Thu 120813 ドイツ最高峰を征服に向かう 今井史上でも最高峰(ミュンヘン滞在記5) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Thu 120813 ドイツ最高峰を征服に向かう 今井史上でも最高峰(ミュンヘン滞在記5)

 5月20日、朝9時に起きて、「さて、それではこれからドイツ最高峰ツークスピッシェを征服しに出かけよう」と心を決めた。
 「ドイツ最高峰」と言えば、チロルから見上げるドイツアルプスを想像するから、4000m級のたいへんな登山になりそうだが、意外なことに標高は2962m。何だ、3000mにも届かない。3000m級の山なら、ノンビリ朝9時に起きて、暢気に顔を洗い、歯もキレイに磨いて、それからでも十分登頂できるだろう。
登頂
(5月20日、ツークスピッシェ山頂で)

 もちろんホントの登山ならそういう軽率な発想は厳禁である。しかしこれからクマどんが決行するツークスピッシェ征服は、登山電車とロープウェイを乗り継ぐだけで、いきなり山頂に出る。登山靴も登山用の重装備も一切必要なし。たいへん気楽な登山である。
 そもそも今井君は怠け者だから、自ら進んで困難に立ち向かうタイプの登山なんか大嫌いだ。流行中の「山ガール」などというのは、今井君には想像すらできない、マコトに不思議な世界である。
出発1
(ミュンヘン中央駅を出発 1)

 それでも、数百年も生きていれば、「どうしても山に登らなくちゃならない」という状況に追い込まれることがある。今までの今井君の人生で、不本意ながら登山に追い込まれた経験が2回ある。
 1回目が、秋田高校1年生のときの太平山登山。諸君、太平山とは、秋田市の西の外れに聳えるたった1170mほどのお山でござる。うにゃにゃ、あのときはツラかった。登山口からホンのちょっとのところでもうヘロヘロになって、登頂したときは口から心臓がポンと飛び出そうだった。
出発2
(ミュンヘン中央駅を出発 2)

 2回目は、大学2年のときの青森・岩木山。友人たち5~6名で青森を旅していて、「せっかく弘前まで来たんだから、どうしても岩木山に登ろう」と衆議一決してしまった。岩木山は1600mを超える。ちょっと絶望的な気分になった。
 しかし多数決なら、多勢に無勢で致し方ない。「山に登ると、ボクの心臓は口からポンと飛び出そうになるんだ」と必死で抗議したって、「何言ってんだバカヤロー」「アホか」「がはははは♨」という笑いの渦に、弱々しい抗議はたちまち飲み込まれてしまう。もっともあの時は8合目だか9合目だかまでバスで行けたから、今井君の心臓は口からポンと飛び出さずに済んだ。
あれかな1
(あのお山かな? 1)

 こういう困ったクマどんだから、富士山も、バスで行ける5合目まで。立山も、トロリーバスで行ける室堂まで。スキーは大好きだから、ゴンドラやロープウェイで行ける所までは行くけれども、蔵王やニセコでどんなに頑張ったって、せいぜい1500mぐらいの高さまでしか登れない。
 だから、5月20日のツークスピッシェ2962mは、ドイツ最高峰であると同時に、今井史上最高峰でもある。ドイツアルプス3000m級からの眺望を思うと、まあ胸が高鳴らないこともなかった。
あれかな2
(あのお山かな? 2)

 「まあ…しないこともない」という煮え切らない表現を使うのは、やっぱり心配だったからである。だって、靴は普段の旅行用の靴。渋谷区笹塚のスーパーで買った5000円のヤツである。ズンボは、断捨離寸前のヨレヨレのズンボ1枚。上着は薄手のセーターだけである。
 こりゃ横丁のダンナが散歩かパチンコに出かける風体であって、3000mの高山を征服に向かう決然とした緊張感は、鏡に映った外見からは微塵も感じられない。特に問題なのはマヌケというかフヌケというか、キリリと筋の通った所の全くない顔の表情である。
あれかな3
(いや、どうやらあのトゲトゲお山だ♨)

 それでも、まあとにかく麓までは行ってみようじゃないか。ミュンヘン中央駅からガルミッシュパルテンキルヘン行きの電車に乗った。ドイツ国鉄の例の朱色の車体、DBの文字が印象的。DBはDeutsche Bahnの略称である。
 車内には、「おお、ツ-クスピッシェを征服しにいくんだな」というオジサマ&オバサマが乗り込んでくる。5両ほどつないだ各駅停車の車内に、数十名は登山客がいるだろうか。
 みんな「まあ登山」程度の軽装備であって、「いざ登山」という引き締まったムードではない。よかったよかった。これなら横丁のクマさんがこんな暢気な顔で同行しても、叱られることはなさそうだ。
ガルミッシュパルテンキルヘン駅
(ガルミッシュパルテンキルヘン駅に到着)

 1時間半ほどの乗車でガルミッシュパルテンキルヘンに到着。途中、「あれかねぇ」「いや、やっぱりあれかな」と思う山々があって、しかしどれも「ドイツ最高峰」と呼ぶには平凡すぎる。
 やがて「あれかねえ」の後ろから、真っ白に雪をかぶったトゲトゲしい岩山が現れた。間違いなく、あれである。何ということだ、これからクマ蔵はあんな激しいものに登らなければならないのである。しかも横丁のオジサンスタイルで挑戦するのだ。
登山鉄道
(登山電車が待っていた)

 DBの駅を出て、すぐの所に登山電車が待っていて、数十人が一斉に乗り換える。登山電車は一気に2650m地点までクマどんを運んでくれるはずだったが、一部工事区間があって、いったんバスに乗り換え。バスの終点から、また登山電車にワラワラ乗り換えになった。
 2600m地点まで来ると、さすがに風が身に沁みる。こんな軽装では、やっぱり少々非常識だったのかもしれない。しかしもう迷ってはいられない。迷うも何も、後ろからドイツのオジサマやオバサマがどんどん押してくるから、迷わず目の前のロープウェイに乗り込むしかないのだ。
登頂2
(ついに登頂)

 こうして今井君は、チューブから絞り出されたハミガキよろしく、2962mのドイツ最高峰にニュルっと押し出されてしまった。大学入試もこんなに楽にニュルっと最高峰に押し出してもらえるといいんですが。
雪原
(山頂の雪原)

 3000mにあと少しで手の届く最高峰で、刺すように冷たい風に震えながら、クマ蔵は眼下の青い湖に見とれていた。あれは、アイブゼーである。周囲の白い山々にひっそりと埋もれて、雲を映した青い湖面が美しかった。
湖
(山頂からのアイブゼー)


1E(Cd) Radka Toneff/Steve Dobrogosz:FAIRYTALES
2E(Cd) Billy Wooten:THE WOODEN GLASS Recorded live
3E(Cd) Kenny Wheeler:GNU HIGH
4E(Cd) Jan Garbarek:IN PRAISE OF DREAMS
5E(Cd) Bill Evans & Jim Hall:INTERMODULATION
total m65 y1335 d9230