Sat 120908 東京駅に感動 アンディ・ウィリアムズ ムーンリバーとキャリーとMr.Big | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 120908 東京駅に感動 アンディ・ウィリアムズ ムーンリバーとキャリーとMr.Big

 10月1日、用事があって東京駅に出かけると、駅前は恐るべき人出であって(Mac君は「恐るべきヒトデ」という恐るべき怪物を作り出してくれたが)、東京駅復元工事完成を祝い、美しい赤レンガの駅を老若男女こぞって写真に収めていた。
 思えば6年近くかかった大工事の完成であって、マコトにマコトにおめでたい。6年前、まだ2階建てだった駅舎の中に、古ぼけた「ステーションホテル」が残っていた。2階のレストランを何度か利用したが、木製の階段がギシギシ鳴る音が印象的だった。
東京駅1
(東京駅 10月1日)

 内田百閒の弟子たちが、毎年の師匠の記念日に大宴会「摩阿陀会」を催していたのが、この略称「ステホテ」である。摩阿陀会とは、「まだ天国に行かないの?」の意味で「まあだかい?」であり、老いた百閒の答えは「まあだだよ」であって、その辺の事情を手っ取り早く知りたい人には、黒澤明の映画「まあだだよ」もある。松村達雄と所ジョージが泣かせてくれる。ただし映画では、内田百閒の随筆を読む楽しみの1/100にもならない。
 中身なんか全くないのに読んで口が曲がるほど楽しいのが百閒随筆。オコガマシイもいいところだが、今井君が人生のお手本にしているのは、実はステホテで弟子たちに囲まれてご満悦の百閒の姿である。ビアの飲み方、シャンパンの飲み方、手許が曖昧になるぐらいの酔っぱらい方、すべてに東京駅ステーションホテルによく似合う。
内田百閒
(内田百閒コレクション。今井君は文庫で著書すべてを読破した)

 何を隠そう、今井君が最も頻繁に利用する駅がこの東京駅である。代々木上原の自宅から最も近い国鉄の駅は、新宿、代々木、原宿、渋谷。この4駅すべて、自宅から徒歩で25分ほどしかかからない。
 しかし、出張でもプライベートでも、今井君は赤レンガの東京駅からのスタートにこだわりたい。だから、代々木上原からは地下鉄千代田線に乗って、二重橋前の駅で降りる。地下鉄・二重橋前駅と国鉄東京駅とは地下道でつながっていて、雨の日でも全く濡れることなく東京駅に出る。断っておくが、東京駅はあくまでも「国鉄」。JRだなんて、あんまり惨めで、威風堂々たる東京駅には似合わない。
東京駅2
(夕暮れの東京駅 まだ建設資材が残っている)

 東京駅は、日本人としてサトイモ男爵が誇りに思うもののうちの一つである。もちろん今井君は大の日本好きだから、世界に向かって誇りに思うものは千も万もあるが、東京駅はその「千も万も」のうちのトップクラス。下手をすればトップ3の中にさえ入ってしまいそうだ。
 だって、こんなにキレイで清潔で、美しく堂々と偉容を誇る鉄道の駅なんか、世界中を歩きつづけるクマ蔵どんでさえ、他に見たことがない。NYのグランドセントラルだって、ロンドンのチャリングクロスやヴィクトリア駅だって、多くの名画に描かれたパリのサンラザール駅だって、東京駅には到底かなわない。
 他に、どこがある? マドリードのチャマルティンにアトーチャ? ローマのテルミニ駅に、ミラノのチェントラーレ? 残念ながらサトイモどんはまだモスクワ中央駅を目撃していないが、いま目の前に復元完成された3階建て赤レンガの東京駅をうち仰いで見るに、その治安の良さ、人々の整然と抑制のきいた行動や知性的態度まで含めて、サトイモ君の心のナショナリズムを沸騰させるに足る、まさに圧倒的な勇姿と言っていい。
東京駅3
(東京駅ドーム拡大図)

 この前日、9月30日の東京は、朝のうちの晴天にも関わらず、台風17号の接近に伴って、午前10時頃から空は一面の黒雲に覆われた。昼前にはザアーッと雨が降りだして、今井君の「台風クラブ」的熱狂を目覚めさせた。
 いろいろ難しいヒトがいるから、「台風が最接近して風雨が強くなると、今井君はTシャツ1枚で表に駆け出して絶叫する」という事実をここに書き記すことは憚られるが、ま、それに類するいかにも小学生男子っぽい行動をとっていることは、読者諸君も知っておいてくれたまえ。
 夜半、台風が最接近し、東京も暴風雨圏内に。さすがのキウィ閣下も若干コワくなって、お部屋の中に籠って過ごした。他にすることがないので1週間分の新聞をめくっていると、何と「アンディ・ウィリアムズ死去」のニュースが出ている。諸君、「ムーンリバー」である。「アンディ・ウィリアムズ・ショー」である。
 今井君がコドモの頃、NHK日曜夜のアンディ・ウィリアムズ・ショーがとにかく大キライ。「竜馬がゆく」「天と地と」など、全盛期の大河ドラマの激しい興奮の後、「何でこんなツマラン番組が続くんだ?」という憤怒さえ湧き上がった。
ティファニー1
(高2のころ読破したBreakfast at Tiffany's)

