Sat 120808 トルコ最終日 グランドバザール トイレ事情(イスタンブール紀行29) | 今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

Sat 120808 トルコ最終日 グランドバザール トイレ事情(イスタンブール紀行29)

 5月29日午後、スレイマン・ジャーミーを出て5月末の初夏の日盛りを10分ほど行くと、グランドバザールの真横に出た。周辺の店々も雑貨や絨毯をたくさん並べて、周囲もバザール内部も、その不思議な混沌ぶりに違いはない。バザール内部は日光が届かないぶん、不思議な気分がいっそう高まるだけである。
グランドバザール1
(グランドバザール)

 ガイドブックには「内部は迷路のように入り組んでいて、一度入ったら同じ出口から出るのはほとんど不可能である」と記されている。なるほど、入った瞬間のイメージは「一度入ったら出られない」という魔界のものである。
 中央部に、はるか昔にできた旧バザール。その核の周囲を無数の店が年輪状に取り巻いて、数百年かけて一種の魔界が出来上がった。これこそ「超・昔ながら」であって、こんな魔窟のようなバザールが市街中心部に残っているなら、「昔ながらを残しながら」について、心配なんかしなくていいのかもしれない。
グランドバザール2
(グランドバザールの絨毯屋さん)

 しかし今井君が実際に歩き回ってみるに、このバザールでさえも奇妙なほど整理整頓が進んでいるのである。ある一角は延々と貴金属店が並ぶ。ある一角は、延々と絨毯屋さんが並ぶ。バルセロナやアテネやブダペストの市場みたいに鮮魚や精肉を扱っていないから、血なまぐさい匂いも一切ナシ。バザールを支配する雰囲気は至って高級である。
 「一度入ったら同じ出口からはまず出られない」というのも、まあガイドブック特有の大袈裟な表現に過ぎない。ほとんど碁盤の目のようにキレイに区画されたバザールで、出口を見つけるのにそれほどの困難を感じない。目を血走らせた商人どうしの駆け引き、駆け引きが高じた罵声、ヒツジの声、ラクダの笑顔、そういうものとは一切無縁なのだ。
グランドバザール3
(グランドバザール 「傾いたキオスク」)

 次に来るまでに、トルコが一気にデジタル化してしまいそうで、クマ蔵どんなんかはちょっとコワいのである。鉄道でも、すでにSuica型カードやトークンが100%普及。窓口に長蛇の列を作ってキップを買う、あの懐かしい「昔ながら」は、2012年の段階ですでにすっかり姿を消してしまっていた。
夕陽
(イスタンブール 夕陽の情景)

 イスタンブール紀行の最後に、トイレ事情についてカンタンに話しておきたい。いやはや、人生で最も大切な小部屋のうちの一つは、イスタンブールではほぼ完全に2極分化していると言っていい。
 一方では、まさに「昔ながらを残しながら」そのもののトルコ式便器クン。写真のギザギザのところに足を載せたら、不要物を地獄へ向かって排気する穴がうしろ。写真のコチラ側が前。地獄への穴にうまく命中するようにコトを運ぶ。
トルコ式トイレ
(トルコ式トイレの基本)

 全てが終了したら、目の前の水道の蛇口の前には本来バケツがあって、バケツに貯まった水で必要な洗浄を行う。この形式のトイレでは、一般に紙とかトイレットペーパーの類いは置かれていないから、お水でしっかり洗った後は、とりあえず乾燥は自然の偉大な力に任せるしかない。
船内トイレ1
(お船のトイレ 1)

 さすがにこの種のトルコ式トイレでは、現代的どころか近代的とも言えないから、デジタル化が進むイスタンブールでは当然のごとく廃れていくものと予想される。しかしマコトに驚くべきことに、いまだに生産は盛んで、繁華街の陶器屋さんの店先にも堂々とチンレツされていたりする。
 いくら今井君が「昔ながら」が大好きなアナログ系中年男だとは言っても、この形式のトイレに入る度に、「おやおや、こりゃ困った」と天を仰いだものである。ボスフォラス海峡を行き来するお船の中、ちょっと古い飲食店、その他切羽詰まって駆け込むトイレのほとんどがこの形式であった。
船内トイレ2
(お船のトイレ 2)

 ところが、「トルコ式ウォシュレット」という驚くべきものも、イスタンブールには存在するのである。ヨーロッパだと、どんな高級ホテルに宿泊しても、日本みたいに繊細な、微に入り細を穿って使用者の幸福に寄与しようとするウォシュレットに出会うことは期待できない。日本はこの面でも完全にガラパゴス化しているのである。
 だから、「トルコで、ウォシュレット?」というクマどんの驚嘆は、まさに天を打ち地を穿つほどであった。最初の発見は、今井君の宿泊したスイスホテル・ザ・ボスフォラスの新館においてである。
トルコネコ1
(トルコのネコどんたち 1)

 座った洋式トイレのすぐ右脇の壁に、何と何と夢ではないか、懐かしや懐かしや、もちろん日本のものほど高級ではないが、20年も25年も前の日本で一世を風靡したタイプのウォシュレットのボタンがついている。
 「おしりを洗う」のボタン1個だけ、その他「ムーヴ」も「マッサージ」も「やわらか」も「乾燥」も一切ナシ。しかし少なくとも「洗う」を自分の手のひらで行わなければならない欧米や、伝統的トルコ式トイレとは、完全に一線を画す大発明と言っていい。
トルコネコ2
(トルコのネコどんたち 2)

 諸君、今井君はさっそく使用を試みた。トルコ旅行記の締めくくりが尾籠な話になってマコトに申し訳ないが、ま、トルコを旅した2週間の中でも、最大の驚きのうちの1つに分類される事柄である。どうしても書かずに済ませるわけにはいかないのだ。
 思い切ってボタンを押してみた今井君は、まずその水の冷たさに一驚を喫した。日本みたいに「温水」だなどと甘えた態度は許さない。常温のお水がそのまま洗うべき箇所に噴射される。クマ蔵が旅したのは初夏、最高気温30℃の季節だったからいいが、トルコの冬はそれなりに寒いのである。お水の冷たさを思うと、まだまだこの機械は開発途上と言っていい。
 しかも諸君、そのお水の飛び出しかたも、「洗う」とか「洗浄」という呼び方には達していない。要するに、水道の水がお尻のほうに向かって普通に流れるだけである。確かに基本中の基本であるが、これを日本のレベルにまで進化させるのにはまだまだ時間がかかりそうだ。
トルコネコ3
(トルコのネコどんたち 3)

 こうして5月30日、長かったトルコ旅行は最終日を迎えた。とは言っても5月30日は、イスタンブール空港までタクシー、あとはミュンヘン空港で乗り継いで、一路東京に向かうだけのことである。イスタンブール空港のスターアライアンス・ラウンジがあまりにも豪華であることに驚いたぐらいで、あとはごくごく平凡な空の旅であった。
 5月31日午後16時、無事成田に到着。今井君はエラいから、「成田からタクシー」などという贅沢は絶対にしない。チャンと空港リムジンバスに乗って、渋谷経由で代々木上原には19時すぎに帰還。走り回るニャゴロワとナデシコの姿を見て、トルコで挨拶したたくさんのネコたちのことを思い出した。

1E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER④
2E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER①
3E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER②
4E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER③
5E(Cd) Richter:BACH/WELL-TEMPERED CLAVIER④
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