Mon 120917 国立能楽堂 スポーツ博物館 茶目子の1日 ヒレカクとイクラと海老 | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Mon 120917 国立能楽堂 スポーツ博物館 茶目子の1日 ヒレカクとイクラと海老

 10月10日のサトイモ閣下は、午後1時に千駄ヶ谷の国立能楽堂に現れた。伯父が亡くなってからまだ3日しか経過していないが、だからと言っていつまでもションボリしているわけにはいかないだろう。
 シェイクスピアが大好きだった伯父として、しかも「通夜とか葬式とか、ボクはそういう儀式を嫌悪しているんだ」と言い放った伯父としては、自分の葬儀の翌日に1人の甥が能狂言を観に行くことを、手を打って喜んでくれるに違いない。
 まず能楽堂の中の食堂で腹ごしらえをする。「長崎皿うどん」、もちろん細麺である。ホントは天ぷら蕎麦をすすろうと思っていたのだが、見本のガラスケースの横に「長崎皿うどん、ぜひご賞味ください」という貼り紙を見つけて、「よおし、それなら『ご賞味』してやろうじゃないか」と決めた。
 皿うどん細麺が旨かったかどうかは別として、肝腎の能と狂言であるが、狂言は「昆布柿」、能は「淡路」。古事記編纂1300年を記念して、「昆布柿」も「淡路」も、イザナギとイザナミによる国造り神話にちなんだ演目である。
能楽堂
(東京・千駄ヶ谷 国立能楽堂)

 直前の皿うどんとビール1本がいけなかったのか、狂言はともかく、能のほうでは何度か睡魔に負けて意識を失いかけた。そんな意志の弱い今井君を救ってくれたのが、シテのオジーチャンである。国立能楽堂でシテを演ずるぐらいだから、人間国宝級のオジーチャンなのだが、あろうことか前半の見せ場でセリフを失念、絶句してしまった。
 それがショックだったか、そこから数回くりかえしてセリフを間違える。現代演劇なら、セリフを忘れたり間違えたりしても、アドリブで何とか危機を脱出することができる。しかし能やオペラは残酷に出来ていて、客席の前のディスプレイに字幕が出る仕掛けになっている。
白い猫
(千駄ヶ谷でニャゴロワそっくりの白ネコを発見)

 字幕を読みながら見ている人が多いから、間違えれば観客は「おや、間違えたな」とザワザワ囁きあい、失念すれば観客は「おやおや、忘れたな」と目配せを交わす。国宝級のオジーチャンにとって、何だかさらし者にされているような、悲しい事態である。
 どうなんだろう、「字幕がディスプレイに出る」「間違いを許さない」というのは、芸術の発展を阻害するんじゃないだろうか。まるで1000人の観客が演ずる者を試しているような状況。字幕通りでなければ「間違えた」と判断する観客。偶然のアドリブから芸が思わぬ発展を遂げることだって多いはずなのに、定型以外をすべてミスとして退けてしまえば、芸術の豊かな発展は止まってしまう。
チケット
(国立能楽堂チケット)

 しかも、「オジーチャンが可哀想」と今井君が涙ぐむのには、もう1つのワケがある。オジーチャンが間違えるたびに、後ろに控えている1人が容赦なく大きな鋭い声で訂正するのである。
 「セリフを忘れて絶句したんじゃない。ちょっと間を置いただけなんだ」と多くの観客は思っているのに、ジーチャンが絶句した瞬間、まさに間髪をいれずに、厳しい声で正しいセリフを教示するのだ。
 これじゃジーチャン、まったく立つ瀬がない。面目丸つぶれじゃないか。まるでカルチャースクールに謡曲を習いにきたジーチャンが、厳しいセンセに叱られてるみたいじゃないか。
 今井君がシロートに毛が生えた程度の観客だからそう思うのかもしれない。厳しい能の世界では、ごく当たり前のことなのかもしれない。しかしやっぱりサトイモ大将は、シテのジーチャンが可哀想でならない。もう少しだけ情け容赦とアドリブの余地があっていいんじゃないか。
 ついでに、さっき「ジーチャンに救われた」と書いたのは、「おかげですっかり睡魔が退散した」ということである。「またいつ間違えるか」「またいつ絶句するか」、それが心配で心配でハラハラドキドキ、これで眠くなるなんてことは、まず考えられない。少なくとも今井君はジーチャンに感謝感謝、感謝の気持ちは雨&霰なのであった。
銅像
(スポーツ博物館前で発見。なかなか難しい銅像だ)

 そういうことをいろいろ考えながら、千駄ヶ谷周辺を散歩していたら、国立競技場の脇に「秩父宮記念 スポーツ博物館」を発見。入場料300円。こりゃ、時間つぶしにちょうどいいや。さっそく入ってみることにした。日本のスポーツの過去100年を、オリンピックを中心に展示している。
バーベル
(大昔のバーベル。「危険なので持ち上げないでください」の注意書きがある。持ち上がりそうにないですけど)

 80年前の水着や柔道着。メキシコオリンピックで銅メダルを獲得した日本サッカーのユニフォーム。東京オリンピックの意外なほど小さな金・銀・銅メダル。すっかり黒ずんだ札幌オリンピックのメダル。シュプールをイメージしたデザインだが、今井君には「お皿の上で小さなウナギがウネウネしてる様子」にしか見えない。
茶目子の一日
(「茶目子の1日」のワンシーン)

 他にも、1936年ベルリンオリンピックで使用された体操のあん馬。100年前のバットにグローブにキャッチャーミット。戦前の早大野球部ユニフォーム。もっと大昔のバーベル。これは諸君、一見の価値がある。300円では安すぎる。
 場所は、国立競技場正面入り口の右脇。神宮スケート場の真向かいにヒッソリ隠れている。諸君、チャンスがあったら一度訪ねてみたまえ。中でも必見なのが「茶目子の一日」と題された1930年頃のフィルム。実際に見なければその面白さは分からない。たった5分のフィルムだが、3度見ても5度見ても、おそらく飽きることはない。
説明
(「茶目子の1日」について)

 夕食は、おなじみ西麻布「トラジ」。ヒレカク3人前とセンマイ3人前をペロリと平らげ、大好きなチャミスルも、ボトル1本あっという間にカラッポになった。
ヒレカク
(トラジ「ヒレカク」3人前)

センマイ
(焼いて食べるセンマイ。ウシのいくつ目かの胃袋である。センマイ刺はよくあるが、焼きのセンマイは珍しい)

 ちょっと食べ足りなかったので、向かいのお寿司屋に入って、イクラのお寿司4貫とサーモンのお寿司2貫を注文。シャケやイクラやエビの赤い色素成分は、アンチエイジングに絶大な効果がある。朝のNHK「あさイチ」で、盛んにそう宣伝していたからである。
 今井君は宣伝広告に異様に弱い所があって、おそらくこれからしばらくは「イクラ♨イクラ」「サーモン♨サーモン」「エビのシッポ♨エビのシッポ」と熱く言い続けると思う。諸君、エビの黒い目玉こそ、最も高いアンチエイジング効果があるとのこと。これからは、居酒屋のおツマミはひたすら「川海老の唐揚げ」であるね。
川海老
(食べかけの「甘海老の唐揚げ」と、石川県のお酒・天狗舞)


1E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 5/10
2E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 6/10
3E(Cd) Barenboim:BEETHOVEN/PIANO SONATAS 7/10
6D(Pl) 国立能楽堂10月定例公演:狂言「昆布柿」 能「淡路」
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