 映画「ティファニーで朝食を」の「ムーンリバー」は好きだった。おそらくテレビの洋画番組で見ただけだが、あんまり好きだったので、生意気にも秋田市の本屋でペーパーバックスの原書を購入。辞書を引き引き読破したのが、今井君の原書読破経験のの3冊目か4冊目である。
 ムーンリバーはドラマ「Sex and the City」でも活躍している。調べてみると、シーズン4の第18話である。Mr.Bigがいよいよカリフォリニア移住を選択、NYにこだわるキャリーと決定的に別れることになるのだが、すでにインテリアもすべて運び出されたカラッポの部屋の中で、2人が笑顔でダンスする曲がアンディ・ウィリアムズの歌う「ムーンリバー」である。
ティファニー2
(高2のころ読破したBreakfast at Tiffany's)

 Sex and the City(略称SATC)は、1話が約30分で、ワンシーズン18回が基本。シーズン4の第18話ということになると、視聴者はすでに30分×18話×4シーズン=2160分も、主人公キャリーに付き合ったことになる。36時間でござる。
 1日3時間ずつ付きあっても、12日。余程のファンでない限り、シーズン4の最終回までは付きあえないんじゃないか。シーズン1では30歳になったばかりのキャリーだって、シーズン4ともなればもう35だか36だか37だか、とにかくすっかりオトナになってしまい、成長に従ってますます気難しく、好き嫌いが激しくなっている。
東京駅4
(東京駅丸の内南口ドーム。東京駅の中でも、今井君は丸の内南口が特別に大好きだ)

 しかし、Mr.Bigとキャリーが古いレコードの「ムーンリバー」を聞きながら踊るシーンは悪くない。歌詞の中の「Two drifters」についてMr.Bigが語るコトバもいい。「ボクらはtwo driftersなのだ。これからもtwo driftersのまま生きていきたい」と、いかにもトボケた顔で独り言のように言うのである。
 果てしない痴話ゲンカ、言い争いと仲たがい、裏切りと復活とまた裏切り、そういう2人にドラマで36時間ぶん付きあった後でなければ、このシーンのスンバラシサは分からない。「1冊10分の速読」みたいな無茶な読み方では、どうしても理解できない世界は、そこいら中にころがっているのだ。
 レコードは古すぎて、同じところで何度も針が飛ぶ。若い諸君、レコードというものは、古くなると「針が飛ぶ」という現象を起こすのである。そのたびに男女2人の会話はとぎれ、感情は澱み、澱んだ感情はやがて堰を切って激流になる。ま、一種のカタルシスであるね。
東京駅5
(巨大ビルを背景にしても、東京駅の威風堂々ぶりは変わらない)

 レコードはおろか、カセットテープもMDも見たことのない世代に属する諸君。「針が飛ぶ」というアナログな現象が、長い別れを目前にした男女にとってどれほど哀愁をかきたてるものか、20世紀に生きた人間を理解するには、つまり要するに20世紀の世界を支配した哀愁を理解するためには、「レコードの針が飛ぶ」現象を一度経験しておく必要があるかもしれない。
 時間のある諸君は、これからでも遅くない、いますぐTSUTAYAに走って、SATCのDVDを借りてきたまえ。ただし、覚悟が必要だ。シーズン6まで全部見るとすると、1回30分×18話×6シーズン=3240分=54時間の計算。サマンサもミランダもシャーロットも、みんな30歳から40歳に迫り、どちらかというと「ママ」の表情に変わる。
 しかもその後に、続編と称する映画が2本。あれれ、さらに今度はキャリーの高校生時代だか大学生時代だかを描いた映画も出るらしい。それを演ずるのが「ゴシップガール」のセリーナ役のヒト。もう何が何だかワケが分からなくなってくる。

1E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 8/10
2E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 9/10
3E(Cd) Böhm & Berliner:MOZART 46 SYMPHONIEN 10/10
4E(Cd) COMPLETE MOZART/THEATRE & BALLET MUSIC 1/5
5E(Cd) COMPLETE MOZART/THEATRE & BALLET MUSIC 2/5
total m40 y1465 d9360