これこそ十八番!!」と言わんばかりの、彼ら彼女らのドヤ顔がたまらない。指揮者フェドセーエフも晴れ晴れとしたドヤ顔、オーケストラも、「スネアのおっさん」も、「どうだ、見たか、聴いたか。がっほっほ」というドヤ顔。こんなに嬉しい夜は、滅多に経験できるものではない。
あわ1
(〆は、焼き鳥屋のシャンペン。何と、秋田県横手産である)

 そして、どうしても拍手がなりやまない。アンコール2曲目が終わって、さすがに観客の8割は帰ったが、残り2割は席を立たずに熱く拍手を続ける。楽団員だって、2時間半の演奏を終えてヘトヘトのはずなのに、なかなか退場がはかどらない。「不承不承」「まだ未練があるけれど」という風情で、やっとほぼ全員が退場した。
 それでも、まだ拍手は鳴り止まない。楽団員のうち、木管の7~8人が退場を拒否して、いつまでもステージ上でニヤニヤ談笑している。「フェドセーエフなら、必ずもう一度ステージに現れる」。そう確信して待ち受けている様子である。
 マバラだった2階席の聴衆だって、まだ50人は残ってフェドセーエフの再登場を待ち受けた。ましてや1階席の熱心な聴衆は、約200人が意地でも席を立たず、ますます熱く拍手を続ける。ブラボーを叫び続けるオカタもいる。
 そこへとうとう、巨匠フェドセーエフがお辞儀しながら、ニコヤカな表情で現れた。脚を少し引きずりながらステージ脇まで出てきて、もう一度深くお辞儀してくれた。感激した観客の拍手は、もう「激烈な」と形容するしかないほど激烈なものになって、フェドセーエフと楽団員の熱演と真摯を讃えた。
あわ2
(秋田のシャンペン「あわ」拡大図)

 うにゃにゃ、これは明日か明後日、どうしてももう1回サントリーホールに来たい。明日と明後日は、フェドセーエフはまだここにいるのである。
 80歳記念ツアーは、13日鎌倉、14日北九州、15日~17日が東京。そのあと19日愛知県豊田、20日が神戸、21日が大阪。80歳にしてこのハードスケジュールで、しかも笑顔を忘れない。まさに人生のお手本である。
 感激を噛みしめつつ外に出ると、外では1人のオバサマが涙を拭っている。そりゃそうだ。あれほどの演奏を聴き、あれほど激烈な拍手の渦の中に身を置けば、感受性の強いヒトなら涙が溢れ出さないほうがおかしい。
ももと砂肝
(ももと砂肝。この店は、モモとソリレスとセギモが特に旨い)

 じゃ、今井君はどうするかい? 焼き鳥を食べに行くのである。クマ蔵、カニ蔵、キウィ男爵、サトイモ大将、こういう1人称を並べる限り、キャラクターとしてあんまり感受性を前面に押し出すわけにはいかないじゃないか。目指すは恵比寿「えびす今井屋総本店」である。
 なんで、あんな素晴らしいコンサートの後に焼き鳥屋なの? しかも「本人が今井のクセに『今井屋』ってヤヤこしくないの? こんがらからないの?」という心配については、「今井が今井屋に行って何が悪いの?」と答えるしかない。
鶏がいる1
(店中に鶏がいる 1)

 恵比寿の店は初めてであるが、赤坂と新宿と西新宿の「今井屋」では、今井宏はすでにお馴染みさんである。赤坂は残念なことに閉店してしまったが、秋田の比内地鶏を使ったこの店の高級焼き鳥は、間違いなく旨い。
 コンサートが久しぶりに素晴らしかっただけに、その〆は高いけれども旨い焼き鳥。何しろ、山手線に乗っただけで「今井宏が山手線に乗ってます」とツイッターに載るほどの今井宏だ。フルネームで山手線に乗らなきゃいけない今井宏としては、感動の後の〆ぐらい、高級焼き鳥を堪能したいじゃないか。
鶏がいる2
(店中に鶏がいる 2)

 じゃ、「終わったら来ます」と言って出た、さっきのホテル36階のバーはどうするの? ま、いいじゃないか。もうハッピーアワーはとっくに終わっている。さっき500円だったシャンペンは、今頃はきっと2500円に化けている。何だか、あまりにイヤらしい変身じゃないか。

1E(Cd) Leinsdorf:MAHLER/SYMPHONY No.6
2E(Cd) Solti & Chicago:MAHLER/SYMPHONY No.8 1/2
3E(Cd) Earl Klugh:FINGER PAINTINGS
6E(Cn) フェドセーエフ&チャイコフスキー・シンフォニー・オーケストラ:チャイコフスキー交響曲6番/エフゲニー・オネーギンなど:サントリーホール
total m114 y1539 d9434